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アウトドアオフィスとは?導入で得られる効果やメリット

オフィスづくりにアウトドア用品を活用する他、自然の中に働く場を設ける「アウトドアオフィス」を実践する企業が存在する。導入設備と活用例、メリットや注意点について解説する。

2025年 05月 08日
アウトドアオフィスとは?

「アウトドアオフィス」は近年注目されているワークプレイス戦略であり、大きく分けて2つのタイプがある。1つは一般的なオフィスの一角にアウトドア用品を導入した空間やオフィスビルの屋上・テラス・中庭などの共用部で仕事ができる屋外空間、もう1つはキャンプ場や別荘地のような自然豊かな場所に整備された執務環境が挙げられる。

キャンプ気分が味わえるだけでなく、Wi-Fi環境や電源などを整備し、執務やミーティングなどの業務を快適に行えるのも特徴だ。自然を感じられる開放的な環境で働くことにより、従来のオフィスにはないリフレッシュ効果や創造性を喚起することが期待されている。

近年ではアウトドア用品メーカーのスノーピーク社が提供するサービス「キャンピングオフィス」が知られるところだが、ノーブランドでもアウトドアオフィスはさまざまな形で実践可能である。

自然を感じながら働けるアウトドアオフィスは、生産性やウェルビーイング向上を目指す新しいオフィスのあり方の1つといえる。

アウトドアオフィスの効果やメリット

「アウトドアオフィス」という名前からは、ビジネスにどのようなメリットがあるのか想像がつかないかもしれないが、実は以下のような幅広い効果が期待できる。

クワク感やモチベーションの向上

非日常的な環境で働くことは、大人にも新鮮な驚きとワクワク感をもたらし、仕事に対するポジティブな感情や意欲を引き出す効果が期待できる。

リラックス・ストレス軽減

企業にとって社員のメンタルヘルスケアや健康増進(ウェルビーイング)は欠かせない。アウトドアオフィスでは、太陽の光を浴びたり植物や自然の香りに包まれたりすることで、心身のリラックス・ストレス軽減・精神的な疲労回復などが期待できる。

部署を超えたコミュニケーション

アウトドアオフィスでは基本的に固定席がなく自由な場所で仕事ができる。リラックスした雰囲気は偶発的な会話を生み出しやすく、普段接点のない他部署のメンバーとも気軽に交流できるため、部署を越えたコミュニケーションが活性化する。よりスムーズな情報共有や新たな協力関係の構築なども期待できるだろう。

一体感やエンゲージメントの醸成

郊外型のアウトドアオフィスでは、テントやタープ設営などの共同作業や、バーベキュー大会などのイベントも開催される。社員間の交流は相互理解を深め、チームとしての一体感が醸成される。また、こういった共通体験の場で同僚と過ごすことで組織への愛着や貢献意欲が沸き、エンゲージメントの向上にも寄与する。

アイデア創出やクリエイティビティの向上

いつもと違う環境に身を置くことで、固定観念から解放され、自由な発想が生まれやすくなる。またリラックスした状態でのブレインストーミングや意見交換は多様な視点を引き出す可能性があり、今までになかったアイデアやイノベーションの創出も期待できる。

人材の採用と確保

アウトドアオフィスを導入していることは企業の大きなアピールポイントとなる。社員の働きがいや満足度を重視する姿勢を示すことで企業イメージが向上し、優秀な人材の獲得競争において優位性を確保できる。同様に社員の定着率向上も期待できるだろう。

オフィススペースのフレキシブルな活用

これまで活用されていなかった屋上やテラス・庭などの低稼働スペースも、アウトドアオフィスとしてなら有効活用の途が広がる。実質的なオフィス面積を拡張する効果だけでなく、執務・休憩・交流など多目的に利用できるフレキシブルな空間を生み出せるのがメリットだ。

設備コストの削減

自然の光や風を最大限に活用することで、照明や空調などのコストを削減できる可能性もある。維持管理費との兼ね合いを考慮する必要はあるが、高級な家具・什器のかわりにアウトドア用テントやチェアなどを採用することで内装工事の簡素化や初期投資・改修費用を抑制できる場合もある。

本格的なオフィスカフェの設置が難しい場合でも、アウトドア用のポータブルコンロを活用した遊び心のあるカフェスペースなら設置が可能だ。

BCP(災害時等の事業継続)対策

地震や水害などの自然災害発生時には、一般的なオフィスビルは使用不能になるリスクがある。この時、もともと屋外用の設備を生かしたアウトドアオフィスであれば一時的な代替スペースとして機能する可能性がある。

