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【事例・解説付き】オフィス移転スケジュール設定の成功ポイントとチェックリスト

戦略的なワークプレイス構築の核となる「オフィス移転」。この記事では一般的なオフィス移転スケジュールを時系列で解説し、何カ月前には何をすればいいのかなどの目安が一目で分かるチェックリストを用意した。オフィス移転の成功事例も紹介するので参考にしていただきたい。

2024年 01月 12日
オフィス移転にかかる期間の目安は

企業がオフィス移転を考えるのは以下のようなタイミングが多いのではないだろうか。

  • 会社や事業の成長に伴い社員数が増えたとき

  • 働き方の変化で出社人数が減ったとき

  • 設備やインフラが老朽化してきたとき

  • 立地やビルの外観・内装がブランディング向上に寄与しなくなったとき

  • 現在のオフィスの契約更新が近づいたとき
     

しかし、移転したいと考えてもすぐに実現できるわけではなく、移転にはある程度の期間を要する。

会社の規模や移転の内容に応じて必要な期間はそれぞれ異なるが、移転の計画立案を開始した時点から移転完了まで、小規模なオフィス移転であれば約6カ月、大規模なオフィス移転は約1年を目安に考えると良いだろう。

一般的なオフィス移転のスケジュール

オフィス移転の際には、何をどの順で行うのか。基本的な流れは以下のようになる。

  • 移転計画立案

  • 移転先の選定と契約

  • 旧オフィス解約の手続き

  • 新オフィスのレイアウト作成

  • 施工業者の手配

  • 家具・什器・備品類の発注

  • 引っ越し業者の選定と予約

  • 引っ越しの準備

  • 引っ越しと旧オフィスの原状回復

  • 官公庁やインフラ手続き・取引先への連絡
オフィス移転で押さえるべきポイント

事前にオフィス移転でどの課題を解決したいのかをリスト化し優先順位をつけたものを共有しておくと、選択肢がバッティングした時にスムーズな決定の助けになる

オフィス移転で実現したいことの優先順位を明確にし、全社で共有する
 

移転先のオフィスについて、社内の部署ごとに希望する立地が異なったり、設備投資にかけるべき費用の想定額が異なったりすることがある。

こういった際に備え、事前にオフィス移転でどの課題を解決したいのかをリスト化し優先順位をつけたものを共有しておくと、選択肢がバッティングした時にスムーズな意思決定の助けになるだろう。

解約予告期間に注意

賃貸オフィスでは通常、賃貸借契約書に解約予告期間が定められており、解約希望日の6カ月前など、オーナーに対して解約告知を行う義務が発生する。この期限を過ぎて旧オフィスを解約すると退去後の賃料や共益費などの支払いが発生し、新オフィスとの二重負担となってしまう。

せっかく理想の新オフィスを見つけてもコストの面で見送らざるを得ない、あるいは本来よりも多くの費用がかかるといった事態を避けるため、原状回復も含めて旧オフィスの契約内容と移転時期をしっかりと検討する必要がある。

移転先オフィスのレイアウトの自由度

現オフィスの課題を解決しオフィス環境を改善するために、移転先のレイアウトは最重要ポイントとなるが、同じ床面積でも室内に柱があると実際に使えるスペースが減りレイアウトの自由度が低下してしまう。

無柱のオフィスであるかどうか、また梁や素材等によって希望のレイアウトが制限されないか、事前に確認しておきたい。

オフィス移転の時期~繁忙期に注意

移転にかかる費用は年間を通じて同じではなく、需要の高まる繁忙期には引っ越し業者などを中心に価格が高騰する。また繁忙期で予約が取れず時期がずれ込むことで、人的・時間的なリソースも消費する。

