グローバルホテル投資の展望
JLLのグローバルホテル投資の展望レポートはコロナ禍によって打撃を受けた世界のホテル市場が予想外の水準まで急回復を見せている世界のホテル市場の最新動向と今後について分析しています。
本レポートの主なポイント
1. 2021年のグローバルな売買取引額は668億米ドルとなり、前年比131%増に
2. コロナ禍以降、注目度が拡大した市場に投資資金が流入
3. 営業利益がアフターコロナの逆風にさらされ、RevPAR上昇の足かせになる恐れも
4. 業界としてのサステナビリティへの取り組みが、資産価値向上や運用コスト削減、消費需要の拡大への道を開く
5. 商業用不動産のホテル化やセクター間の融合が進み、物理的なスペースの使い方が進化
新型コロナウイルスの世界的流行が始まった2020年、宿泊需要が激減したことで世界のホテル市場は大きな打撃を受けたものの、ワクチン接種率の上昇、各国政府の大規模な景気対策、さらにロックダウン疲れを背景に、2021年には宿泊需要は予想外の高水準へ拡大するなど、ホテル市場の回復へ向けた一助となっている。2021年末時点のRevPAR(販売可能な客室1室当たりの売り上げ)は地域差があるものの、2019年比で50-79%増へ回復している。しかし、ビジネスや団体旅行需要の依存度が高い市場や、外国人旅行者の需要に依存してきた市場はいまだ回復途上にある。
ホテル市場の回復への道筋が明らかになった2022年、ホテルオーナー、運営会社、投資家は人手不足やインフレ率上昇、サプライチェーン問題をはじめ、コロナ禍で冷え込んだ財務状況に伴うサービス低下の影響、そしてサステナビリティへの対応など、多面的な課題の解決に注力していく必要がある。運営コストの増加という短期的リスクのみならず、長期的にみれば資産価値の低下、宿泊需要の減退につながりかねない。
一方、従来の不動産セクターで利用客・滞在客がスペースをどのように体験しているのか改めて検討することにより、宿泊産業にとっては、最近目立ってきた「商業用不動産のホテル化(ホテル並みの快適性を商業用不動産に取り入れること)」の流れに乗る機会が生まれている。同時に、現在の運営環境を足がかりに観光業界でのポジションを一変させ、強化していこうとしている市場では、需要と投資の大幅増が見込まれる。投資家の間では、収入を生むと同時に強力なインフレ対策にもなる資産を切望する声が高まっているだけに、宿泊産業にとっては、こうした投資家が保有する潤沢な手持ち資金の運用先として恩恵を受けるだろう。