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オフィスデザインが生み出す働き方への効果とテクノロジーとの繋がり

オフィスデザインはこの数年で大きく進化を遂げた。アップデートされた働き方により求められるオフィスデザインも変化し、テクノロジーの発達もそこに深く関連してきた。今回は進化するオフィスデザインがもたらす働き方への効果と、テクノロジーとの繋がりについて解説する。

2021年 01月 04日

テクノロジー時代におけるオフィスデザインの進化

オフィスデザインは時代と共に進化してきたといっても過言ではない。企業が価値を提供し続ける上で、オフィスは従業員の拠点として重要な役割を果たし、オフィスデザインは生産性の向上やモチベーションを高めるための企業戦略の欠かせない要素の1つとして捉えられてきた。ヒトのニーズにより進歩するオフィスデザインだからこそ、働き方が激変してきたこの数年で、オフィスデザインの概念も大きく変化したのではないだろうか。この変化を後押ししたのは、次世代通信ともいわれる5G導入による通信サービスの高速化などのテクノロジーの急速な発展である。オフィスデザインとICT、IoT、ビッグデータやAIなどを活用したワークプレイステックの融合により、従業員がより効率的に働けるようになるなど、数年前までは想像もつかなかったのではないだろうか。これからのオフィスデザインを考える上で、テクノロジーは欠かせない存在になっているのだ。

 

ヒューマン・パフォーマンスを向上させるオフィスデザイン

現場の声から課題の本質を抽出する過程を経たオフィスデザインは、不確かな時代を乗り切るために欠かせない企業戦略の必須項目となってくる

オフィスデザインは、従業員であるヒトのエクスペリエンスが大きく影響している。コロナ禍でニューノーマルな働き方が当たり前となる中、デジタルでのコミュニケーションが多くなり、心理的負担を抱える従業員も少なくない。JLLが発表した「新型コロナウイルスがオフィスワーカーに与えた影響に関するサーベイレポートvol.3」では、リモートワークでの従業員の心理状態に関する設問で全体の38%が、何らかの心理的負担と個人的な責任感を持っていると感じているという。その中では、自身の仕事に対して不安がある・常にプレッシャーを感じる状態にある・気が滅入っているという内容が見られ、リモートワークによる心理的な負担があることは確かであり、経営層はこの問題に対応した策を進めることが必要となってくる。
 


JLLリサーチ「新型コロナウイルスがオフィスワーカーに与えた影響に関するサーベイレポートvol.3」から抜粋

 

ニューノーマルな働き方で生まれた課題を解決へ導くのが戦略的なオフィスデザインであり、心理的負担を軽減しながらヒューマン・パフォーマンスを向上させる設計が欠かせない。パフォーマンスに影響する要素として、スペースとテクノロジーが挙げられる。スペースは、クリエイティブスペース、コラボレーションスペース、屋外・緑化スペース、プライバシースペース、学習・開発スペース等のオフィスデザインによって、様々な機会を提供することで、リアルな交流が可能となる。またテクノロジーでは、ソーシャルネットワーク、CRMツール、プロジェクト管理ツール等を取り入れることでニューノーマルな働き方に相応したハイブリッドなオフィスの構築に繋がる。現場の声から課題の本質を抽出する過程を経たオフィスデザインは、不確かな時代を乗り切るために欠かせない企業戦略の必須項目となってくるだろう。

これからのオフィスデザインに欠かせないテクノロジーを活用したオフィス戦略

時代に沿ったテクノロジー活用のオフィス戦略を具体化する上で必要なのは、まず現状をよく知り、課題や問題を元に解決策となる要素を盛り込んでいくことであり、このプロセスが本質的な効果を生み出し、新しい働き方を促進する。2020年9月にJLLが発表した「新型コロナウイルスがグローバル・アジア太平洋地域のオフィスワーカーに与えた影響に関するサーベイ」で、コロナ禍でリモートワークを経験しているアジア太平洋地域のオフィスワーカーの61%が「オフィスに戻りたい」と感じているというデータが確認 できた。オフィスに戻りたい最大の理由は、日本では「業務に集中できる環境」、APACでは「人との交流や同僚との付き合い」が挙げられた。この調査結果から、オフィスという場の重要性は揺るがず、業務を効率的に遂行できる場所と、ヒトの安全衛生を最優先にしたウェルビーイングな働き方を提供できるようなオフィス戦略が企業には必要となることがうかがえる。

