事例紹介

アサヒグループホールディングス – 新しい働き方「リモートスタイル」推進事例

飲料・食品メーカー大手のアサヒグループホールディングスは、グループ間のシナジーを発揮する新たな働き方の実現に向けて、全社的なワークプレイス改革を実行。JLL日本 プロジェクト・開発マネジメント事業部はオフィスの必要要件を導き出すプログラミング、設計・施工、引っ越しまで全面的に支援した。

場所

東京都墨田区ほか

スポットライト

プログラミング、プロジェクトマネジメント

規模

11フロア、4857㎡(吾妻橋本社ビルの改修)

不動産タイプ

オフィス

アサヒグループホールディングスは、2020年8月から事務・営業職を中心にリモートワークを導入する中、ウィズコロナ・ポストコロナに対応する新しい働き方「リモートスタイル」を推進するべく、2021年4月以降、全国の営業拠点55カ所を26カ所へ統合集約を順次進める他、2022年2月には吾妻橋本社オフィスの全面改修を完了させた。JLL日本 プロジェクト・開発マネジメント事業部はプロジェクトマネージャーとして、新たな働き方に必要なプログラミング(オフィス要求条件整理)、オフィス設計・内装工事、引っ越しまでの移転プロジェクトを円滑に推進するためのプロジェクトマネジメント業務(本社オフィス改修と営業拠点の統合集約)を担当。2020年11月から約11カ月というタイトなスケジュールかつ予算内で本社・営業所の統合集約、改修工事を完成させた。さらにJLL日本 オフィス リーシング アドバイザリー事業部は営業拠点の不動産取引支援を手掛けるなど、全社的なワークプレイス改革を支援した。

課題

2020年初頭、新型コロナ感染拡大に対する措置として在宅勤務制度を全社的に導入するなか、コロナ対策のみならず、従来からの働き方を変革する機運が醸成され、吾妻橋本社オフィス、各地方拠点を含めた全社的なワークプレイス改革が始動した。業務遂行に「最適」な環境で、「最大限」の能力を発揮し、期待を超える価値を創造するため、リモートワークとオフィスワークを組み合わせた「ワーク&ライフのイノベーション」の実現を目指すことになったが、プロジェクトを推進する上で3つの主な課題があった。

1. 工期

プロジェクトの第1フェーズとして2020年11月-2021年4月まで約6カ月で地方営業拠点7カ所の統合集約、第2フェーズでは営業拠点14カ所、2022年に吾妻橋本社オフィスの改修工事など、全国23拠点の統合集約を同時並行で進めなくてはならなかった。また、コロナ禍のためリモートでプロジェクトを推進することを余儀なくされ、地方営業所とのコミュニケーションを円滑に進めることが求められた。

2. 従業員の心理的懸念

全国規模で地方拠点の集約統合とリニューアルを計画しており、大幅にオフィス面積が縮小されるため「出社しても座席を確保できない」など、オフィスを実際に使用する従業員にとって心理的な懸念が生じていた。

3. 働き方が異なる事業会社すべてが満足するオフィス設計

主要グループ会社であるアサヒビール、アサヒ飲料、アサヒグループ食品がそれぞれ開設していた地方営業所を統合集約するにあたり、各社の働き方・オフィスの使い方などが大きく異なるなか、いかに多くの従業員に満足してもらえるオフィス設計を進めていくかが課題となった。

アプローチ

JLLは設計を開始してから工事完了までのスケジュールを見直すと共に、共通する標準的なデザインを策定し、各拠点に応用していくことで複数拠点を個別にデザインする工程を省略。設計者との連携を密にし、わずか2カ月で第1フェーズ(7拠点)の設計を完了させることに成功した。

今回の移転プロジェクトの意義・コンセプトについて従業員に丁寧に説明することを心掛けた。集約移転に伴う効率化のみならず、新たな働き方に対するワクワク感の醸成に努めた。新たなオフィスの標準デザインが現地ニーズに合っていない場合は、PCR検査等を受けたJLLのスタッフが現地入りし、意見調整を行うなど、従業員の心理的懸念を払しょくに努めた。

働き方が異なる各社の事情と統一感のあるワークプレイスを整備するため、各社・各拠点で異なる要望を取りまとめ、標準デザインから逸脱しないような設計を心掛けた。

成果
吾妻橋本社オフィス

都内5拠点に分散していたグループ会社11社を吾妻橋本社オフィスへ統合集約するべく、リニューアル工事を行った。新たなワークプレイス戦略のコンセプトとして「フラッグシップ・シンボルとして情報発信できる環境の創造」、「グループシナジーを創出する『ハブ』となる環境の創造」、「社員が新しいワークスタイルを体感し、誇りを持てるワークプレイスの創造」の3つを策定。オフィスは「新しい発見、体験ができる場」、「チームビルディングなどのマネジメントが発揮できる場」、「アイデア創出などの活発なディスカッションの場」、「グループとしての一体感を感じられるエンゲージメントの場」とした。

