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JLLの利用実績から見るサテライトオフィスの有用性

コロナ禍によって大きく変化した働き方にあって、在宅勤務と共に注目を集めたのがサテライトオフィスだろう。そうした中、JLL日本では2016年からサテライトオフィスを全社的に導入、コロナ以降利用時間が急増している。今やハイブリッドワークを実践する上でサテライトオフィスが欠かせない存在となっている。

2023年 08月 28日
コロナ禍で週4日以上サテライトオフィスを利用

「サテライトオフィスをほぼ毎日利用していた」と、JLL日本 マーケティング&コミュニケーション事業部 水島 瑠美はこう話す。

コロナ禍を機にJLL日本がリモートワークへシフトした2020年に入社した彼女。在宅勤務ならではの“ひきこもり感”に息苦しさを感じ、週4日以上サテライトオフィスで働いていたヘビーユーザーだ。

JLL日本では2022年11月に東京オフィスを、12月に関西オフィスを統合移転し、快適な執務環境を提供するABW型オフィスへと生まれ変わり、オフィス勤務への本格的な回帰が始まった。だが、アフターコロナを迎えた現在でも週1日以上はサテライトオフィスを利用しているという。

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水島は「ラッシュに遭遇すると、通勤時間だけで疲弊してしまう。業務内容や体調、その日の気分に合わせて自由にオフィスと自宅近隣のサテライトオフィスを選択できるので、非常に働きやすいと感じている」と顔をほころばせる。

長時間の通勤ラッシュに遭遇すると、オフィスに行くだけで疲弊してしまう。業務内容や体調、その日の気分に合わせて自由にサテライトオフィスを利用できるので、非常に働きやすい

ハイブリッドワーク実現に不可欠なサテライトオフィス

コロナ禍を受けて働く場所を多様化させるハイブリッドワークを採用する企業が増えている。そうした中、注目されているのが「第3のワークプレイス」と呼ばれるサテライトオフィスだ。本社オフィスとは異なる場所に「衛星(サテライト)」のように小規模オフィスを分散配置することから、その名が付けられた。

サテライトオフィスの解説記事はこちら

JLL日本が2022年11月に発表した調査レポートによると、「これからのオフィスに導入したいもの/オフィスに求めるもの」について企業の意思決定者と従業員双方に質問したところ「サテライトオフィス等の利用」が2位となった。

元々、サテライトオフィスは業務効率の改善といった「働き方改革」に寄与する施策として認知されていたが、コロナ禍での感染対策としてオフィス勤務が制限される中でオフィスや自宅に代わる執務空間として重宝されるようになった。
 

JLL日本のサテライトオフィス利用実績

2020年のサテライトオフィス利用時間は2019年比で325%増、2023年は1-6月実績でありながら2019年比で297%増

JLL日本では、2016年から一部事業部を対象にサテライトオフィスの運用を開始した。いずれも不特定多数の法人が施設利用契約を結び、登録したスタッフなら誰もが共同利用できる「共用型サテライトオフィス」だ。ライセンスカードやQRコード、スマートロック等で入退室時間が管理され、労務状況も把握しやすくなっている。

その後、試験運用によってサテライトオフィスの有用性が確認されたことで2018年1月から事業部を問わず全従業員が利用可能になったが、コロナ禍に突入した2020年を境に利用時間が爆発的に増加している。

JLL日本のサテライトオフィス利用時間を時系列(コロナ前の2019年、コロナ禍に突入した2020年、アフターコロナを迎えた2023年)で調査した結果、2020年のサテライトオフィス利用時間は2019年比で325%増、2023年は1-6月実績でありながら2019年比で297%増を記録した。

サテライトオフィス導入に携わったJLL日本 総務部長 中山 幹朗は利用時間の急激な増加について「コロナ感染症の爆発的な拡大を受けて、在宅勤務に切り替えたが、自宅の通信環境の脆弱さ、狭小な住宅事情から夫婦で在宅勤務ができないといった声も多く、居住地の最寄り駅や居住地に比較的近いターミナル駅周辺に開設されたサテライトオフィスを選択するスタッフが急増したのでは」と推測する。
 

