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これからのオフィスデザインとは?最新事例と導入ポイント

アフターコロナ・ニューノーマルの企業経営においては、従来とは異なる視点で、従業員の働き方やそれを実現するオフィスのあり方を再定義することが欠かせない。その鍵となる「オフィスデザイン」について、考え方や導入のメリット、自社に最適なオフィスデザイン立案のプロセス、おさえるべきポイントなどをJLLの最新事例とともに解説する。

2023年 01月 12日
オフィスデザインとは?

「オフィスデザイン」とは、おもにオフィス新設や増設・移転、あるいは移転を伴わないリ一方、地方拠点では、在宅 時に、目的やコンセプトを明確にして内装やレイアウトのデザイン設計を行う一連の行動をいう。

多様性が尊重されるこれからの時代に、働き方や企業文化を映すオフィスデザインには、単なるインテリアや什器の配置といった物質的な部分にとどまらない重要な役割が求められている。

従業員のコミュニケーション、ウェルビーイングといった目に見えない効果をもたらすようデザインする必要があり、それを実現するための設備、通信機器、採光や換気、防災や感染防止対策、テクノロジーの導入計画までオフィスデザインの定義の幅は広がっている。

オフィスデザインの目的
働き方改革の戦略としてのオフィスデザイン

従来のオフィスデザインは、スペースの効率化やコストパフォーマンス、対外的なイメージアップといった判断基準が主流だった。

しかし、近年推し進められている働き方改革では、より「個」にフォーカスし、従業員1人1人のニーズや生産性向上を実現するような働き方が求められている。

そしてコロナ禍を経て、従業員の安全性やウェルネスを確保するためにオフィスデザインに工夫を凝らす必要性が高まっている。

人材の確保や従業員のパフォーマンス向上に役立つ企業文化の醸成や相互コミュニケーションの活性化には、より戦略的な働き方改革・オフィス改革が不可欠であり、すぐれたオフィスデザインはその戦略の重要な柱となる。

これからのワークプレイス戦略とは?

効果的なオフィスデザインがもたらす5つのメリット

オフィスデザインは企業ブランドイメージに直結すると言われるほど、大きな視覚的影響のポテンシャルを持っている

すぐれたオフィスデザインにより、さまざまな効果やメリットが期待できる。

1.企業の想いを視覚的に反映できる

企業の理念・クレドやフィロソフィーを従業員に明確に理解してもらうのは難しい。

オフィスデザインは企業ブランドイメージに直結するといわれるほど、大きな視覚的影響のポテンシャルを持っている。

企業の存在意義(パーパス)や事業内容をデザインに反映したオフィスで働くことで、従業員たちは自社ブランドへの理解を深め、日々の行動に落とし込み、企業の想いを社外へ発信していくようになる。

2.社内コミュニケーションが活性化する

従来のオフィスは、対面型・島型に配置されたデスクとわずかな共用スペースで構成されることが多かったが、コミュニケーションが取りづらいというデメリットがあった。

コロナ禍で業務のオンライン化が進み、コミュニケーションが希薄になることも危惧されるが、オフィス改革によってコミュニケーションをとりやすいデザインを採用することで、従業員の心理的負担を軽減したり、偶然生まれた何気ない会話からイノベーションが創出されたりといった効果が期待できる。

3.社員満足度が高まり、全体的なパフォーマンスが向上する

JLLが実施した従業員の成功と業績向上のためのワークプレイスの設計に関する調査レポートによると、革新的なスペースやテクノロジーが提供されたオフィスで働く従業員ほど満足度が向上し、パフォーマンスの高い従業員の96%がワークプレイスに満足していることが明らかになった。

このことは、全社的な満足度やパフォーマンスの向上が期待できるオフィスデザインの重要性を示唆している。

4.優秀な人材確保につながる

リモートワークの普及によって柔軟に働ける環境が整ったものの、上司や同僚と気軽に相談することができず、業務遂行時の心理的負担に悩まされる従業員が増えている。特に若手従業員にとってリモートワークは学びの機会が失われることに繋がり、オフィス出社を求めるケースも増えている。オフィスの存在意義は、従業員同士のコミュニケーション活性化に寄与し、ひいては長期雇用を維持していく。

そうしたなか、フリースペースやカフェ、フィットネスルーム、グリーンを取り入れたオフィスなど、企業の価値観を映し出したユニークなオフィスデザインは、従業員のエンゲージメント向上や新規の人材採用にも大きな強みを発揮する。

5.コスト削減・スペースを最適化できる 

すぐれたオフィスデザインは、ヒトの心身だけではなくコスト面にも良い効果をもたらす。

AIやIoTなどのテクノロジーを駆使してオフィスの利用率を可視化しスペースの最適化に成功したケースや、オフィス内の温度を自動測定して座席の配置や冷暖房運転の最適化を行い、光熱費を大きく削減できたケースもある。

