事例紹介

資生堂「GLOBAL VISION CENTER」 - グローバル本社オフィスリニューアル事例

3年半に及ぶリニューアル工事を経て生まれ変わった資生堂グローバル本社オフィス。オフィスの中で常にブランドを体感し、ビューティーイノベーション創発を目指す。

場所

東京都港区

価値

2021年度 日経ニューオフィス賞受賞

スポットライト

オフィスリニューアルに関するコンサルティングとプロジェクトマネジメント

規模

地上22階地下2階、工事面積: 26,850㎡

不動産タイプ

オフィス

企業成長の原動力は人であるという「PEOPLE FIRST」を体現するべく、最大限のパフォーマンスを発揮できるように全社的なワークプレイス改革を2016年より推進。その集大成となるのが、2021年4月末にリニューアル工事が完了した資生堂グローバル本社オフィスだ。「GLOBAL VISION CENTER(以下、資生堂GVC)」と名付けられた地上22階地下2階のオフィスビルは「ビジョン・戦略を構築し世界へ発信する場」、「グローバルブランドの世界観を構築し、感じる場」、「PEOPLE FIRST実践の場」という3つのコンセプトに基づき、グローバル本社にふさわしい事業戦略拠点として「全従業員が常にブランドを体感し、ビューティーイノベーション創発」を実現できるABW型オフィスへと生まれ変わった。2層ごとに吹き抜けとなっている特殊なフロア構造、居ながら工事といった様々な課題がある中、JLL日本 プロジェクト・開発マネジメント事業部は資生堂 ファシリティマネジメント部と協働し、プログラミング、プロジェクトマネジメント、チェンジマネジメント業務を担当、本プロジェクトを支援した。

クライアント・施設概要
株式会社資生堂

・事業内容: スキンケア、メイクアップ、フレグランスなどの化粧品事業を主軸とする他、ヘルスケア事業やレストラン事業など幅広く展開。企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」。美の力でよりよい世界を実現する。

グローバル本社オフィス「資生堂GVC」
  • 所在地: 東京都港区東新橋1-6-2
  • 建物規模: 地上22階地下2階
  • 建物延床面積(工事面積): 26,850㎡
  • リニューアル工期: 2017年12月-2021年4月
  • オフィス開業日: 2021年5月
資生堂GVCのコンセプト

事業戦略を策定するグローバル本社としての役割と、資生堂が展開する「ブランドビジネス」の発信拠点という2つの面を体現するオフィス機能と内装デザインが特長。「ビジョン・戦略の構築・世界発信の場」、「グローバルブランドの世界観を感じる場」、「PEOPLE FIRST実践の場」という3つのコンセプトにちなんだ多種多様なオフィス機能を備えている。

「ビジョン・戦略の構築・世界発信の場」

経営の中核として、さらに各ブランドビジネス発展の拠点として機動的に戦略を構築、世界各地の地域本社に対してビジョンや戦略を伝達する戦略拠点であり、企業戦略やブランド情報を顧客など対外的に発信する場を目指した。主な機能として、オフィス内で商品パッケージなどの試作を迅速に行うためのクリエイティブ工房、様々なイベントを実施し、社内外に向けて情報発信を行う本格的なオンライン配信スタジオを開設。その他、ヒエラルキーのない組織を体現する役員室のオープンラウンジ化や、世界各地の拠点との常時モニター接続、海外からのゲストをもてなす場として日本の美を体現した「和室」空間などがある。

「グローバルブランドの世界観を感じる場」

内階段で連なる2層ごとの吹き抜けを生かすため、2層を1つのブランドフロアとしてデザインし、常に各ブランドの世界観を感じながら働ける環境を実現。ブランドカラーやロゴなどを細部まで反映した会議室をはじめ、執務エリア内にブランドの模擬店スペースを設置し、店舗づくりなど実物展示を確かめながら店舗づくりを議論できる。また、2層の上層階はコーポレートスタッフ部門の執務フロアとなっており、通常業務では直接的にブランドに関わらない従業員に対しても、資生堂がもつ多様なブランドを体感できるようにスタッキングにも工夫がなされている。また、資生堂が扱うグローバルブランドの商品がすべて揃い、体験・購入できるオフィス内ブランドショップ「ザ・ギンザ」を設置している。

