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リモートファーストのスタートアップ、MODEが選ぶ理想のオフィススペースの条件

IoT と AI を組み合わせてあらゆる作業現場での働き方に革新を起こすシリコンバレー発のスター トアップ企業 MODE, Inc. がオフィスの拡張移転を実施。家具などの内装造作付きで 急速に人気を高めているセットアップオフィスを選択した理由を聞いた。

2024年 11月 06日
スタートアップが拡張移転

IoT と AI を組み合わせることで、あらゆる作業現場の働き方に革新を起こすシリコンバレー発スタートアップの MODE, Inc.(以下、MODE)は 2024 年 8 月 13 日、東京・神田岩本町に 位置するオフィスビル「KANDA HIKOBAE」へ拡張移転を行った。賃借したのは 1-2 階、 計 69 坪。一部家具や会議室を備えた、いわゆるセットアップオフィスである。

「現場 DX」を支援する MODE の事業内容

MODE は 2014 年 7 月、Googleで日本人2人目のエンジニアとしてGoogleマップを開発した上田学が、シリコンバレーで設立したスタートアップ企業だ。日本進出は 2017 年、東京に日本支店を開設した。

現場のセンサーをIoTプラットフォームに接続し、様々なデータを収集・統合する「BizStack」を基幹サービスとして展開する他、生成AIを組み合わせ、現場の状況を即時確認できる「BizStack Assistant」を提供。建設工事や倉庫管理といった「現場」の DX 化を支援し人手不足を解決する。

爆発的に普及が進むビジネスシーンにおける生成 AI 活用だが、同社は「既存の生成 AI サービスはデスクワーカー向けが大半。リアルな現場に生成 AI と IoT を組み合わせたサービスを提供しているのは、世界を見回しても珍しい。多種多様な生成AI関連サービスが続々と登場している米国においても希少で先進的だ」と語る。

利用シーンは多岐にわたり、現場の状況をいち早く確認するために導入するケースが多い という。例えば、トンネル工事の導入事例では、排水ポンプの停止は、機器の水没を引き起こすリスクがあるため、これまでは現場職員が定期的にポンプの稼働状況を確認する必要があった。これに対して「BizStack」では、現場に設置されたIoTセンサーがポンプの稼働状況をモニタリングし、異常が発生した際に即座にアラートを発して担当者へ通知する。これにより、ポンプが停止した場合でも迅速に対応ができ、必要なときだけ現場に行くことで、点検作業の負担が軽減された​​。

加えて、「BizStack Assistant」は普段使っているチャットで現場の状況を確認する指示を出せば、生成AIが現場の状況を確認し迅速に回答する。例えば「現場の状況を動画・画像で知りたい」と 指示すれば、現場のカメラから動画や画像を提供し、さらに異常発生時には取得したデータや復旧手順などのナレッジを呼び出せるため、迅速な情報収集と初期対応が可能になる。

少子高齢化に伴う人手不足が深刻化する日本において、MODE が提供する「現場DX」サービスに対する注目度が高まっている。

セットアップオフィスに移転した背景

撮影:堀 哲平

初期投資を抑え、すぐに業務を開始できるセットアップオフィスを選択した

「米国ではオフィスに家具が備わっているケースが比較的多く、初期投資や業務開始までのリードタイムの短さを把握しており、今回の移転でもセットアップオフィスを選択した」

こう話すのは、オフィス移転を担当した MODE People Operations Director の小川 哲志氏だ。

同社が日本に進出してから、今回のオフィス移転は 3 回目となる。

1回目の移転は、コロナ前の 2019 年 4 月、業容拡大に伴い東京・汐留に位置するオフィスへの拡張移転(賃借面積 50 坪)だ。当時はリモートワークではなかったため、従業員が出社したくなるオフィスを目指した。シリコンバレーオフィスと常時接続した「MODE Window」という大きなモニターを設置するなど、設備を充実させた。

2回目の移転は、 2021 年 8 月。コロナ禍を受けてリモートワーク体制に本格的にシフトしたことに伴い、アフターコロナを見据えて時間や場所に囚われない多様で柔軟な働き方を実現するため、日本橋富沢町に位置するスタートアップ向けのシェアオフィスに移転した。

