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メタバースオフィスとは?導入のメリットや機能、導入事例を紹介

注目を集める「メタバースオフィス」とはどのようなオフィスなのか、種類や機能、導入にともなうメリット、導入時のステップと注意点をふまえ、オフィスを選ぶ際のポイントを紹介する。

2024年 02月 29日
メタバースオフィスとは?

メタバースオフィスとは、インターネット上に構築した仮想空間「メタバース」に設けられたオフィスのことを指す

「メタバース」とは、インターネット上に構築した仮想空間のことをいい、ユーザーは「アバター」と呼ばれるキャラクターを操ってアクティビティに参加したり交流したりできる。

従来の活用シーンはゲームやコロナ禍でのイベント開催などが目立っていたが、近年では、自宅やサテライトオフィスから仮想空間上のオフィスに“出勤”する「メタバースオフィス」が登場し、注目を集めている。

メタバースオフィスとは、インターネット上に構築した仮想空間「メタバース」に設けられたオフィスのことを指す。「バーチャルオフィス」、「仮想オフィス」とも呼ばれ、従業員は自身のステータスを表示したアバター(ユーザーの分身となるキャラクター)を介して作業・情報共有・ミーティングなどが行える。

メタバースオフィスの種類

現在、メタバースオフィスを提供するサービスが各社から提供されている。それぞれのサービスはいくつかのタイプに分類されるが、代表的なのは以下の3種類である。

  • 3Dメタバースオフィス
  • 2Dメタバースオフィス
  • 音声コミュニケーション特化オフィス

それぞれの特徴をまとめると以下のようになる。

種類 3D映像の共有 平面画像の共有 音声の共有 高度な通信環境 ハイスペックな端末 費用
3Dメタバース 高め
2Dメタバース × 不要 不要 中程度
音声特化 × × 不要 不要 低め

3DメタバースオフィスはVRやMRの技術を駆使した3次元の仮想空間にオフィスを設け、従業員は立体的なアバターを通じてよりリアルなオフィスの環境を体感できるが、本来のパフォーマンスを十分に発揮するためには高度な通信環境や一定以上のスペックを備えた使用端末が必要とされる。

2Dメタバースオフィスでは、従業員は平面的なデザインの仮想オフィスでアイコンまたは2Dのアバターを操作する。3Dと比較するとリアルさや没入感は劣るが、一般的な端末や通信環境でも導入しやすいのがメリットだ。

音声特化型のメタバースオフィスでは、映像のオフィスは存在せず、ボイスチャットや画面共有を利用して、適宜音声でコミュニケーションを取りながら仕事を進める。各従業員の端末や通信環境が揃っていなくとも手軽に導入できるのが特徴だ。

メタバースオフィスに備わっている機能

メタバースオフィスのサービスでは、種類やプランによっても異なるが、おもに以下のような機能が提供される。
 

  • 各自のステータス表示(オンライン/会議中/休憩中/オフラインなど)
  • チャット
  • 掲示板
  • ビデオ通話/オンライン会議
  • 画面共有
  • ファイル共有
  • アバターの操作
  • フロアレイアウトの設定
  • 勤怠管理(入室・退室・作業画面の保存など)
  • コミュニケーションルーム
メタバースオフィスのメリット

メタバースオフィスでは各自のステータスが表示されるため、アバターを通じて適切に上司や同僚と交流しやすくなり、コミュニケーション向上が期待できる

メタバースオフィスのメリットは、企業側にとっても従業員側にとっても幅広い。

円滑なコミュニケーション

オフィスに出社せずリモートワーク中心に働く社員は、物理的な距離や在席中なのか会議中なのかといった現在の相手の状況が分からないことから、ちょっとした質問や相談・休憩時間の雑談などのコミュニケーションが取りにくいと感じていることも多い。

メタバースオフィスでは各自のステータスが表示されるため、アバターを通じて適切に上司や同僚と交流しやすくなり、コミュニケーション向上が期待できる​。

コスト削減

執務環境をメタバースオフィスで補完することで、オフィスの床面積を最適化でき、コスト削減が見込める。また従業員数が増えた場合でも、メタバースオフィスなら拡張も容易であり什器や設備投資も不要。さらに光熱費・通勤交通費・移転に伴う諸費用などさまざまなコストを削減できる。

地域を限定しない採用活動

メタバースオフィスに対応できるパソコン等の端末とインターネット回線があれば地域を問わず誰でも働くことができる。国内外から幅広く自社に合った人材を採用できるのもメリットだ。

勤務状況の可視化

メタバースオフィスでは、入退室記録・ステータス・フロアマップ表示などを利用し、各従業員の勤務状況が可視化しやすくなる。作業の進捗も、アバターにチャットなどで話しかけるだけですぐに確認でき、リモートワークにおける生産性向上や業務効率化が図れる​。

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メタバースオフィスを導入する際の注意点

メリットの多いメタバースオフィスだが、自社に導入する場合、以下のような点については注意および確認が必要である。

通信環境の確保

メタバースオフィスは複数の従業員間でのリアルタイムコミュニケーションが基本となるため、安定した高速インターネット接続が不可欠である。特に3Dメタバースオフィスの場合、高い通信速度が求められるため、本社サイドのみならず従業員の自宅などの通信環境も必要なスペックを満たしている必要がある。基準に達しない場合は、回線費用を負担する、2Dプランなどへグレードダウンするといった対策を検討したい​。

