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GMOあおぞらネット銀行の柔軟な発想を生み出すオフィス戦略

ABW型オフィスが注目を集めているが、各エリアの利用目的をルール化するケースが少なくない。一方、インターネット銀行事業を展開するGMOあおぞらネット銀行はファシリティや各エリアの利用目的をあえて明示せず、パートナー(従業員)が主体的に活動でき、自由な発想を生み出しやすい快適な環境づくりを進めている。

2023年 09月 28日
オフィス環境が人材採用にも影響を及ぼしている

少子高齢化に伴う人手不足が顕著になっている日本において、多くの企業が頭を悩ませているのが人材採用だ。特に需給のバランスがひっ迫しているIT人材は人材獲得競争が過熱し続けており、快適なオフィス環境を提供することで他社との差別化を図ったり、働く人のモチベーションをあげたりと工夫する企業が多い。インターネット銀行事業を展開するGMOあおぞらネット銀行もオフィス環境を重視する1社だ。

GMOあおぞらネット銀行の新オフィス

GMOあおぞらネット銀行は2019年12月、「渋谷フクラス」に新オフィスを開設した。

GMOインターネットグループは2001年から「渋谷セルリアンタワー」を本社オフィスとしているが、2019年6月時点のグループ会社数は111社(2001年比で約10倍)、パートナー数は6,000名(2001年比約8倍)にまで拡大したことから、グループ会社を本社オフィスにて収容しきれず、渋谷駅周辺にオフィスが分散していた。

そのため、グループ全体で拠点統合を進め、グループシナジーの最大化を目指してGMOあおぞらネット銀行など、金融・決済・フィンテック・広告関連のグループ企業を中心に、2019年12月に「渋谷フクラス」へ本社を移転し、渋谷セルリアンタワーに第1本社、渋谷フクラスに第2本社を構えている。

渋谷フクラスはJR渋谷駅西口に位置するランドマーク的な大型複合施設。オフィス棟(8-16階)をGMOインターネットグループが賃借している。同居しているGMOあおぞらネット銀行のオフィスの執務席は約300席。ネット銀行業務のオペレーションやコールセンターなど一部固定されたエリアは存在するものの、その大半はフリーアドレスを採用し、執務スペース内に様々な機能をもたせている。

GMOあおぞらネット銀行 コーポレートコミュニケーショングループ 総務チーム チーム長 森田 憲太郎氏は「当社は銀行というセキュリティ面を担保する必要がある業態であることから、サードプレイスを設けることが難しいがゆえに、自宅とオフィスの差別化、オフィスならではの従業員への価値提供を常に意識している」と説明する。

ABWの解説記事はこちら

2019年12月に移転をする前の旧オフィスでは、執務席と会議室のみで構成された、いわゆる“昭和型”ともいえるオフィスだったが、移転のタイミングでより業務効率化やモチベーションの上がるオフィス環境にすべく抜本的に見直した。特にコミュニケーションやコラボレーションを生み出せる環境づくりに主眼を置いたという。

例えば、業務効率の向上を企図し、渋谷の街並みを一望できる窓際には半個室型の集中ブースや、クッションソファー、ローテーブル、ハンモックで構成されたリフレッシュエリアを設けた。また、業務時間外にも利用できる卓球台にもなるテーブルを設置した多目的エリアや、個室型からファミレス席まであるミーティングエリアのほか、ドリンクやお菓子の購入ができるスナックエリア、コロナ禍で利用が増えたオンライン会議用の個室ブースも導入している。

執務スペースは一部座席を除きフリーアドレスを導入している

クッションソファーやハンモックでくつろぎながらコミュニケーションが図れるリフレッシュエリア

卓球台にもなるテーブル。天板には、コーポレートビジョン「All for our customers. Strive to be the No.1 Tech Bank.(すべてはお客さまのために。No.1テクノロジーバンクを目指して)」の文字が刻まれている

パートナーの能力を最大限発揮できる環境づくりを推進

また、渋谷フクラスの16階にはGMOインターネットグループ企業が利用できる福利厚生施設として、広さ600坪超を誇るシナジーカフェ「GMO Yours・フクラス」があり、お昼寝スペースの「GMO Siesta(シエスタ)」も併設されている。