3回目の移転となる今回は、事業拡大と大幅な人員増に対応するための拡張移転となる。小川氏によると、2024 年の新規採用者数は 20 名、日本支店に在籍する従業員数 42 名の約半数に及ぶ。※ 2024年10月時点

従業員が増えてもリモートワークで通常業務に支障はないが、想像を超えるスピードでの成長により、急増する従業員が出社時にも快適に働ける空間を整える必要があった。さらに、MODEではIoTで利用するセンサーなどのデバイスを検証する必要があるため、オフィスに多くの機材が設置されることが多かった。

そのため、MODE ではリモートワークのメリットを残しながら、イベントやデバイス管理が柔軟に実現できる「場(オフィス)」の整備を目指したという。

セットアップオフィスへの入居を決めた理由

オフィス移転を担当した MODE People Operations Director の小 川 哲志氏

移転先の選定条件は次の 3 点を重視したという。

1. 前オフィスから離れていない立地(日本橋・神田エリア)

2. 交通の便

3. セットアップオフィス

立地/交通の便の良さ

前オフィスが立地していた日本橋エリアが有する立地特性を高く評価した。加えて、新オフィスではお客様などとの打ち合わせをしたいという希望や、海外出張が多いという背景もあり、空港や新幹線発着駅へのアクセスが容易な点を高く評価。それでいて、都心でありながら値ごろな賃料水準であったため、日本橋・神田界隈で候補物件を探した。

セットアップオフィス

セットアップオフィスを選択した理由について、小川氏は「初期投資を抑えるため」と説明する。

「内装造作工事が必要な一般的な賃貸オフィスビルの場合は一時的に大きくキャッシュアウトし、当社のようなスタートアップ企業には大きな負担になる。セットアップオフィスは賃料水準が競合物件に比べて多少割高だが、毎月賃料としてコストを負担するほうが事業を行う上で都合がいい」(小川氏)

加えて、高騰する内装工事コストを抑制することができ、移転から間もなく業務を開始できる点も高く評価している。

小川氏は「当社のようなスタートアップ企業はいかに早く事業を成長させるかが重要。今後事業が拡大していくなか、短期間でオフィスを拡張していくことも視野に入る」とし、オフィスの内装に多額の投資を行わないで済むセットアップオフィスは魅力的な選択肢との認識を示す。

「KANDA HIKOBAE」を選定した理由

内覧した際に特に印象に残ったのは室内の明るさ。この規模のオフィスビルで 3 面採光は珍しく、2 階でありながら圧倒的な開放感が気に入っている

移転候補物件は「2 桁以上内覧した」(小川氏)といい、最終的に入居を決めたのは神田岩本町に位置する「KANDA HIKOBAE」だ。

建物規模は地上 8 階、基準階面積 49.47 坪。1990 年竣工ながら、2024 年 5 月には什器・ 設備を備えたセットアップオフィスとしてフルリノベーションが行われた。

屋上にはテナント専用のルーフトップテラスを備える他、トイレへの人感センサー、全館 LEDなど環境に配慮しており、国内グリーンビルディング認証の「CASBEE 不動産評価認証」の最高ランクである「Sランク」を取得している。

小川氏によると「実際にオフィスに頻繁に出社するであろう営業担当を中心に、希望する全社員に内覧してもらい、 当該ビルに入居を決めた」という。

MODE が賃借したのはフルセットアップ仕様の 1-2 階。天井板を抜いたスケルトン天井とし、天高は 3,000 ㎜超と開放感がある。執務エリアの窓側にはPC作業などに集中できる席を配置し、外を眺めながら仕事ができる他、カウンター付きのラウンジエリア、独立タイプの会議室(2 室)、フォンブース(1 室)なども充実している。

1階は集中して仕事をする際のコワーキングスペースや社内外向けのイベントスペースとして活用する一方、2階はコミュニケーションや共同作業など、コラボレーションを重視した執務エリアとして機能している。

内覧した際に特に印象に残ったのは室内の明るさ。この規模のオフィスビルで 3 面採光は珍しく、2階でありながら圧倒的な開放感が気に入っている」(小川氏)

一般的な賃貸物件に比べて初期投資を抑えられるセットアップオフィスは、早期の事業成長を目指すスタートアップにとって最適なオフィス戦略の 1 つといえそうだ。

「現場DX」を推進する MODE がオフィス移転をきっかけにどのように飛躍していくのか、 今後に注目していきたい。

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