リサーチ

アジア太平洋地域 不動産取引市場 2023

JLLは、コロナ後の世界的な金利高、インフレ、地政学的リスクが高まる中、2023年の不動産投資市場の見通しを分析。

2023年 03月 07日

本レポートは、マクロ経済やESG投資の最新動向を背景にした2023年のアジア太平洋地域を代表する主要不動産投資市場の展望を解説すると共に、オフィス、物流・産業施設、商業施設、ホテルといった事業用不動産における主要セクターの展望について紐解いた。

キャピタルマーケット

インフレ、金利上昇、地政学的リスクなど、マクロ経済に対する逆風が強まっている。一方、旺盛な需要に下支えされたアジア太平洋地域では経済成長こそ減速するものの、2023年の不動産投資額は5-10%の緩やかな減少にとどまり、2023年の半ばにはこの不確実性を乗り切ると予想。アジア太平洋地域内における注目される投資市場として、下記3カ国が挙げている。

  • 日本:円安に低金利も重なり、海外投資家には魅力的な投資先
  • シンガポール:資金逃避先としての評価が高く、不動産市場のファンダメンタルズが健全な有力投資先
  • オーストラリア:透明性が高く、相対的なリスクが低いため、コア型投資が集まる

ESG

企業によるネットゼロへの取り組みが加速し、オフィスビルの選別がさらに厳しくなりそうだ。JLLの調査によれば、アジアのテナント企業の間では、少なくとも2025年までにポートフォリオの半数以上でサステナビリティ認証を求める声が高まっている。一方、グリーンビル認証を取得したAグレードオフィスのストックは約40%に過ぎず、テナント各社が掲げるネットゼロ目標を達成するには供給不足となる。この需給ギャップによってグリーンビルディング認証取得物件に最大28%の賃料プレミアムがつくなど、二極化が浮き彫りになっている。

オフィス

JLLがアジア太平洋地域のCRE(企業不動産)責任者を対象に実施した調査によれば、長期経営戦略上、オフィスは依然として中心的な役割を果たすとの回答が77%にのぼった。また、同じくJLLの調査によると、アジア太平洋地域の従業員が重視するのは「満足のいく給与」に代わって「健康・ウェルビーイング」が最優先事項になった。入居スペースの総面積を増やすことよりも、スペースの「品質」に対するこだわりが強まっており、この「質への逃避」はアジア太平洋地域の大半の市場で拡大しているトレンドだ。

物流・産業施設

ネット通販関連需要の更なる成長が期待されるアジア太平洋地域において、今後も長期にわたって物流施設の需要が見込まれており、域内の各市場で物流施設の開発ブームに拍車がかかっている。2023年は需要増を背景に2,600万㎡程度の供給が控えており、投資額は360億米ドルに拡大する見通しだ。一方、建設コストの高騰や金利上昇を受けて、開発プロジェクトが先送りされる可能性もありえる。

商業施設

コロナ禍による長期間の移動制限によって鬱積していた消費意欲を発散させようと消費活動が活性化する中、アジア太平町地域全域で健全な消費回復が見込まれている。そうした中、消費者の嗜好の変化を受けて、小売業界の進化が続く。顧客の愛着信や来店頻度の向上を睨み、施設・店舗内での充実した体験を演出することに重点が置かれ。モノ消費からこと消費志向を求める状況を反映し、サービス関連セクターは物販セクターを上回る成長が期待される。

ホテル

各国の国境再開がアジア太平洋地域内の観光需要を後押ししており、通貨安でこの傾向にさらに弾みがつく可能性があるものの、世界経済への逆風が広がり、ホテル業界にとっては前途洋々とは言い難い状況となりそうだ。このため、旅行会社からホテル運営会社に至るまで送客市場の開拓に取り組んでおり、新規市場の利用客をターゲットにしたマーケティングキャンペーンの開発など、ホテル運営会社はこれまで以上に持続性を重視した成長戦略へ軸足を移している。

まとめ

経済的な不透明感が不動産取引の意思決定に大きな影響を及ぼし、2023年初頭の投資市場は勢いに欠ける立ち上がりとなりそうだが、インフレ圧力が和らぐ兆しが見えてくる中、多くの投資家は2023年半ばに訪れるであろう回復期に備えて投資体制を整える絶好の機会と捉えている。

 

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