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【座談会】大阪・関西万博と共に盛り上がる大阪不動産投資市場

2025年4月13日-10月13日に開催される「大阪・関西万博」。待望の国際的なイベントがいよいよ間近に迫った。大阪府の客室稼働率は万博開催前の段階で全国最高の80%である(観光庁、2024年12月時点)。ホテルセクターはホテル市況の活況を受けて大阪不動産投資市場を牽引。この勢いは「民泊」物件への注目度を急速に高めている。

2025年 04月 09日

JLLの調査開始以来、2024年通年における大阪圏の不動産投資額は過去最大の1兆円を突破。この活況を牽引したのは急回復した訪日外国人客の宿泊需要増に沸くホテルセクターだ。本稿では「大阪・関西万博」の開催が目前に迫るなか、不動産投資市場に精通するJLLのスペシャリストによる座談会を実施。ホテル投資の新機軸としてJ-REITの投資実績も見られ始めた「民泊」をはじめ、大阪圏不動産投資市場の今後を紐解いた。

※座談会は2025年3月11日に実施。下記動画で座談会の模様を視聴可能。

座談会参加者:

JLL日本 関西支社


  • キャピタルマーケット事業部 シニアディレクター 小西 敦

  • ホテルズ&ホスピタリティ事業部 シニアヴァイスプレジデント 上西 久夫

  • リサーチディレクター 山口 武

JLL日本 東京本社


  • キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター 内藤 康二
2025年4月13日に大阪・関西万博が開幕
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内藤:大阪・関西万博の開催まで1カ月あまりとなりました。本日はJLL日本 関西支社で、不動産投資市場の最前線で活躍しているスペシャリストを招集し、大阪・関西万博と不動産投資市場について伺っていきたいと思います。
 

まずは本日の参加者を紹介します。JLL日本 関西支社 キャピタルマーケット事業部 シニアディレクターの小西 敦です。続いて、JLL日本 関西支社 リサーチディレクターの山口 武、そしてJLL日本 ホテルズ&ホスピタリティ事業部 シニアヴァイスプレジデント 上西 久夫です。
 

私は日ごろ東京オフィスに常駐しており、関西の方とは万博に対する“熱量”が違うかと思いますので、まずは万博の概要を教えてください。

JLL日本 関西支社 リサーチディレクター 山口 武

山口:開催期間は2025年4月13日-10月13日までの184日、半年間となります。開催場所の夢洲は大阪の最も西に位置し、大阪駅からの距離は12-13㎞。東京に置き換えると、東京駅からお台場までの距離感になります。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」という少し抽象的なテーマになるのですが、ライフサイエンスをはじめ、将来的に関西で強化していく産業の見本市になる非常に多くの展示物が各国のパビリオン等々で披露されることになります。

大阪・関西万博の開催概要:

期間:2025年4月13日-10月13日/184日


場所:大阪・夢洲


テーマ:「いのち輝く未来社会のデザイン」


参加予定国:165カ国


経済波及効果:約2.9兆円(経済産業省による)


想定来場者数:1日あたり15万人

内藤:地元・大阪に勤務される皆さんは万博の盛り上がりをどう捉えていますか?
 

小西:「メチャクチャ盛り上がっている」と言いたいのですが、そこまでの盛り上がりは感じないですね。大阪IRが同時開業できなかったことが影響しているように見受けられます。しかし、個人的には楽しみにしていまして、前売り券も買いました。
 

上西:私は業務で東京と大阪を行き来する機会が多くあります。大阪にいるとメディアでの露出が増えていると感じますし、新幹線で万博のステッカーを貼っている車両が最近増えており、徐々に雰囲気が醸成されているように感じます。

山口:リサーチという業務上、万博と近い距離で仕事をしている関係もあり、開催が近づくにつれ高揚し、非常に楽しみにしています。大阪では府民、市民向けに開催1週間前に会場運営を確認する「テストラン」の参加募集をしましたが、定員4万人に対して9倍となる35万人の応募がありました。一部報道では盛り上がりに欠けるといわれながらも、実は大阪の人々は高い関心を示しています。
 

万博と共に盛り上がりをみせる大阪不動産投資市場

大阪圏の不動産投資額は2024年に過去最多かつ初の1兆円超え(土地の取引、開発計画への投資などを除く) 出所:JLL日本

内藤:その万博が1カ月後に開催されるということで、大阪不動産市場との関係性などを考えていきたいと思います。JLLの調査では2024年の大阪圏での商業用不動産への投資額は過去最多となり、1兆円を超えました。日本はグローバルで最も不動産投資が活発な国と認識されていますが、その中でも大阪圏の活況が際立っています。こうした状況に万博は影響しているのでしょうか?
 

