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グローバル企業が注目する「ワーク・エクスペリエンス・マネージャー」がオフィスを活性化させる

先進的なグローバル企業ではオフィス運営の専門家である「ワーク・エクスペリエンス・マネージャー(以下、WXM)」を起用し始めているという。社員の交流を促進するイベントの企画・運営などを担い、社員のエンゲージメントを高め、生産性向上や人材採用の強化に寄与しているという。

2025年 01月 20日
オフィス回帰によって台頭したWXMとは?

社員数が増加するにつれ、従業員のエクスペリエンス(優良な経験)と生産性を大幅に向上させるために「ワークプレイス・エクスペリエンス・マネージャー(Workplace Experience Manager/以下、WXM)」を採用する企業が欧米では増えているという。

日本では従前からオフィス運営を管轄する総務部などが兼任で同様の役割を担うことが多かったが、WXMはオフィスにおける社員の満足度を最大化するための“オフィス運営の専門家”である。先進的なグローバル企業では、社員が幸福に働ける職場環境を構築するための専門職を担うチーフ・ハピネス・オフィサー(Chief Happiness Officer/CHO)を導入するケースがあるが、オフィスライフに特化したのがWXMといえるだろう。

アフターコロナ時代を迎えた現在、オフィス回帰が進み、社員がオフィスで過ごす時間は増加傾向にある。WXMは企業が社員の生産性向上に取り組み、最大限の事業成果を引き出すための施策として注目を集めているようだ。

JLL EMEA(欧州・中東・アフリカ地域) デザイン ヘッドを務めるエイドリアン・デビッドソンは「WXMの台頭は企業のオフィス戦略が進化していることを示唆している。単純にオフィスの立地や内装デザインにこだわるだけではなく、オフィスがどのように機能すべきか、その理想像まで考慮していることを意味している」と指摘する。
 

WXMの具体的な役割

専任のWXMの主な役割は社員同士の良好な関係性を構築するためのイベントやサービス・プログラムを企画すること

WXMはホテル・ホスピタリティ業界から着想を得たもので、社員同士の交流を深める他、自宅よりも快適かつ健康的に過ごせるオフィスを提供するなど、働くためだけの場所ではなく、オフィスで過ごすことで社員が何らかの付加価値が得られるように創意工夫を行う存在である。

「最終的に企業が目指しているのは社員がオフィスに出社したくなるようなポジティブな職場体験を演出することだ。創造性を育むため、信頼を築くため、あるいは単に喜びを共有する瞬間を提供するためなど、まずは目的を明確化するべきだ。そして、内装デザインとコミュニティ強化施策の両輪が相乗効果を発揮できるようにオフィス改革を進めることが重要だ」(デビッドソン)

JLL EMEA ワークダイナミクス リサーチ&ストラテジー ディレクターを務めるルース・ハインズは「オフィスの場合、専任のWXMの主な役割は社員同士の良好な関係性を構築するためのイベントやサービス・プログラムを企画することが多くなる」と説明する。

彼らの役割は、実用的な施設管理の専門知識とコンシェルジュとしてのおもてなし精神、コミュニティイベントやハッピーアワー、テーマ性のあるサステナビリティ/ウェルビーイング活動など、様々な社内イベントを企画することになるが、企業や社員から寄せられる「自分たちにとって何のメリットがあるのか​​?」との異議に対して明確な回答を用意しておく必要がある。
 

交流こそが活気ある職場を生み出す

先進的なグローバル企業では、社交的な瞬間こそが社員の健康と幸福を育み、可能性を引き出し、チームを活性化させ、活気ある職場文化を生み出すと考えるようになっている

社員の交流を促すための企画がチームの一体感醸成と生産性向上のための最適な執務環境を構築する上で重視するべきものはハード面だけでは十分とはいえなくなっている。

 1人当りオフィス面積や天井の高さ、オフィス出社日数などの数字に焦点を当てるのではなく、イベントなどで生じるコラボレーションの瞬間を測定し、社員がオフィス空間でどのように過ごすかを考えるべきだろう。

先進的なグローバル企業では、こうしたソーシャル(社交的)な瞬間こそが社員の健康と幸福を育み、可能性を引き出し、チームを活性化させ、活気ある職場文化を生み出すと考えるようになっている。

「一緒に食事をしたり、遊んだり、社交するなど、交流や体験を共有するための機会を設けることは信頼関係を構築し、より広範な企業目標の達成に貢献するだろう」(デビッドソン)

人材採用と雇用維持に寄与するWXM

JLLグローバルの調査「The Future of Work Survey 2024」(英語版)によると、回答した半数以上の企業が「人材の誘致と雇用維持が2番目に大きな企業目標である」としている。

WXMを起用して高水準のオフィスサービスと社内イベントを提供することで、社員のエンゲージメントが高まり、チーム内の結束が強化され、組織全体で絆が生まれ、最終的にはコストのかかるスタッフの離職率の削減につながるだろう。

「『最高の体験』を提供し、社員の様々なニーズに合わせてオフィスでの体験をカスタマイズし、組織や社員の成長を促進することを推奨している」(ハインズ)

さらに、アプリなどのテクノロジーを活用することで、社員のエンゲージメントを測定するためのデータを収集でき、オフィス全体のエクスペリエンスを改善し続けていくことが可能になる。

※本稿はJLLグローバルが発表した記事「The rise of the workplace experience manager」を抄訳しました。

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