クリエイティブオフィス導入で高まる社員の創造性と生産性
働き方改革を契機に、社員の創造性と生産性を最大限に引き出す「クリエイティブオフィス」が注目されている。本稿では、クリエイティブオフィスの本質を理解し、自社に最適なオフィス環境を構築するための具体的な方法を解説する。
クリエイティブオフィスとは?
はじめに、クリエイティブオフィスの基本的な定義と従来のオフィスとの違い、そして創造性を高めるための理論的背景であるSECIモデルについて解説する。
クリエイティブオフィスの定義と一般的なオフィスとの違い
「クリエイティブ」と聞くと、アーティストやクリエイターが多く所属するようなスタイリッシュなオフィスを思い浮かべるかもしれない。
しかし、クリエイティブオフィスとは単にオシャレでデザイン性の高いオフィスを指すのではなく、社員の知的生産性や創造性を最大限に引き出すことを目的とし、コミュニケーションの活性化、多様な働き方への対応、ウェルビーイングの向上などを実現する執務環境のことを指す。
上記の目的を実現するため、従来の固定席やパーティションで区切られた画一的なレイアウトのオフィスとは異なり、目的に応じたゾーニングやリラックスできる空間、集中できるスペースなどが設けられている。また、ICTツールなどのテクノロジーも積極的に活用し、社員が自由な発想を生み出しやすい環境を構築している点が大きな特徴だ。
経済産業省が2007年から推進している「12の知識創造行動」に基づいたクリエイティブオフィス推進運動も、このようなオフィス環境の整備を後押ししている。
クリエイティブオフィスは単なる見た目やデザインではなく、総合的に社員の創造性を高められるようなオフィスを指す
クリエイティブオフィスとSESIモデル
クリエイティブオフィスは、組織的な知識創造のプロセスを説明する「SECIモデル」を体現する場としても捉えられる。
SECIモデルとは、下の4つのフェーズを循環することで、個人の知識が組織全体の知識へと転換・共有され、新たな知識が創造されるという理論だ。
●共同化(Socialization)
●表出化(Externalization)
●結合化(Combination)
●内面化(Internalization)
クリエイティブオフィスでは、偶発的な出会いを促すオープンスペースや議論を活性化させる会議室、個人のアイデアを深める集中ブースなど、各フェーズに対応した空間設計がなされている。
こうした環境の中では、社員が個別に抱えている知識の共有(共同化)からアイデアの言語化・共有(表出化)、新たな知識の体系化(結合化)、そして実践を通じた知識の習得(内面化)という循環が促進され、組織全体の創造性向上が期待できる。
クリエイティブオフィスの導入メリット
クリエイティブオフィスの導入は企業に多くのメリットをもたらす。特にイノベーションを重視する企業、部署間の連携を強化したい企業、社員エンゲージメントを高めたい企業にとってその効果は大きい。
創造性の向上
クリエイティブオフィスの中心的な目的の1つが、社員の創造性を高める環境を整備することだ。
フリーアドレス制やオープンスペースの導入により、部署間の垣根を越えた交流が可能となり、新たな視点やアイデアが生まれやすくなる。また、リフレッシュルームやカフェテリアの設置は、リラックスした雰囲気の中での自由な発想を促進する。
これらの要素の組み合わせにより、社員はより創造的な思考を持ち、革新的なアイデアの創出が期待できる。
コミュニケーションの活性化
社員同士のコミュニケーションを活性化する設計がクリエイティブオフィスの特徴だ。オープンな空間や共有スペースを整備することで偶発的な会話や情報共有が促進される。また、プロジェクトルームやミーティングスペースの充実はチーム間の連携を強化し、組織全体の協力体制を築くのに役立つ。
業務効率の改善
クリエイティブオフィスの導入は、業務効率の向上にも寄与する。
オフィス内の視認性が高まることで社員同士の状況把握が容易になり、適切なタイミングでサポートやアドバイスが可能となる。またICTツールやフリーアドレス制を導入することで情報共有や資料管理が効率化される。これらの相乗効果によって業務全体のスピードと質が向上し、生産性の高い組織運営が実現できる。
社員のモチベーション向上
日々、自身の能力を最大限に発揮できると感じられるようなオフィス環境は離職率の低下や企業イメージの向上にも貢献し、優秀な人材の獲得・維持にも有利に働く。
クリエイティブオフィスの導入ステップ
クリエイティブオフィスの導入を検討している企業がぜひ知っておきたい、具体的な導入ステップについて解説する。
現状の分析と課題の特定
まずは現行のオフィス環境や業務フローを詳細に分析し、改善すべき課題を明確にする。分析の手段としては社員へのアンケート・ヒアリングを通じて働きやすさやコミュニケーションの状況を把握する。
同時に、各部署の業務フローやコミュニケーションパターンを詳細に調査し、ボトルネックや非効率な制度的欠点などを洗い出す。これらの情報をもとに、具体的な課題を特定し、オフィス改革の方向性を明確にする。
コンセプト設計とプランニング
現状分析と課題特定の結果を踏まえ、自社のビジョンやミッション・経営戦略と整合性のとれたオフィスコンセプトを策定する。
「どのような働き方を実現したいか」、「どのような価値を社員に提供したいか」などを明確にし、具体的な空間イメージや機能要件に落とし込む。
