記事

快適なオフィスとは?働きやすい職場環境づくりの考え方と実現のステップ

オフィスはただ業務をこなす場所ではなく、社員のウェルビーイングや生産性、エンゲージメント向上、優秀な人材の定着率などに大きな影響を与える空間だ。数多くのメリットを持つ「快適」なオフィスについて、その条件や要素と具体的な施策、導入ステップを解説する。

2025年 05月 09日

現代の企業活動において、オフィスは単に業務を遂行する場所ではなく、社員が心身ともに健康を保ち、その能力を最大限に発揮するための基盤となることが求められる。その環境をさまざまな尺度で評価し、一定の水準を上回るオフィスが「快適なオフィス」と呼ぶにふさわしいといえる。評価の基準は以下のように身体的/精神的の二軸で見ていくとよいだろう。

身体的な快適性

暑さ寒さ・ジメジメ感などで集中力を妨げられることのない適切な温度と湿度、目が疲れない明るさ、高さや角度を調整できて身体への負担が少ないチェアなど、身体的なストレスのない執務環境は社員の疲労を軽減し生産性向上に直結する。

オフィス環境を整えることは単なる福利厚生ではなく、社員の心身の健康、すなわちウェルビーイングを支え、持続的なパフォーマンスを引き出すための重要な投資といえるだろう。

精神的な快適性

社員が安心して能力を発揮できる環境であるかどうか、つまり心理的安全性が確保されているかどうかも重要な要素だ。誰もが自分の意見を言うことができ、活発なコミュニケーションが生まれる職場は、創造性やチームワーク向上に貢献する。また今後の社会において、柔軟な働き方を支えるワークライフバランスは必須であり、社員のエンゲージメントや定着率向上にも大きく影響する。

これからの時代の”快適なオフィス”は、社員が身体的にも精神的にも健康で十分なパフォーマンスを発揮できる環境かどうかという視点で評価すべきである

オフィス環境を快適にすることで得られるメリット

オフィス環境の快適性を高めることは、社員にとってはもちろん、企業にもさまざまなメリットが期待できる。

業務効率や生産性の向上

適切な温度・湿度や明るさ、静かな音環境が保証された快適なオフィス環境下では、社員は心身の負担が軽減し作業がはかどる。また機能的なレイアウトやアクセスしやすい設備は、無駄な移動や情報探索の時間を削減する。結果として個々の社員のパフォーマンスが向上し、組織全体の生産性向上につながる。

モチベーションやエンゲージメント向上

清潔でデザイン性の高い空間、充実した休憩スペースなど快適で魅力的なオフィスは、社員の働く意欲、すなわちモチベーションを高める重要な要素だ。働きやすい環境整備に投資する企業の姿勢は、社員に「大切にされている」という実感をもたらし、企業への愛着や貢献意欲といったエンゲージメントの向上にもつながる。

定着率の向上と採用力強化

働く人の健康を考えた上質なオフィス環境や家具、休憩スペースの充実などは、現在働く社員の満足度を高め、人材の定着に寄与するだけでなく、新規採用時にも求職者への大きな訴求ポイントとなるだろう。
 

快適なオフィスの5つの要素と具体的な施策例

快適なオフィスを構成する要素には以下のようなものがある。それぞれどのように働く人のウェルビーイングに関係するのか、また実際のオフィス設計にあたってはどのような施策があるのかを紹介する。

1. 温度・湿度

不快な温湿度は、疲労感やストレスを増大させ、集中を妨げたり生産性を低下させたりする要因となる。夏場や冬場の適切な室温維持はもちろん、季節に応じた湿度管理も重要である。

IoTアナリティクス」は、人感・温度センサーで室内の状況をリアルタイムに計測し、空調を自動で最適化するシステムだ。このようなテクノロジーを導入する企業も近年増えている。

IoTアナリティクスについて詳しく見る

2. 光

光環境は人間の体内リズムや気分に影響を与え、作業効率や社員のメンタリティにも関わる。

外の自然光を適切に取り入れると開放感やリラックス効果が期待できる。自然採光が難しいオフィス環境では、時間帯や作業内容に応じて照明の色温度や明るさを調整することも目の疲労軽減や集中力向上に有効である。

センサーによって人の在不在や外光の状況を検知し照明を自動制御するシステムは、快適性と省エネルギーを両立させる施策として注目される。

3. 音

オフィス内の音環境は、集中力やコミュニケーションの質を大きく左右する。電話の着信音・話し声・OA機器の動作音などの騒音は、ストレスの原因となり作業効率を著しく低下させる可能性がある。

快適に業務を進めるためには、集中したい業務のための静かなエリア・活発な議論を行うためのエリアなど、目的に応じたゾーニングが有効だ。また吸音材の設置・サウンドマスキングシステムの導入・防音の個室ブース設置などの防音対策も効果的な施策となる。

4. 空間レイアウト

オフィスの空間レイアウトは、社員の働き方やコミュニケーションのあり方に大きく影響する。

固定席だけでなく、業務内容や気分に合わせて働く場所を選べるABW(Activity Based Working)フリーアドレスといった柔軟なレイアウトは、自律的な働き方を促し、偶発的なコミュニケーションも生み出す。