オフィスデザインを検討する際の注意点

オフィス移転で成功をおさめた企業に共通するのは、一貫したオフィス戦略を持ち、コンセプトが明確であること、そして”ヒト”を軸にしていることだ。

以下のポイントを検証しながら、ニューノーマルの生活様式も考慮してオフィスデザインを策定していくべきだろう。

  • 現状の課題や問題を解決するゴールが明確化できているか
  • 企業コンセプトに合ったオフィスレイアウト・デザインか
  • 移転後の効果検証と改善点の洗い出しを行ったか
オフィスデザイン導入プロセス

オフィス移転には、大きな費用・時間・人的リソースがともなう。簡単にやり直せるものではない。効果的なオフィスデザインを実現させるには、各段階で必要な施策を整理し、しっかりと課題をクリアしていくことが重要だ。

導入のプロセスは、大きく分けて次の4段階となる。

  1. フレキシブルな働き方に対応したオフィス戦略の立案
  2. 企業ブランディングを考慮したオフィスコンセプト策定
  3. 目的に沿ったオフィスタイプの選定
  4. 移転後の課題解決効果の検証

オフィス移転などに伴うスケジュールおよび作業内容は以下を参考にしてほしい(カッコ内はオフィスデザインと直接関わりがないもの)。

時期 内容
6カ月前まで オフィス戦略立案

オフィスコンセプト策定

移転の目的を明確化し、各セクションへ共有

(移転計画・スケジュールの立案)

移転先オフィス選定
6カ月前 (新オフィス賃貸借契約締結)

オフィスプランニング・レイアウト
1カ月前 (新オフィス運用ルール広報)
1カ月後~ 定期的な課題解決効果の検証
オフィスデザインの最新トレンド

「オフィス起点ではなくヒト起点の要素が盛り込まれたオフィスデザイン」が主流になる

従来のスタイルとは大きく異なる働き方が広がりつつある現在、オフィスのありかたも変容を迫られている。

ひとことで言えば「オフィス起点ではなくヒト起点の要素が盛り込まれたオフィスデザイン」が主流になるのではないだろうか。

その中でも特徴的な4つのオフィスデザインのトレンドを紹介する。

1.ハイブリッドワークを実現するフレキシブルオフィス

ハイブリッドワークとは、毎日決まったオフィスへ出社してフルタイムで働く従来のワークスタイルではなく、本社オフィス以外に時には自宅でリモートワーク、コワーキングスペース・サテライトオフィスといった共有オフィスを利用するなど、状況に応じて多様な場所でフレキシブル(=柔軟)に働くスタイルをいう。

固定化されたオフィスと比べ、従業員の多様な働き方のニーズを満たすことができる上、オフィス賃料や交通費などのコストを削減できるメリットもあり、多くの先進国では2020年にフレキシブルスペースがポートフォリオに占める割合が30%を超え、日本でも拡大が予想されている。

2.つながりを感じられる空間

現在注目を集める「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」は、従業員のデスクを固定せず働く場所を自由に選ぶことができるワークスタイルだ。

社内イベントやパーティー・ディスカッションなどのリアルコミュニケーションや自然な雑談が生まれるような共有スペースを配置したABW型のオフィスデザインは、「ヒトとのつながりを感じられる空間」としてより価値の高いものになっていくだろう。

3.従業員のウェルビーイングを優先したオフィス環境

職場での慢性的なストレスにより従業員が心身に不調をきたす……現代社会においてそれはどの職場で起こってもおかしくない。

従業員個人のQOL(人生の質)の面でも、生産性低下や退職による事業活動への悪影響の面でも、こういった事態は回避しなければならない。

そのためには経営方針や人員配置・現場のオペレーション改善などが急務だが、同時にオフィスデザインの観点からも従業員のウェルビーイングを守る取り組みがトレンドになっている。

具体的には次のようにオフィスをデザインすることで成果をあげている企業が増えている。

  • ブラインドのかわりに日光に反応するスマートガラスで眺望を生かしながら適度な採光を実現
  • オフィス内にリビングウォールや屋内庭園など植物を配置したり、石や木などの自然素材を取り入れる
  • 立った姿勢でデスクワークができるスタンディングデスクの採用
  • カジュアルな打ち合わせやランチ、休憩に使えるオープンスペースの導入
4.テクノロジーの活用

戦略的にオフィスをデザインするにはテクノロジーの存在が欠かせない。

従業員の行動データを収集し、分析結果をもとにスペースの最適化やコミュニケーションの改善案を策定する他、ソーシャルネットワーク、CRMツール、プロジェクト管理ツール等を取り入れることでニューノーマルな働き方にマッチしたハイブリッドなオフィス環境を構築できるだろう。

ワークプレイスのデジタル化を実現する

JLLが携わったオフィスデザイン事例

JLLでは、あらゆる業界・業種の法人に対し、オフィスの移転・設計・運用などを最適化するための支援を行っている。

ここではJLLのサポートにより、時代に即したオフィス改革に成功した6つの事例を紹介する。

資生堂グローバル本社オフィス:GLOBAL VISION CENTER

スキンケア、メイクアップ、フレグランスなどの化粧品事業を主軸とする他、ヘルスケア事業やレストラン事業など幅広く展開する株式会社資生堂は、東京都港区のグローバル本社オフィス「資生堂GVC」を、3年半に及ぶ工事を経てリニューアル。

