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変わる働き方に適応したオフィス改善のポイントとは?

激変する環境によりオフィスで働くことの意味が改めて問われる中、オフィス環境の改善を検討する企業が多くなっている。自分が働きたい場所や環境を選べるABW型オフィスや、多様な用途に対応できるフレキシブルペースの活用等が挙げられるが、今回は変わる働き方に適応したオフィスの改善について解説する。

2020年 10月 05日

オフィス環境の改善が必要とされている理由

そもそもなぜ「オフィスの改善」が今求められているのか。働き方改革が推し進められ、従業員の生産性向上、個人の働き方の尊重を目的としたオフィス改革が積極的に行われるようになったことがきっかけで、オフィス環境の改善に注力する企業が増え始めた。オフィススペースの最適化や、共有スペースを作りコミュニケーションを促すことで生産性を向上させ、働き方改革を促進した。

そして今、新しい生活様式に適応するためのガイドラインに沿ったオフィスへアップデートすることが喫緊の課題となっている。安全性や衛生面など、ヒトの健康とウェルネスを尊重した要素が最優先されると共に、従来からの課題であった働き方改革を推し進めるオフィス改善が求められているのだ。JLLが2020年5月に実施した「新型コロナウイルスによるリモートワークとオフィスに関する意識調査」でも、「緊急事態宣言解除後、 オフィス環境は変わっていくと 思いますか?」という質問に対し、「オフィス環境は変わる、すでに検討を進めている(23.8%)」や「変わる、変えていきたいと思う(58.1%)」と、81.9%が見直しを始めているとの結果も出ている。環境の変化に伴い、従業員の働く場所の最適化=オフィス改善の重要性は企業にとって共通の課題であるということがうかがえる。

効果的なオフィス改善アイデア
従業員の能力を発揮する”自己最適化”のクリエイティブ・スペース

オフィス改善には、従業員のモチベーションを高めることが欠かせない。仕事で能力を発揮することにより、会社へのエンゲージメントや個人の精神的な満足度が向上し、組織全体の士気も高まる。JLLが発表した新型コロナウイルスがオフィスワーカーに与えた影響に関するサーベイレポートvol.3では、働く際に重視することのTOP 5に「自身の仕事に生きがいを見出すこと」が37%というデータが確認でき、”自己最適化”が従業員が働く上でいかに重要であるのかが窺える。従業員の能力を最大限に発揮させるクリエイティブ・スペース等、部署を越えてコミュニケーションができるフレキシブルスペースや日常から離れて自然を感じられるようなバイオフィリックデザインのミーティングスペース等がオフィス改善の事例として見られるようになり、企業も様々な趣向を凝らしている。

JLLリサーチ「新型コロナウイルスがオフィスワーカーに与えた影響に関するサーベイレポートvol.3」から抜粋

コミュニティの構築のためのコラボレーションスペース

ニューノーマルな時代だからこそ、ヒトの体験を基盤としたオフィス改善は必須の要素となってくる

リアルなコミュニケーションはオフィス改善の要ともいえる。コロナ禍のリモートワークで孤独感を感じることがきっかけとなり、オフィス出社を望む従業員も少なくない今、ニューノーマルな働き方に適応したオフィス改善が必須となっている。従来は毎日のオフィス出社で顔を見合わせていた働き方が、デジタル上でのコミュニケーションへと一変し、雑談や何気ない会話等のリアルな交流が減ってきている。このニューノーマルな働き方特有の課題を解決するためのオフィス改善には、従業員のヒューマン・パフォーマンスを向上させる要素や指標が欠かせない。上司や同僚との繋がりを強めるようなコラボレーションスペースを設け、普段は見ることができないヒトとしての一面を共有することで、共に業務を行う相手への共感が生まれる。コミュニケーションの活性化を念頭としたオフィス移転の事例では、優秀な人材確保、長期雇用、従業員の帰属意識の向上に結びついたという。ニューノーマルな時代だからこそ、ヒトの体験を基盤としたオフィス改善は必須の要素となってくるだろう。

JLLリサーチ「ヒューマン・パフォーマンスの解読」から抜粋

従業員のパフォーマンス向上のためのオフィス改善に関するレポートを見る

 