「PEOPLE FIRST実践の場」

執務エリアと差別化した森林をイメージした非日常の空間により、想像力の刺激とヒエラルキーを排した自由な発想を得る「新価値創造フロア“イレブン”」を開設。個人で思考を深める場と、偶然の出会いにより新しいアイデアを得る場とする。また、チームビルディングや部門間コミュニケーションを促す仕掛けを持ったカフェテリアや、オフィスの使い方などをワンストップで相談できるコンシェルジュや各種オフィスサービス機能を充実させている。

プロジェクトの過程

2015年

2015年度から実行している中長期戦略「VISION 2020」の重要戦略の1つである「PEOPLE FIRST」に掲げた「人材に投資する」を体現するべく全社的なワークプレイス改革が始動

2016年

グループ全社に通底するワークプレイスコンセプト「創造力の交差点」を策定

2017年

大宮、広島などに所在する地方拠点のリニューアルを実施

12月からグローバル本社オフィスのリニューアル工事に着手

2018年

4月から国内のマーケティング・販売活動を統括する資生堂ジャパンのオフィス移転プロジェクトが始動。11月、先行してグローバル本社14階フロアをABW型オフィスへ改修

2019年

5月に「SJ-STATION」と命名された資生堂ジャパンの新オフィスが浜松町にて開業

2021年

グローバル本社のリニューアル工事が完了。「資生堂GVC」として5月に開業

JLLの受託業務内容

ワークプレイス戦略づくりやコンセプト「創造力の交差点」の策定に携わるなど、JLL日本は資生堂のワークプレイス改革の始動時から各種プロジェクトに参画。地方拠点のリニューアルや資生堂ジャパンのオフィス移転プロジェクトなども全面的に支援した。

資生堂GVCでは、クライアントが思い描く理想のワークプレイス実現に向けて要求条件を抽出するプログラミング、内装工事に関する設計・調達を円滑に進めるプロジェクトマネジメント、新オフィスの意義や機能性を従業員に広く周知し、工事完了後からすぐにワークプレイスを円滑に稼働させるためのチェンジマネジメントを担当した。

プロジェクトの課題
「居ながら工事」に伴う複雑なスケジュール調整

既存オフィスビル1棟を全面改修し、新たな働き方を実践する場へ生まれ変わらせた。そのため、館内で従業員が働きながら同時並行でリニューアル工事を進める「居ながら工事」を行うことになり、加えて各フロアにおいてブランドの世界観を体現しつつ、当該フロアを使用する事業部などの働きやすい環境に配慮した仕様としたため、ベースとなる標準レイアウトを策定し、画一的な内装デザインで各フロアを順番に改修していくというスタンダードな工事プランが適用できなかった。当初の在館者数は2,600人に及び、その大半は固定席勤務のため、館内で身動きが取れない状態だった。そのため、各フロアのユーザーとの意見調整や、居ながら工事のスケジュール調整が非常に困難だった。

解決策

居ながら工事は14階を先行してリニューアル工事を実施。その後、日本地域本社の資生堂ジャパンが浜松町へオフィス移転することに伴い、在館人数は1,800人程度に。空室になった一部フロアをスイングスペース(仮の移動先)としてABW型オフィスを整備。工事を行うフロアで働いていた従業員にスイングスペースへ移動してもらい、その空室となったフロアの工事を行うという一連のスキームを繰り返していく。また、スイングスペースをABW型オフィスとすることで、多くの従業員が事前に新しい働き方(ABW型オフィス)を体験でき、チェンジマネジメントも併せて実行した。

すべての従業員がブランドビジネスを実感できるオフィスをいかに実現するか

コーポレート部門のスタッフなどは化粧品ブランドに直接関与しておらず、美を扱う企業で働いている実感が希薄になるという課題がある中、新オフィスに求められたのは、すべての従業員がブランドビジネスを実感し、企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」に貢献することだった。