「ビジョン・戦略を構築し世界へ発信する場」、「グローバルブランドの世界観を構築し、感じる場」、「PEOPLE FIRST実践の場」という3つのコンセプトに基づき、グローバル本社にふさわしい事業戦略拠点として「全従業員が常にブランドを体感し、ビューティーイノベーション創発」を実現できるABW型オフィスへと生まれ変わった。

オフィス内で商品パッケージなどの試作を迅速に行えるクリエイティブ工房、イベントや社内外に向けての情報発信を行う本格的なオンライン配信スタジオ、海外からのゲストをもてなす場として日本の美を体現した「和室」空間などユニークな取り組みにあふれている。

アサヒグループホールディングス:新しい働き方「リモートスタイル」推進 

飲料・食品メーカー大手のアサヒグループホールディングスは、グループ間のシナジーを発揮する新たな働き方の実現に向けて、全社的なワークプレイス改革を実行。

コロナ禍をきっかけに、新しい働き方「リモートスタイル」の実現に向け、全国の56営業拠点を26ヶ所に統合集約した。

東京吾妻橋の本社オフィスでは、新たなワークプレイス戦略のコンセプトとして「フラッグシップ・シンボルとして情報発信できる環境の創造」、「グループシナジーを創出する『ハブ』となる環境の創造」、「社員が新しいワークスタイルを体感し、誇りを持てるワークプレイスの創造」の3つを策定し、11フロアにおよぶ改修を7カ月で完了した。

一方、地方拠点では、在宅勤務を導入し出社人数を従業員比30%に抑えたフリーアドレスのオフィスを構築。床面積の縮小の影響を最小限にとどめつつ、使い勝手がよくグループシナジーが発揮しやすい執務環境へと生まれ変わった。

ポニーキャニオン:コミュニケーション活性化を目指す新オフィス 

映像・音楽ソフト、ゲームソフト、及び書籍の企画・制作・販売、映画配給、コンサート・イベントの企画制作事業を手掛ける総合エンターテイメント企業のポニーキャニオンは、虎ノ門から六本木一丁目の新築オフィスビル「泉ガーデンANNEX」へ、きわめて短いプロジェクト期間で本社機能移転を成功させた。

新本社オフィスは「コミュニケーションからイノベーションを生み出す」をスローガンに、各階にコラボレーションスペースを、4階には大型のカフェラウンジを開設し、従業員の接点を増やしコミュニケーションの活性化を図った。窓からは住友庭園の緑を一望でき、従業員のウェルビーイング向上にも奏功している。

エリクソン(海外事例):カーボンフットプリントを資本に

世界のモバイル通信トラフィック処理のおよそ40%を担う、世界屈指の情報通信技術企業であるエリクソン。アジア太平洋地域に90の拠点を展開する同社では、エネルギー消費コストを抑えることが喫緊の課題であり、カーボンフットプリントの新たな削減策の選定とサステナビリティ目標の達成、その実現に適したテクノロジーの導入を迫られていた。

JLLの独自技術である「エネルギー&サステナビリティプラットフォーム(ESP)」によって得られたデータを活用し、空調の設定値や稼働スケジュール、運用条件の調整など、省エネ化に向けた適切な改善を行った結果、5年間で13.5%削減という省エネ目標を達成することに成功した。

日本マクドナルド:マクドナルド流「ワークプレイス改革」

ファストフードチェーン大手の日本マクドナルドは、東京都新宿区の本社オフィスのリノベーションにあたり2年半にわたるプロジェクトを実施。

国内の約3000店舗と利用者に対し最高のサービスを提供するため、本社オフィスは「ナショナルレストランサポートオフィス」として「現場のパフォーマンスを最高に引き出すサポートオフィスになる」というビジョンを掲げ、改善に取り組んだ。

デザインにおいては従業員同士に自然なコミュニケーションが生まれ、部署や人が物理的に交わる動線の研究、全国や外部パートナーと連携しやすいコミュニケーション施設、ペーパーレスな会議室のボードやモニターといった最新のテクノロジー、愛着がわく自社ブランドを体現したデザイン、高度なセキュリティなど、求める要件を整理し、5つのフェーズを経てリノベーションを成功に導いた。

最適なオフィスデザインは自社に新たな価値をもたらす

今回は、大きな転換期を迎えた社会の中で、従業員の新しい働き方を支えるオフィスデザインの重要性とメリット、どのような点にフォーカスして導入すべきか、実際のオフィスデザイン立案や構築のプロセスと成功事例について紹介した。

自社のビジョンや理念とマッチしたオフィスデザインは、これまで以上に企業の価値を高め、従業員のモチベーションやパフォーマンス向上に貢献するだろう。

従業員が理想とするオフィスデザインを実現する

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