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ワークスタイル変革が切り拓く企業の未来

アフターコロナに向けたワークスタイル変革のため、コロナ禍での教訓を活かし、従業員に寄り添った取り組みを行う企業も少なくない。オフィスとリモートワークの組み合わせ等「働く」形が変化する中で、企業には柔軟性・俊敏性が求められるようになった。ワークスタイル変革における企業の未来について解説する。

2021年 08月 13日
コロナがもたらした従業員の「働く」価値観の変化

効果的なワークスタイル変革を行うには、本質的な課題や問題解決の要素を理解することが必要だ。コロナ禍の緊急対応で実施されたリモートワークは、その要素を導き出すきっかけになったともいえる。先行きが不透明で将来が見通せず、明確な正解が存在しない不安定な時代といわれる今だからこそ、自社特有の課題を見つけ出し、先手を打っていくことが欠かせない。

JLLが実施した「新型コロナウイルスによるリモートワークとオフィスに関する意識調査」では、従業員が求める本質的なニーズに結びつくようなデータが確認できた。オフィスの在り方を問う「今後のオフィスの役割は?」という質問に対し「Face to Faceのコミュニケーション」が第1位となり、次いで「社員の帰属意識を情勢する場所」、「Face to Faceによるイノベーション・コラボレーション創発」の回答が多かった。従業員の声が示すポイントは、オフィスならではのコミュニケーション要素の価値を再認識し、人間の本質的な部分が求める要素が浮き彫りになっていると考えられる。コロナ禍での「働く」ことや場への再認識、加速するDX化の影響も相まって、従業員が求めるワークスタイルは今後「ヒトとの繋がり」や「どう働くか」という要素に焦点が当たっていくと推測できる。

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JLLレポート「緊急対応でのリモートワークが明らかにしたコロナ後のオフィスの在り方」より抜粋 出所:JLL日本

オフィスを残しつつ、コロナ禍で学んだ課題要素を効率的に取り入れていくような企業事例が今後さらに増えてくる

従業員のニーズの変化に対し、企業側はどのようなことを感じ取っているのだろうか。JLLが経営層に対して実施した調査レポートでは、オフィスの賃料を払う企業側が冷静かつ近未来を予見していることを感じさせるような回答も得られた。例えば「今後のオフィス出社日数はどのくらいが好ましいと考えているか」という質問に対し「週に1-3日が好ましい」という回答が全体の7割となり、オフィス出社とリモートワークの併用を検討している経営層が多いことがうかがえた。また「従前の働き方と比べ、リモートワークでの効果をどのように感じているか」という質問に対し「業務効率がより高い」という回答が「非効率だった」を2.2%上回ったというデータが得られた。これらの調査データから、リモートワークが従前の働き方よりも優れた形ではなく、選択肢の1つとして組み込んでいくという経営層の考えが仮説として立てられる。変化する従業員の働き方への課題を考慮した上で、完全にリモートワークに振り切るという企業も少なからず存在するが、オフィスを残しつつ、コロナ禍で学んだ課題要素を効率的に解消していくような企業事例が今後さらに増えてくると想定できる。

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行動変容とニューノーマルな働き方
 

企業は生活拠点のトレンド等の動向にも目を向け、従業員のニーズを先読みしていく必要があるのではないだろうか

ワークスタイルの変化は生活拠点のトレンドにも影響をもたらしている。どこでも働けるようなニューノーマルの時代となりつつある今、「どこでも」の場所を豊かにしたいと考える従業員も少なくない。コロナ禍で変化するレジデンシャル市場の記事では、2020年の東京都特別区部の転入超過数は2019年に比べ、51,142人減と大幅に縮小したという。企業だけでなく、学校でもリモートが促進され、都心部に生活拠点を構えることのメリットが少なくなったことが要因の1つとして考えられる。都心部の居住ニーズは分散し、都心周辺部への広がりがみられる。都心部から程遠くない相模原市が、転入超過数の多い上位20市町村としてランクインしたのが象徴的だ。オフィスとリモートワークを組み合わせたハイブリッド型のワークスタイルが具体化する中、従業員は近い未来であるアフターコロナ時代を見据え、ニューノーマルな働き方の準備を進めていると考えられる。企業は生活拠点のトレンド等の動向にも目を向け、従業員のニーズを先読みしていく必要があるのではないだろうか。

今後のワークスタイル変革に不可欠な2つの要素
アフターコロナに適応したオフィス戦略

従前の「働く」形が大きく変化する中で、組織のハブとなるオフィスの価値をアップデートすることが大切であることはいうまでもない。働き方の選択肢が増えたからこそ、オフィスが従業員にとって選ばれる場所とならなければいけない。形だけでなく、土台となるオフィスコンセプトを充実させ、企業の想いが組み込まれたオフィス戦略が、これからのワークスタイル変革を成功に導く鍵となるだろう。

アフターコロナ時代のオフィス戦略を見据え「心理的価値」を提供することで、従業員への企業カルチャーの浸透、クライアントへの「おもてなし」を感じてもらえるようなオフィスを構築すべく、本社移転を実施した事例も存在する。ハイブリッドな働き方にも対応した設備を充実させ、生産性を上げるだけでなく、オフィスという場の繋がりの価値を強化し、アップデートされたワークスタイルが求める「リアルな場」を築くことに成功した事例だ。これからのワークスタイル変革は、従業員だけでなくステークホルダーとの繋がりを相乗させるオフィス戦略により、企業の方向性を改めて指し示すことが本質的な要素として必要になってくるのではないだろうか。

ワークスタイル変革を促進するためのテクノロジー活用

ワークスタイル変革に欠かせないハイブリッドな働き方には、インフラともなるテクノロジー活用が必須である。コロナ禍を経て、テクノロジーの重要性が問われる中、不動産テックを導入し、業務効率性を高めるだけでなく、データの構築・管理、スペースの最適化等に活かす企業も増えてきている。これらの動向には、働く環境を改善、最適化し、企業経営の全体的なパフォーマンス向上に繋げたいという意図が含まれる。ワークスタイル変革は、企業側と従業員という隔てた考え方ではなく、組織全てを包括した幅広い効果をもたらすことができるため、多角的かつ長期的な視点を持つことが重要になってくる。

ワークスタイル変革を目指し、どのような取り組みを進めていくかによって、企業の今後が決まるといっても過言ではない。コロナによる価値観の転換期にある今だからこそ、事業戦略やオフィス戦略を改めて見直し、アフターコロナに向けて万全な準備を行うことが必要だと考える。ヒトで成り立っている企業組織だからこそ、リアルな声を俊敏に感じ取り、柔軟に行動していくことが、これからを先導していく企業の必須条件となるのではないだろうか。

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