記事

「CASBEEウェルネスオフィス評価認証」による真の働き方改革プロセスとは?

昨今の様々な変化の中で企業には収益だけでなくサステナブルな姿勢が求められており、従業員のウェルビーイングが重要視されるようになっている。本稿では、オフィス環境改善を客観的に診断・保証するツールとして注目されているCASBEE-ウェルネスオフィスと導入メリットについて解説する。

2022年 04月 28日
注目度高まるCASBEEウェルネスオフィス認証とは?

CASBEEウェルネスオフィス認証とは、IBEC(一般社団法人 建築環境・省エネルギー機構)が提供する「CASBEE-ウェルネスオフィス」の評価マニュアル及び評価ツールから導き出された結果を第三者が審査する、ビル認証制度の1つ。有効期間は5年間である。評価対象はオフィスのみならず、共用部も含めたビル全体(オフィス用途部分全体)で、建物利用者の健康性、快適性の維持・増進を支援する建物の仕様、性能、取組みを客観的な数値により表すことができる

また、建物内で働く従業員の健康性、快適性に直接的に影響を与える要素だけでなく、知的生産性の向上に資する要因や、安全・安心に関する性能についても評価が可能である。全ての評価項目をレベル1-5の5段階評価にて採点し、評価時点の一般的な技術・社会水準に相当するレベルに達していれば基準値「3」と評価され、その結果は一般に公表される。


従業員から見たウェルネスオフィス像とオフィスのサステナビリティとは?

企業がオフィスにおけるサステナビリティ目標を設定する際には、当事者である従業員がどのような課題や改善点を感じているのかを把握する必要がある。JLLがオーストラリア、中国、インド、日本、シンガポールのアジア太平洋地域5カ国のオフィスワーカー1,200人を対象に実施した調査からは、以下のような「ウェルネスオフィス」像が浮かび上がってくる。

  • 温室効果ガス排出量を削減している:屋上緑化や壁面緑化、ワークスペースの空調や光源をパーソナライズできること、インテリジェント窓の採用
  • 省資源化を促進している:施設内の水再生・水処理
  • ストレス軽減や集中力の持続につながっている:屋上緑化や壁面緑化、オフィス内緑化
  • リサイクルが徹底している:廃棄物やプラスチック類のリサイクル

この調査では、若い世代ほど環境面の変革に取り組む意欲が高く、自身の勤務先に対してもサステナビリティを求める傾向が高いことが分かっている。

出所:JLLレポート「 従業員の視点から考える 不動産・オフィスのサステナビリティ」から一部抜粋

オフィスのサステナビリティ化に関する調査レポートを見る


「CASBEEウェルネスオフィス評価認証」の取得によるメリット

部門横断的な人との交流や家族・知人をオフィスに招く機会、地域との交流といった組織・社会的なウェルネスも、従業員の知的生産性向上に良い影響を与える

これからの企業にとって、社内外に向けて魅力的なオフィス環境・働き方をアピールしていくことは人材獲得等に向けて必須といえるが、その根拠として「CASBEEウェルネスオフィス評価認証」は有効な指標といえる。おもなメリットは次の2点が考えられる。

従業員の知的生産性向上

近年ますます激化するグローバルな競争の中で、限りあるリソースで結果を出していくには、いかに個々の知的生産性を高められるかにかかっている。働く人々のウェルビーイング向上は長期的に組織へのエンゲージメント(強い信頼感)を高め、知的生産性の向上につながっていくと考えられる。

従来の人間工学では、効率的に仕事を進めたり創造的な企画を発案したりするには、静かで均質な光と温度が確保された室内の広いデスクが最適と考えられていたが、最新の脳科学によれば、高い知的生産性が期待できるのは、階段の昇降や自転車をこぐなど脳の活性化につながる運動ができる環境だという。また、緑の植物や自然の風などに触れられる、仮眠を取るスペースがあるといったハード面のオフィス環境に加え、部門横断的な人との交流や家族・知人をオフィスに招く機会、地域との交流といった組織・社会的なウェルネスも、従業員の知的生産性向上に良い影響を与えると考えられている。

ESG投資にもたらす認証効果

投資の重要な要素は「リスク」と「リターン」だが、近年主要な運用企業や投資家が取り入れている「ESG(環境・社会・ガバナンス)」投資においては、さらなる要件として、社会全体への影響を考慮した「インパクト」、あるい「ウェルビーイング」が加わる。オフィスという資産の価値が変化する中で、経営戦略に沿った環境認証取得等の対応が必要となってきており、企業の積極的な取り組みが活発化している。ESG投資家に自社のサステナビリティを訴求するにあたり、「CASBEEウェルネスオフィス評価認証」が客観的評価として効果を発揮することは間違いないだろう。


「CASBEE-ウェルネスオフィス」の評価項目

「CASBEE-ウェルネスオフィス」では、3つの評価軸にもとづき多方面から診断・評価を行う。各項目の詳細については評価マニュアルやガイドラインによってチェックする必要があるが、3つの評価軸の概要を以下に紹介する。


  • 健康:広さ、騒音、採光、空調等に問題がないか
  • 知的生産性向上:ワークプレイスのカスタマイズ、休憩や運動のスペースが充実しているか
  • 安全・安心:自然災害多発国である日本独自の評価軸。耐震性や建材安全性などが基準を満たしているか
CASBEEウェルネスオフィスを活用した働き方改革と企業成長の展望

「CASBEEウェルネスオフィス評価認証」は、社会や投資家・社内従業員両者に向け、健康経営による企業の価値を数値化・可視化する有効な手段である

「CASBEEウェルネスオフィス評価認証」をどのように自社で取り入れれば良いのか。2022年現在は随時受付となるため、ツールによって評価を実施した後、申請図書を提出し、費用の振り込みを行うと審査が受理される。審査後は認証書が交付され、採用や広報、ブランディングに活用できるようになる。

また、国の推進する「働き方改革」のテーマの1つに「健康経営」が挙げられる。「健康経営」とは健康経営研究所が提唱する概念で、社員の健康管理を経営的視点から考え戦略的に実践することである。健康経営を念頭に置いている企業では、よりウェルビーイングに配慮した働き方改革が進むことで従業員のエンゲージメントが促進され、結果的に知的生産性が向上、競争力や品質が高まることが期待できる。「CASBEEウェルネスオフィス評価認証」はこれらを明確に打ち出したい企業にとって心強いサポートとなるだろう。

人材の採用・確保やますます高まるESG投資のムーブメントに対し、企業のとるべき対策は非常に幅広く、経営者や担当者個人ではカバーしきれないこともあるだろう。「CASBEE-ウェルネスオフィス」の導入により、健康で快適な環境づくりや知的生産性に寄与する評価項目を網羅してスコアを算出・可視化でき、よりよい働き方改革の推進が期待できる。

オフィスに関するサポートを見る

お問い合わせ

何かお探しものやご興味のあるものがありましたら、お知らせ下さい。担当者より折り返しご連絡いたします。