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サテライトオフィスとは?メリットと導入に欠かせないポイント

2020年からのコロナ禍を機に、新しいオフィスの形へと転換を図る企業が増えている。リモートワーク・テレワークなど、従業員の柔軟な働き方に対応できる選択肢としてサテライトオフィスに注目が集まっている。今回はサテライトオフィスの導入や開設に欠かせないポイントについて解説する。

2020年 12月 02日

サテライトオフィスとは?

サテライトオフィスとは?

サテライトオフィスとは、自社の所有・入居するコアオフィスでも、従業員の自宅でもない第3のワークプレイスとして、2020年のコロナ禍をきっかけに急速にクローズアップされたオフィスの形である。

従来型のコアオフィスへ全従業員が出勤する形態とは異なった柔軟なオフィス形態を総称して「フレキシブルオフィス」と呼び、サテライトオフィスもそのうちの1つだ。

サテライトは「衛星」という意味で、交通利便性の高いターミナル駅や従業員の居住地に近いエリアに小規模なオフィス環境を構築することで、多様な働き方に対応し、自宅でのテレワークが難しい従業員のニーズにも応えられる。

フレキシブルオフィスは、働き方改革関連法の施行を受けて2018年頃から急拡大しており、2020年までの3年間で前年30-50%前後の成長を続けてきた。2021年にも新規開設は続き、東京都心5区におけるフレキシブルオフィス床面積は404,000㎡、前年比10%増となっている。

サテライトオフィスと支社・支店との違い

 サテライトオフィスと支社・支店は、機能面や管理の仕方などに違いがある。支社・支店の多くは恒常的に設置され、エリアの営業拠点としての役割を果たすのに対し、サテライトオフィスは管理する社員が常駐せず、個々の従業員が業務を行うことに特化しており、契約も一時的であることが多い。

サテライトオフィスが実現する多様な働き方

サテライトオフィスがテレワーク時代の働き方の多様化を促していることの理由として、いくつか挙げられるが、その中でも自宅に近い場所に設置されているサテライトオフィスは、子育てや介護など、ライフワークとのバランスを重要視している従業員にとっては好都合の環境であることは見逃せない。このようなタイプのサテライトオフィスは、時短勤務の従業員を通常規定で雇うことが可能になるなど、雇用の高いハードルを下げてくれることにも繋がる。また、都心ではなく、地方でのサテライトオフィス導入・開設により、今まで手の届かなかった地方在住の優秀な人材獲得にも寄与する。このようにサテライトオフィスにより、従業員の多様かつ柔軟な働き方を促進するだけではなく、企業サイドとしてもメリットとなる要素がたくさん含まれているのだ。  

サテライトオフィスの3つの種類

サテライトオフィスは、対象となるオフィスワーカーの種類によって3つに分類される。

都心在住者向けサテライトオフィス

都心に拠点を置くオフィスワーカー向けに設けられた、大規模なオフィスビル内にワンフロアを占めるコワーキングスペースなどが該当し、地方や郊外に本社を構える企業の都心における営業拠点や、移動時間の効率化、BCP対策などがおもな利用目的となる。

郊外在住者向けサテライトオフィス

ベッドタウンなど従業員の居住エリアに近いサテライトオフィスは、通勤時間の短縮や、自宅内にテレワーク用のスペースや設備が足りない従業員のための利便性向上の役割を果たす。

地方在住者・出張者向けサテライトオフィス

地方在住者・出張者向けサテライトオフィスは、都心の企業が地方へ展開する際の拠点や出張時のワークスペースとして、あるいは環境の良い地方都市にサテライトオフィスを開設することで、福利厚生やワークライフバランスの向上を目的とするケースもみられる。

サテライトオフィスを設置するメリット

従業員のエンゲージメントが高まるだけでなく、採用においても家庭の事情で制約を抱えながらも高い能力を持つ人材の応募増加が期待できる。

企業にとってサテライトオフィスを設置することのメリットは数多いが、特に次のような点に着目したい。

従業員の生産性向上

郊外型サテライトオフィス導入によって通勤時間が縮小されれば、従業員の時間的・肉体的負担が軽減し、その分を効率的に本来の業務に充てることができる。

従業員の意欲向上

 サテライスオフィスという選択肢は、働く場所や時間を従業員の裁量で決められるABW(Activity Based Working)と非常に親和性があり、ワークライフバランスが良好になった結果、働く意欲やモチベーションが向上することが期待できる。

コスト削減

従来型の全員が出勤する前提のオフィスでは全員分の座席とオフィス面積の確保が求められたが、サテライトオフィスを組み合わせることによってコアオフィスをフリーアドレス化すれば、オフィス面積を最適化し賃料コスト削減が実現できる。