小西:全く影響がないとは言えませんが、半年程度の期間限定イベントである万博だけを理由に不動産投資する方は多くないと思います。
 

2025年は「民泊」物件に注目

JLL日本 関西支社 キャピタルマーケット事業部 シニアディレクター 小西 敦

内藤:元々、大阪は東京に次いで投資額が多い場所です。万博単体ではなく、ファンダメンタルズが良好であるため、大阪へ投資されるケースが多いというのが実情でしょうか。国内外の多種多様な投資家が参入し、投資先が多様化してきているように見受けられますが、どんなアセットクラスが取引されているのでしょうか?

小西:投資家の属性には特に変わりはないと思いますが、アセットタイプとしてはホテルへの投資が大幅に伸びています。ご質問への回答から逸れるかもしませんが、大阪ではここ1年ほど「民泊」が注目を浴びています。エリアや運営方法によっても変わりますが、一般的な賃貸マンションの利益と比較して、1.5-2倍程度の利益が見込めると言われていますので、既存の賃貸マンションを民泊に切り替える他、民泊運営を前提とした共同住宅の開発などが非常に増えています。ただ、コロナ収束後からの運営期間が短くデータが蓄積されていないことや、ホテルのような与信力のある運営会社が存在しないこと、金融機関の評価が賃貸住宅としての評価にしかならないなど、ホテルのように活発に取引される環境がまだ整っていません。こうした背景で不動産投資市場の中では取引量はまだ少ないのが現状です。しかし、昨年あたりから国内外の投資家…不動産ファンド、J-REITや私募REITなどからも民泊物件を取得したいという相談が増えており、実際にJ-REITが民泊運営物件を取得する事例も散見します。2025年はこうした取引がどんどん増えてくるのではないでしょうか。
 

2024年の新規大量供給を乗り越えたオフィス投資

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター 内藤 康二

内藤:大阪は民泊で盛り上がっているという話ですが、他のセクターはどうでしょう。例えば全体の投資額に占める割合で最も大きいオフィスはいかがですか?
 

小西:大阪のオフィスは根強い人気があります。
 

内藤:大阪ではAグレードオフィスの新規供給が増加しているにも関わらず、空室率が非常に低位に保たれていますが、この状況はしばらく続きそうですか?
 

山口:2024年は単年で見ると過去最多の新規供給量でした。これを受けて当初空室率は大きく上昇すると考えていたのですが、蓋を開けると空室率は4%台(2024年第4四半期末時点)と小幅な上昇にとどまりました。多くの投資家が大量供給に対する警戒感を強めていたのですが、完全に払しょくされたというのが最新の見方です。

内藤:低位で空室率が推移するということは賃料が上昇する可能性があるということでしょうか?
 

山口:上昇します。最新の予測では見直し、2023年に底を打ち、すでに上昇局面に転じているという見方をしております。
 

関西圏への面的拡大を背景にホテル投資が活性化

2024年の大阪圏不動産投資市場ではホテルが34%を占めた 出所:JLL日本

内藤:投資市場の中でホテルは非常にインパクトがある数字が出ているのですが、2024年通年における日本全体の投資額のうちホテルが占める割合は19%でした。この数値自体が過去最高なのですが、大阪圏におけるホテルの割合は34%と、全国と比べてもホテル投資が目立っていました。
 