サービスに合った機器の準備

メタバースオフィスのサービス内容に応じて高性能なパソコンやVR/AR対応のヘッドセットなど特定のハードウェアが必要になることがある。またソフトウェアの要件も異なるため、自社の設備と予算で対応できるのかどうか、事前の精査が必要である。

従業員のストレス管理

メタバースオフィスでは従業員が「常に見られている」と負担に感じる可能性がある。適切なプライバシー保護やストレス管理のため、従業員が「メタバースオフィス内で自由に行動できている」と感じられるようなソフトウェアのデザインと環境づくりが求められる​​。

また慣れないツールの使用で従業員がストレスを感じることも予想されるため、事前に導入の目的や機器・ツールの使い方を従業員にしっかり周知し、サポート体制を整えることも重要だ。

メタバースオフィス導入の流

メタバースオフィスの導入は一般的に以下のようなステップで進められる。

ツールの選定

はじめに導入するメタバースオフィスのツールを選ぶ。種類(3D・2D・音声)は何がよいのか、またツールの使い勝手やサポート範囲なども含め、どのタイプが自社に適しているかを検討し、いくつかのツールに絞り込む。

無料トライアルの実施

選んだサービスの無料トライアルを活用し、実際の使用感を確かめる。この段階でなるべく多くの機能を試し、導入後のシミュレーションを行うのが、後から思わぬ不満やトラブルを招かないために重要である。

料金プランの決定

必要に応じて見積もりを取り、各サービスを比較して自社に適したサービスと料金プランを決定する。仮想フロアの広さ・同時接続数・オプション機能・サポート範囲などにより料金プランが変わるため、自社のニーズに合ったプランをしっかりと見極めて選択しよう。

正式契約

サービスと料金プランが決まったら、正式に契約を行う。この段階で、導入の目的や使い方を社内に周知するための説明会・レクチャーの準備も進めておくと良いだろう。

メタバースを含めた自社に最適なオフィスの選び方

いま話題のメタバースオフィスだが、必ずしも自社にとって最適なオフィス形態とは限らないかもしれない。メタバースオフィスの特徴であるオンラインでのリアルタイムな交流や、コスト削減といった目をひくメリットだけにとらわれず、さまざまな視点で自社のニーズを洗い出し、最適なオフィスの形を選びたい

またメタバースオフィス以外にも、IoTデバイスを積極的に導入したスマートオフィスデジタルワークプレイスなど、オフィスdxが進む中、選択肢が増えていることも事実である。

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業務内容に適したオフィスデザインを考える

業務の種類によって望ましいオフィスデザインは変わってくる。クリエイティブな作業や集中を要する業務には静かな空間や個室ブース、あるいは自宅(小さな子がいる場合を除く)が適している一方、コミュニケーションが欠かせない業務には開放的な空間やリアルオフィスが適している。物理的に離れていても業務を進行できるが、まめな進捗の共有や頻繁な確認作業をともなう業務に対してメタバースオフィスが有用だ

フレキシブルな働き方への対応

場所にとらわれず働けるメタバースオフィスはフレキシブルな働き方と非常に相性が良い。現在高まっている柔軟な働き方へのニーズに対応することで、人材の確保や従業員のQOLとモチベーションの向上・社会的評価やブランディングなど、企業にもたらされるメリットは多岐にわたる。

コストと効率性

オフィス賃料をはじめとするコストと生産性のバランスも重要な判断要素の1つである。物理的なスペースを必要としないメタバースオフィスとリアルオフィスを組み合わせることで、コスト削減や効率的なワークプレイス運営が可能になる。

しかし、その他にもシェアオフィスコワーキングスペースサテライトオフィスなど「フレキシブルオフィス」と呼ばれるさまざまなオフィス形態があり、それぞれの費用対効果を比較して最適なワークプレイス戦略を導き出したい。

従業員の満足度と生産性

どのようなオフィスを選ぶかによって従業員の満足度と生産性は大きく変わる。各従業員がオフィスに求めるものは異なるが、JLLが過去にオフィスワーカーを対象に行った調査では「柔軟な働き方」と「円滑なコミュニケーション」が共に重視されていることが分かる。

メタバースオフィスは上記の2つのニーズを同時に満たせるため、従業員の満足度向上が期待できる。

JLLのオフィス移転サービス

JLLでは、メタバースオフィス導入に関するコンサルテーションは行っておりませんが、たえず変化を続けるビジネス環境に対応するための戦略的な「オフィス移転」を支援しています。

近年従業員が求めるフレキシブルな働き方を実現するためのオフィス環境の構築には、自社の課題とニーズの把握、それにもとづくオフィスコンセプトの策定、オフィスタイプの選定や、実際の移転に伴うさまざまな調査・手続きが必要です。

JLLはこれらの移転にともなうプランニング~実施~検証まで豊富な実績と経験に基づき総合的に支援します。

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