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【2倍超の拡張移転】セーフィーが目指した「出社したくなるオフィス」とは?

コミュニケーション低下をはじめ、リモート主体の働き方に対して様々な課題が噴出し、オフィスの重要性が再認識されています。そうした中、クラウド録画サービスで知られるセーフィー株式会社は2023年7月、慣れ親しんだ五反田から大崎へ2倍超の拡張移転を実施。目指したのは「出社したくなるオフィス」でした。

2024年 03月 14日
3拠点に分散していたオフィスを統合移転、500坪から1,100坪へ

安心・安全性を確保するために必要不可欠な防犯カメラ。しかし、膨大なデータ映像を保存するための設備投資が重く、さらに目当ての映像を確認するまで延々と録画データを見続けなくてはなりません。このように、従前の防犯カメラは高コストかつ使い勝手等で改善余地がありました。

こうした状況に一石を投じたのが2014年に創業したセーフィー株式会社(以下、セーフィー)です。クラウド録画できるセキュリティカメラの開発と、それに伴う各種サービスを提供しており、2021年9月に東証マザーズ市場に上場した気鋭のベンチャー企業です。

同社が開発したカメラはインターネットに繋ぐことができ、スマートフォンやパソコン等で常時リアルタイムの映像を視聴できます。そして、録画した映像はクラウド上に保存され、専用サーバーが不要で省コスト。映像は高画質で細部まで鮮明に確認することができます。さらに、録画映像を確認する際、音や動きのある場面のみをワンタッチで表示し、すぐに当該場面を確認することができるという優れものなのです。

「映像から未来をつくる」を経営ビジョンに掲げ、クラウドカメラという基幹システムにAI機能等を追加する等、セーフィーのサービスはさらなる進化を遂げています。使用用途は多岐にわたり、セキュリティ目的のみならず、建築現場における施工管理、店舗の在庫管理や無人接客、来店者数の集計、遠隔での人材育成等々…。人手不足に対する解決策として小売・サービス業、飲食業、建設業、インフラ施設、物流施設、オフィスビル、製造プラントまで幅広い顧客基盤を獲得しています。

そうした中、セーフィーは2023年7月3日、事業成長に伴う人員拡大に対応するため 東京・大崎に位置する「住友不動産大崎ガーデンタワー」17階に本社移転しました。賃借面積は1,100坪。移転前の床面積と比較すると2倍超の拡張移転です。

従業員数が急増

社名を想起させる“S”型のシートが目をひく、広々としたエントランス

年間100名超を採用し続ける中、新入社員のオンボーディングに課題。一定数のオフィス出社が不可欠との認識は持ち続けていた

コロナ以前、セーフィーは五反田エリアの「日幸五反田ビル」(123坪)に本社を構えていましたが、会計システムのオンライン化やペーパーレス化を推進する他、産休・育休明けの従業員を中心にリモートワーク制度も導入していたため、コロナ発生を受けて即時フルリモートワーク体制へ移行することができました。

しかし、年間100名超を採用し続ける中、新入社員のオンボーディングに課題を感じます。新たな環境になじむために「異才ランチ(他部署の従業員とのランチ費用を月2回まで費用負担)」をはじめとする対面型コミュニケーションを推奨する等、一定数のオフィス出社が不可欠との認識は持ち続けていました。

セーフィー 取締役 経営管理本部本部長 兼 CFO 古田 哲晴氏は「フルリモートワークに切り替えてから比較的早い段階で出社を希望する従業員が増加していました」とし、リモートワークとオフィス勤務を組み合わせたハイブリッドワークが同社の働き方として定着します。以来、新オフィス稼働後も出社率は50%程度で推移しています。

人員増に対応するためオフィスが3拠点に分散

オフィス移転プロジェクトを担当したセーフィーの古田 哲晴氏(左)、和田 啓介氏

従業員が対面業務の重要性を認識し、従業員数も右肩上がりで急増する中、2021年4月26日に「A-Place五反田駅前」の2フロア299坪を借り増し、本社機能も移転しました。その後、さらなる人員増加に対応するべく「A-Place五反田駅前」で3フロア計377坪に増床。しかし、出社/リモートワークを制度化せず、従業員の裁量に任せていたため、出社人数が特定日に偏り、座席が足りない事態が頻発したといいます。そこで、近隣のフレキシブルオフィスも賃借せざるをえなくなってしまいました。

セーフィー 経営管理本部 人事総務部 総務労務グループ サブグループリーダー 和田 啓介氏はオフィス機能が分散したことについて「従業員のコミュニケーション活性化のために各種イベントを行っていますが、オフィス同士が分断されているため、交流が各オフィスで完結してしまい、お互いの顔を知らない従業員が増える等、社内コミュニケーションの低下に懸念がありました。さらに、面接担当者が本社オフィスに移動する必要があり、スケジュール調整が困難といった様々な課題が噴出していました」と振り返ります。

そして、カメラの保守交換作業を担当するチームで物理的な倉庫等が必要になり、既存オフィスではそれを賄う余剰スペースがありませんでした。古田氏によると「『五反田でもう1拠点開設してほしい』との要望がありましたが、4拠点に分散するなら1拠点に統合移転すべき」との結論に至ったといいます。

