東京Aグレードオフィス市場のリーシング状況 – 新規大量供給も堅調に推移
新規大量供給期の2023年と2025年の狭間に位置する2024年。東京Aグレードオフィス市場は賃料が上昇に転じるなど、コロナ禍による市況悪化からの復活を実感する1年となった。一方、2025年も供給量は多いものの、竣工前に大口床が内定するなど、リーシング状況は引き続き堅調に推移していきそうだ。
供給増加もリーシングは好調
JLL日本 リサーチ事業部の調査によると、2024年第3四半期時点の東京Aグレードオフィスの総賃貸面積は約129,800㎡で、前期比56%増、前年同期比3%増となった(図1)。
図1:東京Aグレードオフィスの新規賃貸面積(既存ビルの成約面積、予約契約面積) 出所:JLL日本 リサーチ事業部
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供給量が増えたにもかかわらず、リーシング状況は総じて堅調だ。同じく2024年第3四半期末時点の空室率は3.1%、賃料水準も月額坪当たり34,610円と前年同期比で3.1%増を記録した。2024年に入り賃料は上昇に転じている。
背景にあるのは旺盛なオフィス需要だ。より多くの企業が特に若手のオフィスワーカーに対して完全出社を求めている他、事業拡大や人材不足によって新規採用が活況を呈しており、オフィスの増床を必要としている企業が増加。経済成長が続き、企業収益も過去最高水準を記録しており、オフィスの稼働率を下支えしている。
関連レポート「東京オフィスマーケットダイナミクス 2024年第3四半期」はこちら
品川の大規模開発、竣工前に大口床が内定
オフィス需要を牽引する業種をみると情報サービス業、製造業、金融・保険業、金属・鉱業などのオフィス移転が活発化しており、新規供給物件も竣工前に大口床が内定するケースも散見される。
代表例は品川エリアにおいて2025年3月に街開きが予定される大規模再開発プロジェクト「TAKANAWA GATEWAY CITY」だ。主要オフィス「THE LINKPILLAR I North棟」では竣工1年前に90,000㎡以上のオフィス床において賃貸借契約が締結された。JLLがリーシング状況の調査を開始して以来、最大級の取引が竣工前に行われたのである。
大量供給の25-26年もオフィス市場は堅調に推移
2024年第3四半期には、新規供給床に対する内定率が上昇したが、2025年の東京Aグレードオフィスの新規供給は500,000㎡を超え、2026年にはさらに480,000㎡の供給が予想される。2年連続で「新規大量供給」に見舞われるが、オフィス市況が再びする下降局面を迎えるとは考えにくい。
投資機会
新規供給物件で内定が進み、かつ既存オフィスの大半で空室が限られているため、総体的にリーシング活動は好調を維持するものと考えられるためだ。
2025年における日本経済の実質GDPは2024年通年の-0.2%から+1.2%の増加が見込まれている※。マクロ経済が好調であり、人材採用競争の激化も予想される。オフィス回帰によって床需要が一段と喚起されるなど、東京都心部のオフィス賃貸市場は今後も堅調に推移するだろう。
※ 出所:オックスフォード・エコノミクス
【執筆者:JLL日本 リサーチ事業部 アシスタントマネージャー 中丸 友世】
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