また、郊外のキャンプ場など本社オフィスとは別の場所に開設したアウトドアオフィスは、社員の安全確保と事業継続を両立させるための有効なBCP対策の一つとなり得る。
 

アウトドアオフィスのデメリットや注意点

一方、アウトドアオフィスの導入にあたっては、自然を取り入れた執務環境であるが故のデメリットや注意点も存在する。

IT環境

特に郊外の自然の中にアウトドアオフィスを開設する場合、安定したインターネット回線やWi-Fi環境、十分な電源の確保は欠かせない。山奥など電波が弱い立地では業務効率が著しく低下するおそれがある。

セキュリティ

不特定多数の人が利用するオフィスビルの中庭や屋上、郊外のキャンプ場などでは、重要な書類やパソコンの画面などを見られることで情報漏洩のリスクが高まる。同じく電子機器や備品の盗難にも注意が必要だ。

さらに、公共の無料Wi-Fiはハッキングの危険性が高まるため利用しないなど、正しいセキュリティ教育を十分に行う必要がある。

自然環境への対応

屋外特有の課題として、天候や気候変動への対応が挙げられる。雨や強風・暑さ寒さ・日差しの眩しさ・花粉や虫の発生・近隣の騒音なども考慮すべきだろう。快適な執務環境を維持するには、日除けや雨除けの設置、気候の良い時期限定で利用するなどの対策も必要である。

トイレ問題

オフィス本体から離れた場所にアウトドアオフィスを開設する場合、トイレの確保は重要な課題となる。業務に支障が出ないようにするには、利用人数に見合った個室の確保・定期的な清掃・メンテナンスなど計画段階での十分な検討が不可欠である。

業務品質低下の可能性

開放的な環境は、一方で集中力を妨げる可能性もある。周囲の音や人の話し声・通行人の視線で集中力を削がれる、オンライン会議に雑音が入るなど、業務の質が低下するケースも考えられる。

交通費などのコスト増加

郊外のキャンプ場などを利用する形態の場合、社員の移動にかかる交通費や宿泊費などのコストが発生する。また、初期の設備投資やインフラ整備、維持管理費といったコストも発生する。

ただし、アウトドアオフィスの導入については短期的なコストのみで判断するのではなく、従業員満足度や生産性向上など長期的な成果を見据えた目標設定と効果測定を行うことが必要だ。

アウトドアオフィスには自然環境やコストなど特有のデメリットも存在するが、長期的な成果もふまえて導入を判断しよう

アウトドアオフィスの具体的な設備例

アウトドアオフィスを実現するためには、屋外空間を快適かつ機能的な執務環境に変えるための設備導入が必要となる。具体的な施策や設備は以下を参考にしてほしい。

オフィスビルや周辺に設置する場合

都会のオフィスで、ビル内のオフィススペースや屋上などにアウトドアオフィスを開設する場合は、いかに一般的なオフィスと雰囲気を変えるかがポイントとなる。

  • 執務用やミーティング用のデスクとチェアをアウトドア用品に変える

  • 大型~中型のテントをミーティングスペースとして使う

  • 大型~中型のテントをリフレッシュルームとして使う

  • 小型のテントを集中ブースやソロワークスペースとして使う

  • 小型のテントを休憩スペースとして使う

  • ランタンや焚き火台などのアウトドアグッズをインテリアとして置く

  • 芝生風のカーペットやウッドデッキを敷く

  • 観葉植物を置く

アウトドア用のテーブルやチェアは移動やレイアウトの変更がしやすいため、ミーティングの人数に合わせてフレキシブルに配置できる。

郊外に設置する場合

郊外のキャンプ場や別荘地などにオフィス機能を持たせるには、業務の進行に支障をきたさぬよう、より快適性を高めた設備が必要となる。

  • 宿泊に対応できるようテント・コテージ・トレーラーハウスなどを導入する

  • 雨風や寒暖差に対応できる冷暖房器具を設置する

  • 調理ができるキッチン設備・シャワー・トイレなどの水回りを整備する

また、「郊外」という立地特性を生かしたバーベキューグリルや星空観察ができる天体望遠鏡などのイベント設備は、コミュニケーションを促進し一体感を高めるために役立つだろう。
 

アウトドアオフィスの活用例

非日常的な環境が魅力のアウトドアオフィスはさまざまな目的に活用でき、組織活性化や新たな価値創造にも貢献する。

ミーティングやブレスト

開放的な自然環境は五感を刺激し、リラックス効果をもたらすため、普段の会議室とは異なる自由な発想や活発な意見交換が期待できる。

チームビルディング

テント設営やバーベキューといった共同作業は、自然な形で協力関係を生み出し、メンバー間の相互理解や信頼関係といったチームビルディングに欠かせない連帯感が醸成される。

