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モバイルワークとは?メリット・デメリットや導入時のポイントを解説

柔軟な働き方の1つに数えられるモバイルワーク。オフィス外のさまざまな場所で働くことのメリットとデメリット、類似する「リモートワーク」や「テレワーク」との違い、導入成功のポイントなどを解説する。自社にモバイルワークが適しているかどうかの判断にも活用してほしい。

2025年 05月 08日
モバイルワークとは?

モバイルワークとは、社員がオフィス外のさまざまな場所でモバイルデバイスやインターネットを活用して業務を遂行する柔軟な働き方を指す。

テレワークリモートワーク、在宅勤務といった他の働き方と似ているが、モバイルワークは特に場所にとらわれず、カフェやコワーキングスペースなど、業務内容や個人の都合に合わせて最適な場所を選択できるのに対し、テレワークやリモートワークは自宅や特定のリモートオフィスでの勤務を指すことが多い。​

近年では、ABW(Activity-Based Working)ハイブリッドワークといった新しい働き方も登場している。

ちなみに、ABWとは業務内容や目的に応じて最適な場所や環境を選択し効率的に働くことをいい、​ハイブリッドワークはオフィス勤務とリモートワークを組み合わせた働き方で、いずれも近年注目を集めている。

モバイルワークをはじめとした働く場所を自由に選べるスタイルには近年多くの選択肢があるが、モバイルワークは中でもフットワークが軽く自由度が高い

モバイルワークの導入メリット

モバイルワークの導入は、企業と社員双方に以下のような多くのメリットをもたらす。

業務効率化と生産性の向上

移動時間や隙間時間を有効活用できるのがモバイルワークのメリットだ。営業職が顧客との約束までの空き時間に別件の資料を作成するなど業務効率化に寄与する。

また、出張先のホテルや個室タイプのサテライトオフィスなど、本社オフィスでの周囲の雑音や話しかけられることのない静かな環境は、集中が必要な業務における生産性向上につながるだろう。

ワークライフバランスの実現

モバイルワークは社員のワークライフバランス実現に貢献する。通勤時間が減り柔軟な働き方が可能になり、育児や介護と仕事の両立・趣味や自己啓発などに時間を使えるようになれば、さまざまな立場に置かれた社員の満足度やモチベーション向上が期待できる。

人材採用と雇用の長期維持

今日では、新卒・転職を問わず多様な働き方を求める人材にとって、モバイルワークをはじめとする柔軟な働き方ができるかどうかは企業選びの重要な要素となっている。人材獲得で有利になるだけでなく、既存社員の定着率の向上にも寄与する。

コスト削減

モバイルワークの導入によりオフィスコストの削減も期待できる。全社員が毎日出社する必要がなくなるため、オフィス床の縮小や光熱費の削減が可能となるほか、通勤交通費も削減できる。

BCP(災害時等の事業継続)対策

地震や台風などの自然災害・パンデミックなど不測の事態が発生しオフィスに出社できない状況になった場合も、モバイルワークを導入済みであれば、自宅や安全な他エリアのオフィスで業務を継続できるため、事業への影響を最小限に抑えることができる。

モバイルワークのデメリットや注意点

モバイルワークには多くのメリットがある一方で、導入にあたってはデメリットや注意点もいくつか存在する。

セキュリティリスク

モバイルワークは社外で業務を行うため、ノートパソコンやスマートフォンの紛失・盗難、公共のWi-Fi利用時の不正アクセス、会話を聞かれるなど情報漏洩のリスクが高くなりがちだ。

こういったリスクを未然に防ぐには、VPN接続の義務化、セキュリティソフトの導入、デバイスのパスワード設定強化、公共Wi-Fi利用時の注意喚起などの対策が欠かせない。

勤怠管理の難しさ

モバイルワーク中は管理者から直接社員の働く様子が見えないため、実際に何時間働いているのか、適切に休憩を取っているのかなどが把握しにくく、勤怠管理が難しい。

導入にあたっては、勤怠管理システムの導入や信頼関係の構築、自己申告時のルール設定といった対策を徹底しよう。

業務品質低下の可能性

モバイルワークが必ずしも業務品質の低下を招くとは限らないが、環境や状況によっては業務効率や成果物の品質に影響が出る可能性もある。

例えば、小学校が夏休み中に入り自宅での作業が難しい、出張先でオンライン会議に参加する予定だったのに通信環境が不安定でスムーズに進まないといった問題が起こりうる。

コミュニケーション不足

オフィス出社がほとんどなく、モバイルワーク中心に働く社員にとっては、社員同士が直接顔を合わせる機会が減るため、コミュニケーション不足に陥りやすい。

チームでの連携が必要な業務においては特に意識的なコミュニケーションが必要となるため、チャットツールやウェブ会議システムなどを活用し、積極的なコミュニケーションを促すとよい。定期的にオフィスでのミーティングを実施するなど、対面でのコミュニケーションの機会を設けることも有効である。

モバイルワークをはじめとする社外で働くスタイルで起こりがちなデメリットは、事前に予測してそれぞれ対策を立てておくことで回避できる

モバイルワークが向いているかどうかの判断ポイント

モバイルワークのメリットは理解していても、果たして自社に合っているのか判断できず、導入を迷っている企業もあるかもしれない。導入の検討に際しては、以下のようなポイントをふまえた総合的な判断が重要だ。

