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オフィス回帰を促すためのポイントとは?

アフターコロナ時代の本格的な到来により、テレワーク主体の働き方をもとに戻す「オフィス回帰」へと向かいつつあるが、オフィス主体の働き方に戻すことを従業員が納得しないケースもあるという。オフィス回帰を促すためのポイントとして、企業の取り組みを紹介する。

2023年 11月 20日
依然としてオフィス回帰が進まない米国

日本から遠く離れた米国では、オフィス回帰を求める経営層とテレワークを継続したい従業員との間で大きな軋轢が生じているとの報道がある。米国のオフィス回帰状況をみると世界的に遅れているようだ。

JLLが2023年8月に発表した調査レポート「CBDの未来」によると、コロナ前の2019年時点のオフィス出勤率を100とした場合の、2023年時点の日本(東京)のオフィス回帰率は80%を記録。上海や北京、ソウルではコロナ前と同水準まで回復しており、アジア太平洋地域の主要ビジネス地区におけるオフィス回帰率は70-100%に達している。その半面、米国の主要ビジネス地区で最もオフィス回帰率が高かったヒューストンでさえ61%、ニューヨークやシリコンバレーを擁するサンフランシスコに至っては40%台にとどまっている。

オフィス回帰に向けて内装デザインが大きく変化

企業はテレワークを超えるワークプレイス・エクスペリエンス(優れた就労体験)を従業員に提供しなければならないというプレッシャーにさらされている

世界的にみても、オフィスの使われ方は大きく変化している。企業は長期にわたって構築してきた従来型の働き方や企業文化を見直し、新たな形を模索しなければならなくなった。テレワークによって従業員が得たワークライフバランスの恩恵を損なうことなく、企業はテレワークを超えるワークプレイス・エクスペリエンス(優れた就労体験)を従業員に提供しなければならないというプレッシャーにさらされているともいえるだろう。

一部の民間調査では、コロナ前のようにオフィス出社を義務化した場合、転職を検討する従業員の存在が明らかになる等、優秀な人材を確保するためには、もはやテレワークを全面廃止するのは難しい状況ともいえる。

とはいえ、テレワークだけでは社内コミュニケーションが停滞し、イノベーション創発等の付加価値が生まれにくくなる。そのため、テレワークとオフィスを併用する「ハイブリッドワーク」を導入する企業が増えているのが現状であり、欧米等のグローバル企業ではオフィスの内装デザインを大きく変えようとしている。

JLLフランス ワークダイナミクス ディレクター レミ・カルヴェラックは「欧州企業のオフィスデザインはここ数十年で最大の変化を見せつつある」とし、「企業はリモートワークとオフィス勤務の最適なバランス感覚を見出そうと、オフィスデザインを変革している。最大の変化はオフィススペースの比率だ」と指摘している。

JLLのグローバル調査レポート「2023 Occupancy Benchmarking Report(英語版のみ)」によると、回答企業の80%がコラボレーションスペースを拡大することを計画しており、固定席の割合を逆転したという。フリーアドレスABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)型オフィスに切り替える企業が目立つ。

また、働くための「場所貸し」に終始するのではなく、企業の施設運営担当者はちょっとした社内イベントを業務時間に組み込む方法も模索しているという。多くの従業員は「自分が企業に所属している」と実感し、帰属意識が醸成されることで充足感・安心感を得ているからだ。

カルヴェラックによると「オフィス戦略に注力する一部の欧州企業では、従来型の受付エリアに代わって、バリスタが飲料を提供するバーカウンターを設ける等、ホスピタリティを提供することを重視している」という。

アフターコロナを迎えオフィス回帰の動きが目立つ日本

欧米に比べてオフィス回帰の動きが鮮明になっている日本でも、オフィス勤務に対する従業員の満足度向上に向けて様々な施策を実行する企業は少なくない

欧米に比べてオフィス回帰の動きが鮮明になっている日本でも、オフィス勤務に対する従業員の満足度向上に向けて様々な施策を実行する企業は少なくない。これまでJLL日本が取材した企業のオフィス改革から具体例を紹介したい。

