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グループアドレスとは?メリットと導入方法を解説

グループアドレスはオフィスの座席スタイルの1つで、近年の働き方の多様化に伴う「オフィスの効率的な活用」と「コミュニケーションの両立」という課題を解決する施策として導入する企業も少なくない。フリーアドレスとの違いや導入メリット、導入時のポイントなどを解説する。

2024年 12月 19日
グループアドレスとは?

グループアドレスとは、部署やプロジェクトチームごとに指定されたエリア内で従業員が自由に席を選んで働くオフィス形態である。

個人の資料や私物は専用のロッカーに保管し、必要に応じて持ち運ぶ形となる。

ハイブリッドワークの浸透でオフィス面積の縮小が進むなか、グループアドレスやフリーアドレスは従来の固定席制に代わる選択肢として注目を集めており、スペースの効率的な活用と部署内のコミュニケーション活性化を両立できる座席スタイルだといえる。 

フリーアドレスとグループアドレスの違い

グループアドレスと似た言葉に「フリーアドレス」があり、基本的な導入メリットは共通点が非常に多い。一方、両者の最大の違いは座席選択の範囲だ。フリーアドレスではオフィス全体で自由に席を選べるのに対し、グループアドレスは部署やチームごとに指定されたエリア内で席を選ぶ形式となる。フリーアドレスに「指定エリアを設ける」という運用が「グループアドレス」ともいえるだろう。加えて、一定期間ごとに各チームが利用する座席エリアを入れ替え、部署・チームの垣根を超えたコミュニケーション活性化を図るケースもみられる。

また、グループアドレスには、部署の特性に応じて「エリアを固定して席だけ自由に選ぶタイプ」と「部署単位でエリアごと移動できるタイプ」があり、オフィスの状況にあわせた選択が可能だ。

移動が部署内に限定されることにより、チーム内のコミュニケーションを維持しながらも、席の固定化による弊害を防げるのがグループアドレスの強みだといえる。

フリーアドレスでは課題となりがちな「プロジェクトの進捗管理」、「情報共有の遅れ」、「新入社員の育成」などの問題も座席エリアを限定することで解決できる。既存のオフィススタイルに近い形態であるため、従業員も受け入れやすい。

グループアドレスは固定席制と完全フリーアドレスの利点を持ち合わせたオフィス形態として注目されている

グループアドレスを導入するメリット

グループアドレスは通常のオフィス形態と比較して数多くのメリットがあり、前述した通りフリーアドレスの導入メリットと共通点が多い。おもなメリットは以下の7つだ。

オフィススペースの効率化

フリーアドレスと同様に、固定席に比べて大幅なスペース効率の向上が実現でき、賃料・光熱費の削減、オフィス家具や什器の導入コスト削減などの効果が期待できる。

特に外回りや出張・リモートワークが多い企業や部署では、全員分のデスクを常時確保する必要がないため、オフィス面積の最適化が進めやすいだろう。

ペーパーレス化やDXの促進

デスクまわりに個人の書類を保管できなくなるため、必然的にペーパーレス化が推進される。個人用ロッカーの設置スペースにも限りがあるため、必要な書類のみ印刷するようになり、資料保管スペースの効率化、情報セキュリティの強化にもつながる。

部署内の連帯感・コミュニケーションの向上

完全なフリーアドレスとは異なり、グループアドレスでは同部署・チームの従業員がまとまって働くため、業務面の相談がしやすい。チームメンバーが揃った場所でのコミュニケーションは情報共有の遅れを防ぎ、急な打ち合わせなども即座に行える。互いの状況が把握しやすいことから、トラブル発生時の迅速な対応など、相互にフォローしやすくなる。

また、同じエリアで働くことでチームとしての一体感が生まれやすい。メンバー同士で助け合える環境が自然と形成され、モチベーションの向上にもつながる。個々の業務に集中しながらも、チームワークを維持できる環境が実現できる。

人材育成のしやすさ

新入社員が先輩社員の近くで業務を行えるため、効率的かつ丁寧な指導・教育が可能となる。新入社員はすぐに質問でき、上司も適切にサポートできる。また、日常的な業務の進め方を間近で学べることで、早期の戦力化と離職率の低下も期待できる。

効率的なチームマネジメントの実現

フリーアドレスに比べて管理職が部下の勤怠状況や業務の進捗を把握しやすく、適切なマネジメントが可能となる。また、業務量の偏りも察知しやすく、タスクを適切に配分できる。情報共有にタイムラグが生じにくいため、プロジェクト管理の効率も向上する。

