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企業を成功へと導くワークスタイル変革のメリットと実現のためのステップとは?

ワークスタイル変革の必要性を感じつつ、具体的に何をどう改革していけばいいのか分からない、改革するべき理解が共有できていないといった悩みを持つ企業や担当者に向け、ワークスタイル改革の定義や背景、改革によってどのようなメリットが期待できるのか、実際の改革のステップなどを解説する。

2023年 10月 31日
ワークスタイル変革(働き方改革)の定義と目的

「ワークスタイル」は直訳すると「働き方」である。広義では「正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態」や「仕事の流儀」なども意味するが、本稿ではオフィスワーカーにとって、いつどのように働くか、時間や場所を含めた働き方全体をワークスタイルと定義する。

ワークスタイル改革(働き方改革)は、多くの場合、過去数十年続いてきた「週に5日、フルタイムで定時に決まったオフィスに出勤して働く」というスタイルから、より個々のライフスタイルにあった働き方ができるよう最適化を行っていくことであり、それを実現するためにオフィス側の環境や制度を整えることを「ワークプレイス改革」ともいう。

ワークスタイル変革の目的はさまざまだが、共通するのはその変革によって従業員の生産性およびワークライフバランスを向上 させたり、多様な人材を採用・継続雇用したりすることで、企業全体にプラスの効果をもたらすことである。

ワークスタイル変革が求められるようになった背景

事情を抱える人々が障壁なく働けるようなワークスタイルを整えない限り、人材を確保できず企業の存続に関わる

現在、企業単位にとどまらず、社会全体でワークスタイル変革が求められている。なぜ今働き方を変える必要があるのだろうか。

価値観の多様化

かつての日本社会では、サラリーマンの夫と専業主婦の妻という家族形態が一般的であり、男性はフルタイムで働いて残業や出張をこなし、女性は専業主婦として家事育児を主に行う家庭が多かった。

しかし1980年代には「夫婦と子供(42.1%)」、「3世代等(19.9%)」の家族構成が全体の約3分の2を占めていたのに対し、2020年の国勢調査では全体の約3分の1まで大幅に減っており、逆に単独世帯は19.8%から38%と増えている。

共働き世帯も増加し価値観が多様化した現代では、家事育児・介護などを家庭で担うため、かつてのようなフルコミット型の長時間労働が難しくなり、柔軟な働き方を必要とする労働者が男女問わず増えている

人口減少

日本の労働年齢人口(15-64歳)は1995年をピークに減少を続け、団塊の世代が大量に定年退職を迎えた「2007年問題」を経て、企業の人手不足はますます喫緊の課題となっている。

このような状況のなかで「育児や介護でフルタイム勤務が難しい」、「持病のため満員電車での通勤が難しい」といった事情を抱える人々が障壁なく働けるようなワークスタイルを整えない限り、人材を確保できず事業継続が困難になるケースも現れ始めている

仕事の評価基準の変化

企業における仕事の評価制度には、大きく分けて「能力主義」と「成果主義」の2つの観点がある。

能力主義で評価する場合、例えばその月の営業成績は振るわなかったが、会議で良い意見を発表したり、同僚のサポートを買って出たりといった「働きぶり」も評価され、毎日オフィスに出勤する従業員への評価方法に適している。

一方で「成果主義」は営業成績など定量的な指標を基準に評価するもので、どちらかというとプログラマーなどの専門職に向いている評価基準だが、コロナ禍でのリモートワークの普及も手伝って、成果主義の比率を高める企業も増え、ワークスタイル変革の促進力となっている。

ワークスタイル変革がもたらすメリット

時間や場所を選んで働ける職場は人材獲得への大きなアドバンテージ

ワークスタイル変革が企業と従業員にもたらすメリットは数多い。以下は代表的なメリットである。

生産性・業務効率の向上

多様な働き方を選択できる環境を整えるために業務を見直すことで、本来必要ない会議や残業を減らし、業務効率を向上させることができる。

また、それまで通勤に充てていた時間をプライベートの充実や業務のスキルアップに置き換えれば、同じ時間働いたとしてもより質の高い仕事につながり、生産性も向上するだろう。

オフィス管理や通勤にかかるコストの削減

ワークスタイル変革により、本社オフィスに出勤する1日あたりの人数が減れば、オフィス面積を最適化して賃料コストを削減することが可能だ。

また、テレワークや従業員の自宅に近いフレキシブルオフィスの活用などが普及すれば交通費の削減も期待できる。

人材採用と長期雇用における優位性

人材不足が課題となるこれからの社会において、ワークスタイル変革の推進により時間や場所を選んで働くことができる職場は人材採用に対する大きなアドバンテージとなるだろう。

出産などのライフイベントでフルタイム勤務が難しい人材も、リモートワークなどを組み合わせ、キャリアを中断せずに雇用を継続できれば、企業にとっても退職による人材の流出を最小限に抑えられる

緊急時の事業継続

コアオフィス(本社)集中型のワークスタイルから、サテライトオフィスなどを活用し、執務機能を分散させておくことで、災害時の停電などで業務インフラが麻痺しても、別のオフィスで事業を継続できるのも大きなメリットの1つである。
 

