名古屋フレキシブル・オフィス市場の現状と今後
東京・大阪で急成長してきたフレキシブル・オフィス市場。その勢いは地方都市にも波及し、なかでも存在感が際立っているのが日本三大経済圏の一角、名古屋である。地元経済を支えるモノづくり企業がテレワークを併用した柔軟な働き方に舵を切ったことでフレキシブル・オフィスの需要が拡大。Aグレードオフィスへの出店攻勢を仕掛けている。
本稿は、成長著しい名古屋フレキシブル・オフィス市場の最新動向について解説しています。本稿執筆者であるJLL日本 リサーチ事業部 担当者による下記の解説動画も合わせてご覧ください。
目次
前年比19%増で東京・大阪を上回る
日本各地の都市においてハイブリッドワークが前例のないペースで普及するなか、名古屋のフレキシブル・オフィス市場が急速に進化している。
JLL日本 リサーチ事業部が実施した最近の調査によると、名古屋中心部におけるフレキシブル・オフィスの純賃貸可能面積は20,623㎡(表1)で、前年比19%増となった。前年比13%増の大阪中心部、前年比2%増の東京都心部と比較して増加率が高いことを示している(出所:JLLリサーチ「名古屋フレキシブル・オフィス市場の展望」、2025年4月)。
大きな期待を背に、フレキシブル・オフィス事業者は主要オフィス・ビジネス地区に大規模な拠点を次々と開設しており、2024年末時点で名古屋中心部におけるフレキシブル・オフィスはコロナ前の2倍以上に増加している。
2000年代初頭から名古屋中心部へ先行出店してきたリージャスやサーブコープなどのサービスオフィス事業者は継続的に拠点を増やしており、最新鋭のオフィスビル内には大規模なコワーキング施設も開業している。
表1 三大都市圏のフレキシブル・オフィス市場の比較(2024年第4四半期時点)
名古屋中心部 | 大阪中心部 | 東京都心5区 | |
---|---|---|---|
市場参入 | 2005年 | 2000年代半ば | 1990年代 |
拠点数 | 25 | 72 | 363 |
オペレーター(事業者)数 | 9 | 18 | 20 |
総貸床面積の過去5年間平均成長率 | 16% | 11% | 5% |
2024年の前年比成長率 | 19% | 13% | 2% |
1人当たり月額利用料(完全個室) | 58,000円~150,000円 | 60,000円~170,000円 | 80,000円~232,000円 |
トレンド | 事業者の名駅周辺への出店が顕著 | 新築Aグレードオフィスへの出店が目立つ | グローバル事業者が最も多く市場参入している |
2024年実質GDP成長率 | 0.2% | 0.4% | 0.8% |
GDP規模(兆円、2023年度) | 14.4(全国に占める割合は2.4%) | 20.9(同左3.5%) | 118.8(同左20%) |
就労人口(万人、2023年度) | 230 | 280 | 840 |
出所:JLL、オックスフォード・エコノミクス、内閣府、総務省 ※名古屋中心部は中区・東区・中村区・西区、大阪中心部は北区・中央区・浪速区・西区・淀川区、東京都心5区は千代田区・港区・中央区・渋谷区・新宿区