複数の施設ブランドを使い分ける理由

職務内容や利用時間に合わせてサテライトオフィスを使い分けることで、コスト最適化を図ることができる

JLL日本では複数の施設ブランドを使い分けており、これまで5つのサテライトオフィスを利用してきた。各施設の特長は下記のように考えている。
 

JLL日本が利用したサテライトオフィス一覧
施設 料金体系 メリット デメリット 想定業務 利用状況
A 月額会員制 管理受託物件の近くに位置する 不特定多数が利用できない 施設管理担当者の移動時間削減に伴う業務効率化 ニーズに合っていなかったので利用停止
B 従量課金制(1時間毎) 拠点数の充実度(都内・地方中核都市) 特になし 業務全般、オンライン会議、会議室利用など 継続中(利用時間・利用者共に最多)
C 従量課金制(15分毎) 拠点数の充実度 特になし 短期集中型の業務(メール返信、プレゼン資料の修正、資料印刷など) 継続中
D 回数課金制(長時間利用可能) B社、C社とは異なる料金体系 拠点毎に運営ルールが異なり、事前確認が必要 長時間を要する業務など 利用者が少なく利用停止
E 従量課金制(15分毎) 個人ブースの充実度、内装デザイン 特になし 業務全般、オンライン会議、会議室利用など 継続中

共用型サテライトオフィスの多くは従量課金制となるが、施設によって利用単価が異なる。例えば、B施設は料金単価が1時間毎で算出され、10分程度の利用時間でも1時間分の料金がかかる。一方、C、Eの料金単価は15分単位となり、Bと比べて柔軟性のある料金体系だ。またD施設は回数課金制で長時間利用に適しており、BやCと異なる。

複数の施設を利用している理由について、中山は「料金体系が異なるため、業務内容や状況・ニーズに合わせて様々な選択肢をスタッフに提供する半面、企業にとってはコスト最適化を図ることができる」と説明する。

一方、サテライトオフィスを試験的に導入し始めた2016年当初、会員制シェアオフィスAをサテライトオフィスとして利用していたが、当初想定していた「不特定多数のスタッフが利用できる」というニーズに合致しておらず、利用を停止。また、施設毎に運営ルールが異なり、都度確認が必要なD施設も利用者が極端に少ないという結果となった。
 

サテライトオフィスを利用するメリット

サテライトオフィスの一般的な導入メリットとして下記が挙げられる。

  • 生産性向上
  • エンゲージメント向上
  • コスト削減
  • 人材採用の優位性
  • 非常時のBCP(事業継続計画)

JLL日本がサテライトオフィスを導入した当初の主な目的は、都内を移動する際のスキマ時間を業務に充てる生産性向上だったが、地方主要都市にも施設が開設されるようになり、地方へ出張した際の執務スペースを確保できるようになった点を、中山は高く評価する。

関西支社や福岡支社、名古屋オフィスが存在し、当該地域へ出張した際は自社オフィスを活用することが多い。しかし、出社状況によっては席を確保できないこともある。そうした場合、各オフィスに近いサテライトオフィスを活用することが可能だ。

「全国各地へ出張が多い事業部にとっては、帰りの飛行機まで1時間あれば、最寄りのサテライトオフィスで簡易なレポート作成やメール返信等、業務時間を有効活用することができる」(中山)

また、サテライトオフィスは個人席を中心とした執務環境だが、会議室やフォンブースを備えている施設も増えており、ソロワークスペースの確保、本社オフィスの会議室不足を補うこともできる。中山によると「クライアントと現地を視察した後、自社オフィスに戻ることなく、最寄りのサテライトオフィスの会議室を利用してミーティングを行うケースもある」という。

サテライトオフィスがスタッフの自主性を育む

利用者属性は外回りが多い営業担当者が大半を占めており、ビジネスプランの企画・立案等、集中して取り組みたい管理職、プログラムコードの開発等を行うIT担当者が一部利用していたが、コロナ以前の利用実態は利用者・非利用者の二極化が顕著だった。しかし、現在は営業担当者の利用は相変わらず多いものの、マーケティング等のコーポレート関連部門の利用者も増えている。

中山は「オフィス出社が制限されたコロナ禍の3年でサテライトオフィスを活用したハイブリッドワークが定着した。コロナ禍は、サテライトオフィスをどのように活用すれば生産性や業務効率性が向上するか、個々の従業員がサテライトオフィスの使い方を理解して、自分の業務スタイルにうまく取り込むための学習期間となった」と捉えている。

業務効率が大きく改善され、期待していた生産性向上を実現する以上に、働き方に対するスタッフの自主性を育むといったメリットこそ、サテライトオフィスを導入する最大の成果だと、中山は考えている。

ワークプレイス戦略に関する問い合わせはJLLへ

アフターコロナ時代を迎え、サテライトオフィスを含めた全体的なワークプレイス戦略の見直す企業が増える中、JLLではオフィス移転やリニューアル等を一気通貫で支援しています。サテライトオフィスの活用を含めたワークプレイス戦略の見直しを検討されている方は下記をご覧ください。

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