記事

オフィス・不動産DX化の鍵を握るIWMSとは?使いこなすには不動産の専門家が必要不可欠

オフィスのみならず、保有・賃借するすべての不動産データを一元管理するデジタルツールとして、欧米を中心にIWMS(統合型職場管理システム)が普及拡大している。コロナ禍を機にオフィスや不動産管理のデジタル化が求められる中、日本でも導入の機運が高まりつつある。IWMSの導入メリットと注意点を解説する。

2023年 03月 29日
日本で普及拡大が予想されるIWMS

コロナ禍によって著しい進化を遂げているテクノロジー。オンライン会議は言うに及ばず、不動産業界では遠隔地にいながら内覧ができるバーチャル内覧やメタバースを活用した新たな場所貸しなどが注目を集めている。

最新の不動産テックに関する記事を読む

このようにオフィスのDX化不動産のDX化が進んでいる中、日本で今後普及が加速すると予測される不動産テックの最右翼が「IWMS(Integrated workplace management system:統合型職場管理システム)」と呼ばれるソフトウェアだ。

調査会社の渋谷データカウント(SDKI)が2022年3月に発表したレポートによると、IWMS市場は2022年に40.4億米ドルの市場価値から、2031年までに132.4億米ドルに達し、2022-2031年の予測期間中では年平均成長率16%と予測している。地域別では北米地域が市場シェアを牽引するが、アジア太平洋地域のIWMS市場の著しい拡大を予想しており、アジア太平洋地域では中国、インド、日本がIWMS導入シェアの主要国とされている。

IWMSとは?

IWMSとは不動産の賃貸借契約をはじめ、投資計画、オフィスの使用効率、オフィス運用・保守、サステナビリティ性能など、不動産に関わる様々な管理・運用データをシステム上で一元管理するソフトウェアプラットフォームの総称だ。

IWMSは「統合型」と呼ぶにふさわしく、アプリを追加することでより多くの機能を統合して利用できる点が最大の特長

もともと「IWMS」の名称が登場したのは、米国の調査会社であるGartnerが2004年に発表した調査レポートに遡る。

不動産テック業界に詳しいJLL日本 執行役員 チーフ・インフォメーション・オフィサー(CIO/最高情報責任者) 吉田 薫は「不動産の管理など、単一業務に特化したシステムは多数存在するが、IWMSは不動産に係るあらゆる業務におけるデータ収集を一元化することができる点が最大の長所となる。企業が保有・賃借する不動産はオフィスや物流施設、店舗など、多岐にわたり、様々な部署・担当者が関わっている。特化型の管理システムは互換性が乏しく、CRE(企業不動産)戦略において総合的な意思決定が難しい。CRE専門チームを有するグローバル企業の多くがIWMSを導入しているのは、全社的にCRE戦略を策定するために必要不可欠 であるからだ」と指摘する。

「特化型」の管理ソフトとは対照的に、IWMSは「統合型」と呼ぶにふさわしく、アプリを追加することでより多くの機能を統合して利用できる点が最大の特長となる。例えば、IBMが展開するIWMS「TRIRIGA(トライリガ)」の機能は5つのカテゴリーに分けられ、それぞれ目的に沿った機能を提供している。

IWMS「TRIRIGA」の主な機能
カテゴリー 不動産管理 キャピタルプロジェクト管理 ファシリティ/スペース管理 ワークプレイス運営管理 サステナビリティ管理
機能
  • ポートフォリオプランニング
  • トランザクション管理
  • 立地(用地)選定
  • リース管理
  • リース会計
  • ARテナントトラッキング
  • 決済処理
  • 顧客からのリクエスト管理
  • プログラムマネジメント
  • ファンドマネジメント
  • キャピタルプランニング
  • スコープ管理
  • コスト管理
  • スケジュール管理
  • リソース管理
  • 品質管理
  • ベンダー/購買管理
  • スペースマネジメント
  • スペースチャージバック
  • スペースリクエスト管理
  • 戦略計画
  • 移転管理
  • 予約管理
  • 人員のリソースの提供/管理
  • CAD管理
  • BIMの統合
  • コンタクトセンター
  • サービスマネジメント
  • 保証制度管理
  • 予防メンテナンス
  • 施設評価
  • セキュリティ/鍵の管理
  • 在庫管理
  • 資源計画
  • BMSの統合
  • CO2排出量追跡
  • ユーティリティのトラッキング
  • 廃棄物処理
  • 水の消費量
  • 緑化計画の推進管理
  • LEED/BREEAM認証
  • データアナリティクス

