記事

【オフィスコミュニケーションを活性化させる秘訣】重要ポイントと成功事例

近年、リモートワークの導入などによりオフィスでのコミュニケーションが大きく変化した企業は多いのではないだろうか。従業員同士による雑談などの社内コミュニケーションが減りがちな昨今、オフィス改革によってリアルな繋がりを生み出すことがひとつの解決策になっている。

2024年 01月 09日
これからの時代に求められるオフィスコミュニケーションとは

オフィスのレイアウトやデザインを工夫することで生み出される偶発性は、従業員同士の関係性に大きな影響をもたらす。従来は、全員がオフィスに出社し毎日顔を合わせることで何気ない会話が生まれるなど、リアルな交流は日常的であった。しかし、リモートワークが社会に浸透し全員出社が当たり前ではなくなった現在、求められるオフィスは感染対策に配慮しつつも対面でしか得られないコミュニケーションを育むレイアウト・デザインへとアップデートされている。

従来のオフィスレイアウト:

これからのオフィスレイアウト:

さらに、2022年版Future of Work(働き方の未来)グローバル調査の結果によると、調査対象企業の77%が人材確保と長期雇用のためにはリモート/ハイブリッド型の勤務が重要との見解を持っており、53%の企業は2025年までに全従業員が常時リモートワーク可能な体制をととのえる予定だ。

加えて、オフィススペースの存在意義として、従来のような執務スペースという位置づけにとどまらず、オフィスはヒトとヒト・部署と部署・自社と他社とのコラボレーションの場と捉える企業も45%に上っている。また、その実現に向けて73%の企業は固定席のないオープンかつコラボレーション型オフィスへの転換を計画しているという。

ヒトとの対面が当たり前であったオフィスコミュニケーションから、リモートワーク等によるバーチャルな交流を踏まえたハイブリッドコミュニケーションへと変化していくと共に、オフィス環境を順応させていく必要に迫られている

オフィスコミュニケーションの活性化が重要な理由

オフィス勤務ならではの価値を提供することは、従業員のエンゲージメント向上にも役立つ

オフィスコミュニケーションの活性化が企業・個人にもたらすメリットは数多い。

1.情報共有や議論のクオリティ向上

新しいオフィスデザイン戦略の1つとして、旧オフィス時代の固定席からフリーアドレス席への変更や、コミュニケーションが取りやすいフリースペースを用意した企業の事例も存在する。

そこには、情報共有や議論の質とスピード感を事業成長に欠かせない重要な要素と捉え、コミュニケーションの活性化が企業の未来に直結するという方向性が明確に表れている。

2.従業員のエンゲージメント向上

ハイブリッド型勤務では複数の働く場が選べるが、その中でオフィス勤務ならではの価値を提供することは、従業員のエンゲージメント向上にも役立つ。

デスクを自由に移動できるフリースペースや無料のカフェルームなどを設置し、従業員が特別感を感じられるようなオフィスの改革事例もある。

現場の視点が組み込まれた積極的なオフィス改革による従業員からの信頼や満足度の獲得は、採用面でも大きく貢献するだろう。

3.イノベーションの創発

毎日同じ席で同じメンバーとやりとりしていると、業務上の判断や課題解決の手法などが硬直化することもありえる。

各部署・部門や時には会社の枠組みを超えたコミュニケーションを可能にするオフィスでは、様々な視点から多種多様な意見が生まれ、これまでになかった事業アイデア・スキームなどが生まれる可能性がある。

オフィスコミュニケーションを促進する際の課題と注意点

オフィスでのリアルなコミュニケーションを活性化するにあたっては、いくつか留意すべき点もある。

  • 周囲の視線や雑音、会話が気になり業務に集中できない

  • オンラインミーティングや商談が妨げられる

  • 機密性の高い情報の取り扱いに注意が必要

こういった問題を解決するには「ソロワークスペース」を設置することで、上記のような課題を解消しながらコミュニケーションの活性化を図ることができる。

オフィスコミュニケーションの活性化につながるデザイン・レイアウト

1人で集中して仕事に取り組める場所も生産性を高めるためには不可欠

1.イノベーションを促進する多目的コラボレーションスペース

多様な働き方が実現し、オフィスへの出勤がマストでなくなった場合でも、やはりオフィスにおける従業員同士の交流はモチベーションを向上させ、イノベーションを生み出すといった大きな効果を発揮する。

このことを念頭に置いたオフィス移転プロジェクトで、多目的のコラボレーションスペースを設置した結果、従業員の帰属意識の向上や優秀な人材確保と長期雇用など大きな成果につながった事例も存在する。

