【6つのメリット】オフィス緑化の手順や成功事例をご紹介
近年、従業員のウェルビーイングや企業のブランディング、またSDGsの一環としてオフィスに緑を取り入れる企業が増えている。経営者やオフィススペース管理責任者に向け、オフィスグリーンを導入するメリットや費用、手順など、成功事例をまじえて解説する。
オフィス緑化とは?
オフィス緑化とは、職場に植物をはじめとする自然の要素を取り入れオフィス内の質を向上させる取り組み である。具体的な施策は多岐にわたる。簡単なものから大規模な改修工事が必要なものまで、さまざまなオフィス緑化の手法が存在する。
- 観葉植物(屋内緑化):デスク上、共有スペース、会議室などに観葉植物を設置
- グリーンウォール(壁面緑化):壁面を利用して植物を垂直に配する
- グリーンカーテン :窓周辺につる性の植物を成長させ、夏の直射日光を遮る
- フェイクグリーン(人工植物):模造の植物を配置し、視覚的に緑を感じられるようにする
- 緑ゆたかな周辺環境 :大きな公園や森など緑が望める環境
緑を身近に感じられる環境は、心理的にも物理的にも働く人々に好影響をもたらす ことが農林水産省をはじめ、多くの研究で明らかになっている。オフィス緑化によって 従業員の生産性や満足度の向上 が期待できる。
オフィス緑化が注目を集めている背景
健康経営を実現するためには、それに対応した心と体の健康を高められるオフィス環境…つまりウェルネスオフィスの構築が不可欠
近年、国の推進する 働き方改革 のなかでも重要視されている「健康経営」は、従業員の総合的な健康管理を経営視点で戦略的に取り組んでいく手法である。
健康経営を実現するためには、それに対応した 心と体の健康を維持できるオフィス環境…つまりウェルネスオフィスの構築が不可欠 となる。
具体的なウェルネスオフィス構築の施策には、場所や時間を選んで働けるABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の導入、軽い運動やリフレッシュできる休憩スペースの設置、従業員同士のコミュニケーションを活性化するコミュニティスペースの設置などが挙げられる。なかでも従業員のウェルネスを向上させる オフィスデザイン改善の一環である「オフィス緑化」は実行しやすい手法 として注目されている。
オフィス緑化のメリット
オフィス緑化のメリットは数多い。主なものを紹介する。
ストレスや目の疲労の軽減
自然を感じられる要素をオフィスの内装やインテリアに取り入れる 「バイオフィリックデザイン」が近年注目されている。
花やグリーンのある室内環境では、脳内のα波が増幅し、仕事中のストレス状態緩和やリラックス効果 をもたらす。パソコン作業の後に植物を見ると 視覚疲労が軽減 するなど、オフィス緑化の効果についての研究報告も豊富だ。
生産性の向上
植物のあるオフィス環境では 集中力や生産性が向上するなどの報告も複数見られる。
加湿・空気清浄効果
多くの観葉植物には、葉からの水分蒸散作用でオフィスの乾燥をやわらげる効果がある。また一部の化学物質を吸収し、天然の空気清浄機のような役割を果たすことも報告されている。
パーティションや家具の代用
オフィスの「島」のあいだ、あるいは来客スペースと執務スペースの間に観葉植物などを配置することで、圧迫感をあたえず自然なパーティション効果が得られる。また休憩スペースにカーペットのかわりに人工芝を敷くなど、一般的なオフィス家具とフェイクグリーンを置き換えることで視覚的なリラックス効果が期待できる。
企業イメージの向上
オフィス空間に美しいグリーンを取り入れている企業は, 来客者や取引先に好印象を与え、SDGs達成やオフィス環境改善に積極的に取り組んでいる企業としてブランディングや採用面でもイメージ向上に寄与するだろう。
コミュニケーションの活性化
オフィス緑化によって従業員がリラックスした状態を保つことができれば、休憩時にも自然に会話を楽しみ 社内のコミュニケーションが活性化することが期待できる。
オフィス緑化を成功させるポイント
グリーンを導入することがゴールになるのではなく、従業員のウェルネス向上を最終目的とし、全体像を見据えたオフィス戦略が必要
企業が自社オフィスの緑化に取り組む際は、以下の5つのポイントをおさえておきたい
- 予算と期間を決めておく
- 社内担当者または外部委託で責任者を置く
- 動線を妨げないレイアウトにする
- 管理のしやすさを考える
- 従業員のウェルネス向上をゴールに設定する
予算と期間を決めておく
まずは初期費用と年間のコストを算出し、いつまでに導入を完了するのか計画立案する。
社内担当者または外部委託で責任者を置
計画立案・発注手配・トラブル時の対応などを統括する責任者を決めておくと運用がスムーズだ。社内でリソースや知見が不足する場合は外部に委託する。
動線を妨げないレイアウトにする
オフィスグリーンにはさまざまなメリットがあるとはいえ、業務の妨げになっては本末転倒だ。移動や会話の邪魔にならないレイアウトを考えよう。オフィススペースが限られている場合、床に置くのではなく天井から鉢を吊したり、壁面にグリーンウォールを設置するといった方法もある。