創造性を高めるという視点からゾーニング・レイアウト・デザイン・ICTツールの選定など具体的なプランニングを行っていくが、社内に知見が不足している場合は専門家のアドバイスを受けるのも有効だ。
オフィスコンセプトの策定について、豊富な実績を持つJLLに相談する
設計・施工・プロジェクト管理
コンセプトとプランニングに基づいて具体的な設計図を作成し、施工業者を選定する。専門家(デザイナー、設計士、コンサルタントなど)の意見を取り入れ、多角的な視点から最適なプランを検討することが重要だ。現場ではプロジェクトの進捗管理・品質管理・コスト管理を徹底し、計画通りにオフィス構築を進めよう。
運用開始と効果の測定
オフィスの完成・運用開始から定期的に効果測定し、社員へのアンケートやヒアリングを通じてオフィス環境の満足度や業務効率の変化などを確認・分析する。
同時に、オフィス改革の目的であるコミュニケーションの変化や新たなアイデアの創出状況なども定量・定性的に評価することが欠かせない。測定結果をもとに必要に応じて改善策を実施し、継続的にオフィス環境を最適化していく。
クリエイティブオフィスのデザインのポイント
クリエイティブオフィスの導入を自社に最適な形で実現させるには、以下のポイントを押さえてプランニングや設計デザインを行うとよい。
社員の多様な働き方に対応する
固定席だけでなく、フリーアドレスやABW(Activity Based Working)など、社員がその日の業務内容や勤務時間、気分に合わせて自由に働く場所を選べる環境を整備する。リモートワークも想定し、どこにいてもスムーズに業務ができるようなICT環境を整えることも重要である。
目的に応じたゾーニングを行う
集中して作業するための個人ブース、リラックスしてアイデアを出し合うためのラウンジ、活発な議論を行うための会議室など、目的に応じて最適な環境を選択できるゾーニングを行う。それぞれの空間の役割を明確にし、メリハリのある空間構成にすることが重要である。
コミュニケーションが向上する仕掛けを作る
オープンなコミュニケーションスペースやカフェスペースを設け、偶発的な出会いや会話が生まれるような仕掛けを作る。部署間の垣根を越えた交流を促進することで、新たなアイデアの創出や、組織の一体感の醸成につながる。
自然光や緑を取り入れる
自然光が十分に差し込む開放的な空間設計や、観葉植物を導入することで社員のストレス軽減やリフレッシュ効果をもたらし、新たな発想やアイデアの創発に繋がる。特に、オフィス緑化は空気清浄効果だけでなく視覚的な癒やし効果も期待できる。
五感を刺激するデザインを取り入れる
色、素材、照明、音、香りなど、五感を刺激する要素をバランスよく取り入れる。例えば、壁の色をエリアごとに変える・内装や家具に自然素材を使用する・リラックスできるBGMを流すといった施策により、社員の創造性や集中力を高めることができる。
ウェルネスに配慮する
社員の心身の健康(ウェルネス)をサポートする設備や環境を整える。具体的には昇降デスクやバランスボールチェアの導入、休憩スペースやリフレッシュルームの充実、仮眠スペースの設置などが挙げられる。健康経営の視点を取り入れ、社員が健康的に働けるオフィスを目指す。
テクノロジーを効果的に活用する
ウェブ会議システム、チャットツール、プロジェクト管理ツールなどのICTツールを導入し、コミュニケーションや業務効率の向上を図る。予約システムと連携しタイムリーに利用できる会議室やプレゼンテーションを円滑化させる大画面モニターなども、コミュニケーションを向上させ新しいアイデアを生み出すのに役立つ。
フレキシブルな空間設計を行う
オフィスのレイアウトを柔軟に変更できる設計とし、可動式のパーティションやモジュール家具を採用することで、組織の成長や変化に対応しやすくなる。将来的な事業の方向性の転換やプロジェクトの規模・チーム編成の変化などに迅速に対応し、最適な環境を提供することで、社員はより柔軟に創造力を発揮できるだろう。
ウェルビーイングと多様な働き方を考慮した空間設計が社員のパフォーマンスを最大化する
クリエイティブオフィスの成功事例
2023年に本社オフィスの移転を実施した JLL(ジョーンズ ラング ラサール)の東京本社オフィスは「第36回日経ニューオフィス賞 クリエイティブ・オフィス賞」を受賞した。
同オフィスは、JLLが提唱する“Future of Work”を具現化したABW(Activity Based Working)を実践する上質な体験型ワークプレイスをコンセプトとし、ウェルビーイングとコミュニケーションを高め、社員のパフォーマンスを最大化することを目指して設計された。
個人の集中作業やチームでのコラボレーション、リフレッシュなど、さまざまな目的に対応できる多様なワークスペースが用意されている。また、自然光を最大限に取り入れた明るい空間、随所に配置されたグリーン、最新のテクノロジーの導入など、社員の創造性と生産性を高めるための工夫が随所に施されている。
JLLはクリエイティブオフィスの構築を支援
クリエイティブオフィスの導入は、社員の創造性と生産性を高め、企業の競争力向上に貢献する。導入を成功させるには、自社の課題を分析し、適切なゾーニングやデザイン・テクノロジーの活用を計画的に進めることが不可欠だ。
JLLは豊富な実績と専門知識を活かし、最適なオフィス環境の構築を支援する。クリエイティブオフィスの導入を検討している企業は、ぜひJLLへ相談していただきたい。