オフィスにリフレッシュルームを設置する方法やポイントを紹介
働き方改革や健康経営の観点から、従業員の心身の健康維持とパフォーマンス向上に寄与するリフレッシュルームが注目を浴びている。本稿では、リフレッシュルームの定義や従来の休憩スペースとの違い、設置による具体的なメリット、効果的な導入方法について解説する。
リフレッシュルームとは?休憩スペースとの違い
「リフレッシュルーム」の定義や目的、一般的な休憩室との違いが分かりにくく、導入イメージが浮かばないケースもあるだろう。以下に、それぞれの目的や位置付けから見た違いを解説する。
設置目的の違い
一般的な休憩スペースは短時間の休息で疲れを癒やすことが主目的となる。
一方、リフレッシュルームは休憩のみならず、気軽な雑談やインフォーマルなミーティング・軽い運動・サークル活動など、より多様な用途に活用できる。こういった多目的な利用を通じて従業員の創造性を刺激し、部門を超えたコミュニケーションを活性化する役割も担っている。
福利厚生上の位置付けの違い
休憩スペースは労働基準法で定められた休憩時間に対応するためのインフラとして設置されることが多い。
対してリフレッシュルームは従業員の心身の健康や働きがいを積極的に支援する福利厚生施設の側面もある。充実したリフレッシュルーム環境は、従業員満足度の向上につながるだけでなく、人材採用時のアピールポイントにもなりうる。
リフレッシュルームのメリット
シンプルな休憩室・休憩スペースとは異なり、リフレッシュルームを設置することにはさまざまなメリットがある。
働きやすさや生産性の向上
集中して働いた後に、カフェのように快適でスタイリッシュな空間で休憩できれば素早くオン・オフを切り替えられるだろう。同じ15分の休憩だったとしても、オフィスの一角にソファなどが置かれただけの休憩スペースと比較して大きなリフレッシュ効果をもたらし、休憩後の業務効率や生産性の向上が期待できる。
リラックスした環境での気軽なミーティングや作業も可能となり、より働きやすい職場作りに役立つだろう。
コミュニケーションの活性化
メインオフィスへ出社せず働くリモートワークや、リモートと出社を組み合わせたハイブリッドワークが普及する中、オフィスでのリアルなコミュニケーションの重要性が高まっている。
リフレッシュルームに集まった人々の間で偶発的な交流が促進され、普段の執務室では生まれにくい自然な会話や情報交換の機会を創出する。チームワークの向上や業務の円滑化も期待できるだろう。
創造性の向上
リラックスした環境で気分転換すると、業務中には思いつかないような斬新なアイデアが生まれやすくなるといわれる。通常のデスクワークとは異なる環境で作業を行うことで発想の転換が促されたり、クリエイティブな思考が活性化されたりもする。他部署とのコミュニケーションから、偶発的なアイデアが生まれることもある。
離職率の低下と採用への効果
リフレッシュルームをはじめ、充実した職場環境は従業員のエンゲージメントを向上させ、離職率の抑制にも寄与する。
近年は就職活動においてもオフィス環境を重視する傾向が強まっており、魅力的なリフレッシュルームの存在は優秀な人材を惹きつける要素の1つになるだろう。
従業員のウェルネス向上
心身のリフレッシュを促進し、ストレス軽減に貢献する職場環境は従業員のウェルネス向上をもたらし、いきいきと働くことにつながる。ウェルネスに配慮したオフィス運営は健康経営の面においても重要で、企業のブランディングのみならず、取引先や投資家への訴求効果、各種認定によるインセンティブなど、従業員にも企業にも健康経営のメリットは大きい。
オフィススペースの有効活用
リフレッシュルームの設置にあたってオフィスレイアウトを戦略的に見直すことは、オフィススペースの効率的な運用を実現するための絶好の機会となる。フリーアドレス化やペーパーレス化で生まれた余剰スペースをリフレッシュルームにすることで企業のブランディングにも貢献できる。
リフレッシュルームは従業員のウェルネスや生産性向上とオフィスの空間有効活用の両面でメリットが得られる
リフレッシュルームの具体的な設備と利用方法
リフレッシュルームはさまざまな目的に活用できるようにしたい。具体的には以下のような設備を整えることで、よりストレス軽減や生産性向上などの効果が期待できる。
カフェ
コーヒーメーカーやウォーターサーバーを備え、ゆったりと座れるソファやハイカウンターを設置することで、リラックスした雰囲気の中で休憩や簡単なミーティングが可能な空間を実現できる。木材を活用した温かみのある内装や落ち着いた照明によりくつろぎの空間を演出する。
ラウンジ・リビング
ソファやテーブル、1人掛けチェアなどを適度に配置し、快適に作業ができる空間として設計する。デスクの並ぶ執務室とは異なる雰囲気でリラックスしながら業務に取り組めるほか、オープンな環境で自由なコミュニケーションを促進する場としても機能する。
仮眠スペース
疲れが溜まったときに、短時間の仮眠はその後の集中力や生産性を大きく向上させる。個室や仕切られたスペースにリクライニングチェアや仮眠用の簡易ベッドを設置し、アイマスクやブランケットなども用意して短時間の休息を取れる環境を整えるとよい。
運動スペース