改修したのは11フロア、床面積4,857㎡に及び、会議室、応接室、プレゼンテーションルーム、そして各グループ会社の執務室が対象。グループ各社で異なる働き方に対応するべく、基本となるデザインコンセプトは全社的に統一しながら、各社で必要な機能・デザインを落とし込むことで、グループ一体となって企業価値の向上、お客様満足度の向上を目指すという同社の新たな働き方を体現する。また、フリーアドレス導入により無駄のない機能的なオフィスを実現した他、オンライン会議等の需要増加を見越してフォンブースを導入。JLLは改修工事の着手から引き渡し完了まで約7カ月で実現した。

地方営業拠点

同一県内で分散していたグループ会社の各営業拠点の効率化を図るべく、グループ会社の共同利用を前提とした「グループワンオフィス」として全国55拠点を26拠点へ統合集約するプロジェクトにおいて、JLLは21拠点を担当。フリーアドレス席として、グループシナジーが発揮しやすい執務環境へと生まれ変わった。在宅勤務を導入し出社人数を従業員比30%に抑えたオフィスとするべく、JLLはアサヒグループホールディングスと協働でチェンジマネジメントを実施。拠点集約による床面積縮小による影響を最小限に抑えながら使い勝手の良いオフィス空間の実現を支援した。

クライアント&担当者の声

JLLには世界における働き方やオフィスの最新トレンドをはじめ、グローバルトップ企業の考え方などを率直に提案していただけたのは、今振り返ると非常に良かったと思います

アサヒグループジャパン 執行役員 総務部長 秋葉 哲氏は次のように述べている。

当社は、グローバルレベルで「挑戦と革新」を起こしていく企業風土を目指しておりますが、慣れ親しんでいた既存のオフィスの変革には、当初はかなり慎重な意見が多かったです。しかし、JLLには世界における働き方やオフィスの最新トレンドをはじめ、グローバルトップ企業の考え方などを率直に提案していただけたのは、今振り返ると非常に良かったと思います。すべての提案を実現できたわけではありませんが、納得のいく提案は積極的に採用し、新たなワークプレイスを構築できたことは非常に感謝しております。

今回のプロジェクトを機に、新しい働き方を実践している従業員に定期的にアンケートを実施しました。全体的にポジティブな意見が多く、特に在宅勤務とオフィス勤務の使い分けが活発になっており、集中して個人ワークに対応できるようになったとの意見や、通勤時間を業務やプライベートに充てられるという前向きな意見が非常に多かったです。一方、会議システムや電話を通じた遠隔型のコミュニケーションは、対面型コミュニケーションに比べると質量ともに低下していると認識しています。この課題に対して、リモートワーク時の会議のあり方、コミュニケーションの取り方、部下との1on1ミーティングのやり方など、少しずつ改善に取り組み始めています。オフィス環境は非常に整理され、各種機能が明確になりました。完全フリーアドレス席の導入と在宅勤務との併用を前提に、現在のオフィス出社人数は在籍人員に対して3-5割程度の座席数を確保しています。当初は「出社して本当に座席が確保できるのか」と不安を持つ社員もいましたが、各エリアで出社率をコントロールしながら、誰が出社しても把握でき、座席が確保でき、オフィス機能が発揮できるようにしています。

JLL日本 プロジェクト・開発マネジメント事業部 部長 石田 哲朗は次のように述べている。

アサヒグループホールディングスが実現した新しい働き方を実践する場として、吾妻橋本社オフィスの改修ならびに全国営業拠点の統合集約において、プログラミングとその後のオフィス設計、工事、引っ越しまでを担当しました。今回のプロジェクトではオフィスを集約するにあたり、グループ各社の働き方やオフィスの使い方が大きく異なる中、横串を刺しながら効率的に設計を進め、いかにしてタイトな工期に間に合わせるかが非常に難しい課題となりました。トップダウンだけでなく、ボトムアップでプロジェクトを進めていくという提案を行い、クライアントの社風や企業文化に合わせて、プロジェクトコンセプトを守りながらオフィスを実際に使用する従業員の方々のニーズを組み合わせ、クライアントが思い描く理想的なオフィス環境を整備することができ、その結果、これほどの大規模プロジェクトでありながらも短工期かつ予算内で実現することができました。

JLL日本 プロジェクト・開発マネジメント事業部は国内のみならず、グローバルに事業展開される多種多様なクライアントのオフィス移転・改修プロジェクトを手掛けてきた知見・実績を通じて、クライアントそれぞれのニーズに合致した最適なプロジェクトの進め方を提案し、理想的なワークプレイス戦略の実現をお手伝い致します。

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