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【事例付き】オフィスリニューアルのメリットや注意点

近年、オフィスの在り方は大きく変化している。従業員の働き方の多様化と効率的な空間活用が求められる中、オフィスリニューアルへの関心も高まりつつある。一般的なリニューアル施策や進め方、成功のポイントを解説する。

2025年 01月 06日
オフィスリニューアルとは?

オフィスリニューアルとは既存のオフィス空間をより機能的で働きやすい環境へとアップデートすることである。広辞苑(第7版)によると、リニューアルは「もとのものに手を入れて新しくすること」と定義されており、単なる内装の改修にとどまらず、従業員の働き方や企業文化を反映した空間づくりを目指している。ここでの改修は、既存の機能や価値を高める部分的なものから、より包括的なものにまで及ぶことがある。

一方、よく似た言葉の「リノベーション」では、用途変更を含む抜本的な改修を指し、建物自体が新しい機能を果たすほどの改修を目指している。

リノベーションが、建物自体の価値向上を重視するのに対し、「リニューアル」は従業員の快適性や業務効率の向上に重きを置いているといえるだろう。
 

オフィス移転とリニューアルの違い

現在のオフィスをよりニーズに合った使いやすいオフィスに変更したいという場合、おもに以下の2つから選択することになる。

  • オフィスリニューアル:既存オフィスの改装・レイアウト変更を行う

  • オフィス移転:別の場所に移転し、新たにオフィスを構築する
     

両者の違いは「場所を移転するのかどうか」という点にあり、具体的にはコスト・業務への影響・床面積や立地の選択肢の有無などが挙げられる。

リニューアルではコストを抑えられ通勤環境も維持できるが、既存の床面積や設備による制約を受ける。一方、移転は費用負担が大きいものの、立地や物件を変更でき、抜本的な執務環境を改善できる他、企業イメージの刷新を行いたい場合などに適している。

オフィス移転が必要な場合の戦略や成功ポイントに関しては、以下の記事を参照していただきたい。

これからのオフィス移転で必要となる戦略とは?

オフィスリニューアルの目的とメリット

オフィスリニューアルには、企業にとっても従業員にとっても多数のメリットが存在する。具体的には以下のような点だ。自社が理想・目的とするオフィス像を実現できるかどうかを検討すべきだろう。

従業員の満足度やモチベーション向上
 

快適で魅力的なオフィス環境は従業員の満足度を高め、仕事へのモチベーションを向上させる。

デスクワークの効率を考慮した設計、オフィス休憩スペースの設置など、オフィスをリニューアルすることによって、特に従業員が感じていた解決できた場合には、会社に対する帰属意識の向上が期待できる。優秀な人材の定着にもつながり、企業の持続的な成長を支える基盤となる。

企業のブランド向上
 

エントランスや来客スペースなど、対外的なオフィス機能をリニューアルすることで企業イメージが大きく向上する。コーポレートカラーや企業理念を反映したオフィスデザインが「その企業らしさ」を発信し、取引先や就職活動中の学生の印象にも残りやすく、ビジネスチャンス獲得や採用活動にも効果的だ。

業務効率の改善
 

動線を意識したレイアウトや、業務内容に応じた機能的なスペース配置により、従業員の作業効率が向上する。ウェブ会議用の防音ブースや集中作業のための個室など、多様な働き方に対応した空間設計は、業務の質と生産性を高める。また作業効率が上がることで残業の抑制も期待できる。

ランニングコストの削減
 

高効率なLED照明や空調設備に更新することでエネルギー消費量を削減できる。また、フリーアドレスなどを導入することでオフィススペースを最適化すれば賃料や維持費の削減も可能。環境負荷の軽減とコスト削減を両立できる。

社内コミュニケーションの向上
 

オフィスのリニューアルの際に、フリーアドレス制や、働く場所や時間を自由に選択できるワークスタイル「ABW」の導入、オープンなミーティングスペースを設置することなどにより、部署間の交流が活性化する。

廊下や休憩スペースでの立ち話など自然なコミュニケーションが生まれやすい環境づくりは、新しいアイデアの創出や問題解決につながり、組織の創造性と革新性を高める効果がある。

効果的なオフィスリニューアルは、企業にも従業員にも多くのメリットをもたらす

オフィスリニューアルの進め方

オフィスリニューアルは、現在入居中のオフィスの契約を継続しながら進める必要があるため、事業に影響を与えないよう、以下のステップを参考に計画的に進めたい。

計画立案
 

計画立案はプロジェクトの土台となる重要な項目だ。現状の課題を従業員へのヒアリングやアンケートで把握し、目指すべきオフィス像を明確化する。予算規模の設定・業者選定・見積もり比較を経て発注へと進む。この時点でリニューアルの目的や効果を具体的な数値目標として設定しておくことで、成果の検証が可能となる。