また、集中スペース・コラボレーションスペース・リラックススペースなどを適切に配置することで、生産性と働きやすさの向上も期待できる。

5. 家具や設備

長時間使用するデスクやチェアは、社員のウェルビーイングに直接影響する。

特に身体への負担を軽減する人間工学に基づいたチェアの導入は、健康維持と集中力向上に不可欠だ。また、観葉植物などを配置するオフィス緑化は、空気清浄効果や心理的なリラックス効果をもたらす。さらに、気分転換や社員同士の交流を促す休憩スペースリフレッシュルームの設置も、精神的な快適性を高める上で重要な要素となる。
 

快適なオフィスを目指す改善ステップ

身体的・精神的に快適で、社員の生産性やエンゲージメントを高めるオフィス環境はどのように実現していけば良いのだろうか。

自社の課題を特定する

オフィス改善の第一歩は、現状の課題を正確に把握することである。物理的な環境(温湿度、明るさ、音、レイアウトなど)の測定や観察に加え、社員へのアンケートやヒアリングを行い具体的な不満や要望を収集することで、表面的な快適さだけでなく、仕事を進める上での潜在的なニーズや本質的な課題の特定が可能となる。

課題解決につながる施策を選択する

特定された課題に基づき、具体的な解決策を検討・選定する。レイアウト変更、家具・設備の更新、ITインフラの整備、あるいはオフィスの移転や大規模改装など、課題の性質や重要度と各施策のメリット・デメリット、コスト、実現可能性などを比較検討し、自社にとって最も効果的な方法を選択する必要がある。

判断に迷う場合は、専門的な知見を持つコンサルタント等への相談も有効である。

JLLに快適なオフィスへの改善施策を相談してみる

計画を立案する

実行する施策を絞り込んだら、目標達成に必要な予算・デザインコンセプト・スケジュール(工期)・人員体制などを詳細に定める。関連部署との連携や工事期間中の業務継続計画なども考慮に入れて計画を立案しよう。

改装実施

立案した計画に沿って実際のオフィス改装や移転作業を進める。工事期間中は社員への情報共有を十分に行い、業務への影響を最小限に抑えるための配慮も必要となる。

効果測定と運用改善

オフィス改善は実施して終わりではない。改装後に狙い通り快適度が向上しているかどうか測定し、評価と改善を行うことが不可欠である。

具体的には、改装前後の社員満足度調査や生産性データの比較、利用者へのヒアリングなどが有効だ。結果次第では、レイアウトの再変更・設備の追加導入・運用ルールの見直しなどを柔軟に行い、継続的にオフィス環境を最適化していこう。

快適なオフィスとは、そこで働く社員のニーズや課題に基づいて設計され、利用を通じて継続的に進化していく

快適なオフィスを実現した成功事例
「出社したくなるオフィス」を目指して拡張移転

クラウド録画サービスを提供するセーフィーは2023年、事業成長と人員拡大に伴い、2倍以上の床面積となる拡張移転を行った。

新オフィスのコンセプトを「出社したくなるオフィス」とし、ミーティングや商談用の会議室の充実、営業活動に寄与するショールームの拡充、公園をイメージした「Park」と呼ばれるオープンスペースでのコミュニケーション向上などの施策を展開し、移転後の社員アンケートでは「働きやすさ」において5点満点中3.8と高い評価が寄せられたという。

新しい時代の働き方から「快適さ」を導くJLLのオフィス

総合不動産サービスのJLLは2022年11月に東京本社、および12月に関西支社を統合移転し、オフィスを開設した。

オフィスの温度・CO2・有害物質といった空気の質をモニタリングできるセンサー、伝統的な日本家屋から着想し、自然光の差し込む空間で休息やコミュニケーションが取れる「縁側」、マッサージルームオフィスアートなどを導入。最新のテクノロジーを駆使し、サステナビリティやWellbeingに配慮したJLLのオフィスはLEED®認証「プラチナ」・「ゴールド」、WELL™認証最高ランク「プラチナ」をダブルで取得している。

JLLのオフィスツアーに参加する

快適なオフィスづくりを支援するJLL

オフィスの快適さは目に見えにくく数値化も容易ではないため、予算を投入して実施することを企業も存在するだろう。

しかし、社員の日々快適に業務を遂行できるかどうかは長期的な生産性の向上や企業の成長、人材の定着などに結びつく重要な投資の一環であるため、先送りにせず現在の課題に合わせたオフィス改善の取り組みが推奨される。

JLLはグローバルな知見と豊富なデータ、実績に基づき、各企業が快適なオフィス環境を実現する最適なソリューションを提供する。オフィスの快適度を向上させたい企業は、ぜひJLLにご相談いただきたい。

オフィス新設・移転の戦略をJLLに相談する

お問い合わせ

何かお探しものやご興味のあるものがありましたら、お知らせ下さい。担当者より折り返しご連絡いたします。