ワークスタイル変革のデメリット

ワークスタイル改革にともなうデメリットもいくつか存在する。自社で実際にワークスタイル改革を取り入れた場合、どのような影響があるかシミュレーションすることが必要だ。

勤怠管理が複雑になる

従業員の多様な働き方を取り入れると、従来型のタイムカードなどによる一括管理ができなくなるため、新たな方法を検討しなければ正確な勤怠管理ができなくなる可能性がある。勤怠管理ツールやグループウェアを導入するのも1つの方法だ。

評価基準の統一が難しい

出社する機会の多い従業員に比べ、リモートワークやサテライトオフィス勤務の多い従業員に対しては、成果物以外の働きぶりを評価することが難しくなる。また、情報へのアクセス機会やスピードはオフィス出社している従業員のほうが早く、正当な評価基準を整備しないと不公平感が生じてしまう可能性がある。

コミュニケーション不足

ワークスタイル改革が進むと、リモートワークやコアオフィス(本社)以外の場所で働く従業員にとっては、上司や同僚とのコミュニケーションの機会が少なくなりがちになる。

プロジェクトを進める上での意思疎通やチームワークに支障をきたすおそれもあるため、社内コミュニケーションツールの導入や、定期的なオンラインミーティングなど、意識的に交流の機会を増やしていく必要がある。

セキュリティ上のリスクが増大する

リモートワークするためにはインターネットを通じた社内ネットワークへの接続が必要だが、インターネット回線を共有しているフレキシブルオフィスや自宅などでのセキュリティ管理が不十分な場合、不正アクセスやデータ漏洩などのリスクが高まる

ワークスタイル変革への取り組み方

従業員の希望に応じた幅広い雇用形態を導入することで、最適な働き方が実現する

ワークスタイル変革にはじめて取り組む場合、事前に進めておくべきステップがいくつか存在する。プロジェクトをよりスムーズに進めるため、ぜひ以下の順で準備しておきたい。

ICT環境の整備

多様な場所で仕事をするには、必要に応じたICTツールの活用が欠かせない。

通信技術関連の技術を応用したICT(Information and Communication Technology)ツールには、ウェブ会議システムやファイル共有ツールなどが該当し、コアオフィス以外でも同様の業務が可能になったり、オンラインで会議を行うことができる。

柔軟な雇用形態の実現

従来の「正社員」、「契約社員」、「アルバイト」といった雇用形態だけではなく、「短時間勤務」、「委託社員」など従業員の希望に応じた幅広い雇用形態を導入することで、最適な働き方が実現する。

また、従来の枠組みでは退社せざるを得なかった人材も柔軟な雇用形態を導入することで退職防止につながる。

フレックスタイムの導入

ワークスタイル変革で目指す柔軟な働き方には、働く場所だけではなく、働く時間も含まれる。例えば、育児中の従業員が勤務開始時間と終了時間を早めることでパートナーと保育園の送迎を分担できるなど、ワークライフバランスの向上に寄与できる。

オフィス改革

柔軟な働き方を可能にするためにはオフィス改革も必要不可欠だ。取り組むべきポイントは数多いが、固定席を廃止しフリーアドレスやAWB型オフィスを導入する、リフレッシュや自由なコミュニケーションのためのオープンスペースを設置するといった改善が有効である。

 

これからのワークスタイル「ハイブリッドワーク」とは

ワークスタイル変革について語る際に切っても切れないキーワードが「ハイブリッドワーク」だ。ハイブリッドワークとは、従来型のオフィス勤務と、在宅勤務・サテライトオフィス勤務などを組み合わせ、働く場を選択できる柔軟な働き方を指す。

完全なオフィス出勤やリモートワークではなく、対面のミーティングとオンラインミーティング、通勤と在宅勤務やサテライトオフィス勤務を状況に応じて使い分けることで、より生産性を高め時間的コストも削減できる、これからのワークスタイルとしてもっともニーズが高まっている。

「ハイブリッド型の働き方=在宅と出社が選べる制度」ではない

従業員に提供できる価値からオフィス戦略を

考えませんか?

ワークスタイル変革を成功に導くオフィスづくり

ワークスタイル変革には制度面の変更も重要だが、オフィス環境がともなってこそ真価を発揮する。以下のすべてを一度に行うのはハードルが高いため、自社に有効なものは何なのか、優先順位をつけてオフィスデザイン構築に取り組みたい。

フリーアドレスの導入

フリーアドレスとは、オフィスにことも期待できる席を設けず、その日に空いている席を各自が自由に使用できるワークスタイルを指す。オフィス面積が最適化できるだけでなく、部署を超えて従業員が交流することができ、社内のコラボレーションやイノベーションの創出が期待できる。