こうして「One place, One Floor」を前提として新たな移転先を探すことになったのです。

五反田バレーの理事企業が大崎へ
コミュニケーション活性化のため、フリーアドレス席を採用

慣れ親しんだ五反田から大崎へ移転した最大の理由は「五反田には広いオフィスビルがないため」

移転先となったのはJR大崎駅から徒歩6分に位置する大規模オフィスビル「住友不動産大崎ガーデンタワー」です。

ただ、セーフィーは2014年の創業以来、五反田エリアにオフィスを構えており、スタートアップが参画する一般社団法人「五反田バレー」の理事企業でもあります。そんな彼らが慣れ親しんだ五反田から大崎へ移転した最大の理由は「五反田には広いオフィスビルがないため」(古田氏)でした。

「五反田バレーを通じてスタートアップ・ベンチャー企業や品川区との関係性が密になり、かつ五反田近隣に居を構える従業員も少なくありませんでした。五反田からの距離、従業員全体の通勤状況とのバランス、将来的な従業員数の増加を踏まえ、ワンフロア1,000坪以上の床を確保できる物件は大崎以外に存在しませんでした」(古田氏)

コンセプトは「出社したくなるオフィス」

イベントやランチ等に活用されるオープンスペース「Park」

新オフィスのコンセプトは「誰もが出社したくなるオフィス」です。

和田氏は「当社の代表である佐渡島が重視している『好きな場所で働く』を体現するオフィスコンセプトとしました。アフターコロナは『出社することが目的』ではなく、『目的を果たすために出社する』フェーズです。そうした中、オフィスの存在意義を考える中で、従業員が『オフィスに出社したい』という動機付けが必要不可欠だと考えました」と、その意図を説明してくれました。

従業員をオフィス回帰に誘う施策は各企業によって様々ですが、例えば、セーフィーの場合は「会議室不足の解消」、「営業活動に寄与するショールームの拡充」、「コミュニケーション活性化」が挙げられます。

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1.会議室不足の解消

コロナ禍を受けてオンライン商談・会議が定着する中、前オフィスでは既存会議室を使用していたため、圧倒的に会議室数が足りなくなっていたそうです。そのため、新オフィスでは社内用会議室5部屋、社外用会議室14部屋に加えて、セミナールーム3部屋を整備。間仕切りを外せば最大108名まで収容可能です。あわせて、オンライン商談・会議に対応する「WORK-POD(個室ブース)」を15台(1人用4台、2人用11台)導入しました。

また、同社ではウェビナーを実施しており、オンライン配信専用の撮影スタジオも開設しています。

2. 営業活動に寄与するショールームの拡充
 

従業員の「サービスを売るための具体的な“武器”がほしい」との要望を受けて、前オフィスに開設していたショールームを拡充。「屋内カメラ」、「屋外カメラ」、「オフィスカメラ」の用途・仕様別に展示スペースを分けた他、飲食店やアパレル店、小売店といった3つの店舗ディスプレイを再現しました。モニターを介して接客対応を可能にし、店舗の無人化を実現するオンライン接客サービスや、店舗への訪問・滞在人数を自動集計できるAIカメラ等、セーフィーが提供するクラウド動画サービスを実体験できる環境づくりを進めています。

3. コミュニケーション活性化
 

オフィスを移転した最大の理由が「コミュニケーション活性化」であったため、執務スペースは背の高い什器や間仕切りがないフリーアドレス席とし、従業員同士が気軽に会話できるように配慮しました。

また、執務スペース内に公園をイメージした「Park」と呼ばれるオープンスペースを整備。飲料が無料提供されるカウンター席も用意しています。従業員同士でパーティーを開催したり、ランチ等が楽しめる等、コミュニケーションが生まれる場所として機能しています。

加えて、執務スペース内のいたるところにマグネットエリアを設けることで、スタンディング・ミーティング等が気軽にできるのも特徴です。

従業員アンケートで高評価

移転後に実施した従業員アンケート調査では、ほぼ全項目がプラス評価となった

新オフィスが稼働を始めてから半年あまりが経過する中、従業員の評価も上々のようです。和田氏は「移転後に実施した従業員アンケート調査では、ほぼ全項目がプラス評価となりました」と胸を張ります。

アンケートでは前オフィスだけでなく、移転前に設定した期待値との相対評価を行ったそうです。主な質問項目はオフィスの機能面・利便性が中心。来客共有スペースや、共同スペース、個人収容ロッカー、入居ビルの基本設備等、ファシリティに関する項目は特に高い評価を得ており、総合評価として掲げた「働きやすさ」において5点満点中3.8と「非常にいい傾向」(古田氏)になったそうです。

「働き始めてから『使い勝手がよくなった』、『広くて居心地がいい』といった前向きな感想が寄せられ、『Park』で従業員同士がランチを楽しんでいる姿を見ると、移転してよかったと実感しています」(和田氏)

一方、唯一のマイナス評価となったのは「スペースの使い勝手の自由度」だったとのこと。前オフィスとの比較ではプラスに評価されましたが、期待値には追い付いていませんでした。和田氏は「本来目的としていた使われ方がなされておらず、想定外の使用用途が多かったことが期待値とのギャップが生じた理由」とし、今後改善策を検討すると力を込めます。

オフィスの存在価値が再発見される

コロナ禍を受けて働き方やオフィスの在り方が大きく変化しましたが、JLLが2022年に発表したグローバル企業のオフィス戦略に関するレポート「Future of Work(働き方の未来)グローバル調査」では、72%が「オフィスが事業成長のための中核であり続ける」と回答しています。

セーフィーが目指した「出社したくなるオフィス」は従業員アンケートによって満足度が大きく改善したことがわかります。この好結果が事業成長にいかに寄与していくのでしょうか? 今後の行方が気になります。

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