設計
 

定めた方針に基づき、具体的な空間デザインを策定する。従業員の動線や業務効率を考慮したレイアウト・コミュニケーションを促進する共有スペース・必要な設備の配置など細部にわたる検討が必要だ。建築基準法などの法的要件も確認しておく。

施工
 

設計図面に基づき、実際の工事を行う。通常業務への影響を最小限に抑えるため、休日工事の活用や工程の細分化など綿密な施工計画が必要となる。什器や機器の移設、必要に応じた引っ越し作業も含めスムーズな移行のための段取りを整える。

運用
 

新しいオフィスの活用方法や各種設備の使い方について、マニュアルを整備し社内への周知を徹底する。運用開始後は、定期的に利用状況を確認し必要に応じて改善を加える。従業員の満足度調査や業務効率の検証を通じて、リニューアル効果の測定を行う。
 

オフィスリニューアルの注意点

オフィスリニューアルを成功させるには、事前の確認や準備が欠かせない。ここでは4つの重要な注意点を解説する。

入居先への確認や許可を取る
 

賃貸物件では管理会社やオーナーへ事前確認する。原状回復の範囲と条件を明確にし、レイアウト変更や設備改修の可否を確認する。退去時の負担を考慮し、撤去や新設は慎重に判断すべきである。また、工事前の申請や完了後の検査など必要な事務手続きは漏れなく手配・実施しよう。

規制や法律・条例を確認する
 

施工にともなうトラブルを避けるには、建築基準法・消防法・労働安全衛生法などの関連法規に準拠した計画が不可欠である。通路幅の確保や避難経路の確保、防火区画の維持など、安全性に関わる基準を設計施工業者とともに再確認しておこう。特に間仕切りの設置や用途変更を行う場合は届出が必要なケースが多いため、法的要件を事前に調べてリスト化しておく。

業務継続に支障が出ないようにする
 

工事による騒音や振動・断水などが業務に与える影響を最小限に抑えられるような計画を立てよう。休日や夜間工事の活用・工程の細分化・一時的な移転など状況に合わせた対策を講じる。

また、新しい設備への移行に伴う業務の中断リスクも考慮し、必要に応じて段階的な導入も検討するべきだ。

社内への周知や浸透を心がける
 

リニューアルの目的や期待される効果、工事スケジュール、一時的な制約事項など、従業員に対する説明が不足していると、業務に混乱をきたしたり、反発を招いたりするおそれがある。特に新しいレイアウトや設備の使用方法については、マニュアルの整備や説明会の実施など丁寧な周知活動を行い、従業員からの意見も積極的に取り入れよう。

オフィスリニューアルの注意点を専門家に相談する
 

オフィスリニューアルの成功ポイント

リニューアルを成功させ、快適なオフィス空間を実現するための6つのポイントを解説する。

目的を明確にする
 

オフィスのリニューアルに取り組む際には、はじめにリニューアルの目的と達成したい効果を具体的に定めることが欠かせない。現状の課題を洗い出し「コミュニケーションの活性化」、「業務効率の向上」など、目標と優先順位をはっきりさせる。目的が曖昧だと方向性がぶれ、投資に見合った効果が得られない可能性がある。

実績のある業者に依頼する
 

設計や施工で失敗しないために、オフィスリニューアルの実績が豊富な業者に協力してもらうべきだろう。法的要件の理解や効率的な工事計画から適切なコスト管理まで、専門知識を持った複数の業者から見積もりを取り、実績や提案内容を十分に比較検討しよう。

企業のオリジナリティを出す
 

機能性を損なわない範囲で、企業カラーやブランドイメージを空間に反映させるとブランディングに効果的だ。特にエントランスや来客スペースにコーポレートカラーや企業ロゴを取り入れると印象的で、従業員の帰属意識向上にもつながる。

費用対効果を意識する
 

予算内で最大の効果を得られるよう、施策に優先順位をつけて実施しよう。IT導入補助金働き方改革推進支援助成金など、活用可能な補助金・助成金を事前に確認する。中古家具の活用やサブスクリプションサービスの利用もコスト抑制の有効な選択肢となる。

短期利用できるオフィスを活用する
 

大規模なリニューアル時には、工事期間中の業務継続性を確保しつつ、コストを抑制できるレンタルオフィスやシェアオフィスの活用も検討すべきだろう。1カ月単位での契約が可能で、敷金礼金が不要な施設も多い。