ABW型オフィスへの転換

ABW(Activity Based Working)型オフィスは、「社内外問わず、業務内容などに最適な場所や時間を自由に選択できる働き方」を基に構築され、従業員各自が仕事内容に応じて働く場所を自由に選べるオフィスを指す。具体的には、オフィススペースやカフェスペース、集中できるサイレントゾーン、個室ブースなど、様々な執務スペースを備えているのが特徴である。幅広い選択肢と、仕事内容や気分に合わせて自由に作業場所を選べるため、仕事に対する負担とストレスを緩和 するだけではなく、働くモチベーションをさらに高めることも期待できる。

コラボレーションスペース

ワークスタイル変革にともなうオフィスデザインでぜひ取り入れたいのが、従業員の相互交流やコラボレーションの創出を促すスペースだ。日常の雑談などのコミュニケーションから、社内イベントやパーティー、ディスカッションまで行えるような共有スペースを配置したオフィスデザインは「つながり」を感じられる空間としてより価値の高いものになっていくだろう。

スマートオフィス

スマートオフィスとは、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といったテクノロジーを搭載したスマートデバイスやロボットを用いて、従来よりも業務効率や生産性、環境性能などを向上させたオフィスを指す。IoTセンサーやAIカメラによりオフィススペースの利用率に関するデータを可視化したり、AIを搭載した空調・照明機器でオフィス環境の最適化を行うなど、さまざまな面で効率化を図ることができ、多様化するワークスタイルをテクノロジーの面からサポートが可能だ。

オフィスを通じてワークスタイル変革を実現する戦略とは?

【成功事例】オフィスづくりを通じて実現するワークスタイル変革

次に、オフィスの移転や改善を通じて先進的なワークスタイル変革に成功した企業の事例を紹介する。

エイコー - 東京本社オフィス移転事例

IT機器の導入支援などオフィス環境に関する多様なソリューションを提供しているエイコーでは、創業50年を迎えた2022年に東京本社オフィスを移転。

「Fo-me」と命名された新オフィスは、コミュニケーション活性化に重きを置いたフリーアドレス型オフィスで、ワンフロアへの統合、立地、駐車場、低層階といった入居要件を満たしながら、理想とするワークスタイルを実現した。

オフィスの中央には「むすぶスペース」と呼ばれるコミュニケーションエリアを設けたほか、1on1向けのモニター席、オンライン会議・営業にも対応した個室ブース、カフェスペースなどを設置。同社が提供しているオフィス関連の製品やソリューションを実際に使用したライブオフィスとして営業活動にも貢献している。

京都電子計算 - 新築テナントビルオフィス移転事例

IT企業の京都電子計算は、2022年5月、従業員同士のコミュニケーション向上や人材採用活動の安定化を目的に本社オフィスを統合移転した。入居ビルの敷地形状と建造物の高さ規制などから、事業拡大と人員増にともなうオフィスの床面積拡大が難しいと判断。希望条件に合致した物件が市場に存在しない中で、京都駅前の最適な立地のオフィスビルの3-7階の計4フロアへ移転を実現させた。

ガラス張りの開放的なオフィス空間自由に活用できる広大なオープンスペースに、固定席を廃止し階層別にフリーアドレス席とするなど、IT企業として先進的な取り組みを推進し、新しい時代の働き方を体現したオフィスといえる。

アサヒグループホールディングス - 新しい働き方「リモートスタイル」推進事例

飲料・食品メーカー大手のアサヒグループホールディングスは、2020年から2022年にかけ、グループ間のシナジーを発揮する新たな働き方の実現に向けて全社的なワークプレイス改革を実行した。

全国の営業拠点55カ所を26カ所へ統合集約し、吾妻橋本社オフィスを全面改修。11フロア、床面積4,857㎡にわたり、全社で統一したデザインコンセプトに沿って各グループに必要な機能・デザインを落とし込んだ

フリーアドレス導入によりデスクスペースの無駄をなくし、オンライン会議等の需要増加を見越してフォンブースを設置するなど、リモートワークをはじめとする多様な働き方に対応できる機能的なオフィスを構築した。

【自社事例】JLLの新オフィスが追求するワークスタイル変革

2022年11月に完成したJLLの新東京オフィスは、最新のテクノロジーを駆使し、サステナビリティやWellbeingに配慮した新しい働き方を実現する場として機能している。JLLが提唱する「Future of Work」を具現化したABW(Activity Based Working)での上質な体験型ワークプレイスのあり方を提案。

また、2022年12月に統合移転した関西支社(大阪)の新オフィスは「コミュニケーション増幅」、「インターナショナルなオープン環境」をテーマとし、大阪の景色や大阪にちなんだ「ローカル」なアートやインテリアと、JLLシンガポール、香港、ロンドンなど各国の専門チームとも連携した「グローバル」な要素を合わせ持つ、JLLらしさを表現したオフィスである。

日経ニューオフィス賞・グッドデザイン賞 W受賞​

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これからの時代の発展に欠かせない企業のワークスタイル改革

大きく社会情勢や働き方のニーズが転換している現在、ワークスタイル改革は、今後の社会のなかで企業が生き抜いていくために欠かせないターニングポイントといえる。

ワークスタイル改革の目的やゴールまでの道のりを正しく理解した上で、ぜひ効果的に取り組んでいってほしい。

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