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コロケーションとは?データセンターが提供する他のサービスとの違い、メリット・デメリットなどをまとめて解説

データセンターの提供するコロケーションサービスの導入を検討している企業や、データセンターの選定に迷っている企業に向けて、コロケーションの概要とメリットやデメリット、データセンターの種類と特徴、選定時のポイントなどを解説する。

2024年 10月 24日
そもそもコロケーションという単語の定義は?

コロケーションとは「共に置く」という意味のラテン語に由来する英語で、二つ以上の単語が慣用的に結びつき、自然な響きを持つ組み合わせのことを指す。日本語では「連語」とも呼ばれ、特定の単語が他の特定の単語と共に使われることで、独特の意味や用法を持つ表現を形成する。

例えば、英語でよく使われるコロケーションに「Ring a bell(聞き覚えがある)」があるが、もし「Ring」を「Sound」や「Chime」に、「Bell」を「Alarm」や「Gong」に置き換えると元の慣用句の意味が失われてしまう。つまりコロケーションは特定の単語の組み合わせによってのみ成り立つ表現だといえる。

不動産におけるコロケーションとは?

一方、不動産業界における「コロケーション」とは、サーバーやネットワーク機器の設置場所提供サービスを表す。これは、データセンターなどの施設が、複数の顧客のサーバーやネットワーク機器を預かり、管理・保守するサービスである。

データセンターが提供するコロケーション

データセンターは提供するサービスや運営形態の違いによって、いくつかの種類に分けられる。その中で「コロケーション」とはどのようなものなのだろうか。

コロケーションの特徴
 

コロケーションは、企業のサーバーや通信機器をデータセンター内の専用スペースに設置・運用するサービスである。おもな特徴は次の通りだ。

  • 専用スペースの提供:企業は割り当てられた専用スペースに自社のIT機器を設置できる。

  • 共有インフラの利用:電力供給、空調設備、セキュリティシステムなどのインフラを他の利用者と共有する。

  • 高度なセキュリティ:物理的セキュリティ(入退室管理、監視カメラなど)とサイバーセキュリティの両面で保護される。

コロケーションのメリット

コロケーションには、コスト優位性や災害時のBCP対策など、さまざまな利用メリットがあり、企業はコロケーションを利用することでデータセンターを自社開発・運用するよりも効率的かつ安全に自社のIT環境を最適化でき、本業に集中できる

コロケーションには以下のようなメリットがある。

  • 災害リスクの軽減

  • セキュリティの向上

  • コスト削減

  • パフォーマンスの向上

コロケーションは免震構造などを採用し耐震性が高く、防火防水設備も完備している。また自家発電装置により安定して電力を供給、BCP(事業継続計画)対策にも寄与する。

セキュリティ面では、高度なネットワークセキュリティツールの導入と専門知識を持つスタッフによる24時間体制の監視と対応が行われる。施設自体は共用型であるものの自社専用スペースを確保でき、監視カメラや入退管理システム、生体認証などの多層的な物理セキュリティも提供される。

データセンターの設備を利用することで、企業は自社内のサーバー設置スペースの確保や、データセンターと同等のインフラを整備する必要がなくなるため、スペース確保や設備導入など初期費用の削減が期待できる。また、サーバー専用の空調機も不要となり、電気代などのコストも効率化される。

データセンターのコロケーションサービス利用により、災害リスク軽減・セキュリティ向上・コスト削減・パフォーマンスの向上などの数多いメリットが期待できる

コロケーションのデメリット


コロケーションには以下のようなデメリットも存在する。

  • ハウジングよりもコストが増加する可能性

  • カスタマイズの制限

  • サービス依存性

コロケーションと同じくデータセンター内のスペースを賃貸するハウジングのほうが利用規模が相対的に小さく(ラック単位など)、費用が抑えられるケースがあり、オプションを多く契約することで月額費用が高額になる場合もあるため、総合的なコストを精査する必要がある。

