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2025年、オフィスが再び「投資の花形」へ

不動産投資市場でオフィスの存在感が増している。2024年の総不動産投資額に占めるオフィスの割合は4割近くに達しており、「最も投資を集めたセクター」に返り咲いた。コロナ禍を経てオフィスへの投資が増加してきているのは確固たる理由があるようだ。

2025年 05月 12日
2024年のオフィス投資額は2兆円を記録

2024年の国内不動産投資におけるオフィスの投資額はおよそ2兆円を記録。前年比で実に77%の増加となった。全投資額に占める割合も2023年33%から2024年は36%へと伸びており、着実に4割へと近付いている。

オフィス投資が伸張した3つの理由

2024年にオフィス投資額が大きく伸びた理由は以下の3点に集約される。

1. 大型のオフィスディールが増加したこと

2. 外資系投資家が再びオフィス投資に舵を切り始めたこと

3. 賃料上昇トレンドにあってアップサイドが取れること

個別に理由をさぐっていきたい。

1. 大型のオフィスディールが増加

1年を通していわゆる「三桁億」のオフィス取引が継続的にみられたのが2024年だ。サイズ的に最も大きい取引が「青山ビルヂング」で、およそ900億円と報じられている。1970年代初頭に建築されたビルながら立地のよさが評価された結果であろう。これ以外にも区分所有ながら「Otemachi One」が取引されるなど、東京都心部のAグレードオフィスの取引が目立ったのも2024年の特徴といえよう。

オフィスの取引は東京都心部だけにとどまらず、国内主要マーケットへと波及している。大阪では「本町ガーデンシティ」がホテル区画と同時に取引され、オフィス区画のみで400億円を超えている。また、名古屋ではささしまライブ地区にある大型オフィス「グローバルゲート」が三桁億円の取引となっており、東京以外でもオフィス投資は盛り上がりをみせている。

加えて、首都圏周辺部での取引も見られたのが2024年の特徴だ。幕張の「ワールドビジネスガーデン」が600億円前後で取引されるなど、規模の大きいビルの取引が際立っている。

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2. 外資系投資家がオフィス投資へ回帰

筆者が所属するJLL日本 キャピタルマーケット事業部では外資系投資家に対して市場環境にかかるブリーフィングやプレゼンテーションを年100回以上手掛けているが、2024年は「オフィスの話を聞きたい」という外資系投資家が飛躍的に増加した。これは外資系投資家がオフィスへの投資にようやく重い腰を上げつつあるという証左となろう。

具体的に現時点で動いている外資系投資家はいわゆる「バリューアッド」や「オポチュニスティック」とよばれる投資家だ。低稼働物件を安価に取得した後、リノベーションなどを施した上で優良テナントを誘致し、稼働率が上昇した時点でコア系投資家に売却するというスキームを駆使する投資家に限定されているものの、コア系のファンドレイズが順調に進みドライパウダーも積みあがっていることから、今後は外資系投資家でも特にコア系投資家がオフィス取得に動く可能性があるといえよう。

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3. 賃料上昇トレンドにおけるアップサイド

JLLの調査では2025年第1四半期の東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)におけるAグレードオフィス全体の平均賃料は前年同期比で実に5%近く上昇している。

また、BグレードオフィスはAグレードを上回る7.5%の上昇率になっており、賃料上昇トレンドはグレード問わず加速度的に進展している。

かかる状況下、現行賃料と市場賃料とのギャップが生じている物件が潜在的に多くあると考えられる。

こうした「賃料のアップサイド」が見込める物件に多くの投資家が関心を示しており、特に空室率が伝統的に極めて低水準で推移している東京都心5区では、バリューアッド投資が成立しづらい状況が続いている。賃料アップサイドが狙える物件であればバリューアッド系投資家も参入しやすく、その意味では投資のすそ野が広がっているといえよう。

画像提供:PIXTA

2025年のオフィス投資市場は昨年超えが予測される

オフィス投資においては2025年2月に取引が公表された「東京ガーデンテラス紀尾井町」も史上最高レベルの価格を記録するなど、2024年から引き続き大型物件への投資意欲は旺盛であり、そこに賃料アップサイドが取れるBグレードオフィスへの投資が増加してくれば、2025年のオフィス投資額は昨年を上回ってくることは容易に考えられよう。

かつて「投資の花形」とされてきたオフィスの復権は目前まできているといって過言ではない。

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連絡先 内藤 康二

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター

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