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オフィス防音対策のメリットと重要性 - 最適な施策で生産性を上げるには?

オフィス内での雑音・騒音は、社内および取引先との会話や通信の妨げとなり、従業員の集中力や生産性の低下とストレスを引き起こす。オフィス内の音環境改善に取り組む企業の責任者・担当者に向け、オフィスにおける防音対策の重要性やメリット、効果的な対策と具体的な導入ステップ、成功事例などのヒントを解説する。

2024年 07月 10日
オフィスの防音対策がなぜ重要なのか?騒音・雑音・音漏れのデメリット

近年導入の進むオープンなオフィス環境下では、防音対策は以前にも増して重要なファクターとなる

「音」は目に見えないため、オフィス環境改善のプロセスで見落とされがちだ。しかし近年導入の進むオープンなオフィス環境下では、防音対策は以前にも増して重要なファクターとなる

コミュニケーションの向上やイノベーションの創出、組織への帰属意識を高めるため、従業員のオフィス回帰を推進する企業は多い。しかしその一方で、オフィスの騒音によるストレスや集中力の低下を理由に在宅勤務を希望する従業員が25%を超えるという海外の調査結果もあることから、オフィスの防音対策は喫緊の課題といえるだろう。

まずは騒音・雑音・音漏れがオフィス環境にもたらすデメリットと、適切な対策を行うメリットや重要性を確認してみよう。

【雑音・反響】スムーズなコミュニケーションを妨げる
 

オフィスにおける雑音や会議室内の反響は、コミュニケーションの質を著しく低下させる原因となる。特にオープンなオフィス環境では空間全体に音が拡散しやすく、デスクで向かい合っている相手でも声が聞き取りづらいこともある。ミーティングや打ち合わせの効率が低下し業務に支障をきたすほか、指示の聞き逃しによる作業の手戻りや遅延を引き起こすおそれもあるだろう。

【騒音】集中力や生産性低下、ストレスの増加につながる
 

オフィス内の騒音は、従業員の集中力や生産性を大きく低下させる要因となる。周囲の話し声やプリンターの音、外部の騒音などに曝されると、業務に集中することが難しくなり、ミスや効率の悪化につながりやすい。また、常時高い騒音レベルにさらされることは、従業員のストレスを増加させ、職場における満足度の低下や離職の原因にもなりかねない。

【音漏れ】機密情報漏洩やプライバシーを損なうおそれがある
 

オフィスにおける音漏れは、機密情報の漏洩やプライバシーの侵害につながる深刻な問題である。会議や打ち合わせでの発言、電話での会話、個人的な相談など、オフィス内では様々な機密情報やプライベートな情報がやり取りされているが、これらの情報が外部に漏れると、企業の競争力や信頼性が損なわれるだけでなく、個人のプライバシーが脅かされることにもなりかねない。

近年のフリーアドレス化で上記の傾向が増している
 

コロナ禍を機に、在宅でのリモートワークを含むハイブリッドな働き方が普及し、それに合わせてオフィスにフリーアドレス制やABWを導入する企業が増えた。

しかし、こうしたオープン型オフィスは従来の固定席のオフィスと比較して会話やコミュニケーションが生まれやすい半面、周囲の話し声や雑音で集中力が低下したり、プライバシーが守られていないと感じる従業員も増えている。

この傾向は一般社員にとどまらず、35-45歳の管理職にも多くみられたという。さまざま

さまざまなタイプの仕事に適した多様性のあるスペースを備えたオフィスデザインは、すべての従業員が1日を通じて快適かつ生産的でいられるために非常に重要だといえるだろう。

騒音・雑音・音漏れ対策を行うメリット

上記のような音の問題の対策を適切に行うことで得られるメリットは数多い。
 

  • コミュニケーションの向上:雑音や反響が減少することで、オフィス内でのコミュニケーションがスムーズになる。ミーティングや打ち合わせの効率が向上し、業務遂行の正確性が増す。

  • 集中力と生産性の向上:騒音が減ることで、従業員の集中力が向上し、作業効率が高まる。ミスの減少とタスクの迅速な完了につながり、全体の生産性が向上する。

  • ストレスの軽減:環境騒音が低減されることで、従業員のストレスが軽減され、職場の満足度が向上する。これは長期的に見て従業員の健康促進にも貢献し、離職率の低下にもつながる。

  • 情報漏洩リスクの低減:音漏れ対策により、会議や個人間での会話が外部に漏れるリスクが減少する。これにより、企業の機密情報保持と従業員のプライバシーが守られ、企業の信頼性と競争力が保たれる。
オフィス内で重点的に防音対策を行うべき場所