2.一人で集中できるソロワークスペース

交流・コミュニケーションの活性化を目指したオフィス環境の中で、1人で集中して仕事に取り組める場所も生産性を高めるためには不可欠だ。こういった場所をソロワークスペースといい、オフィスへの導入ニーズが高まっている。

従業員が一人で考え事や瞑想できるクワイエットルームの設置や、科学的データに基づいた内装やBGMで集中できる環境を実現したり、発想力が求められる業務担当者のために窓際の席を確保するなどの事例もある。

3.エネルギーをチャージできるリフレッシュスペース

職場での過度なストレスは短期的に従業員の生産性を低下させるだけでなく、長期的には心身の不調を招いてしまう。オフィスコミュニケーション活性化のベースとなる環境を整備するためには、従業員のウェルネスに対する視点も欠かせない。例えば植物を配置したり、ガラスのパーティションなどを用いることで採光性を確保することで気分転換に適したスペースを作り出すことができる。

また、カジュアルな打ち合わせや昼食、息抜きなどに使える休憩エリアを整備することで、従業員はストレスを癒やしたりエネルギーをチャージするなど、リフレッシュして仕事に取りかかることが期待できる。

4.オフィスDX化を通じて最適化されたオフィススペース

オフィスがリアルコミュニケーションのハブとなり、出社することの価値を高めるには、テクノロジーを活用したオフィスの最適化も有効だ。

IoTやIWMSの導入でデスクや会議室などの利用状況を可視化することで従業員の行動パターンを計測し、理想的なオフィス環境への改善を促す他、照明や空調の最適稼働を実現するなど、ソフトとハード両面でオフィスの最適化を図るオフィスDXの成功事例も増えている。

5.部署を超えた社内コミュニケーションが生まれるフリーアドレス

フリーアドレスとは、従業員ごとの固定席を設けず、その日に空いている席を自由に選んで利用できるオフィススタイルを指す。

部署を超えた交流により新しい知見や意見に触れ、社内のコラボレーションや新しい発想が自然発生することが期待できる。

6.社内外のステークホルダーと交流できるハブスポット

社内だけでなくクライアントや協力会社とのコミュニケーション活性化を促すハブスポットをオフィス内に設置することで、従業員のエンゲージメント向上に繋げている事例がある。仕事の話だけでなく、気軽に雑談できるカジュアルなスペースを設けることは、戦略的なオフィス改革の一つということができるだろう。オフィスの新しい価値を従業員に提示することは、組織全体のモチベーション改善や優秀な人材の確保という観点からも重要になる。

7.オンライン会議に対応したブース

リモートワークとオフィス出社を掛け合わせたハイブリッドな働き方に代表されるような、多様なワークスタイルが可能になった今の時代、オンラインミーティングに対応するブースの需要も増えている。

オフィスコミュニケーションの活性化につながる取り組み

現在、 多くの企業でコミュニケーションの活性化を重要な課題としてとらえており、さまざまな工夫や取り組みを進めている。ここではコミュニケーション活性化のアイデアをいくつか紹介する。

自由なミーティングスペースを設ける

従来のオフィスでは、各自のデスクまたは小会議室で打ち合わせを行うことが多かったが、デスクが手狭で落ち着いて話し合えなかったり、わざわざ会議室を借りる手続きが手間になる・空きがないなど、いくつかの課題があった。

オフィスの一角にテーブルまたは立ち話ができるオープンなミーティングスペースを設け自由に利用できるようにすることで、よりコミュニケーションが取りやすくなるばかりか、会議時間の短縮空きスペースの有効活用にもなる。

社員食堂・カフェスペースを設置する

社員食堂やカフェスペースは、執務空間から離れた場に設けることが多いため、直接仕事と関係のない雑談なども生まれやすく、従業員同士の交流やエンゲージメント向上に役立つ。全従業員が利用対象となるため、他の部署のメンバーと自然な形で顔を合わせることができるのも利点だ。

1on1ミーティングを実施する

1on1とは、従業員同士が1対1で行うミーティングのことをいう。おもに上司と部下で行われ、部下からは目標や業務進捗の報告・課題の相談がなされ、上司からはフィードバックやコーチングで部下の能力を引き出すことを目的とすることが多い。

1on1ミーティングは既存会議室で行うなど、新たな設備投資が不要ですぐに実行でき、定期的に行うことでコミュニケーションの機会を増やすことができる。

フリーアドレス制を導入する

固定席を設けず空いている席で仕事をするフリーアドレス制は、業務で接する機会の少ない他部署の同僚らとの交流が生まれやすく、コミュニケーション向上やイノベーション創発のきっかけにもなる。