解決策

同ビルは偶数階とその上階が屋内階段と吹き抜けで繋がる2層1セットのフロア構造(ミルフィーユ構造)となっており、2層の下層階をブランド部門、その上層階をコーポレート部門といったミルフィーユ状に配置することで、コーポレート部門にもブランドビジネスに携わる意識を醸成させ、相互交流を促した。また、組織改編に伴うチャーンコストをできるだけ最小化するため、組織人数に応じてブランド部門・コーポレート部門の組み合わせを変更することで、各フロアにフィッティングさせることができた。さらに、仕事の枠や立場を超えた自主的な活動を促し、ビューティーイノベーション創出のアクセラレーターになるような「装置」として11階に「新価値創造フロア“イレブン”」を開設。豊富な植栽と自然界にまつわるBGMや映像など、五感に心地よい空間心理的安全性を醸成するため、部署が異なる従業員同士がリラックスしてお互いを知る機会をつくり、自由にアイデアを議論できる場を作り上げた。

リニューアルの成果

オフィス開業後の従業員アンケート調査において、回答者の96%が改装後のオフィスについて創造性を喚起するオフィス環境になったと回答。また、オフィス内スタジオや各フロアからのオンライン発信が売り上げに大きく寄与した。また、資生堂GVCは2021年度の日経ニューオフィス賞を受賞。2019年度のR&Dセンター、2020年度の資生堂ジャパン本社オフィス「SJ-STATION」に続き、3年連続での受賞となった。

クライアント&担当者の声

資生堂 ファシリティマネジメント部長/JFMA認定ファシリティマネージャー 下野 勝之氏は次のように述べています。

「汐留本社オフィスは、事業活動に関するビジョンを発信することを重視しており、だからこそ名称を『GLOBAL VISION CENTER』としています。それにふさわしい働き方を実践でき、情報発信していく場として機能していきます。オフィス内のしつらえにこだわっているのも、各ブランドがアイデンティティを確立し、グローバルにビジョンやメッセージを発信する際に大きな意味合いを持ってくるはずです。SNSなど、マーケティング戦略の主軸が変化してきている中、こうしたオフィス環境が今後の事業活動に大きく貢献していくと自負しています。『ゆりかごから墓場まで』という言い方をしていますが、JLLはオフィス市場に関するリサーチをはじめ、オフィス仲介、チェンジマネジメント、プロジェクトマネメントなど、ファシリティマネジメント業務全般に関わるサービスを提供しています。当社の全社的なワークプレイス改革におけるオフィス戦略の策定を皮切りに、地方拠点のリニューアル、資生堂ジャパンの本社オフィス移転、そしてワークプレイス改革の集大成と位置付ける資生堂GVCのオフィスリニューアルまで継続的にサポートしていただき、非常に満足しています」

JLL日本 プロジェクト・開発マネジメント事業部 プロジェクトマネージャー 横田 彩子は次のように述べています。

「2016年からスタートした資生堂のワークプレイス改革の方針やコンセプトを反映し、社員代表の皆様に参画いただきながら、新しいワークプレイスの理想像を議論していきました。特に、部署を超えて新価値創造の促進するフロア“イレブン”のアイデアなどは、フォーカスチームやユーザーの皆様とのワークショップを重ねることで得られた賜物であると思います。今回、ビューティーイノベーションを起こすための装置としてABWが採用されましたが、働き方が大きく変化することへの不安感・拒否感の解消のため、若手社員と移転担当管理職メンバーと共に全社的なチェンジマネジメントを実施し、様々なイベントを通して、全ての社員にワークプレイス変革の意義を理解・共感、さらに自分のものとして行動いただけるよう努めました。また、プロジェクトが進行する中、新型コロナ感染症が拡大しましたが、資生堂では他社に先駆けて在宅とオフィスとのハイブリッドワークへの移行が俊敏に進みました。これは、働き方と働く場を『パフィーマンスを最大化するために業務に合わせて自ら選択する』という意識変革が浸透してきたことも貢献し、結果的にコロナ禍などの『社会の変化』に柔軟性の高い働き方とオフィスが具現化できたと実感しています」