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オフィスレイアウト改善で導くアフターコロナに向けた働き方改革

”働く”ことに対し密接に関わりのあるオフィスレイアウトやデザインがこのコロナ禍において重要な役割を担っており、今後のアフターコロナでの働き方改革に大きく寄与していくと考えられる。今回はコロナ禍、そしてアフターコロナにおけるオフィスレイアウト改善について解説する。

2020年 12月 02日

オフィスレイアウトを取り巻く環境の変化と現状

これまでオフィスという当たり前に存在する場所についての価値など、考えたことはあっただろうか?平日朝目覚め、満員電車に揺られながら、オフィスへ出社する。そんな”ノーマル”な日常が新型コロナウイルスにより、数ヶ月にしてニューノーマルな日常へと変化した。JLLが北米、ヨーロッパ、日本を含むアジア太平洋地域の10ヶ国3地域のオフィスワーカー3,000人を対象に実施した調査では、74%(北米)、72%(ヨーロッパ)、68%(アジア太平洋地域)がリモートワークを経験したとのデータが得られ、これを平均すると世界のオフィスワーカーの71%が出社を制限されたことがうかがえる。その中でも、アジア太平洋地域のオフィスワーカーを対象にしたアンケートで「オフィスに戻りたい?」という質問に対し、61%が「非常に強くそう感じている」(28%)「かなりそう感じている」(33%)という回答データが得られた。このオフィス回帰を望んでいるのは、35歳未満のミレニアム世代に多く確認され、意外にも年齢の若い層がリモートワークではなく、オフィスを活用した働き方を望んでいることがうかがえる結果となった。

JLLレポート「新型コロナウイルスがオフィスワーカーに与えた影響に関するサーベイレポートvol.2」より抜粋

 

ニューノーマルな働き方に適応し、アフターコロナを見据えたオフィスレイアウトの改善、オフィス戦略は重要課題

オフィス回帰は、業務に関する理由とは限らない。仕事は、ヒトとヒトとの繋がり合いから成り立っており、それを形づくるコミュニケーションが大きく関係してくると考えられる。このコミュニケーションには、「場」というオフィスのデザインやレイアウトが寄与している。ニューノーマルな働き方に適応し、アフターコロナを見据えたオフィスレイアウトの改善、オフィス戦略は重要課題なのである。

これからのオフィスレイアウトに不可欠となる要素

オフィスレイアウト改善の目的として、コミュニケーションがあるということがアンケート調査からも理解できたが、もう1つ重要な要素として”安全衛生”が挙げられる。健康とウェルネスを尊重する重要性は、新型コロナウイルスによって改めて再定義され、それに伴い、オフィスに求められる要素もアップデートされた。フロアプランを見直し、オフィス家具の配置を変更、テクノロジーを活用することで非接触のプロセスを促すなど、コロナ禍におけるオフィスレイアウト・デザインは様変わりし、アフターコロナへ向けてさらに進化していくと予想される。

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これからの働き方を後押しするオフィスレイアウト改善と成功事例

働く場だけに留まらない空間をオフィスレイアウトで作り上げることで、従業員やステークホルダーに訪れる新しい意味や価値を提供することができる

オンラインでは生み出せないヒトとのコミュニケーションを作るオフィスレイアウト

コロナ禍において、アフターコロナを見据えたオフィス戦略は多角的な視点で考えなければいけない。そこでまず重要となるのが”ヒト”を軸としたオフィスレイアウトではないだろうか。フルリモートから、オフィス勤務とリモートを組み合わせたハイブリッドな働き方へとシフトする企業も少なくない中で、リモートで感じるリアルコミュニケーション不足を解消できるようなオフィスデザインやレイアウトがこれから働く人々にとって大きなモチベーションの原材料となる。オンラインでのテクノロジーを用いた効率化を上手に反映していくと同時に、ヒトが持つ本来の要素であるリアルなコミュニケーションとのバランスを保つ「場」の価値が今後さらに不可欠となり、表面化するであろう。

