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出社したくなるオフィスの特長と環境づくりのステップ【事例も紹介】

いま多くの企業がオフィス回帰に取り組んでいる。オフィス出社のメリットや出社したくなるオフィスの特長・具体例・オフィスデザイン例などをもとに、生産性向上やコミュニケーション活性化に寄与するオフィスの価値をあらためて見直してみたい。

2024年 06月 14日
いま「オフィス回帰」が重視される背景

2020年からのコロナ禍を受けて、リモートワークとオフィスを併用するハイブリッドな働き方が急速に普及した。

それは多様な働き方が受け入れられる社会形成に向けた追い風となり、通勤時間の削減やオフィス面積の見直しによるコスト削減などの副次的メリットももたらした。しかし、その一方で従業員同士のコミュニケーション不足やモチベーションの低下、取引先とのリレーションの困難さ、部下のマネジメントの難しさといった様々な課題も生まれた。

こうした課題を解消し、円滑なコミュニケーションやチームワークを促進するために、国内外問わず多くの企業でオフィス回帰の動きが重視されるようになったのである。

オフィス出社がもたらすメリット

仕事のための設備が整ったオフィス環境で働くことで、集中して業務を進められ生産性が高まる

従業員のオフィス出社には以下のようなメリットが期待できる。

生産性の向上

仕事のための設備が整ったオフィス環境で働くことで、集中して業務を進められ生産性が高まる。情報共有や上司と部下、チーム内の連携がスムーズに行えるのも生産性が高まる理由の1つだ。仕事とプライベートのメリハリがつきやすく、集中力を維持しやすいというメリットもある。

コミュニケーションの活性化

オフィスは社内外問わず人と直接触れ合えるコミュニケーションの場であり、従業員同士で業務の進め方やアイデアについて話し合い、相談や雑談もできる。リモートワーク下の課題やデメリットとして多くの回答が集まったのは「コミュニケーション不足」だった。しかし、オフィスでは同じフロアに上司や同僚、部下がいるためコミュニケーションが円滑になり、一体感が生まれやすくなる。

企業文化の醸成

オフィス勤務では、従業員の中で企業理念や業務目標を共有しやすくなり、企業文化が浸透しやすい環境が整う。また、従業員同士の交流を通じて絆が生まれ、企業や部署に対する帰属意識が高まることも期待できる。こうした企業文化の醸成はチームワークの強化や生産性の向上にもつながるだろう。

エンゲージメント向上

オフィスでの勤務は、従業員のエンゲージメント向上にも寄与する。フルリモートワークではコミュニケーション不足や孤独感から従業員のモチベーション低下が問題視されたが、オフィスでは適切なタイミングで上司や同僚とコミュニケーションが取りやすいため、仕事への意欲や帰属意識が高まる。また、適切なマネジメントやフィードバックを受けられる環境も従業員エンゲージメントを向上させるだろう。

イノベーションの促進

オフィスにおける対面型のコミュニケーションは、イノベーション創発にも効果的とされる。従業員同士が直接交流し、アイデアを出し合える環境は新たな発想や革新的なソリューションが生まれる土壌となる。また、異なる部署間の交流によって多様な視点や知見が共有され、イノベーションが加速することも期待できる。

人材確保

快適で働きやすいオフィスは優秀な人材の確保にも役立つ。求職者にとって魅力的な職場環境は人材獲得の競争力を高め、従業員の職場への愛着形成に寄与する。またオフィスでの対面コミュニケーションやチームワークを重視する企業文化は人材の定着率向上にもつながるだろう。

出社したくなるオフィスの特長

出社したくなるオフィスには、執務席だけでなく、仕事の内容や目的・気分に応じて自由に働く場を選択できるよう、さまざまな働き方に対応したスペースが設けられている

従業員が自ら出社したいと感じるオフィスには、いくつかの共通した特長がみられる。自社に当てはまるものがいくつあるか検証してみてほしい。

多様な活動に適したワークスペース設計

出社したくなるオフィスには、執務席だけでなく、仕事の内容や目的・気分に応じて自由に働く場を選択できるよう、さまざまな働き方に対応したスペースが設けられている。

集中して作業ができる場、ウェブ会議が快適にできる場、アイデア出しや交流に適した場など、多様な活動に適したワークスペースの設計が求められる。

こうした柔軟な働き方ができる環境は、従業員の生産性や満足度を高め、出社意欲を高める重要な要素となるだろう。

従業員のニーズに合わせた設備やレイアウト

企業や職場によって従業員が求めていることは異なるが、ニーズに合った設備やレイアウトが整えられているオフィスには自然と人が集まるだろう。たとえば集中できる環境を求める従業員にはボックス席や個別のスペースを用意し、コミュニケーションを重視する従業員にはリラックスできる休憩スペースやカフェスペースを設けるなど、多様なニーズを把握することが重要だ。

