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投資家の注目を集める冷凍・冷蔵倉庫

新型コロナ感染拡大を機に電子商取引が飛躍的に成長。物流施設に対する需要が増し、多くの国内外の投資家が物流不動産市場へ参入したため投資価格が高騰している。競争激化の様相となった物流不動産市場において「ブルーオーシャン」として投資家に注目され始めたのが冷凍・冷蔵倉庫だ。

2021年 04月 05日
沸騰する物流不動産市場

昨年来の新型コロナウイルス感染拡大局面において物流施設が安定した投資先として注目を集めたことは記憶に新しい。折からの電子商取引(Eコマース)の飛躍的な増加にともない倉庫床への需要は高まるばかりであり、投資家が物流施設に投資するという動機づけのひとつにもなっているといえよう。

一方で参入する国内外の投資家が一気に増加したことで、好立地かつ長期の賃貸借契約を締結しているテナントを持つ物流施設においては価格が高騰、東京湾沿岸や神奈川県内陸部など、いわゆる首都圏の物流適地に所在する物流施設では投資利回りが4%を超えるものはもはや存在せず、むしろ3%台前半へと突入しそうな勢いである。こうした中、投資家の熱い視線を集めているのが「冷凍・冷蔵倉庫」である。

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投資家が注目する冷凍・冷蔵倉庫とは?

冷凍・冷蔵倉庫はその名の通り低温度帯を用いての管理が可能な倉庫のことを指し、主に冷凍食品や生鮮食品などの貯蔵に利用されてきている。日本においては冷凍食品の貯蔵が全体の3割を占め、その他農産品、魚介などが後に続く。全容については詳細な調査がないため不明確のところもあるが、首都圏(一都三県)だけで220を超える冷凍・冷蔵倉庫が確認されている。

 

主な所有者としてはニチレイロジスティクスや横浜冷凍、二葉など、いずれも自社で親会社などの荷受けをするのみならず、サードパーティーロジスティクス(3PL)を展開している企業である。つまり運送業者自らが施設を保有し運営するというのが一般的である。こうしたいわばニッチな領域である冷凍・冷蔵倉庫がいま投資家の注目を集めているのにはいくつか理由があげられる。

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ドライ型倉庫の倍近い賃料を収受

まず世界においては冷凍・冷蔵倉庫を専門に扱う不動産投資家が存在している。元はそれぞれ冷凍・冷蔵倉庫において運送業を営む会社群ではあるが、倉庫床の増加とともに自社で開発し運用できるような不動産子会社をREITのような形で設立し、外部からの投資を促している。

また冷凍・冷蔵倉庫においては一般のドライ型倉庫と比較してほぼ倍近い賃料を収受できることで、潤沢なキャッシュフローを実現することが可能である。これによってドライ型倉庫と比べて比較的高い利回りを確保することができる。一方で国内においてはこうした冷凍・冷蔵倉庫への投資が一般的ではないが、逆に言えば今後の伸びしろは極めて大きいと考える投資家がほとんどである。

建て替え需要が見込める冷凍・冷蔵倉庫

国内における冷凍・冷蔵倉庫の倉庫面積は欧米・アジアの国々と比較しても極めて限定的である。例えば国内最大手であるニチレイロジスティクスのキャパシティは500万㎥であるが、これは世界最大手のアメリコールドと比較してわずか18%の規模にすぎない。また既存の冷凍・冷蔵倉庫は築年数の経過したものが多く、加えて2030年までに現在冷媒として一般的に使用されているハイドロフルオロカーボン(HFC)と呼ばれるフロンガスの一種がほぼ全廃を求められており、建て替えの需要が極めて大きいと考えられている。

一部の国内投資家においてはすでに冷凍・冷蔵倉庫の開発に投資するファンドを組成し、マルチテナント型の倉庫として運用を計画している例もある。冷凍・冷蔵倉庫においては温度を管理する設備について、オーナー側が投資の上運営をしていく必要があるためどうしても償却が重くなりがちであり、またマルチテナント型にした場合の所有と利用の分離が一般的なドライ型倉庫のように進むのかという難点や疑問点もあるが、今後増加する冷凍・冷蔵倉庫を頼る荷物の増加や建て替えが進むことで不動産ファンドが開発から入って、こうした諸問題を解決していくという形も考えられる。

思うように物流施設に投資ができない環境下、国内においては「ブルーオーシャン」ともいえる冷凍・冷蔵倉庫が投資家の耳目を集めるのは必然であり、今後の動向に注目が集まる。

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連絡先 内藤 康二

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター

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