ストレッチや軽いトレーニングのできるギアを設置することで、デスクワークによる身体の疲れを和らげることができる。卓球台などの軽い運動ができる設備は心身のリフレッシュや社内コミュニケーションの活性化にもつながる。
ユニークな設備
多くの企業が上記の他にもユニークなリフレッシュルームを導入している。書籍や雑誌を自由に閲覧できる図書コーナー、ボードゲームなどのレクリエーション設備は、より多様な気分転換の機会を提供する。日替わりでスナックを用意するなど従業員の満足度向上につながる工夫を取り入れる企業も増えている。
JLL東京オフィスでは、統合移転を機にマッサージルームを設置した。予約制で1回35分のボディメンテナンスを受けられるマッサージルームは、稼働率99%の「予約の取れない繁盛店」として人気を集め、従業員へのアンケートでは満足度も向上し、ウェルビーイングに大きく寄与している。
リフレッシュルーム導入を成功させるコツ
自社にリフレッシュルームを導入する際には、以下のような点に留意するとより大きな効果を上げられるだろう。
目的を明確にする
導入・設計前に、リフレッシュルームのおもな用途を明確にすることが重要だ。多目的とはいえ「リラックスする場」、「インフォーマルな作業スペース」、「コミュニケーションの活性化を図る」など、メインの目的によって必要な設備や最適なレイアウトが異なってくる。
事前に社員へのヒアリングやアンケートを実施し、ニーズを把握した上で計画を立てることで、より効果的な空間を実現できるだろう。
動線に合わせて設置する
リフレッシュルームは、オフィスのエントランス付近や中央部など人の行き来が多い場所への設置が推奨される。利便性の高い場所に設けることで利用頻度が上がり効果を最大限に引き出せる。
逆にオフィスの奥まった場所や執務スペースから遠い位置に設置すると、認知度が下がり行くのが面倒になるなど利用率が低下する可能性がある。
執務スペースと雰囲気を変える
執務スペースとは異なる雰囲気づくりがオン・オフの切り替えを促す。照明や内装・家具の選定を執務室と意図的に変え、視覚的な変化をつけることで、より効果的なリフレッシュが可能になる。また、アロマやBGMなども活用し、五感に訴えかける環境づくりを検討するのも良いだろう。
コミュニケーションを促すレイアウトにする
自然な交流を促すためには、オープンな空間設計が有効だ。大型のテーブルやカウンター席の設置、適度な距離感を保てる家具の配置など、コミュニケーションが生まれやすいレイアウトを心がける。また、ドリンクサーバーやお菓子などを用意することでも自然な交流のきっかけを作ることができる。
従業員のニーズを把握し、立ち寄りやすい場所に目的に合ったリフレッシュルームを設置しよう
リフレッシュルームの導入事例
GMOあおぞらネット銀行
インターネット銀行事業を展開するGMOあおぞらネット銀行は、2019年12月「渋谷フクラス」に新オフィスを開設した。
「銀行というセキュリティ面の担保が必要な業態であることから、サードプレイスを設けることが難しく、従業員へはオフィスならではの価値提供を常に意識している」と、不足するIT人材の獲得のためオフィス環境の整備にも力を入れている。
新オフィスではコミュニケーションやコラボレーションを生み出せる環境づくりに主眼を置き、クッションソファー、ローテーブル、ハンモックで構成されたリフレッシュエリアを設けた。また業務時間外にも利用できる卓球台にもなるテーブルを設置した多目的エリアや、個室型からファミレス席まであるミーティングエリアのほか、ドリンクやお菓子の購入ができるスナックエリアなど多彩なリフレッシュエリアを提供している。
Tech Fun
IT企業のTech Funは2021年に本社オフィスを新規開設した。自由にレイアウトを組める「フリーアドレスを超えたフリースペース」と定義し、オフィスに出社した従業員に向けてプレミアム感を体感してもらうことを目指した。
従業員のエンゲージメント向上を念頭に、社内にセルフカフェルームを整備。従業員は無料で使用でき、休憩や仮眠、場所を変えての作業などさまざまに活用しているという。大型モニターも設置し、ミーティングや打ち合わせ・レクリエーションなど多目的スペースとしても機能している。
JLL東京オフィス
総合不動産サービスのJLLは2022年11月に東京本社、および12月に関西支社を移転し、新オフィスを開設した。
“Future of Work”を具現化したABW(Activity Based Working)を実践する上質な体験型ワークプレイスは、2023年度のグッドデザイン賞も受賞している。
東京オフィスには、伝統的な日本家屋から着想を得た「茶室」や、陽光の差し込む木のスペースでくつろげる「縁側」など、大阪オフィスでは大型のモニターを備えミーティング・作業など多目的に利用できる「ワークカフェ」などがリフレッシュルームとして活用されている。
オフィスデザインのご相談はJLLへ
個性的で充実したリフレッシュルームは、従業員一人ひとりが健康で生産性高く働けるために大きな役割を果たします。
導入にあたり「どのような形が自社に最適なのか」、「従業員のニーズは分かったものの、実際のオフィスデザインに落とし込めるか自信がない」といった場合には、オフィス戦略立案から設計・施工まで幅広い実績を持つJLLにぜひご相談下さい。