柔軟性のある空間設計のため、人数に応じて自由にレイアウト変更できるデスクやチェアを導入しているオフィスも見られる。

柔軟な働き方の選択肢に対応

様々な働き方の選択肢に対応できる環境が整っているのも、出社したくなるオフィスの特徴だ。自宅やサテライトオフィスなどでは、専門性の高い業務や高機能な機材を使用した開発業務などは難しいため、オフィスならではの特別な機能は価値の高い選択肢となる。

またリモートワークと組み合わせた柔軟な働き方を可能にするため、オンラインとオフラインのシームレスな切り替えができるオンライン環境の構築も欠かせない。

企業カルチャーを体現した空間

出社したくなるオフィスの多くは、その企業ならではのカルチャーを体現した空間となっている。オフィスのデザインやレイアウト・設備などに企業の価値観や個性を反映させることで、従業員は企業への帰属意識や一体感を感じることができ、企業カルチャーに合わせたコミュニケーションスペースや交流の場を通じて従業員間の連帯感や協力関係を育むことも可能だ。

コミュニケーションが取れる

従業員同士のコミュニケーションを促進する環境が整っていることも出社したくなるオフィスの特徴だ。直接顔を合わせて相談や雑談を気軽にできるスペースや、チームでのアイデア出しに適した環境を用意することで、情報共有や意思疎通がスムーズになり、協力体制が生まれやすくなる

またリラックスできる休憩スペースやカフェスペースを設けることで、従業員間の業務を離れたコミュニケーションも活性化し、オフィスでの時間がより充実したものになるだろう。

ウェルネスに配慮されている

オフィスで過ごす時間は1日の大半を占めるため、従業員にとってウェルネスに配慮されたオフィスは大きな魅力を持つ。健康的なメニューがある社員食堂やリラックスできるカフェスペース、ストレス緩和やリフレッシュができる空間などを整備することで、従業員の心身の健康をサポートすることができる。

適切な照明や空調、エルゴノミクスに配慮した家具などを導入することで、快適な職場環境を実現することも重要だ。

出社したくなるオフィスを作るための具体的なアイデア5選

従業員毎日オフィスに行くのが楽しみになるような仕掛けがあれば「出社したくなるオフィス」作りは成功といえるだろう。以下に具体的なアイデアを紹介する。

 
コラボレーションスペース

リモートワークでは得がたいオフィス出社のメリットとして、従業員間のコラボレーションが挙げられる。

簡単な会議ができるスタンディングデスクやオープンミーティングスペースを設置することで、気軽に打ち合わせやアイデア出しを行うことができる。また、用途を限定せず自由な発想を展開できるクリエイティブスペースは、そこに集まったメンバー相互でインスピレーションを与え合うこともできるだろう。

 
休憩スペース

適切なリフレッシュは仕事の生産性を高め、職場での時間をより良いものにしてくれる。リラックスするための空間には、自然素材を取り入れたバイオフィリックデザインも効果的だ。また個人で静かに過ごせるパーソナルスペースと、複数人で雑談やミーティングができるグループスペースを用意することで多様なニーズに応えることができる。

屋外の休憩スペースやエクササイズマシンなどの設備は、従業員の満足度を高める効果がある。

 
カフェスペース

オフィス内にカフェスペースを設置することは、従業員にとって、社外店舗への移動時間や費用を抑えるというメリットがあり、オフィス出社の価値を高める効果的な施策である。カフェは休憩だけでなくミーティングや作業を行う場所としても機能するが、社内であればセキュリティリスクも低減でき安心して利用できる。本格的なカフェの設置が難しい場合でも、ハイエンドなコーヒーマシンの導入など、従業員のニーズに合わせたカフェ機能を取り入れることで、満足度を向上させることができる。

 

フリーアドレス席

従業員が固定席を持たず、日々の業務や気分に合った席で作業を行えるフリーアドレス環境は、組織の垣根を超えたコミュニケーションを促進し、新しいアイデアの創出や部署間の連携強化に寄与する。

固定席のオフィスでは単調に感じられる作業も、場所や交流する相手が変われば新鮮にとらえ直すことができ、出社意欲を刺激する。

 
ユニークな体験ゾーン

その会社ならではの価値観を表現したユニークなスペースは、従業員が楽しみながら利用できるだけでなく、企業カルチャーを社外へアピールすることにもつながる。

JLLの東京本社には、ヨガなどを行うことができる多目的ルームや日本のおもてなし文化を体験する茶室を設置。オフィス稼働以降、出社率も上昇傾向にある。

出社とリモートワークの使い分けのポイント

全体の方向性としてはオフィス回帰を目指しつつも、従業員各自の事情により柔軟な働き方ができるハイブリッドワークの機会も確保しておきたい。オフィス出社とリモートワークは今後、どのような関係性になっていくのだろうか。

ハイブリッドワークにおけるオフィスの役割

オフィスの役割は、今後「状況にかかわらず、全従業員が毎日出社する場」から「目的をもってオフィスを選択する業務の場」へと変化しつつある。介護や育児・身体的な事情などでリモートワークを選ぶこともできる上で、オフィスならではの価値や魅力を目的に従業員が自発的に出社してくる場所を目指すことがより求められるだろう。