上西:2024年におけるホテルの投資実績は日本で1兆円を超えました。これは日本初です。エリア別にみると東京で2,500億円、大阪で2,200億円、大阪が東京に追いついたとまではいかないまでも匹敵する投資額であったといえます。大阪でホテル投資額が大きかったのは大規模な取引が複数重なったことが大きく寄与しています。「ザ パーク フロント ホテル アット ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」、「OMO7大阪ホテル by 星野リゾート」、「セントレジスホテル大阪」といった大型案件が複数成約しました。投資家に「なぜ、大阪ですか?」と質問すると、万博やIRを理由に挙げる他、観光における関西圏への面的広がりを魅力的に捉えています。大阪に1週間も滞在すれば高野山や奈良、京都など、関西圏の主な観光地に容易にアクセスできます。
 

内藤:ロケーションの優位性を投資家が十分に評価しているようですね。2024年9月に街開きをした「グラングリーン大阪」には「canopy by Hilton」という新しいホテルブランドが開業しました。ラグジュアリーホテルの開業が相次いでいる印象を受けますが、この傾向は今後も続いていくものでしょうか?
 

上西:続いていくと見ています。新規のフィージビリティスタディなど、JLLへの問合せでもラグジュアリー系・アッパーアップスケール系の割合が増えています。
 

内藤:ラグジュアリー系はこれから投資機会が増えてくるかと思いますが、一方でミッドスケールやエコノミークラスも同時に注目を集めています。街を歩いているとインバウンドの方が目立ちます。彼ら全員がラグジュアリーホテルに宿泊するわけではないと思いますが、ビジネスホテルなどのミッドスケールやエコノミークラスのパフォーマンスはいかがですか?

上西:2024年はインバウンドが本格的に回復したことから、これらセグメントのホテルパフォーマンスは高稼働・高ADR、場合によっては販売可能な客室がないことも珍しくありません。大阪のミッドスケールやエコノミーホテルのパフォーマンスもコロナ前を上回っています。
 

短期的・中長期的に見た大阪市場の展望

JLL日本 関西支社 ホテルズ&ホスピタリティ事業部 シニアヴァイスプレジデント 上西 久夫

内藤:最後に、今後の大阪圏の不動産市場の展望について伺います。時間軸を2つに分けて、1つは万博が開催される2025年-2026年にかけて。もう1つは中長期的な展望です。まずは短期的な不動産市場の展望はいかがでしょうか?
 

小西:昨年からいわれているように、金利上昇と地政学的リスクはやはり気になりますが、短期的には2024年から変わらず好調に推移すると思います。その後は、2030年に予定される大阪IRの開業に向けて新規の不動産投資が必ず見込まれますので、中期的にも明るい材料がそろっているのではないでしょうか。
 

上西:万博が開催される2025年から来年にかけて、ホテルセクターではネガティブな事象を探すほうが難しく、引き続き堅調なマーケットが続くでしょう。中長期的な展望ではIRの開業も控えています。そして近隣の観光資源との面的な広がりが見込める大阪はリピーターを惹きつける優位性があり、観光地としてさらに発展していくでしょう。それに応じてホテル投資・開発ニーズはさらに旺盛になるのではないでしょうか。
 

山口:お二人の意見と相違ありません。ただ、2024年に投資額1兆円越えという凄まじいレコードを記録しましたが、非常に質の高い売り物件があって積み上がった数字でもあります。そういった意味では2025年は前年の反動から投資額が減少してしまうのは仕方がないことだと思います。ただし、投資家のマインドは国内外問わず変わらず、良質な物件が市場に出た場合は取得競争が激化する可能性が高いでしょう。
 

内藤:利回り的にも逆戻しになることはなさそうですね。
 

山口:利回りが上昇することは想定しにくいです。今後オフィス中心に賃料収入が拡大していく見通しが立っています。投資家がその拡大分を的確に織り込んで取得価格を反映させることができるかどうかが、投資機会の実現ための最大のポイントになるかと思います。
 

内藤:大阪の投資市場には非常に明るい未来が待っていることが理解できました。万博を経て、大阪がどのように進化していくのか、引き続き注目していきたいと思います。本日は万博開催直前ということで、3人のスペシャリストに話を伺いました。本日はどうもありがとうございました。
 

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※大阪圏…大阪府、兵庫県、京都府、奈良県

連絡先 山口 武

JLL日本 関西支社 リサーチディレクター

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