グローバルでIWMSのライセンス販売、導入時の戦略策定などを手掛けているJLL日本 コーポレート営業本部 シニアマネージャー 大塚 拓也は「IWMSはオフィスやビルの管理に関するあらゆる機能をコンポーネントとして網羅しており、利用者の目的に合致した機能のみ使用できるため、利便性が高い」とし、さらに「これまで担当部署が独自のソフトウェアを使用してデータを集計していたが、IWMSはデータを一元管理し、連携させることで全社的な効率化を実現することができる。ROI(Return On Investment:投資収益率)の向上や事業活動の連携強化にも寄与する」と説明する。

IWMSの種類

一方、一口にIWMSといえども、多くの製品が存在し、多機能であるがゆえあらゆるニーズに対応できそうなものだが、実は各製品によって得意分野が異なることは意外に知られていない。例えば、JLLが取り扱っているIWMSは下記のような製品が存在する。

TRIRIGA(トライリガ)

IBMが開発。企業・組織の不動産・設備において運用/管理、データ管理、自動化に関する改善を行い、それらを単一のアプリケーション上で実現できるように設計された。

FM:Systems(FMシステムズ)

ワークプレイス管理に強みを発揮。スペース、占有、リノベーション、移転、メンテナンス、従業員のエクスペリエンスなどを一元管理し、理想的なワークプレイス体験の提供を目指す。

iOffice Hummingbird(アイオフィス・ハミングバード)

オフィス管理/運用に特化。執務室や会議室、什器など、オフィス内の様々なファシリティを効果的に管理。また社内物流の位置情報機能も有す。

ARCHIBUS(アーキバス)

ファシリティマネジメントにおけるコストやリソースを一元管理し、様々な既存データやシステムと連携させることで、不動産関連情報、インフラや設備の利用状況、パフォーマンス評価(KPI)を即座に取得できる。

Maximo(マキシモ)

企業資産の運用を全社規模で可視化、管理することでダウンタイムとコスト削減に寄与。サブスクモデルでの管理が可能。

Modo(モド)

オフィスや商業施設全体の満足度向上に寄与する。カスタマイズ可能で必要な機能だけ利用可能。

IWMSを導入したのはいいが、いざ使用し始めて「オフィス管理機能は使い勝手がいいが、ポートフォリオ管理機能が使いにくい」、「将来的に使用したい機能を備えていなかった」など、様々な課題に気づいても後の祭りだ。利用者が求める機能要件に最適なIWMSを選定し、最大限の機能を発揮する運用方法を策定することが大きな課題といえるだろう。

IWMSを導入するなら不動産専門家の知見が必要不可欠

 

JLLテクノロジーズはIWMSに精通した600名超のコンサルタントを擁し、グローバル展開する小売店舗やIT企業など、130カ国で25万超の不動産・ファシリティを運営する350超のクライアントに対してIWMSの導入実績がある

吉田は「IWMSは確かに利便性が高いツールであるが、いかに使いこなせるかが試される。収集したデータでどのような分析を行うべきか要件定義を行い、必要な機能を選択して効率的なシステムを構築するためには、CREのエキスパートのアドバイスが必要不可欠。システム構築後に機能の漏れがあるなど、せっかくのIWMSを最大限生かすことができない」と力説する。

こうした課題に対してJLLでは不動産テックを活用したコンサルサービスを提供する専門チーム「JLLテクノロジーズ」を組織している。大塚 は「IWMSで収集したデータをどのように生かしていくかが重要。JLLテクノロジーズはIWMSに精通した600名超のコンサルタントを擁し、グローバル展開する小売店舗やIT企業など、130カ国で25万超の不動産・ファシリティを運営する350超のクライアントに対してIWMSの導入実績がある。IWMSの導入計画の策定やトレーニング計画、運用方針のアドバイザリーまだ一気通貫で対応している」と述べる。

さらに、総合不動産サービス会社として世界80カ国で不動産管理やファシリティマネジメント・サービスを提供してきたJLLとも協力し、IWMSの効果を最大化するための人的サービスを提供できる点も強みといえるだろう。

JLLTのもとにはIWMSに関する問い合わせが増えており、オフィスや不動産のDX化が一気に進みそうだ。

JLLテクノロジーズが提供するIWMSの詳細はこちら

お問い合わせ

何かお探しものやご興味のあるものがありましたら、お知らせ下さい。担当者より折り返しご連絡いたします。