一般的なオフィス移転の繁忙期は以下の時期となる。

  • 1-3月:3月の決算に合わせて経費のピークをこの時期に持ってくる企業が多いため

  • 9-12月:12月の決算に合わせて、またはオフィスの管理会社や不動産会社が年末休業に入る前に移転を済ませる企業が多いため

  • 5月:新入社員の研修終了後、現場に合流する時期に合わせて新オフィスを稼働させる企業が多いため

早い段階で計画を進めておけば、上記を避けて移転時期を設定することも可能だ。

オフィス移転【6カ月前まで】のスケジュール/新しいオフィス

ここからは、オフィス移転の具体的なスケジュールと、それぞれの時期にやっておくべきタスクをチェックリストで紹介する。

1つ1つの項目は業態や目的により若干時期が異なるため、自社の状況に合わせてカスタマイズすればより最適なものとなるだろう。

移転時期から逆算して1年-6カ月前までには以下の3つを完了させておきたい。

  • 移転プロジェクトを立ち上げ、目的・課題の明確化

  • 具体的な移転のスケジュールや予算などの計画立案

  • 移転先のオフィス選びをスタート

また、契約内容に従って旧オフィスのオーナーへ期限までに解約通知を行っておこう。

各ステップで必要な項目は以下のチェックリストを活用してほしい。

【チェックリスト】オフィス移転6カ月前までのスケジュール/新しいオフィス
項目 内容 チェック
移転目的の明確化 1. 現状の把握
2. オフィス移転で達成したい目標設定
移転計画・スケジュール立案 3. 移転にかかる内装・引越し費用を算出
4. 入居中オフィスの解約予告期間、原状回復工事、特約事項などについて現契約書の確認
移転先オフィス選定 5. 立地・周辺環境・通勤の利便性・ビルの設備・コストの条件を設定
6. オフィス市況の把握
7. オフィス情報収集
8. 適性面積の検証
9. 必要条件に基づいた移転先候補ビル物件選定
10. 移転先候補ビルの内覧等による現地調査
11. 移転先候補ビルの契約形態、条件の確認
12. 予算・スケジュールの策定

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オフィス移転【6カ月前】のスケジュール/新オフィス

新オフィスが決定すれば、具体的な賃貸借契約や新オフィスのプランニングへと進めよう。レイアウトの決定、内装業者選定・発注などを行う。

【チェックリスト】オフィス移転6カ月前のスケジュール/新オフィス
項目 内容 チェック
事前リサーチ・社内コミュニケーション 1. 新しいオフィスの意義・本質を社内で共有
2. 従業員が求める新しいオフィスの在り方についてアンケート調査を実施
3. 新しいオフィスのコンセプトに従業員の意見を反映できるよう重要ポイントをまとめておく
賃貸借契約締結 4. 契約締結に向けての物件交渉
5. 検討依頼書の提出
6. 賃貸借条件の交渉
7. 借室申込書の提出
8. 賃貸借契約の条文調整
9. 重要事項説明の確認 (特記事項・禁止事項・契約解除条件なども確認)
10. 敷金預託
11. 賃貸借契約の締結
オフィスプランニング・レイアウト 12. オフィス移転業者の選定・依頼
13. 与信整理
14. 新しいオフィスのデザイン・レイアウト決定
15. 金額・条件交渉
16. 発注
オフィス移転【6カ月前】のスケジュール/旧オフィス

新オフィス施工と並行して、旧オフィスの退去に必要な手続きや手配、社内の準備もこの時期に進めておく。廃棄物のリスト化や廃棄手続きについても確認しておきたい。

【チェックリスト】オフィス移転6カ月前のスケジュール/旧オフィス
項目 内容 チェック
旧オフィスの退去準備 原状回復工事の手配(移転2カ月前に済ませておくと安心)
オフィス明け渡し日決定
移転作業開始 内容工事、設備工事開始
社員への移転スケジュール広報
梱包・搬出マニュアルの準備
取引先への連絡・プレスリリース(移転1カ月までに行う)
移転案内の発送準備
オフィス移転【1カ月前~当日】のスケジュール

いよいよ1カ月前になれば、引っ越しに向けての作業が中心となる。新オフィスの運用マニュアルなども社内に共有しておこう。

【チェックリスト】オフィス移転1カ月前~当日のスケジュール
項目 内容 チェック
運用ルール広報 1. 新オフィス運用ルールの周知 (マニュアルを事前共有しておく)
新オフィスビル利用手続き 2. 入居先のビルのルールを確認し、手続きを把握
3. 入館証の発行申し込み
4. ゴミの分別放棄方法確認
5. 内線番号の割り付け
引っ越し 6. 引越し日当日の進行と役割分担に関して事前に打ち合わせ
7. 搬出・搬入の立ち会い
オフィス移転後のスケジュール