イノベーション

商品・サービスやプロジェクトの企画立案・改善などを行う際、普段と異なる環境下に身を置くことで固定観念から解放され、新たな視点や気付きが生まれる可能性がある。部署を超えた社員同士が交流したり、新しいアイデアを試す場としても活用できる。

研修やワークショップ

自然の中での体験型研修やワークショップは、座学中心の研修とは異なり、五感を通じて深い学びや気づきを促す。非日常空間での体験や考察は記憶に定着しやすいというメリットもある。

社内イベントやサークル活動

バーベキューやキャンプ、ファミリーデイなど、アウトドアならではの企画を通じ、社員同士やその家族との交流を深めることができる。部門や役職を超えたコミュニケーションが生まれやすく、組織へのエンゲージメントや一体感の向上に貢献するだろう。

採用活動

会社説明会や面談をアウトドアオフィスで行うことは企業の先進性や働きがいをアピールする絶好の機会となる。また、リラックスした雰囲気の中では候補者の本音を引き出しやすく、企業とのマッチングが明確になる効果もより期待できる。
 

アウトドアオフィスに向き不向きな企業の特徴

多額の資金を投じて構築したアウトドアオフィス。果たして自社にメリットがあるのかどうか、懐疑的になるのも無理はない。

一般的に、アウトドアオフィスに適している企業は以下のような特徴があるとされる。

  • 新しいアイデアやイノベーションの創出を目指す企業

  • 社員員の心身の健康(ウェルビーイング)やエンゲージメント向上を重視する企業

  • 部署間のコミュニケーション活性化やチームワーク強化を図りたい企業

  • 採用活動において他社との差別化を図り、魅力的な労働環境をアピールしたい企業

一方で、高度な機密情報を扱う業種や、常に安定したITインフラと静粛な環境が不可欠な業務が多い企業、天候に左右されずに業務を遂行する必要がある企業にとっては、全面的な導入へのハードルは高いといえる。

しかし、不向きとされる企業であっても、オフィスの一部スペースに限定して導入する、特定の用途(ミーティング、リフレッシュ、イベントなど)に限定して活用する、セキュリティ対策やインフラ整備を徹底するといった方法をとることで導入効果は十分に期待できる。

また、社員の生産性や満足度を高めるオフィス戦略はアウトドアオフィス以外にも数多い。業務内容に合わせて働く場所を選択できるABW(Activity Based Working)の導入、ウェルネスを重視した空間設計サテライトオフィスの活用などを始め、多様な選択肢が挙げられる。

企業の目的や文化・働き方に合ったオフィス形態や働き方を見極めるためには、専門的な知見を持つパートナーへの相談も有効だ。

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アウトドアオフィスの導入方法

アウトドアオフィスを導入する際には、次のような手順が考えられる。

  1. 導入目的の明確化: なぜアウトドアオフィスを導入するのか、現在の課題と目的を明確にする。

  2. 設置場所の選定:オフィスの屋上・テラス、敷地内の空きスペース、あるいは郊外の施設など、目的に合った場所を選ぶ。

  3. コンセプト・計画策定: 誰が、いつ、どのように利用するのかを具体的にイメージし、必要な設備やレイアウトの計画を立てる。

  4. 環境整備と設備導入: 必要な家具、日除け・雨除け、電源、Wi-Fiなどのインフラを整備・設置する。

  5. 利用ルールの策定と周知: 利用時間、予約方法、飲食の可否、後片付けなどのルールを定め、従業員へ周知徹底する。

  6. 効果測定と改善: 導入後、利用状況のデータや社員の意見を収集し、効果測定しながら継続的に改善していく。

コンセプトと計画策定の段階では、アウトドアオフィスを通じてどのような効果を得たいのかを具体的に定義することが重要である。それを実現するために必要な設備の種類や数・レイアウト・デザインなどを決めていくと成功につながりやすい。

また、利用ルールについても必ず事前に検討しておこう。音量の配慮・ゴミの処理・予約方法などを具体的に定め、トライアル期間を設けるなどして浸透を図るとよい。

JLLが支援するオフィス戦略

近年注目を集めるアウトドアオフィスは、アイデア創出やコミュニケーション向上、社員のウェルネスなど、企業に多角的なメリットを生む。

JLLは、アウトドアオフィスを含むさまざまなオフィスタイプについて高い専門知識と実績を持ち、企業の課題やカルチャーに合わせて最適なオフィス戦略の策定をサポートする。

アウトドアオフィスに関心のある企業や、社員の生産性やモチベーション向上に寄与するオフィス改善を検討している企業は、ぜひJLLへ相談いただきたい。

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