オフィス環境の改善において重要視されるポイント

従業員のモチベーションを上げるためのオフィス設計

オフィスを改善するための目的の1つに「生産性向上」を例に挙げたが、その目的を達成するには、従業員のモチベーションを上げることが重要となり、従業員や上司、部下とのコミュニケーションがモチベーションを生み出すきっかけとなる。そして「偶発的なコミュニケーションを生み出せる場所であるか?」がオフィス改善においての重要なポイントとなる。
JLLが実施した調査によると、「今後のオフィスの役割は?」という質問に対し、「Face to Faceのコミュニケーション」という回答が1位となった。ヒトを中心に考えるオフィススタイルは今までも必要とされてきたが、より一層重要視されるようになり、オフィスを効果的に改善する上で欠かせないポイントとなる。

コストの効率化

オフィスコストは企業経営に大きく関わる経費であり、定期的な最適化が必要となる。オフィス改善は従業員からの視点と企業経営からの視点が重要となり、目に見える改善と目に見えない改善と両方の視点で最適化することが企業をより長く繁栄させるためにも大切なポイントとなる。

コミュニケーションがオフィス改善のポイントの1つとして挙げられることから、ヒトとのつながりは欠かすことのできないオフィスデザインの要素となる。企業によりコンセプトも異なるが、みんなが集える温かみのあるオフィスデザインを採用し、「帰ってきたい」と思わせるような「場」を創り出している企業もいる。オフィス=働く場という考えがある中で、働く以上の価値を提供するというコミュニケーションを重要視した企業も現れ、従業員のモチベーションを高める成果にもつながっている。

ライフワークバランスを考慮したアクセスしやすいオフィス

オフィスの改善はデザインだけでなくロケーションも重要なポイントとなる。従業員の多様なライフスタイルに適応し、ライフワークバランスを保ちやすくするため、アクセスしやすいターミナル駅に位置するサテライトオフィスを活用し、オフィスを分散させる企業も増えてきており、ヒトのワークスタイルが変化しているからこそ、多様な個性を尊重する考え方は今後ますます重要になる。

コストや業務の効率化を促進するテクノロジーの活用

オフィス改善で欠かせないポイントはテクノロジーの活用であり、迅速に対応することで企業が今後どのように発展していくかが決まるといっても過言ではない。AIやIoTなどのテクノロジーはめざましい発展を遂げ、今ではヒトの働き方に欠かせないインフラとなっている。オフィスの利用率を可視化し、スペースの最適化によるコスト改善が例として挙げられるが、ヒト × テクノロジーの力で改善できることは無限大にあり、テクノロジーの活用はオフィスを改善していく上で必要不可欠なポイントとなる。

スペース最適化で成果に繋げたオフィス改善の事例

オフィスという場の価値を再定義・改善したハイブリッド型のスタイルは、今後さらに広がっていく

リアルコミュニケーションの場を構築したオフィス改善で帰属意識を向上させた事例

企業によってオフィス改善は様々だ。リモートワークとオフィス出社を統合、オフィスを「リアルコミュニケーションの場」として位置付け、独自のオフィス改善を図る事例も存在する。以前は固定席だった執務スペースをフリーアドレス席に変更し、コミュニケーションが取りやすいようにスタンディングテーブルを設置する等、従業員の視点に立った細やかな工夫が何気ない会話の機会を作り出しているという。また、組織全体でのオンラインイベントも企画・実施し、交流の場を設けることで、従業員の帰属意識も高まっているそうだ。リモートワーク主体でありつつも、オフィスという場の価値を再定義・改善したハイブリッド型のスタイルは、今後さらに広がっていくのではないだろうか

 

コラボレーションスペースでコミュニケーションを活性化させた事例

大手総合エンターテインメント企業は「コミュニケーションからのイノベーションを生み出す」ことを重視し、各階の執務室内にコラボレーションスペースを開設したり、大型のカフェラウンジスペースを開設したりと、社員同士の接点を増やすというオフィス改善を実施した。これらの改善により今では社外のゲストを招いての懇親会などが企画されているなど、コミュニケーションからのイノベーションが生み出されやすい環境となっているようだ。

オフィスの改善は従業員の満足度を考慮するなど、ヒト目線に立った改善ポイントや企業を取り巻く環境の変化をいち早く察知し、実践していくことが重要となる。オフィスという場所が最適化されることで生産性の向上にもつながり、働き方改革にも寄与するという良い循環を創り出していくことが今後を生き抜くためのキーポイントとなるであろう。

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