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不動産マーケットの次を見極めるためのインサイト

新型コロナウイルス感染防止による行動様式の著しい変化は、日本経済、ひいては不動産マーケットにも大きな影響を及ぼした。衛生面を考慮した非対面でのリモートワークや電子商取引(EC)の急速な普及は、コロナによる変化から生じた動向であると共に、その先を見極め、先手を打っていくことが鍵となる。

2021年 05月 28日
不動産マーケットを取り巻く環境の変化

ビフォーコロナでは日本のグローバル化や働き方改革等により、ヒトの価値観が変わろうとしていた。2020年に開催が予定されていた東京オリンピック・パラリンピックに向けたインバウンド観光促進も盛んに行われ、異なる言語や文化、価値観への対応等、国や地域をあげて多様化に取り組んだ。そんな中で起こった新型コロナウイルス感染拡大により、新しい生活様式といわれるニューノーマルを基本としたライフスタイル、ワークスタイルへと変化している。コロナ禍から身を守るためのソーシャルディスタンス対策は、人々の認識を「安全衛生最優先」へと切り変え、消費者行動も大きく変化した。自宅にいながら消費する「巣ごもり需要」が新たなトレンドとなり、EC物流需要が急成長している。

ニューノーマルへと人々の考え方が移り変わる中で、顕著な変化がみられたのはオフィス市場だろう。通勤時の混雑を回避するためのリモートワークにより、オフィススペースの最適化や第3のオフィスといわれるフレキシブルオフィスの需要の高まりというトレンドを生み出した。そして不動産投資に関連するトレンド変化は「環境」が1つのキーワードとなり、例としてESG投資が挙げられる。投資家が利益だけではなく「環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)」を意識して投資対象を評価するようになった。これはビフォーコロナから関心の高かった環境問題が、ウィズコロナを迎えてさらに拍車がかかったものとみられている。不動産マーケットを取り巻く環境は目まぐるしい変化の渦中であり、背景から現状、そしてデータをもとにアフターコロナに向けた長期的な視座を持つことが重要となる。

 

これからの時代に欠かせないキーワードとは?
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先行きの見えない不確実な時代、アフターコロナを見据えた不動産マーケットには、どのようなビジネストレンドキーワードが共通してくるのだろうか?まず最優先として「安全衛生」、「健康」、「ウェルネス」が挙げられる。コロナを体感した今、衛生管理の重要性を改めて認識し、次のステップへと進行していくためにもオフィスやビル、商業施設等へ求める必要事項として欠いてはならない要素となっている。その他には、ニューノーマルな働き方という現状から生まれた「サードプレイス」という、自宅でもオフィスでもない第3の場を表すキーワードだ。オフィス出社とリモートワークを合わせたハイブリッドな働き方は、プライベートな生活から離れた場で集中して業務を行う「サードプレイス」を求めるオフィスワーカーの声も少なくない。この新しい需要を包括できる解決策がフレキシブルオフィスであり、企業も高い関心を寄せている。また、世界的な潮流となった脱炭素化を背景にグリーンビルディングも注目されている。多方面からの社会環境の変化を受けて不動産マーケットは形を変えながら、新しいトレンドへと様変わりしていくだろう。

日本、そして世界のオフィス市場と需要の変化

不動産マーケットの中でも主要トピックの1つであるオフィス市場。JLLが発表したコロナ禍における世界都市でのオフィス需要や今後の在り方についての分析・インサイトレポートでは、オフィス市場の需要が景気に影響されるということは否定できないが、長期的な視点からマクロ経済の回復に伴い、景気サイクルに沿ったオフィス需要のプラスの影響があると述べている。また、将来的なオフィス市場の需要を予測するには、産業別でのリスクを客観的に理解することが不可欠であるという。下記オフィス需要のマトリクスの図からも見て取れるように、金融・情報技術・専門的サービスの分野がオフィス利用という需要の多くを占めていると考えられる。このようなオフィス利用の点や、アフターコロナでのリスクを考慮することで長期的なオフィス需要のインサイトを抽出できるのである。

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期待高まる物流不動産市場

物流不動産市場は、ウィズコロナで急速に成長したセクターの1つともいえ、物流施設の需要と供給が活発化している。JLLが発表した2020年第4四半期の東京ロジスティクスマーケットサマリーでは、大量供給を上回る、オンライン小売業の需要増加が続いていることが確認できた。またその他にもニッチな領域とされる冷凍・冷蔵倉庫が投資家の注目を集めている。需要拡大による人手不足の課題も挙げられるが、テクノロジーを活用した自動化が進められているという。まだまだ成長が期待できる物流不動産市場への熱い関心は今後も続くと予測できる。

デジタル化によりさらに加速するデータセンター投資

世界的にも投資機会として熱い視線が向けられているデータセンター市場は2017年から30%近い成長が予測されている

急速なDX(デジタルトランスフォーメーション)に伴い、サーバーを物理的に設置するデータセンターの需要が増加している半面、日本では電力供給や自然災害等による課題のため供給が追いついていないという。世界的にも投資機会として熱い視線が向けられているデータセンター市場は2017年から30%近い成長が予測されている。コロナによる新しい消費者動向により成長した新しい投資セクターの一番手ともいわれるデータセンターにこれからも期待したい。

不動産マーケットが受けたコロナの影響は歴史上に残るといっても過言ではない程、今までのトレンドを大きく変え始めている。この激変の時代といわれる今を生き抜くには「次を見極める」分析力とインサイト、そして行動力が命運を分けるであろう。

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