コミュニケーションの活性化のため、7フロアに分断されていた旧オフィスを統合集約し、各フロアへ多目的のコラボレーションエリアを設置、ソーシャルディスタンスに適応したオフィスレイアウトへ最適化した企業のオフィス移転の成功事例が存在する。工夫されたオフィスレイアウトやコミュニケーションを促すエリアには、一貫したオフィスコンセプトへ「無限に色々な人やモノとつながって付加価値を生み出す、お客様ビジネスの架け橋になる」という企業独自のアイデンティティを組み込まれており、場を通してメッセージを体感することができる。これからのオフィスレイアウトには、企業のメッセージやコンセプトを根底に置くことで、独自のオフィス環境を生み出し、従業員を始めとしたステークホルダーの交流を相乗させるような循環作りの意図が欠かせないだろう。

 

企業のブランドイメージにもつながるオフィスデザイン・レイアウト

戦略的なオフィスのデザインやレイアウトは、企業ブランドをプロモーションするきっかけにも繋がる。今では非接触型のミーティングが増えたが、やはりFace to Faceでのコミュニケーションはクライアントとの信頼を築くためにも欠かせない。アフターコロナという長期的なオフィス戦略を踏まえたデザインやレイアウトを考える上で、企業ブランドやコンセプトイメージを盛り込んでいくことで、オフィスを通しての企業プロモーションに繋がり、信頼を得やすくなる。

企業ブランドをイメージしたオフィスデザイン・レイアウトへとアップデートさせたオフィス拡張移転の成功事例では、従業員の帰属意識の回帰や「ここで働きたい」という人材獲得の結果に結び付いている。この事例から見る具体的なオフィスレイアウト改善例は、オフィスコンセプトに関連する∞(無限)型にミーティングルーム等の各スペースを配置し、企業のメッセージ発信や固定席だった執務スペースへフリーアドレスを採用することで、従業員へ柔軟な働き方を促している等、戦略に沿った策が挙げられる。その他、アルコール消毒の人的な感染対策だけでなく、テクノロジーを活用した自動体温計測システムの導入等、安全衛生の観点での徹底したウイルス感染対策を組み込んだオフィス改革で、企業の経営姿勢を社内外に伝え、信頼というブランディングに繋げることを図っている。このような戦略的なオフィスづくりは、アフターコロナを見据えた長期的な企業経営目線で、不確実な時代だからこそ必要な”コーポレートアイデンティティ”を際立たせ、CRE戦略としての効果も生まれるのではないだろうか。

 

オフィス家具や観葉植物を活用した多様性のあるオフィスレイアウト

オフィス家具を活用することは、生産性を高め、企業のイメージも体現することができる。コロナ禍において、ソーシャルディスタンスを保ったデスク配置など安全衛生を考慮したオフィスレイアウトが重視される中、場所の在り方が再定義されているからこそ、オフィス家具を活用した空間創りが果たす役割は大きい。オフィス家具以外にも観葉植物を執務空間に置くことで、生産性や幸福度が高まるという利点を活かしたバイオフィリックデザインなど、多様なオフィスづくりがこれからも生まれ、働き方を促進していくだろう。

様々な「タッチポイント」でオフィス内の交流を創発し、優秀な人材の獲得に繋げた成功事例では、ABW(アクティビティベースドワーキング)型のオフィスレイアウトを土台とし、多種多様な執務スペースを従業員やステークホルダーへ提供している。例えば、人工芝と屋内テントで「屋内公園」を意識したミーティングスペースは、従来の緊張感をほぐし、カジュアルでよりイノベーションが起きやすい空間を演出できる。働く場だけに留まらない空間をオフィスレイアウトで作り上げることで、従業員やステークホルダーに訪れる新しい意味や価値を提供することができるのではないだろうか。

 

 

オフィスという「場」の価値が問われ直されているからこそ、オフィスレイアウトの改善はアフターコロナの働き方改革に寄与するだけでなく、企業全体の今後にも大きく関わってくる。長期的な価値を生み出すオフィスレイアウトの改善には、現状の課題を見つけ、そこからどのような方向性で解決するのか、どのような方向へ向かっていきたいか、などの企業経営視点を取り入れたオフィス戦略が重要となる。答えが明確ではない不確実な今の時代だからこそ、”コーポレートアイデンティティ”を持ったオフィスづくりでアフターコロナへ向けた企業ブランドの再定義を進めていくことが要となる。

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