オフィスの形が多様化する今日、社内のエリアごとにしっかりと防音すべき場所と、防音対策が必要ない場所が生まれている。

また、防音対策には「外部からの音を遮る」、「音が外へ漏れないようにする」の2つの目的がある。以下に、エリア別にどのような防音対策が必要なのかを説明する。

ミーティングルーム・会議室
 

重要な内部情報のやり取りが行われるミーティングルームや会議室では、音漏れによる情報漏洩のリスクを避けるため、外部の音を遮断し内部からの音が漏れないように一段上の防音対策を施したい。特に部屋の仕切りや固定席のないオープン型オフィスでは、ミーティングルームの防音対策は極めて重要となる。近年よく見られるガラス張りの会議室では、遮音性能の高い二重ガラスを採用するなど、視覚的開放性と音響的プライバシーを両立させる工夫が求められる。

応接室
 

応接室は来客を迎える「会社の顔」ともいえる場所であり、外部の会話や雑音が入ってくると重要な商談や会議の質が低下してしまうおそれがある。このため、応接室では内外の音の遮断に重点を置いた防音対策が不可欠であり、壁全体の防音対策に加えて防音ドアや防音カーテンの設置など高度な防音対策を行いたい。

休憩スペース
 

休憩スペースは、従業員がリラックスしてプライベートな会話を楽しんだり、1人で静かに休息を取ったりする場であるため、仕事の会話が耳に入ってこない環境がのぞましい。逆に休憩スペースで談笑する声がワークスペースに漏れることで、業務に集中している従業員の妨げとなる可能性もある。

情報漏洩のリスクは比較的低いため高度な防音対策は必ずしも必要ではないが、コストと効果のバランスを考慮して適切なレベルの対策を行おう。

社長室
 

社長室では企業運営に関わる重要な情報が扱われるため、音漏れによる情報漏洩が経営上の大きなリスクとなる。また社長室に訪れる来客は他社の経営層や大口顧客も多いため、社内の雑音が入り込まない静かな環境を整えておきたい。

オフィスの防音対策の種類と特徴

オフィスの防音対策には、工事や内装の変更を伴うものから、必要な道具を調達して社内で対応できるものまでさまざまな種類がある。
 

オフィスで有効な防音対策の種類

オフィスの防音対策には、大きく分けて遮音、吸音、制振、防振の4つの方法がある。以下の防音対策を単独あるいは組み合わせて活用していくとよい。
遮音 遮音材を使用して外部から伝わる音や内部から漏れていく音を遮断する方法
吸音 専用の吸音材を床や壁などに貼りつけることで音の波を吸収・抑制して音の伝播を防ぐ方法
制振 音によって発生した振動を短時間で収束させ防音効果を得る方法
防振 防振材やゴムマットなどを利用して音の振動を伝わりにくくする方法。特に低音の伝播を防止したり、下階への音の響きを軽減したりする際に有効
その他 人間の耳が快適に感じる音を流すことで不快な音を感じにくくする「サウンドマスキング」技術ほか
工事や改装をともなうオフィスの防音対策
 

工事や改装を伴う防音対策の手法は、効果が高く持続的なことが特徴だ。具体的には以下のような方法が挙げられる。

  • 二重窓の設置

  • 間仕切りの設置

  • 防音ブースの設置

  • 壁や天井への吸音材・パネルの取り付け

  • 防音・防振効果のある床材への変更や追加

これらの対策は、オフィスの外部からの音の侵入を防ぐと同時に、内部からの音漏れを大幅に減少させる。長期的な投資としての価値が高く、特に騒音問題が深刻な地域や業種において効果的である。

手軽に取り入れられるオフィスの防音対策
 

大規模な改修を必要としないオフィスの防音対策としては以下のようなものがある。

  • ドアや壁の隙間を埋める

  • パーテーションの設置

  • 壁に吸音材やパネルを取り付ける

  • 防音カーテンの追加や変更

  • OA機器やモーター音が気になる機器への制振材の取り付け

  • 防音・吸音カーペットの追加や変更

  • サウンドマスキング装置の設置
     

これらの手法は比較的低コストで導入でき、オフィスのレイアウトや設計に大きな変更を加えることなく実施できる。対策にかける時間と費用が限られているときや、小規模オフィス一時的な防音対策が必要なときに特に適している。

自社に適した防音対策の見極め方と導入ステップ

オフィスの使用目的や業務内容、騒音の源となる具体的な要因を一覧にし、どのエリアにどの施策を行うべきか決定したのち、スケジュールを策定して優先順位の高いエリアから順に実施していこう