管理のしやすさを考える
天然の植物は日々の手入れが必要なため、できるだけ 管理しやすい種類 を選びたい。葉が落ちにくく、直射日光を浴びなくても成長するもの、週末に水やりができなくても枯れないものがおすすめだ。
どうしても管理が難しい場合、フェイクグリーン を採用するのも1つの方法だ。
従業員のウェルネス向上をゴールに設定する
オフィス緑化の最大の目的は、そこで働く人々の心身の健康を高めることだ。グリーンを導入することがゴールになるのではなく、従業員のウェルネス向上を最終目的とし、全体像を見据えたオフィス戦略が必要 である。
オフィス緑化の手順
オフィス緑化は、以下のような手順が考えられる。
- 目的と予算を定める
- オフィスのスペースや環境・日照条件等を把握し適切な植物を選定する
- 従業員の視線や移動経路を考慮しながら、配置を決める
- 水やりや植物の手入れのスケジュールを策定する
- 季節や環境の変化に応じて必要に応じて植物の入れ替えや追加も考慮する
このうち、具体的な取り入れ方 の例をもう少し詳しく解説する。
オフィスグリーンの取り入れ方
オフィスグリーンは、ポピュラーな鉢植えを置く形のほかにも、さまざまな形で取り入れることができる。
- ハンギングポットなどを使い、上から吊るす
- 壁にグリーンウォールを設置する
- パーティションに取り付ける
- 棚の上や中に置
- 床に人工芝を敷く
オフィス緑化とあわせて検討したいオフィスデザイン
オフィスの緑化は、それ単体ではなく、従業員の健康に寄与するオフィス・ワークプレイス改革の一部としてとらえる必要がある
オフィス緑化は、それ単体ではなく、 従業員の健康に寄与するオフィス・ワークプレイス改革の一部 としてとらえる必要がある。
例えば以下のような施策を並行して実施することで、従業員のパフォーマンスはより強く発揮されるだろう。
- 眺望と採光性 …明るく採光性の高い大きな窓と、直接日光がデスクに当たらないような配置やパーティションの設置、スマートガラスの採用など
- 身体を動かせる設備 …小型のフィットネスマシン、スタンディングデスク、卓球台など
- 休憩エリア …リフレッシュできるソファやコーヒーマシン、1人になれるスペースなど
- 色彩効果 …コラボレーションの必要なエリアは鮮やかで明るいピンクやイエローなど、集中が必要なスペースでは落ち着いた青やグリーンなどを使った内装
- フレキシブルスペース …その日の業務や体調に合わせて、執務環境が選べるシステム
オフィス緑化と従業員のウェルビーイングを意識した企業の取り組み事例
従業員の心身の健康を高める「健康経営」を意識し、オフィス緑化を含めたワークプレイス改革に成功した企業の事例を紹介する。
オフィス移転でウェルネスオフィスの実現へ「京都電子計算」
2022年に本社オフィスを移転し、テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドな働き方を開始した京都電子計算。
フロアごとにテーマを設け、たとえば4階はゆとりある執務スペースで開発に集中、5階は本格的なカフェを備えたオープンスペースと社内用ミーティングルーム、屋外キャンプをイメージした打ち合わせスペースなどを設置。いずれもオフィスグリーンを取り入れ、より快適なオフィスを構築することで、移転前の課題であった「労働環境の改善」を実現した。
オフィスの木質化がもたらす快適空間「エヌ・シー・エヌ(NCN)」
木造建築の耐震化促進事業を展開するNCNは2022年12月、東京・品川から赤坂見附へ本社オフィスを移転した。新オフィスの最大の特徴の1つが、「木質化」による環境配慮と居住快適性を両立した点だ。「ヤグラ」と名付けた同社の木質空間創造ツールには、吊り下げタイプのグリーンを設置し、あたたかみのある空間を作った。
木質素材でゆるやかにゾーニングされたオフィスは、梁に植物を吊るすことでヒトの視線が変わり、空間全体が広く感じられるようになった という。
ウェルネスオフィスを体現したJLLの東京・大阪新オフィス
2022年に移転したJLLの東京および大阪の新オフィスは、5つのコンセプトをベースに、サステナビリティやウェルビーイングに配慮したワークプレイスを体現し、2023年グッドデザイン賞や第36回日経ニューオフィス賞のクリエイティブ・オフィス賞(東京)、および奨励賞(大阪)を受賞している。
東京オフィスのエントランスには、ひときわ印象的な天井から垂れ下がるようなグリーンを配置、大阪オフィスのカフェスペースでは目の高さに広がる観葉植物のパーティションがリラックス効果や目の疲れを癒す効果 を高めている。
オフィスコンサル利用で最適なワークプレイス戦略を
オフィス緑化は、近年各企業が重視している健康経営の一環としてさまざまな効果が期待できる。
しかし、オフィス緑化はあくまでも1つの手段であり、緑化以外の施策も組み合わせて総合的に従業員の心身の健康に寄与するオフィスデザイン戦略 が必要だ。
最適なワークプレイス戦略を立てるには、数多くのオフィス構築のサポートを手がけてきた専門家やコンサルのサポートを受けることも一考に値する。オフィス緑化をはじめとしたウェルネスオフィスが最短距離で実現 するだろう。