また、施設のルールや制約により自由度が制限され、自社のニーズに完全に合致しないケースも考えられる。データセンター事業者のサービス品質や経営状況や方針変更が自社プロダクトの機能やパフォーマンスに影響するリスクも考慮するべきだろう。導入にあたっては、こういったデメリットも想定し、自社のニーズと照らし合わせて検討する必要がある。

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データセンターのコロケーションはどのような企業に向いているのか

コロケーションは、大規模なサーバー群や特殊な機器を運用する企業に適している。具体的には、汎用機やGPUサーバー、スーパーコンピューター、水冷サーバーなどを使用する企業が対象となる。また、ラック間の特殊な通信ケーブル接続や、専用通信ノードの運用が必要な場合にも適している。

さらに、厳格なセキュリティが求められるシステム群を持つ企業や、専用の運用サービスを必要とする企業にもコロケーションは適している。事業拡大やデータ量増加に即応できる柔軟性があり、電源管理や温度管理などをデータセンター側に任せることで、自社のITチームは他の重要業務に集中できる。ただし、保守作業は一般的に自社または個別に契約した協力会社が行う必要がある。

データセンターの種類

データセンターにはコロケーション以外にもいくつかの種類と分類方法があるが、おもに次のような名称で分類されることが多い。

  • ハウジング

  • ホスティング

  • エンタープライズ(オンプレミス)

それぞれの特徴は以下のとおりだ。

ハウジング

ハウジングは、一般的に顧客が所有するサーバーや通信機器を設置するための専用ラックを提供するサービスを指す。利用者は自社のサーバーを継続して使用できるが、機器の運用や保守は基本的に自社で行う必要がある。ラック、ネットワーク回線、電源などをレンタルし、物理的な不具合にも自社で対応する。導入コストは比較的高いが、セキュリティや運用の自由度が高く、特殊なサーバー構成を必要とする企業に適している。

ホスティング

ホスティングは、一般的にデータセンター事業者が所有するサーバーを利用者にレンタルするサービスである。利用者は自社でサーバーを用意する必要がなく、導入コストを抑えられる利点がある。サーバーの運用保守は事業者が行うため、利用者の負担は少ない。ただし、利用可能なOSが限定される場合があり、トラブル発生時は事業者の対応を待つ必要がある。IT運用にリソースを割けない企業向けとされる。

エンタープライズ(オンプレミス)

エンタープライズ(オンプレミス)は、利用者(企業)自らが設置・運用する自社専用のデータセンターである。管理・運営時の権限が自社にあり、高度なカスタマイズが可能だが、初期投資と運用コストの負担が重いとされる。セキュリティやコンプライアンス要件が厳格化された業界や、大規模なデータ処理能力が求められる企業向けといえる。ただし、災害対策やスケーラビリティ(拡張性)の面で課題があり、近年はクラウドやハイブリッド環境への移行が進んでいる。

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データセンターと比較されるクラウド(サービス)とは

クラウドサービスは、インターネットを通じてコンピューティングリソースを提供するモデルである。サーバー・ストレージ・データベース・ネットワーキング・ソフトウェアなどを必要に応じて利用できる。従量課金制で初期投資を抑えられ、スケーラビリティが高い。IaaS/PaaS/SaaSなど様々な形態があり、企業のニーズに応じて選択できる。ハードウェア管理の負担が軽減され、迅速なサービス展開が可能だが、データの所在やセキュリティ面での懸念もある。データセンターとの主な違いは、データセンターが物理的なスペースや施設を指す一方で、クラウドはサービスの概念を指すことだ。データセンター内のサーバーを利用して、インターネット経由で仮想的にサービスを提供する形態がクラウドである。そのため、クラウドではサービスの提供者側がハードウェア機器を用意することになる。