15階にはマッサージができるリラクゼーションスペース「GMO Bali Relax(バリ リラックス)」、完全無料のフィットネスジム「GMO OLYMPIA(オリンピア)」があり、渋谷セルリアンタワーには、社内託児所「GMO Bears(ベアーズ)」等を設け、従業員の健康経営にも配慮している。

GMOあおぞらネット銀行 コーポレートコミュニケーショングループ 総務チーム 髙津 靖司氏は「“パートナー全員”の能力を最大限発揮できる共用スペースの環境づくりをGMOインターネットグループは推進している」と力を込める。

渋谷フクラス15階の来客用会議室。ガラス張りで開放感がある

2018年7月にインターネット銀行事業を開始した同社。森田氏によると「ビジネスの拡大を支え、変化する環境下で勝ち抜いていくため、オフィス環境もフレキシブルに各種ニーズに適応する必要があり、いかにパートナーに快適に利用し続けてもらえるかを重視している」といい、オフィス環境の利便性向上に注力している。

同社ではオフィス内でお菓子や飲料など、様々なものを買い物できる「オフィスサービス」を提供しているが、GMOあおぞらネット銀行が発行するデビットカードでの決済を可能にしているほか、オフィス入口に設置された大型サイネージで最新の社内情報を表示し従業員の帰属意識を醸成している。

オフィス内に自社サービスを利用できるスポットを設け利用促進することで、帰属意識や顧客目線によるサービスの品質向上を図っている(https://gmo-aozora.com/priv/card/)

パートナーの主体性を尊重するオフィス環境

オフィス運営を担当するGMOあおぞらネット銀行 コーポレートコミュニケーショングループ 総務チーム 森田 憲太郎氏(左)と髙津 靖司氏(右)

自由に働ける体験をオフィスでも実践できるようにすることで、自由な発想が生まれる

一方、コロナ禍で、柔軟に働く場を選択できるABW型オフィスを嗜好する企業は増えており、オフィス内の各エリアの利用目的等をルール化しているケースも少なくない。一方、同社では「すべてのファシリティには導入すべき目的があるが、当社では『こういった目的で使用してください』といったルール作りをあえてしていない」(森田氏)という。

利用目的を明確化しない理由について、森田氏は次のように説明する。

ルール化しない最大の理由は、パートナーの主体性を尊重すること。ルールによって利用目的が画一化され、固定観念が生まれてしまうのではなく、自宅のように自由に働ける体験をオフィスでも実践し、ダイレクトな意思決定や、対面コミュニケーションを通じた問題解決を図り、緊張と緩和を繰り返すことで、柔軟で斬新な発想が生まれると考えている」

同社はIT企業と金融機関の両側面をあわせ持ち、ITエンジニアからバンカーまで多様な人材が集まる企業であり、多様性を重視したオフィス運営を行っている。ABWでルール作りをしないのも、多様な人材が持つ発想力を最大に活かすことを重視したためだ。同じファシリティでも人によっては全く異なる使い方をする可能性があり、固定観念をなくし、柔軟な発想力を発揮してもらうのが狙いだという。

オフィスは企業が成長するための中核であり続ける

JLLが2022年に世界各地のオフィス戦略の責任者1,100名を対象に実施したアンケート調査「Future of Work(働き方の未来)グローバル調査」では、72%が「長期的にオフィスは企業が成長するための中核であり続ける」と回答している。コミュニケーション活性化や生産性の向上だけでなく、事業成長を担う優秀な人材を採用するために快適なオフィス環境と柔軟な働き方を採用する企業が増えている。

GMOあおぞらネット銀行のオフィスからも感じられるが、実際に稼働しているオフィス環境から、働きやすさや風通しの良さ、パートナー同士の距離感など、その企業のカルチャーが伝わってくる。GMOインターネットグループが打ち出す「誰もが働きやすく、能力を発揮できる環境づくり」に則り、企業の成長を支える「人財」を大切にする姿勢が表れている。

働く会社を選ぶ際にオフィス環境を重視するトレンドは、今後ますます強まっていくのではないだろうか。

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