オフィス移転後には、新オフィスが問題なく稼働しているかを確認する傍らで届出や手続き・連絡などが非常に数多くあるため、リストに沿って漏れなく進めていく。

【チェックリスト】オフィス移転後のスケジュール
項目 内容 チェック
移転に伴う書類の提出 1. 法務局(移転登記)
2. 税務署(異動届、給与支払事務所の移転届出)
3. 社会保険事務所(保険適用事業所所在地変更届)
4. 労働基準監督署(労働保険関係成立届、他)
5. 公共職業安定所(雇用保険事業主事業所)
6. 郵便局(郵便物届出変更届)
7. 電話・ネット回線の移転手続きなど
旧オフィスに関する手続きの完了 8. 原状回復工事完了
9. 旧オフィスとの契約終了・引渡し
10. 敷金・保証金返還(引渡後数カ月以内)

またここまでの各時期とも、継続して進めている作業の進捗を定期的に確認し、遅れがないかどうか常にモニタリングしておくことももちろん重要な業務の1つである。

オフィス移転を成功させる秘訣

ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)やフリーアドレスオフィスなど、新しいオフィスのあり方も念頭に幅広く検討することが成功へとつながる。

経営者やオフィス管理の責任者にとって、オフィスの移転は今後の経営の根幹にもかかわる重要な決断であるため、なんとしても成功させたいと考えるだろう。計画時には以下の点をクリアしているかを検証しながら進めるのが成功の秘訣である。
 

  • 時間、場所などがフレキシブルに設定でき、多様な働き方に対応できているか

  • ブランディングも含めたオフィスコンセプトは定まっているか

  • オフィスタイプは目的に沿ったものとなっているか

  • オフィス移転後の効果検証は可能か

コロナ禍を機に、全従業員が本社(コアオフィス)に定時出勤するという従来のオフィス形態だけでなく、自宅を含むリモートワークや、シェアオフィス、コワーキングスペースなどを活用したフレキシブルな働き方を選べる企業も現れ、従業員の生産性・エンゲージメント向上や、優秀な人材の採用・確保にも役立っている。

また上記を実現するためのABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)やフリーアドレスオフィスなど、新しいオフィスのあり方も念頭に幅広く検討することが成功へとつながる。

移転先候補としてのセットアップオフィス・居抜きオフィスとは

オフィスの移転にあたっては、コスト削減も非常に重要なポイントといえる。コストとは賃料だけではなく、初期費用や原状回復費用、早期に移転が完了するかどうかといった時間的なコストも含まれる。

その観点でいま注目が集まっているのがセットアップオフィス居抜きオフィスだ。どちらも、移転時にすでに内装や設備・什器などが設置されており、購入やリースの費用・引っ越しに要する時間と費用が削減できる。

オフィス移転の成功事例

オフィス移転には様々な形がある。成功例をいくつか紹介するので参考にしてほしい。

JLL:東京・大阪オフィスの統合移転でFuture of Work(働き方の未来)を具現化

総合不動産サービス大手JLLは、2022年に東京本社と関西支社でそれぞれ移転統合を行った。

新しい時代の働き方をリードするワークプレイス戦略を「Future of Work(働き方の未来:以下、FoW)」として提唱、多彩な不動産コンサルティングサービスを提供するJLLは、新オフィスを「FoWを具現化する場」として位置づけ、以下の「5つの柱」を中心にオフィスを構築している。

  1. New Workstyle & Premium Experience

  2. Technology & New Discovery

  3. Connectivity & Networking

  4. Well-being & Creative Recharge

  5. Sustainable Thinking

上記に基づき、例えば1. New Workstyle & Premium Experienceを体現するべく、東京本社のデザインには日本の伝統文化や漆喰など和の素材を取り入れ、「おもてなし」の空間である茶室や縁側から着想を得た空間を設けている。

また4. Well-being & Creative Rechargeでは、従業員のウェルビーイング向上のためウェルネスに関する各種設備を備えた空間(マザールーム、エイドルーム、ヨガ教室など多目的に活用できる部屋など)を設置。

5. Sustainable Thinkingに関しては、東京本社はLEED認証プラチナWELL認証のプラチナを 、関西支社はLEED認証のゴールド及びWELL認証のプラチナを取得するなど、可視化されたデータを活用しながら長期的な視点でワークプレイスを進化させている。

未来の働き方(Future of Work)を実現!