最適なデータセンターを選ぶ7つのチェックポイント

自社に最適なデータセンターやサービスを選ぶ際に留意するべき主なポイントとして、以下の7つの項目が挙げられる。

  1. コスト

  2. 災害対策(地震・火災・洪水)

  3. セキュリティやバックアップ

  4. 回線・通信の品質

  5. 提供サービス

  6. 将来的な拡張性

  7. 立地

コストの観点からは「初期費用+運用費用+将来の拡張コスト」を総合的に評価し、予算と必要機能のバランスを取ることが重要だ。災害対策としては、地震・火災・洪水などへの耐性を確認し、自社のリスク許容度に合致しているか検討する。セキュリティ面では、物理的な入退室管理やデータの暗号化、バックアップ体制などを精査する必要がある。

通信インフラの品質も重要な要素であるため、ネットワークの冗長性や帯域幅・レイテンシなどが、自社のシステム要件を満たしているかを確認しておこう。MSP(マネージドサービスプロバイダー)のサービス内容や運用サポート体制、SLA(サービスレベルアグリーメント)の内容も詳細に検討する必要がある。

将来的な事業成長に伴うシステム拡張に対応できるかどうか、日常的な管理やトラブル時の対応のしやすさとリスク分散の観点からバランスの取れた立地かどうかも含め、総合的に評価したうえで、自社のニーズと優先順位に合致したデータセンターを選定することが長期的な成功につながる。

データセンターの市場展望

データセンター市場は、AIの普及やデジタルトランスフォーメーションの進展により急速に成長している。特に日本はアジア太平洋地域屈指のデータセンター市場であり、投資家の関心が高まりキャップレートが低下傾向(東京)にある。

一方で、AI・機械学習の進歩によりデータセンターの設計や立地選択にも変化が生じている。高性能コンピューティングの需要増加に伴い、電力密度の上昇が予測されるが、同時に電力キャパシティの確保やサステナビリティの実現が課題となっている。今後も技術革新と需要拡大が続く中、市場の成長が期待される。

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日本のデータセンターは売上ベースで米国に次ぐ第2位の市場規模

データセンターのコロケーションを利用する際のQ&A
コロケーションを利用する主なメリットは何ですか?
 

コロケーションの主なメリットは、高度なセキュリティと安定した運用環境が得られることです。災害対策や電力の安定供給・専門スタッフによる24時間監視など、自社で整備するより高品質な環境を低コストで利用できます。

コロケーションを選ぶ際のポイントは何ですか?


比較検討時にみるべきポイントは、立地・セキュリティ・災害対策・電源の冗長性・ネットワークの品質・拡張性・コストなどです。自社のニーズに合わせて総合的に評価しましょう。またSLAの内容や運用サポート体制も確認し、長期的な信頼関係を築けるプロバイダーを選ぶことをおすすめします。

コロケーションとハウジングの違いは何ですか?


コロケーションハウジングは、どちらもデータセンター内の専用スペースを提供するサービスですが、主な違いは規模と自由度です。コロケーションはより大規模なスペースを提供し、利用者の自由度が高い傾向があります。一方、ハウジングはラック単位といった比較的小規模で、個別の事業者の利用が多くみられます。ただし近年は両者の区別は曖昧になりつつあります。
 

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JLLでは、引き続き旺盛な需要と成長を見せるデータセンター市場において、戦略の立案から最適なデータセンターの選定、運用のアドバイスなどさまざまなソリューションを提供し、企業のデータセンター活用を後押ししています。また、2024年6月には、日本においてデータセンター専門のアドバイザリーチームを設立いたしました。

データセンターの技術革新を支える複雑な要件に対する幅広い知識を必要としている方への情報提供や、日本のような政府による規制が厳しい市場に参入する際に現地の専門家によるアドバイスを必要としている方のニーズに答えるためのサービス体制の強化を目的としています。

自社に最適なデータセンターの選択やコロケーションの利用についてお悩み・ご相談がありましたら、ぜひJLLまでお問合せ下さい。

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