業種業態と部署ごとの特性

顧客と直接対面する機会が多い店舗を中心とした接客業や、高度なセキュリティが求められる金融業などでは、モバイルワークの導入が難しい場合がある。

一方、IT関連企業やコンサルティング業・クリエイティブ系企業など、パソコンとインターネット環境があれば業務が遂行できる業種ではモバイルワークとの親和性が高い。同じ企業内でも、営業部門や企画部門はモバイルワークに適しているが、製造部門や経理部門は難しいというケースもあるため、部署ごとに検討するのも一案だ。

社員のニーズや意向

モバイルワークの恩恵を十分に受けるためには、当事者である社員のニーズや意向を把握することが不可欠だ。アンケートやヒアリングを実施し、社員がモバイルワークに対してどのような期待や不安を抱いているのかを理解する。

モバイルワークを希望する社員が多い場合は導入を積極的に検討する価値があるが、モバイルワークに不安や抵抗を感じる社員が多い場合は、いったん立ち止まり、原因や解決方法を考えた上で段階的な導入を検討する必要がある。

経営戦略との整合性

モバイルワークの導入は、企業の経営戦略と整合性が取れている場合には非常に効果的だが、マッチしない場合は慎重になる必要がある。

例えば、販売エリア拡大や海外での新規顧客開拓を目指す企業であれば、モバイルワークを導入することで、営業活動の促進やより広範な地域での採用が可能になる。またコスト削減が最優先課題という局面の企業であれば、オフィススペースの縮小や通勤交通費の削減にモバイルワークが大きく貢献する。

一方で、対面の社内コミュニケーションや組織文化の醸成を重視する企業では、モバイルワークの全面的な導入は逆効果となる可能性もあるだろう。

モバイルワーク以外にも、会社ごとの経営戦略に最適な働き方やオフィススタイルの選択肢は数多い。自社に最適なものを選ぶには、豊富な知識と経験を持つ専門家の支援を受けるのも有効だ。

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モバイルワークの導入ステップ

モバイルワークを導入する際には、以下の手順で行うと失敗せず進めることができる。

  • 現状分析と課題の洗い出し

  • 導入計画の策定

  • 社内トレーニングの実施

  • 導入後の評価と改善

現状分析は、社員の働き方、業務プロセス、IT環境など多角的に行い、各部署や業務のどこで課題があるのか、モバイルワーク導入で達成したい目標はなにかを明確にする。

それに基づいて、対象部署・社員、導入スケジュール、必要なリソース(ツール、制度、予算など)を盛り込んだ計画を策定しよう。

モバイルワークの導入タイミングに合わせ、情報セキュリティ対策、コミュニケーションツールの活用方法、労務管理ルールの整備など、社員がモバイルワークを円滑かつ安全に行うためのトレーニングも実施する。

導入後には事前に挙げた課題や目標がどの程度クリアできているかを定期的に測定・評価する。運用やルールの改善を繰り返していくことで、モバイルワーク導入効果を最大化できるだろう。


モバイルワーク導入の成功ポイント

モバイルワークを導入する際には、次のようなポイントを押さえておこう。

セキュリティ対策の徹底

モバイルワークにおいて、最も重要なポイントの1つがセキュリティ対策だ。

基本的な対策(VPN接続、セキュリティソフト導入、強固なパスワード設定、多要素認証など)に加え、モバイルデバイス管理(MDM)の導入も検討したい。MDMは、会社支給のデバイスだけでなく、個人所有のデバイス(BYOD)を業務利用する際にも有効で、リモートでのロックやデータ消去などが可能になる。

さらに、セキュリティポリシーを明確に定め定期的な見直しと社員への周知・教育を徹底することが、組織全体のセキュリティレベル向上につながる。

社内インフラの整備

モバイルワークを円滑に進めるためには、社内インフラの整備が欠かせない。

社外から社内システムへ安全にアクセスできる環境の構築や、必要なソフトウェアやツールの導入、高速なインターネット回線、大容量のファイル共有システム、ウェブ会議システムなど、場所を選ばずに業務ができる環境を整える必要がある。また、社員が利用するデバイスの標準化や、技術的なサポート体制の整備、クラウドサービスの活用も有効だ。

労務管理プロセスの見直し

社員の働く様子が直接見えないモバイルワークは従来の労務管理プロセスでは対応できない場合がある。勤怠管理システムの導入、労働時間管理ルールの見直し、成果に基づいた評価制度の導入など、モバイルワークに適した労務管理プロセス構築を検討しよう。

ペーパーレスの推進

モバイルワークを導入する際は、ペーパーレス化を同時に推進することが不可欠だ。

これまでオフィスに出社しなければ見られなかった紙の書類を電子化すれば、場所を選ばずに情報にアクセスできるようになり、業務効率が向上する。副次的な効果として印刷コストや保管スペースの削減にもつながる。

コミュニケーションツールを活用

モバイルワークでは、社員同士のコミュニケーション不足が課題となりやすい。チャットツール、ウェブ会議システム、社内SNSなど、様々なコミュニケーションツールを活用し、積極的にコミュニケーションを取るように促すことが重要である。ツールを選定する際は、自社の業務内容や社員のニーズに合ったものを選ぼう。

モバイルワークの導入やオフィス戦略の支援はJLLへ

モバイルワークは、企業の生産性や社員満足度を向上させる一方で、セキュリティや労務管理などの課題も伴う。導入には、自社の状況を多角的に分析し段階的に進めることが重要である。

近年、モバイルワーク以外にも多様な働き方やオフィスタイプが登場している。JLLは、これらの最新トレンドに精通し、豊富な実績と専門知識を活かして、企業ごとの最適な働き方とオフィス環境構築をトータルで提案・サポートする。モバイルワークの導入を検討している企業は、ぜひJLLへ相談いただきたい。

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