オフィス回帰を目指す企業のオフィス戦略成功事例
オフィスならではの福利厚生施設:GMOあおぞらネット銀行

インターネット銀行事業を展開するGMOあおぞらネット銀行は2019年12月に大規模複合ビル「渋谷フクラス」にオフィスを開設。同ビル内には福利厚生施設として広さ600坪超を誇るシナジーカフェをはじめ、お昼寝スペースやマッサージができるリラクゼーションスペース、完全無料のフィットネスジムを設け、従業員の能力を最大限発揮できる共用スペースの拡充に努めている。

従業員エンゲージメント向上に寄与する設備機器:法律事務所ZeLo・外国法共同事業/Tech Fun

AIやweb3等、先端領域の研究・実務を進めてきた法律事務所ZeLo・外国法共同事業は2022年12月、大幅な人員増に対応するべくオフィス移転を実施。メンバー個々の成長を促せるような働きやすい執務環境を構築することを目標としており、オフィスの一環には筋トレマシンやAIマッサージチェアを設置し、メンバーのウェルビーイングにも配慮した。

クラウドを活用したITソリューションサービスを開発・提供するTech Funは2021年2月、2つの事業拠点を統合集約し、ワンフロアへ増床移転した。移転の目的の1つに「オフィスに出社した従業員に向けてプレミアム感を体感してもらうこと」を掲げており、従業員のエンゲージメント向上を目的に、オフィス内に独立型のセルフカフェルームを整備した。

在宅勤務にはない執務環境:ビースタイルホールディングス

ネット環境や狭小な住宅事情、各種オフィス機器を備えていない在宅勤務では生産性が低下するといった声を耳にする。そうした中、業務効率・生産性向上を1つの目的として2021年1月に新本社オフィスを開設したのが、人材サービス会社のビースタイルホールディングスだ。オンラインによる営業活動の比率が高まったことから、新オフィスにはオンラインミーティング用の個人ブースの導入を拡充した。

テナントサービスとして共用スペースを提供する新築ビル

こうしたオフィス改革に投資するのはテナント企業だが、コロナ禍以降に竣工するAグレードオフィスビル等では、テナント対象の共用サービスとしてリラクゼーションスペースや社食機能、屋外スペースを提供するケースも見られ、高品質なオフィスに需要が集中する「質への逃避(Flight to quality)」が顕在化している。

オフィス回帰を促すJLL日本の本社オフィス:オフィスツアー実施中

手前みそながら、JLL日本が2022年11月に統合移転した東京本社オフィスも開業以来、出社率が高まっている。

自然と人が集まりコミュニケーションが生まれる「公園」をコンセプトとし、社内外のコミュニケーションを促進するために、受付や執務エリアにカフェやサロンを設置した他、身心のリフレッシュと創造性を高める場として、マザールームやエイドルーム、ヨガ等を行える多目的ルーム、日本のおもてなし文化を体験する茶室等を整備し、従業員に働きやすい環境を提供し、帰属意識やウェルネスを体感できる執務環境になっている。その結果、日経ニューオフィス賞グッドデザイン賞を受賞し、国際的なグリーンビルディング認証であるLEEDWELLの最高ランクである「プラチナ」をダブル取得している。

オフィス回帰を促すJLL日本の本社オフィスは事前予約制でオフィスツアーを実施しているので、興味のある方は下記からお申込みください。

日経ニューオフィス賞・グッドデザイン賞 W受賞​

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オフィスに出社する“意義”を見出す必要がある

とはいえ、上記で紹介した取り組みは当該企業の事業内容や目指すべき働き方に合致したものであり、すべての企業に通じる万能の解決策になるわけではない。テレワークでは味わえない、オフィスだからこそ体感できるエクスペリエンスを提供し、「なぜ、オフィスに出社するのか」、その意義を従業員に周知・理解してもらう必要がある。

企業・従業員双方のニーズに合致したオフィスを作り出すことが、オフィス回帰への近道といえそうだ。

企業のワークプレイス改革を多数支援してきたJLLのサービスとは?

JLLでは、ワークプレイスコンサルづくりやオフィス仲介、オフィス移転・リニューアル時の工期・予算等を含めたプロジェクトマネジメント、オフィス運営に関するアウトソーシング業務まで、一気通貫で支援し。多数の実績を有している。ワークプレイス改革に興味のある方は下記をご覧ください。

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