ミレニアル世代が満足するワークプレイスを構築する方法
あらゆるワークプレイス戦略は、事業の牽引要素である「従業員」を起点としなければならない。企業にとって成長を促すのは「人材」に他ならない。
オフィス環境を重要視するミレニアル世代
人材獲得競争が激化
あらゆるワークプレイス戦略は、事業の牽引要素を起点としなければならない。そして今日、多くの企業にとって成功の牽引要素は人材である。優秀な人材を雇用することも重要だが、採用後も従業員の幸福度を維持することこそ中長期的な事業成長を約束するのである。
米国ではミレニアル世代(1981年-1996年頃生まれ)の採用競争が激化している。若い従業員を雇用することが重要な理由は、他の世代よりも圧倒的に人数が多いことであると理解するべきである。労働力に占めるミレニアル世代の割合はX世代(1965年-1980年頃生まれ)の2倍であり、ベビーブーマーであるX世代は毎日数千人単位で退職している。
ミレニアル世代の人材獲得戦争について語る時、本当に話題にしているのは自社の未来を委ねる最良の人材の獲得だ。
そして、そうした人材は気まぐれなところがある。
最新の調査では世代間には相違点よりも類似点が多いことが明らかになっているが、ミレニアル世代の関するデータで目立つのは、転職を厭わないどころか、むしろ希望するという点である。
ギャラップによれば、ミレニアル世代の21%が過去1年間に転職しており、60%が常時転職の機会に前向きである。ワークプレイスで最もエンゲージメントが低い世代であり、エンゲージメントと忠実性の欠如は米国経済に年間305億ドルのコストを生じている。
ワークプレイスを「エクスペリエンス(体験)」の場に
そこで問題は、ミレニアル世代、そして全従業員の幸福度、健康、エンゲージメント(会社とのつながり)、及び生産性を維持するワークプレイスをいかに構築していくのか。できるとしたら、どうすればよいのだろうか。
この課題に対する最新の戦略は、ワークプレイスをエクスペリエンスの場とすることである。今日のトップ企業は、近所で「生活、仕事、及び遊び」の機会を提供するオフィスを超えた発想で、理想的なライフスタイルのエクスペリエンスを建物内、企業によってはオフィス内へと取り込んでいる。
揺らぐ?オフィスの存在意義
ただ、多くの人にとって疑問となるのが、いつでもどこでも、どの端末からでも仕事をできるのにオフィスに何の意義があるのかという点だ。
JLLは、その存在意義は「最善の成果を達成可能な環境」であると考えている。これを裏付けるためには、ソロワークでもグループワークでも、屋内・屋外問わず様々な働き方ができる、適宜集中やコラボレーションを可能にする場所といった、多様な環境を提供するワークプレイスが必要となる。
同じワークプレイスで従業員に様々な環境を提供するためのアイディアを示したい。
例えば、社内のソーシャルハブで自然にコラボレーションを行われるのはどうだろう。より多くのオフィスで、従業員が集まり、協働する。偶発的な衝突を促す場であるソーシャルハブがみられるようになっている。これは旧来型の社員食堂や休憩室ではない。従業員が席に座り、コーヒーを飲みながら同僚とリラックスして話をしたり、忙しい業務時間中に休憩できる社内のカフェバーを指している。
「第三の場」が求められている
ハワード・シュルツは、美味しいコーヒーを淹れるだけではなく、職場と自宅の間にコミュニティとくつろぎのための第三の場を創造することで、スターバックスに目覚ましい成功をもたらした。有力企業はこの戦略を採用し、その第三の場を社内に持ち込んでいる。
機能横断的ま多目的スペースを設置することでイノベーション創発を目指すケースや、高揚する新しいアイディアを生むべくオフィス内に設置されたイノベーションハブも増加している。
場合によっては、こうしたイノベーションハブは企業が従業員やクライアント、顧客、潜在的顧客等に自社サービスを披露するショールームの役割も果たしている。外部の優れたアイディアを持ち込む場となっていることもある。
イノベーションハブ構想に含まれる拡大中のトレンドとしては、企業が類似分野の他社や業界のスタートアップ企業を自社スペースに招く、コーポレート・コワーキング・スペースが挙げられる。フリーランサーやエージェンシーに多くの業務をアウトソースしているのであれば、オフィス内に業務スペースを与えて自社のブランドや文化への理解を深めさせ、従業員にはその創造性や新鮮なアイディアに触発される機会を与えてはどうだろう。
接続性で妥協しない
これら全てについて見落としてはならない非常に重要な要素は「接続性」だ。こうした複数の職場環境を創造するという素晴らしいアイディアを採用しても、コンセントが足りない、Wi-Fiが不安定などの理由で、実際にはうまく稼働していないスペースが多すぎる。
空港のターミナルで1カ所に大人数が集まっているのを見たことがあれば、このシナリオは理解できるだろう。従業員が効率的に利用できるようにするためには、電力と接続性はあらゆるスペースに偏在していなければならないのだ。
ワークプレイスを単なる仕事の場ではなく自社の事業の成長源と捉えるならば、ワークプレイスをエクスペリエンスの場にできる。
オフィスは従業員がいなければいけない場所ではなく、いたい場所であるべきだ。これこそがエンゲージメント向上の始点なのである。