人材採用の優位性

多様な働き方へのニーズが高まる現在、サテライトオフィス導入によりよりフレキシブルな勤務場所・時間を提供できる企業には、従業員のエンゲージメントが高まるだけでなく、採用においても家庭の事情で制約を抱えながらも高い能力を持つ人材の応募増加が期待できる。

非常時のBCP(事業継続計画)対策

災害などの非常時に、被害の少ない別拠点で事業を中断することなく継続するためのリスクヘッジ計画をBCP(事業継続計画)というが、複数のサテライトオフィスにデータや人を分散させることは有効なBCP対策となりうる。

従業員の理想の職場を実現する

サテライトオフィスを設置するデメリット

サテライトオフィス導入において、デメリットや課題点はないのだろうか。1つずつ検証していきたい。

セキュリティリスクの上昇

ワークスペースの分散は、オフィスそのもののセキュリティに加え、デバイスやインターネット環境、共有スペースへの資料の置き忘れなど、セキュリティ面でのリスクは増える傾向にある。物理的な対策に加え、従業員の研修などで意識改革も行っていきたい。

設備投資のコスト増

サテライトオフィスでオンラインでの会議や打ち合わせがスムーズに行えるような社内ITインフラの構築など、円滑な執務環境を整備するには相応の設備投資が必要だ。

サテライトオフィス導入の4つの重要なポイント

データから、自社にとってどのような仕事の進め方が最適なのかを見きわめてロードマップを策定することがサテライトオフィス導入を成功へ導

アクセスしやすい立地に設置すること

サテライトオフィス を導入するからには、従業員にメリットを感じてもらい、モチベーション向上や柔軟な働き方の実現に繋がるようにしなくては不毛となってしまう。通勤時間を短縮することが目的の場合、従業員が自宅からアクセスしやすいターミナル駅に設置されていることが重要なポイントとなる。導入の目的によってもポイントは様々だが、通勤時間短縮のためのサテライトオフィスは多様な人材獲得に繋がるため欠かせない。

個人の働き方を尊重したABWを取り入れたオフィス

多種多様な目的がサテライトオフィスにはあるが“どこでも”働けるという考え方を取り入れたABW型のオフィス戦略は、個人を尊重した多様な働き方を実現できる。ニューノーマルな時代だからこそ注目されているABWの考え方からサテライトオフィスを活用し、従業員に働く場所の選択肢を与え、モチベーション向上から生産性が高まるという結果にも繋がりやすいのではないだろうか。

円滑なコミュニケーションを取るためのデジタルツールの設定

サテライトオフィスを活用したテレワークに欠かせないのが、仕事上でのコミュニケーションを成り立たせるデジタルツールだ。本拠地のオフィスから離れた場所での仕事となるため、非対面型のコミュニケーションや書類の共有、会議などが業務の中で必ず発生する。それらを全てデジタル上で完結させ管轄できるプラットフォームの設定が必須となる。柔軟な働き方へと考え方がシフトすると共に、その変化した“働く環境”に欠かせないインフラをアップデートすることが求められている。

目的・課題の明確化

サテライトオフィスの導入にあたっては、何のために、またどのような課題を解決するために行うのかを明確にすることが欠かせない。従業員の生産性やスペース利用率といったデータから、自社にとってどのような仕事の進め方が最適なのかを見きわめてロードマップを策定することがサテライトオフィス導入を成功へ導くだろう。

サテライトオフィス導入事例

ニューノーマルの時代をリードしてサテライトオフィスを導入した企業の事例を紹介する。

NTTグループ

ICT事業や電気通信事業を統括する日本の通信業界大手NTTグループは、2022年6月、従業員の「住む場所」の自由度を高め、健康経営を一層推進していく観点から、日本全国どこからでもリモートワークにより働くことを可能とする「リモートスタンダード」制度を導入することを発表した。

同グループは以前よりサテライトオフィス拡充やスーパーフレックスタイムなど、働く時間と場所の自由度を高める施策を講じてきており、その成果もあって、会社への通勤圏への居住を不要とし、勤務場所を「社員の自宅」とする今回の体制が実現したといえる。

本質的な戦略策定がサテライトオフィス導入成功の鍵

企業のサテライトオフィス導入は、これまで都心に集約していたワークプレイスの分散化と効率化に貢献し、トータルコスト削減や従業員の多様な働き方を実現している。

しかし、本社オフィスの拡大やオフィス統合によってコミュニケーション活性化などを目的にした集約型のオフィスづくりに注力する企業も存在する。

サテライトオフィスをはじめとするワークプレイス戦略の策定にあたっては、自社の課題や目的にそった本質的な要素を取り入れることにより、将来的な成長への成否が分かれてくるといえるだろう。

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