導入のハードルが低い

固定席との親和性が高く、急激な環境変化を避けられる。固定席からフリーアドレスへの完全移行に不安を感じる従業員にも受け入れられやすく、部署単位での段階的な導入も可能だ。試験的な運用から始められる点も導入しやすい。

レイアウトや運用が柔軟

部署の特性や業務内容に応じて、柔軟な運用ルールの設定が可能。外出の多い営業部門はより自由度の高い運用とし、デスクワークの多いコーポレート部門は固定席に近い形にするなど、最適な運用形態を選択できる。また、キャスター付きの家具を採用することで、プロジェクトや組織変更に応じた迅速なレイアウト変更も可能となる。

グループアドレスの導入効果などを含め専門家に相談する
 

グループアドレスの注意点

グループアドレスを導入する際は、業務内容や部署の特性によって、グループアドレスの効果が大きく異なる点に注意が必要だ。具体的には、チームワークや直接的なコミュニケーションを重視する部署では効果を上げたものの、個人作業が中心の部署や特殊な機器を使用する部署では業務効率が悪化する可能性もある。

各部署の業務特性を踏まえ、事前のヒアリングを十分に行うことや、試験導入でシミュレーションしてからルールを決定するなど慎重かつ柔軟な運用が求められる。

グループアドレスを成功させるポイント

効果的な導入と運用のために、以下の3つの重要なポイントを押さえる必要がある。事前の準備から運用後の工夫まで、段階的に実施していこう。

導入の目的とメリットを浸透させる

実施にあたっては、全従業員に導入目的とメリットを明確に伝えることが不可欠だ。コスト削減や生産性向上といった企業側の目的に加え、業務効率化や質問のしやすさなど、従業員個人のメリットも具体的に説明するとより理解が得られやすい。説明会の開催やマニュアルの配布・動画配信など複数の手段で周知を図り、アンケートやヒアリングで収集した従業員の声も参考にしたい。

ツールを活用し、ペーパーレス化を進める

ペーパーレス化を推進するためにグループアドレスを導入するケースも少なくない。グループアドレス席では紙の資料を席に置きっぱなしにしておくわけにはいかず、出退社の度に片付けなければならない。この手間を解消するため、グループアドレスの導入に合わせて、文書管理システムの導入やクラウドツールを活用することで情報共有を効率化する。また、文具などの共有物品の管理方法を整備し、個人の所有物を最小限に抑える工夫も重要だ。

グループアドレスの導入について専門家に相談する

グループアドレス導入の目的を各自が理解して進めることで効果を最大化できる

グループアドレスの導入ステップ

グループアドレスの導入手順は大きく分けて4つのステップで進める。

【STEP1】導入準備・検討

グループアドレス導入の第一段階では、まず自社の業務形態や企業文化との親和性を慎重に評価する必要がある。導入すべきと判断できれば、経営戦略やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)との整合性を確認しながら、具体的な導入目的を明確化する。また従業員へのアンケートにより現場のニーズや懸念事項を把握し、スムーズに導入できるよう準備を整えていこう。

【STEP2】計画立案

導入対象となる部署を業務特性や効果予測に基づいて選定し、必要な座席数を出社率や業務形態から算出する。それらを踏まえて具体的な予算配分とスケジュールを設定し、各部門から適切な人材を選出してプロジェクトチームを組成する。チーム内で役割分担を明確にしておくと進行がスムーズだ。

【STEP3】環境整備

効率的な業務遂行を可能にするオフィスレイアウトを設計し、必要な什器や設備を選定する。同時に、ペーパーレス化に向けたITインフラの整備を進め、クラウドツールや文書管理システムを導入する。また、個人の所有物を収納するためのロッカーや共有物品の保管スペースを確保しスムーズな運用環境を整えることも必要だ。

【STEP4】運用準備・開始

具体的な利用ルールを策定し、マニュアルを作成して説明会を実施することで全従業員への周知を図る。導入は段階的に進める。まずパイロット部署での試験運用を行い、その結果を検証する。効果測定と課題抽出を定期的に行い、PDCAサイクルを回しながら継続的な改善を進めていこう。
 

自社に最適なオフィス形態のご相談はJLLへ

グループアドレスの導入は、全フロアのフリーアドレス化と比較すると導入しやすく、オフィススペースの効率化を図りつつ部署内コミュニケーションの活性化も期待できる有効な手段です。

しかし、業種や部署によって効果には違いが見られます。グループアドレスの効果を最大限に引き出すためには、経験豊富な専門家に相談し、最適なオフィス戦略やツール導入などのサポートを受けるのが成功するためのコツです。

JLLは、豊富な導入実績とグローバルな知見を活かし、現状分析からレイアウト設計、運用ルールの策定まで、プロフェッショナルの視点でトータルに企業のオフィス運用を支援します。

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