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ニューノーマル時代を生き抜くためのCRE戦略の勘所

経済・社会的課題の変化に伴い、資産価値の向上を目的とした企業のCRE戦略強化が盛んになっている。保有不動産の老朽化対策や環境配慮、デジタル化、アフターコロナに向けたオフィス改革等は全てCRE戦略の一環ともいえ、トレンドを理解しておくことが肝心だ。これからの時代を長く生き抜くためのCRE戦略について解説する。

2021年 06月 30日

CRE戦略強化に欠かせないトレンド

企業戦略の観点から保有する資産価値を最適化し、不動産投資の効率性を向上させる役割を担うCRE戦略。企業とステークホルダーとの信頼関係や社会的価値の創出等、様々な要素が重なり合っているからこそ、時代の流れに俊敏に適応していかなればならない。新型コロナウイルス感染拡大により”変化”のスピードが加速し始めたニューノーマル時代は、多様なトレンドやニーズが生まれ、企業の適応が求められている。トレンドの要素として、JLLの記事「CRE戦略が導き出すこれからの企業価値とは?」で述べられているESG投資や、政府が宣言した2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略、SDGs(持続可能な開発目標)等、環境に軸を置いた企業戦略への移行が挙げられる。利益最優先の時代は過ぎ、「いかに環境に配慮しつつ社会的責任を果たし、ビジネスに繋いでいけるのか?」というポイントが重要視されているのではないだろうか。これらのトレンドを考慮し、企業の具体的な実践策は、改めて資産の価値を見直し、最適化、効果検証のCREマネジメントサイクルの改善を行うことであると考えられる。

CRE戦略に欠かせない保有不動産の活用

老朽化物件の賃料は、立地条件が同じであっても、新しい物件と比べて最大60%も低くなり、アフターコロナに適応した物件であれば、賃料の差はさらに広がるだろう

企業が保有する不動産の中でも有効活用されていない”遊休不動産”を効率的に活用・再生し、コスト削減や資産価値向上に繋げるCRE戦略の必要性も高まってきている。アフターコロナを見据えた経営戦略の見直しとして不動産ポートフォリオの適正化や収益最大化を図る企業が増えてきているためだ。背景にあるのは、コロナ禍で人のニーズやトレンドが変化したことによるポートフォリオの低収益化や老朽化だ。JLLの調査によると、アジア太平洋地域の一等地の投資物件の50%が築20年以上であり、老朽化または低収益物件のため400億米ドル相当が棄損されていることが判明した。老朽化物件の賃料は、立地条件が同じであっても、新しい物件と比べて最大60%も低くなってしまうという。その事実に加え、アフターコロナに適応した物件であれば、賃料の差はさらに広がるだろう。低稼働な不動産を所有し続けることのリスクは高まるばかりであり、早急に対処する必要がある。その他には、環境配慮の要素を取り込み、二酸化炭素を排出するオフィスビルの”脱酸素化”を推進することで、需要傾向に柔軟に対応するだけでなく、CRE戦略として策を講じる事例もみられる。多面的な要素から成り立つCRE戦略だからこそ、短期的ではなく長期的な視野で柔軟かつ機敏に対応していくことが求められ、その1つのアクションが数年先の企業の行く末を決める鍵にも繋がってくるのではないだろうか。

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サステナブル化への取り組みは、資産価値の底上げから賃料アップだけでなく、企業の社会的責任を通したプレゼンスを高めることにも寄与する

サスティナビリティを根底とした資産の最適化

これからのCRE戦略はサスティナビリティへの取り組みが最優先事項の1つともいわれており、世界では日本よりも活発に行われている。具体的には、オフィスビルへのサステナブル認証やWELL認証を取得し、環境配慮の基準を満たしていることや利用者のウェルネス・健康の管理がなされている証明、ゼロカーボンの達成を掲げる等、将来を見据えたCRE戦略が挙げられる。また、需要高まるデータセンターの消費電力を削減するため、風力、水力、地熱、原子力を組み合わせた再生可能エネルギーの活用が議論されている。加速するサステナブル化への取り組みは、資産価値の底上げから賃料アップだけでなく、企業の社会的責任を通したプレゼンスを高めることにも寄与する。サスティナビリティへの取り組みは、ニューノーマル時代を生き抜く上でCRE戦略の必然的な勘所となるといってもよいだろう。

未来を担うテクノロジーの強化

テクノロジーの活用は、未来に掲げる目標を可能にし、CRE戦略を推し進める上で欠かせない。テクノロジーが実現させる具体的な効果として、自動化による業務の効率化、非接触でヒトの安全性・健全性の向上、不動産テックの高度なデータ分析でスペース最適化等が挙げられる。昨今注目されているスマートビルやスマートオフィスはテクノロジーソリューションを包括したものであり、「サステナブル」、「健康・ウェルネス」、「安全衛生」等のニーズを満たすためには欠くことのできない要素であると共に、戦略的な成果を生み出すことができる。物流分野でも自動化されたハイテク物流施設への移行は、課題とされていた労働不足の問題を解決へと導いている。

テクノロジー強化は、様々な目標を達成する上でも欠かせない手段であるからこそ、明確なゴールを設定し、綿密な計画を含むCRE戦略が必須となる。

資産価値の見直しが必須となるニューノーマル時代

ヒトや社会のニーズやトレンドが激変しているということは、不動産に求められるニーズも大きく変容している。この変化に対応するには、市場調査、テクニカルデューデリジェンス、需要分析、資産パフォーマンス評価、ポートフォリオ最適化、資産価値向上という専門的なソリューションが必要不可欠となる。オフィスや物流、商業施設、ホテル等の多面的な不動産の知見とソリューションを組み合わせることで、不透明なニューノーマル時代に向けた「次」を見極め道しるべを見出すことが可能となる。柔軟かつ俊敏な行動が求められる今だからこそ、専門的なパートナーの存在が重要なのではないだろうか。

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