第36回 日経ニューオフィス賞・ 2023年度グッドデザイン賞 W受賞

京都電子計算:京都で多様なニーズを叶えるオフィス戦略を実現

京都新聞グループの老舗IT企業として業務システムやパッケージソフト開発・ネットワークの構築・運用など多彩なITソリューションを提供する京都電子計算株式会社は、2022年5月に本社オフィスを移転し、テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドな働き方へと大きく舵を切った。

それまで複数のビルやフロアに分散していたオフィスを、全面フリーアドレス席を採用した計4フロアの本社オフィスへと統合。フロアごとにコンセプトを設定し、例えば5階は「コミュニケーション」をテーマとして事務机を置かず、本格的なカフェを備えたオープンスペースと社内用ミーティングルームで構成される。

旧本社オフィスでの課題であった「労働環境の改善」、「コミュニケーションの低下」、「人材採用の安定化」を解決し、立地面も含めて新たな働き方を実践できる執務環境の整備に成功した。

エイコー:8つのワークスタイルを実践するフリーアドレス型オフィスへ

オフィス環境に関する多種多様なソリューションを提供している株式会社エイコーは、創業50年を迎えた2022年、東京本社オフィスを4フロア432坪からワンフロアへと統合移転し、コミュニケーション活性化に重きを置いたフリーアドレス型オフィスを実現した。

「Fo-me」と命名された新オフィスは、あらゆる壁をなくし、タテ(会社と従業員、上司と部下)・ヨコ(他部門や他拠点)・ナナメ(社員同士)で人と情報が繋がるようにコミュニケーションの活性化や従業員の快適性まで考慮したオフィスデザインに基づいて設計。

立地、駐車場、低層階といった入居要件も満たしながら、理想とする8つのワークスタイルを実践し、同社の社風や事業内容を紹介するためのライブオフィスとしての役割も担っている。

オフィス移転コンサルティングとは

オフィスの移転は、移転計画から物件選定・交渉・契約、内装・設備の手配と施工、引っ越しとそれに伴う事務手続きまで多岐にわたる内容を包括した一大プロジェクトであり、社内ですべてを展開する場合、相当な人的・時間的リソースが求められる。

そこでこのプロジェクトを一部または一括して外部の専門家に依頼することで、ミスや失敗を防ぎ、時間を短縮し、収益に直結するコア業務に社員を集中させることができる。

この外部の専門家をオフィス移転コンサルと呼ぶ。

オフィス移転コンサルの選び方

オフィス移転コンサルへの依頼を検討する場合、以下のような点をふまえて選ぶと失敗がない。

オフィス移転コンサルの種類:オフィス移転専門でトータルなコンサルティングを行う会社と、それぞれの専門分野に特化したサポートを行う会社がある。自社に経験者がいない、時間や人員が足りないといった場合は前者がおすすめだ。

サポートの範囲:特定業務特化型のオフィス移転コンサルは専門外の業務に対応できないことや、別途料金が必要なこともある。事前に業務範囲を明確にしておこう。

意見を聞いてくれるか:自社の希望やイメージを尊重し、それに合わせてアドバイスや支援を行ってくれるコンサルのほうが柔軟な対応が期待できる。

多角的な視点:選定時にはコスト(賃料削減など)に目が行きがちだが、それだけではなく法令や条例の知識・安全対策などの総合的な知識を持っていることも重要である。

実績:オフィス移転コンサルの持つ実績は移転プロジェクトの規模や目的と近いものかどうかもチェックしておきたい。

オフィス移転成功は適切なスケジュール設定から

オフィスの移転は、自社の課題がいよいよ対処の限界にきた時や契約更新期日が迫ったタイミングであわてて行うと、希望に合わなかったり、予想外のコストがかかったりする可能性が高い。

少なくとも6カ月-1年以上の余裕を持って、適切なスケジュールを設定し、確実に課題をクリアしていくことが成功のポイントだ。

しかし、限られた人数と時間で通常の業務を進めながら移転プロジェクトを的確に進めていくことはかなりハードルが高いため、オフィス移転に精通した専門家のサポートを受けることで、結局自社で全てを行うよりも大きなメリットを得られることもある。

JLLは、オフィス市場における豊富な知見と各種データを駆使し、これまでに数々のオフィス移転を成功に導いてきた専門コンサルタント会社だ。

オフィス移転について不安がある、なんとしても成功させたいが道筋が分からない……といった場合は、ぜひ気軽に相談してみてほしい。

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