ウェブ会議を取り入れる

急速に普及したリモートワークやABWにより直接顔を合わせない従業員同士の打ち合わせやコミュニケーションの手段としては、メールやチャットなどを活用するほか、ウェブ会議が一般化してきた。

一見、顔の見えない相手とのミーティングはスケジュール調整が手間のように感じられるが、細かい疑問点などはメールでやり取りするよりも“会話”で解決できるウェブ会議の方が効率的な場合も多い。

グループウェアを活用する

グループウェアとは、企業や学校などの組織に所属するメンバーが情報やスケジュールを共有するためのソフトウェアの総称である。スケジュールやカレンダー、タスクの進行管理、ファイル共有、設備の予約、連絡先登録など、グループウェアによってさまざまな機能が搭載されており、オフィスDXに欠かせないツールの1つでもある。

従来は社内のサーバーのみで運用する「オンプレミス」型も多かったが、ハイブリッドワークが広がりつつある現在では、自宅やサテライトオフィスなど、どこからでもアクセスできるクラウド型のグループウェアが主流だ。

社内イベントを企画する

現在、若い世代を中心に家庭や自分の趣味などのプライベートを重視する傾向が強くなり、仕事帰りに「飲みに行く」などの機会は減少傾向とされる。

しかし本来、仕事以外でのコミュニケーションには、相手の魅力や新しい一面を知るなどのメリットも大きい。なにも飲み会でなくとも、参加しやすい日中にレクリエーションや食事会などのイベントを企画・実施することで、日頃仕事上の接点がない従業員の間でコミュニケーションが生まれることが期待できる。

社内報を発行する

昔ながらのイメージがある社内報だが、コミュニケーションツールとして意外な効果がある。

形式は冊子・新聞・メールマガジン・グループウェア内でPDFを共有などさまざまな方法があるが、各部署へのヒアリングや取材などで積極的に社内を巻き込み定期的に発信することで他部署の活動を知ることができ、相互理解に役立つ他、社内文化の浸透にも一役買う。オフィスに設置したサイネージを活用して社内に情報発信するオフィス事例も少なくない。

オフィスコミュニケーションを活性化させる秘訣

オフィスデザインやレイアウトなどハード面の拡充と並行して心理面にも配慮するソフト面の対策で、社内コミュニケーションはより活性化するはずだ。

社員が交流しやすい環境作りを心がける

会話やお互いの状況確認がしにくい家具や什器の配置が見受けられる場合、レイアウトを改善することでちょっとした会話がしやすくなったり、「困っているようだ」と察知したりできるようになる可能性が高まる。

お互いの仕事について知るきっかけを作る

それぞれの従業員や部署ごとの交流・情報交換の機会を作るのも良い方法だ。前後の仕事の流れを把握しておくことで、2つの課題のどちらを先に対処したほうが後々の工程で作業しやすくなるのかなどの配慮にも役立つ。

新しい取り組みを応援する

社内コミュニケーション向上のために新しい取り組みを行うときは、主体となる部署や担当者は積極的にトライし、周囲の反応や意見も取り入れながら改善を重ねていくことが望ましい。

同時に、他の部署や意志決定層は、前例がない・成果が保証できないといった理由でむやみに反対せず、一定のリスク許容の幅を持って応援していきたい。

経営層から一般社員まで取り組みを共有する

上記と同じく、総務や人事といった担当の部署だけでなく、全社的にコミュニケーション向上や活性化による企業の成長を自分事ととらえて取り組んでいくのが理想的である。

そのために、縦割りではなく複数の部署で横断的なプロジェクトを設定するのも有効だ。

短期的な施策と中長期施策を組み合わせる

中長期的にオフィスコミュニケーションの活性化を図っていくためには、社内イベントの実施といった短期的に行える施策はもちろん、他の部署とカジュアルな情報交換や会話などが当たり前にできる企業風土作りなどの中長期的な施策を組み合わせて進めていきたい。

成果の出ている社外事例を参考にする

初の取り組みに挑戦する場合、自社と似た状況でオフィスコミュニケーションの向上に取り組み、成功している他社の事例を参考にするのも良い方法だ。

オフィス改善のコンサルティングを行う専門家は、他社の事例やノウハウを多数持っているため、相談してみてはいかがだろうか。

以下にJLLがサポートした企業や、JLLのオフィス移転時の事例と成功ポイントを紹介する。

オフィスコミュニケーションの活性化に成功したオフィス戦略事例
【株式会社エイコー】フリーアドレスの新オフィスでコミュニケーション活性化を実現

IT機器の導入支援はじめ、オフィス環境に関する多様なソリューションを提供している株式会社エイコーは、2022年に東京本社オフィスを移転。「Fo-me」と命名された新オフィスでは、コミュニケーション活性化に重きを置いたフリーアドレスを採用し、理想とする8つのワークスタイルの実践を目指した。