防音対策を進める際の手順と、どの方法を選ぶべきかの判断基準を紹介する。防音の必要性や緊急度、予算などに応じて、もっとも費用対効果のよい方法を見極めよう。

防音対策の基本的な進め方
 

オフィスの防音対策は、以下の6つのステップに従って進めよう。

  • 目的を明確にする:防音対策が必要な場所や求められる防音性能の高さを明確にし、適した工法を選択する。

  • 工事業者に相談する:各業者の実績や評判を調査し、数社に絞り込んだ上で、オフィスの業種・業態や防音対策の目的・予算などを伝える。

  • 現地調査を依頼する:JISやISOなどの騒音測定を依頼し、オフィス内の騒音レベルを確認した上で、必要な防音対策の工法を検討する。

  • 工法を決定する:防音対策する場所の規模や周辺環境との位置関係、騒音の種類などを踏まえて、壁・窓・床と全体の適切な工法を選択する。

  • 費用と工期の見積もりを取る:決定された工法に沿って、防音対策の費用と工期の見積もりを取り、予算内に工事費用が収まるか、オフィスの通常営業に影響がないかを確認する。

  • 工事を契約する:納得できる見積もりを受け取ったら、工事後の立会検査と引き渡し、アフターフォロー、補償内容などを理解した上で正式な契約に進む。
     
自社のニーズに合わせた防音対策の選択
 

自社の防音対策を選択する際には、オフィスの使用目的や業務内容、騒音の源となる具体的な要因を一覧にし、どのエリアにどの施策を行うべきか決定したのち、スケジュールを策定して優先順位の高いエリアから順に実施していこう。

また、自社では多くの従業員が1人で集中を要する業務についているのか、活発な意見交換やアイデアを創出するための交流といった働き方の違いにも着目し、個人ブースの設置数などニーズに合わせ具体的な方針を決めていくと失敗が少ないだろう。

確実・早期に課題を解決するなら専門家のサポートを
 

従業員のオフィス回帰の障壁の1つである騒音・雑音の問題は、課題の発見と社内のニーズ把握、費用対効果の高い適切な対策の選択など、やるべきことは多い。

もし限られた人的リソースと時間の中で防音対策を進めなければならない場合、オフィス環境の専門家に相談するのも有効な方法だ。

JLLではオフィス構築のコンセプトから、AIや3Dなどの最新テクノロジーを活用したオフィスデザイン設計の専門部門によるデザインマネジメント、ワークプレイス戦略の策定まであらゆるソリューションを提供している。

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オフィスの防音対策成功事例

JLLは2022年に自社が提唱する「Future of Work(働き方の未来)」と多様な働き方の実現に向け、東京本社と関西支社の移転を実施。「第36回日経ニューオフィス賞」にて「ニューオフィス推進賞・クリエイティブ・オフィス賞」(東京本社)、「近畿ニューオフィス奨励賞」(関西支社)、「2023年度グッドデザイン賞」(東京本社)など多数の賞を受賞。また、国際的なグリーンビルディング認証であるLEEDにおいて東京本社は最高ランクである「プラチナ」、関西支社は「ゴールド」を取得。また、従業員の快適性や健康にフォーカスした国際的ビル認証であるWELLにおいて東京本社・関西支社共に最高ランク「プラチナ」を取得している。

コミュニケーションが生まれやすいABW型オフィスを採用しつつ、周囲の音から離れて集中したいときに自由に利用できる「ワークプレイス・ポッド(個人用ブース)」を設置し、さまざまな仕事内容に対応できる環境を用意している。

この「ワークプレイス・ポッド」は欧米ですでに多くの企業で導入されており、オフィス内の好きな位置に据え置くだけで完了する利便性の高さが好評だ。JLLのオフィスには電話ボックス型が導入されているが、ケーブルカー型、ツリーハウス型、ハンモック型なども存在し、企業のブランドイメージやオフィス環境に合わせたデザインを選択できる。

JLLでは現在東京・大阪ともに新オフィスのオフィスツアーを実施している。参加すればオフィス移転のアイデアや、チェックリスト作成に欠かせない戦略立案などのヒントも得られるだろう。

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生産性向上につながる適切な防音対策を

多くの経営者や人事・総務部門のリーダーは、今後、多様な働き方を尊重しつつもオフィス出社のメリットを高く評価している。今後は「出社したくなるようなオフィス」の構築がより求められていくだろう。

オープンオフィスの理想的な環境の条件としては、採光や空調温度管理・コミュニケーションが生まれる仕掛けなどに加え、プライバシーの保護や集中できる静かなゾーンなど「音」にまつわる要素も多く含まれる。

適切な防音対策を行うことでオフィス回帰を促進し、オフィスにおける生産性を高めていきたい。

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