メンテナンスを行う
 

リニューアル後の定期的なメンテナンスと効果検証も忘れてはならない。利用状況のモニタリングや従業員の満足度調査を実施し、必要に応じて改善を加える。設備の不具合は早期発見・対応し、より快適に運用できるよう環境を整えよう。

目的意識を明確にし、専門知識を持った業者と協力して進めることがオフィスリニューアルを成功へと導く

オフィスリニューアルの成功事例

オフィスリニューアルが働き方改善や企業ブランディングに寄与した成功事例を紹介する。

資生堂 グローバル本社オフィスリニューアル事例
 

グローバルにビジネス展開する化粧品会社の資生堂は、2017年から2021年にかけてグローバル本社オフィスのリニューアルを実施した。

2層ごとの吹き抜けを活かし、下層階にブランド部門、上層階にコーポレート部門を配置。ABW型オフィスの導入や、オンライン配信スタジオ、クリエイティブ工房、新価値創造フロアなどを設置し、オンライン発信が売上向上に大きく貢献したほか、在宅とオフィスのハイブリッドワークへの移行がスムーズに進んだ。

全従業員がブランドビジネスを実感できる環境を整備した結果、従業員アンケートでは96%が創造性を喚起するオフィス環境が実現できたと評価している。

これらの成果が評価され、2021年度の日経ニューオフィス賞を受賞。R&Dセンターや資生堂ジャパン本社オフィス「SJ-STATIONに続く3年連続の受賞となった。

アサヒグループホールディングス リニューアル事例

飲料・食品メーカー大手のアサヒグループホールディングスは、グループ間のシナジーを発揮する新たな働き方の実現に向けて、2022年2月に吾妻橋本社オフィスの全面改修を完了させた。従業員が、業務遂行に「最適」な環境で、「最大限」の能力を発揮できるように、リモートワークとオフィスワークを組み合わせた「ワーク&ライフイノベーション」を実現を目指した。

都内5拠点に分散していたグループ会社11社を吾妻橋本社オフィスへ統合集約するべく、リニューアル工事を行い、会議室、応接室、プレゼンテーションルーム、そして各グループ会社の執務室を対象に、グループ一体となって企業価値の向上、お客様満足度の向上を目指すという同社の新たな働き方を体現することに成功した。

慣れ親しんでいた既存のオフィスの変革には、当初はかなり慎重な意見が多かったが、リニューアル後に実施された社内アンケートでは、全体的にポジティブな意見が多かったという。
 

JLL 東京・大阪オフィス移転リニューアル事例

不動産総合サービスを提供するJLLでは、多様な働き方へのニーズを受け、自社の提唱する理念「Future of Work(働き方の未来)」=FoWを具現化するワークプレイスとして、東京および大阪オフィスを統合移転しリニューアルを図った。

JLLのオフィスでは、従業員のウェルビーイング向上のため、ウェルネスに関する各種設備を備えた空間(マザールーム、エイドルーム、ヨガ教室など多目的に活用できる部屋など)を設置したほか、日本の伝統文化や漆喰など和の素材を取り入れ、「おもてなし」の空間である茶室や縁側から着想を得た空間を設け、自社のコンセプトを表現している。

東京本社はLEED認証プラチナとWELL認証のプラチナ取得 、関西支社はLEED認証のゴールド及びWELL認証のプラチナ取得など、可視化されたデータを活用しながら長期的な視点でワークプレイスを進化させ続けている。

オフィスリニューアルに関するQ&A
オフィスをリニューアルする理由は何ですか?

リニューアルの理由や目的は企業により異なるが、働き方の多様化や業務効率の向上、従業員の働きやすさや満足度向上、コミュニケーションの活性化、企業ブランド力の強化、ランニングコストの削減などをおもな理由とする企業が多い。

オフィスレイアウト変更とは何ですか? 

既存のオフィス空間の間取りや設備配置を見直し、より効率的で快適な環境を実現する施策である。デスクの配置変更から会議室やフリースペースの新設、パーテーションの設置まで、規模や目的に応じて柔軟な対応が可能だ。大規模な工事を伴わないため、比較的短期間かつ低コストで実施できる点もメリットといえる。
 

オフィスリニューアルをサポートするJLLのサービス

JLLでは、オフィスリニューアルにかかわるすべての段階で、豊富な知識と設計・施工経験に基づいた支援を行っています。

グローバルな経験を持つコンサルタントによる課題の発見から戦略立案、AIなどの最新テクノロジーを駆使したオフィスデザイン・設計、プロジェクト管理、リニューアル前後の運用サポートまで、オフィスリニューアル・移転に関する様々なご相談・ご要望に対応します。

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