ソフト・ハード両面での電子化や効率的なルールや業務フローの明確化など、8つのワークスタイルの目標の中でも「コミュニケーション」に関する内容は大きな割合を占めており、具体的には以下のようなチェックポイントが挙げられる。

  • 周りを気にせず、気軽にオンラインでのコミュニケーションをとっている

  • オフィスではオフィスでしか出来ない複数人での共同作業や対面でのコミュニケーションをとっている

  • 会話によって仕事以外のつながりができ、社員同士の距離が縮まっている

  • 時には仕事から離れて、休憩・気分転換することによって、仕事の効率をあげている

新オフィスには上記を叶える広大なカフェスペース事務機器を集めたコミュニケーションエリアなどを配置している。

またコミュニケーションを優先するあまり集中が遮られることがないよう、次のようなチェックポイントもあり、バランスの取れた施策が特徴的だ。

  • 短時間で成果を出したい時には、コミュニケーションを遮った状態で集中して仕事ができている

【資生堂ジャパン株式会社】自主性とコミュニケーション向上効果の高いABW型オフィス

 化粧品のグローバルカンパニーとして認知される資生堂グループでは、2014年から進行する全社的なワークスタイル改革の中で策定したオフィスコンセプト「創造力の交差点」に基づき、地方営業所のリニューアルに続いて資生堂ジャパンのオフィス移転プロジェクトを実施した。

社内ヒアリングによって「本社と複数の営業拠点でコミュニケーションがタイムリーに取りにくい」という課題が浮かび上がったため、以下の4つのビジネスビジョンを実現し、一体となって営業活動を進めるため統合移転という結論を出した。

  • ブランド価値向上

  • 離合集散

  • ストックからフローへ

  • 機能的なオフィス

ABW型オフィスをベースとした執務フロアは、ブランドビジネスを意識しつつコミュニケーションが活性化されるレイアウトを採用。

各フロアに複数設置されたオープンエリアやミーティングスペースを通路で結び、周辺に多種多様な執務席を配することにより、必要な時にはすぐにコミュニケーションが取れ、集中したい時には集団から離れられる「離合集散」を体現した。

オフィスコミュニケーションの活性化に関連するその他の事例を見る

JLL新オフィスが実現するFuture of Work (未来の働き方)とは

不動産総合サービスを提供するJLLでは、多様な働き方へのニーズを受け、自社の提唱する理念「Future of Work(働き方の未来)」=FoWを具現化するワークプレイスとして、東京および大阪のオフィスを統合移転した。

新オフィスでは、JLL日本における「ワークプレイス5つの柱」に基づく設計・施策を取り入れている。

  1. New Workstyle & Premium Experience

  2. Technology & New Discovery

  3. Connectivity & Networking

  4. Well-being & Creative Recharge

  5. Sustainable Thinking

コミュニケーション活性化に関連する項目には、”3.Connectivity & Networking”があり、社内外のコミュニケーションを促進するため、受付や執務エリアにカフェやサロンを設置し、社内外の交流や一体感の創出を図っている。

また”4.Well-being & Creative Recharge”では、マザールーム、エイドルーム、ヨガやeスポーツができる部屋などウェルネスに関する各種設備を備えた空間を充実させ、従業員同士のコミュニティ形成やエンゲージメントを向上させる取り組みを積極的に行っている。

JLLオフィスツアー開催中

これからの企業に欠かせないオフィスコミュニケーションの活性化

従業員や社会のニーズが大きく変化し、多様な働き方がスタンダードとなってゆく中で、オフィスにおけるコミュニケーション活性化は、企業や従業員の成長にとってより重要な課題となってくることが予想される。

今後オフィススペースの改善を検討するにあたっては、コストの最適化や業務効率の向上といった面に加え、コミュニケーションが確保できるかどうかという視点が欠かせないものになるだろう。

JLLでは、最新のオフィス市場のデータ分析に基づき、最適なワークプレイス戦略についてのコンサルティングを行っています。イノベーションとインスピレーションを促進するワークプレイス改革の進め方について、ぜひJLLにご相談下さい。

オフィスコミュニケーションの活性化に向けて戦略を立てる

お問い合わせ

何かお探しものやご興味のあるものがありましたら、お知らせ下さい。担当者より折り返しご連絡いたします。