ソーシャルディスタンスを踏まえ業務に集中できる場を従業員に提供していくには、オフィスを分散させ、サテライトオフィスの設置により遠隔操作を可能にするなど、様々な戦略が生み出されている。ここで重要なポイントは現状の課題からも読み取れる「コミュニケーション」であり、この要素を取り入れたオフィスデザインが要となるのではないだろうか。また、オフィス環境の安全衛生を維持するため、空気の滞留状況の確認や従業員、訪問者のサーモグラフィによる体温検知などテクノロジーの導入は必要不可欠となる。働き方の激変時代だからこそ、ヒトのニーズへの迅速な対応が求められ、テクノロジーの革命がそのスピードを加速させている。

働き方改革の要となるワークプレイス改革について詳しく見る

 

オフィスデザインのコンセプトが映し出す企業戦略

働く場は、従業員が企業の想いを感じることができる空間であり、オフィスデザインを通して社外へアピールできるからこそ未来に繋がるコンセプト策定が肝となる

 

オフィスデザインは、根幹となるコンセプトの策定によって成否が決まるといっても過言ではない。企業戦略の本質要素が映し出されるオフィスコンセプトだからこそ入念な過程が必要だ。昨今関心が高まるサステナブルオフィスは、廃棄物量の削減等の取り組みや、自然とのつながりを重視したバイオフィリックデザイン等を採用したスタイルだ。持続可能な運営により環境配慮を意識しつつ、従業員の健康増進を促すというブランディングと、社内の環境改善の視点を戦略的に策定したサステナブルオフィスを実現する企業も増えてきている。その他、従業員同士のコミュニケーション低下や自社ブランドへの理解不足という課題を解決するため、ヒトとの交流が生まれるようなコンセプトの新しいオフィスデザインを採用し、従業員からの高い評価も得られたという。働く場は、従業員が企業の想いを感じることができる空間であり、オフィスデザインを通して社外へアピールできるからこそ未来に繋がるコンセプト策定が肝となる。

 

「自分の居場所」をコンセプトとしたオフィスデザイン事例

企業が様々な戦略でオフィス改革を進める中、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)型のオフィスデザインや社内外のステークホルダーとの交流が生まれる場所を設置する事例も少なくない。コロナ禍でも、オフィスは優秀な人材を獲得するためには重要なベネフィットとなると認識したオフィス拡張移転の企業事例では、従業員へ自由に働く場の選択肢の1つとしてオフィスを提供、「自分の居場所」と思えるようなオフィス空間を構築するため、交流拠点となるハブスペースや屋内庭園となる芝生のミーティングスペース等、ABW型をベースに多様なオフィスデザインでコンセプトに沿った空間を実現させた。様々な可能性を持つオフィスデザインは、人材確保等、企業のこれからの戦略に欠くことのできない要素の1つとなるといってもいいだろう。

オフィスデザインとテクノロジーの融合

テクノロジーを活用したオフィスデザインは、様々なテクノロジーツールにより従業員の働きやすい環境を実現している。例えば、快適な空間を従業員へ提供するため、リアルタイムでスペースの利用率を検知し、頻繁に使用されている場所や使われていない場所をデータの可視化により特定、オフィス環境の最適化に繋げるIoTセンサーの活用やディープラーニングセンサーを用いて最大97%の正確度で熱量、デスクの利用率などを追跡可能なVergesense などが挙げられる。これらのテクノロジー技術を活用したオフィスリノベーションを実施している企業も少なくない。テクノロジーツールがオフィスデザインの中へ組み込まれることにより、自動的にデータを蓄積してくれるため人的リソースの懸念もなく、可視化されたデータを元に生産的な最適化を実現することができる。従業員にとって価値のある効果を生み出すことは、長期的な企業戦略にも寄与し、費用対効果も得られるため、テクノロジーを活用したオフィスデザインに取り組む企業も増えている のだと考えられる。

同時に、前述したオフィス戦略が根本にあった上でのオフィスデザインでなければ、テクノロジーも、意図的に設計された空間も、意味を持たなくなってしまう。テクノロジーをバランス良く活用し、働き方を改善する中で、ヒト中心のオフィスデザインがいつの時代も必要であることが、企業のこれからを左右するポイントとなるのではないだろうか。

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