またオフィスは企業のブランディングやシンボル的な存在として、全体ミーティングや新製品の発表会などを行う場としても価値を発揮していく場としても機能するだろう。

出社とリモートワークの最適なバランス

現在、多くの経営者が従業員にオフィスに戻ってきてもらいたいと考えている。

子育て世代を中心にワークライフバランスや通勤時間の削減といった理由でリモートワークが好まれる一方、同僚とのコラボレーションや社会的な交流を求めてオフィス勤務を希望する人も増えており、特にグループワークでは、オフィスの方がやりやすいと感じられる。

個人の業務内容やライフスタイル、チームの特性などを考慮しながら、出社とリモートワークの最適なバランスを見つけることが重要だ。また、オープンスペース型のオフィスでは周囲の音が気になり出社を避けるといったケースもあり、防音対策などオフィス環境を最適化していく工夫も欠かせない。

リモートワーク時のコミュニケーションのコツ

家庭の事情などによりリモートワークする従業員と、オフィス出社している従業員とのコミュニケーションを円滑にするためにはいくつかのコツがある。まず定期的なオンラインミーティングを設定し、話す機会を確保することが重要だ。またチャットやメールなどのコミュニケーションツールを活用し、適切なタイミングで情報共有や相談を行うことも効果的である。さらに雑談や非公式な交流の場を設けるなど、リモートワークの従業員には意識的にコミュニケーションを取ることが求められる。

出社したくなるオフィス作りのステップ

従業員が自ら出社を選びたくなるようなオフィスを構築するためには、以下のようなステップで進めよう。

従業員のニーズ把握と課題の明確化

出社したくなるオフィス作りの第一歩は、従業員のニーズと現状の課題を把握することである。アンケートやインタビューを通じて、従業員が求めるオフィス環境や働き方、現在のオフィスの問題点などを明らかにする。得られた情報を分析し、優先順位の高い課題を特定することが重要だ。

また、経営層と合意形成を図り、オフィス改善の目的と方向性を明確にすることも欠かせない。

目的に合わせたオフィスレイアウトの設計

従業員のニーズと課題を明確にできれば、それを踏まえたオフィスレイアウトの設計を開始しよう。コラボレーションスペースや集中ブース・リフレッシュエリアなど、多様な働き方に対応したゾーニングを行う。

また家具やインテリアの選定においては、機能性やコストだけでなく、企業カルチャーを表すようなデザイン性や、ウェルネスに配慮した快適性も考慮する必要がある。柔軟性と拡張性を備えたレイアウトを設計することで、将来的なニーズの変化にも対応するオフィス環境を実現できるだろう。

継続的な検証と改善

出社したくなるオフィス作りは一度で完成するものではないため、オフィス環境を継続的に検証し改善していくことが重要である。従業員の満足度やエンゲージメント、生産性などの指標を定期的に測定し、オフィス改善の効果を評価する。また、従業員からのフィードバックを収集し、ニーズの変化や新たな課題を把握することも欠かせない。PDCAサイクルを回しながら、オフィス環境を進化させていくことが、出社意欲の高いオフィス作りにつながるだろう。

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出社したくなるオフィス事例2選

従業員が出社したいと感じるオフィスのヒントとなる事例も参考にしてほしい。

2倍以上の拡張移転で目指す「出社したくなるオフィス」像

クラウド録画対応セキュリティカメラの開発および各種サービスを提供するセーフィーは、2023年に五反田など3拠点に分散していたオフィスを東京・大崎の「住友不動産大崎ガーデンタワー」17階に統合移転し、500坪から1,100坪へと大きくオフィスを拡張した。

ハイブリッドワークが定着する中でも、新オフィスのコンセプトは「誰もが出社したくなるオフィス」と設定。移転後に実施した従業員アンケート調査では、ほぼ全項目がプラス評価となったという。

会議室不足を解消する多種多様な会議室と個室ブースの設置、同社の製品とサービスを体験できるショールーム、そしてコミュニケーションを活性化するフリーアドレス制や公園をイメージした「Park」と呼ばれるオープンスペースを整備し、ランチやパーティーなどに活用している。

“新しい働き方”をリードするJLLの新オフィス

総合不動産サービスのJLLは2022年11月に東京本社、および12月に関西支社を統合移転し、新オフィスを開設した。

新オフィス のコンセプトは下記の5つ。

  • 新しいワークスタイル・プレミアムな体験

  • 最新テクノロジー・新たな発見

  • コミュニケーション・コラボレーション

  • ウェルビーイング・エンゲージメント

  • 持続可能かつ環境に配慮したワークプレイス

これらを柱とし、そこで働く人びとにとって、オフィスに出社すること自体が上質な体験となるワークスペースを具現化した。

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新しい時代の「出社したくなるオフィス」へ

生成AIが急速に発達する現在、今後、ますます人と人とのリアルなコミュニケーションが生み出すイノベーションや連帯などが価値を持つ時代になると予想される。

従業員の柔軟な働き方にも配慮しつつ、可能な状況であれば迷わずオフィスに出社することを選ぶ、そんなオフィスデザインの戦略を推進していきたい。

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