記事

BPOサービスとは?アウトソーシング・BPRとの違いやBPOに適した業務を解説

企業の業務効率化に有効とされるBPOに関心を持つ総務担当者へ、一般的なBPOサービスの定義やアウトソーシング・BPRとの違い、メリットとデメリット、BPOに適した業務、導入時のステップと業者選びのポイント、成功事例などを解説する。

2023年 06月 02日

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは?

BPOは企画・設計からリソースの確保、遂行、分析改善までを一括して委託するもので、より専門性が高いのが特徴である

BPOの定義

BPOは英語の「Business Process Outsourcing」の頭文字をとったもので、自社で行う業務のうち 総務や人事・経理などのコーポレート部門や、自社に現在ノウハウがなくすぐに実施できない業務について、外部の専門事業者に委託することをいう。

BPOとアウトソーシングとの違い

業務を外部サービスに委託するという意味で、BPOとよく似た場面で用いられる手法に「アウトソーシング」がある。

しかし、アウトソーシングは一連の業務のうち人手不足となっている単一(あるいは複数)の定型作業を切り出して外部に委託することが多いのに対し、BPOは企画・設計からリソースの確保、遂行、分析改善までを一括して委託<するもので、より専門性が高いのが特徴である。

BPOとBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の違い

経営者層や総務や人事部門の担当者は、「BPR(Business Process Reengineering/ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」という言葉も聞いたことがあるかもしれない。

BPOが業務の一部を外部企業に委託することによる効率化を目指すのに対し、BPRは自社内で業務プロセスを根本的に見直し、効率化や改善を図るアプローチだ。

BPOと比較して継続的に社内人材のスキル向上が見込める半面、時間や費用のコストが増加し運用が可能になるまでに時間を要することがある。

BPOが注目される背景・市場規模

国内のBPOサービス事業者は1990年代頃から存在してはいたが、近年ますます需要が高まっており、市場規模の拡大が報告されている。

その背景には少子高齢化による深刻な働き手の人材不足があり、企業のリソースが逼迫する中で営業や開発などのコア業務に従業員を集中させたいというニーズから、BPOが選ばれている。

また国の推進する働き方改革により、長時間労働の改善に取り組む企業も増えている。同じく特定労働者派遣事業者制度廃止(2018年)、同一労働同一賃金制度(2020年)など人材派遣に関する法改正の影響で、人件費をはじめとするコスト構造を見直す必要に迫られる企業も増えた。

さらにデータ管理や顧客コミュニケーションの自動化・業務のクラウド化など、DXを背景にBPOでプロセスをデジタル化する流れが加速している。

BPOサービスを導入するメリット

自社にスキルがない場合でも高いグレードの業務遂行能力が期待できる

主要事業にリソースを集中できる

企業の業務のうち、総務・人事・経理などのコーポレート関連業務は必ず発生するものだが、その中には外部のBPO事業者で行うことが可能な業務も含まれる。これらの業務プロセスを外部に任せるで、従業員を営業や企画開発などのコア業務に集中させることが可能になる。

専門業者の力で業務を効率化できる

BPOサービス業者は各受託分野の専門的なノウハウやその分野のスペシャリストを抱えていることが多く、自社にスキルがない場合でも高いグレードの業務遂行能力が期待できる。

また税務や会計など頻繁に法律や規制が変わり複雑化する分野では、最新情報のキャッチアップや対応をBPO事業者に任せることで、より効率的な業務の進行が実現するだろう。

コスト削減できる

新規採用や人材派遣を利用する場合、業務に必要な執務スペースの確保や研修教育といったイニシャルコストおよび勤怠管理などのランニングコストは自社でまかなう必要があるが、BPOではこれらをBPOサービス会社側が負担する。このため、長期的なトータルコストが削減できる可能性も大きい。

総務アウトソーシングについて詳しく見る

BPOサービスを導入するデメリット

一方、BPOサービスの導入時には以下のようなデメリットも想定される。

業務内容を把握しきれない可能性がある

委託後、自社の担当者が現場にいないことで、実際に行われている業務の範囲や運用について正確に把握できないリスクが存在する。導入時に契約内容を詳細に書面で残しておくことはもちろん、定期的なレポートやミーティングで報告を受け課題や改善点、成果などを共有しておくことが欠かせない。

社内独自のノウハウが育たない・蓄積されない

自社にノウハウのない部門で専門性の高い業務のプロセス全体のBPOサービスを利用すると、ノウハウが社内に蓄積されない状態が続いていくというデメリットがある。サービス利用と並行して、社内にも精通した人材を確保しておきたい。

情報漏洩等のセキュリティリスクがある

BPOサービスの性質から、事業者は顧客や社内の個人情報・財務情報など重要な情報を知りうる機会がある。万が一これらの重要情報が流出してしまった場合、仮にBPO事業者のミスであったとしても発注元企業の社会的責任が問われるおそれがあるため、セキュリティ体制のしっかりした事業者を選定するのはマストとなる。

BPOサービス利用に適した業務

BPOサービスの対象となる業務は、売上や収益を直接生み出す営業や研究開発・製造などの「コア業務」よりも、おもに総務や人事といったバックオフィス業務や顧客対応などの直接には利益を生み出さないが、企業の運営には必須となるコーポレート部門管轄の業務が中心となる。

総務

総務部門の業務のうち、ほとんど全ての企業において存在する受付業務・備品管理などの事務作業は、BPO対象とする事業者が多く見られる。

人事

人事部門の業務は大きく2つに分かれ、労務管理(従業員の給与計算・社会保険・年末調整・福利厚生手続き)などの内部向け業務と、採用などの外部向け業務があるが、いずれも対応するサービス事業者が存在する。

経理

経理はもっともBPOに適した部門の1つであり、データ入力や帳票出力、請求・支払業務、予算管理、債権債務の管理、決算業務、利益・収益の集計など、ほぼすべての業務においてBPOサービスの利用が可能である。

カスタマーサポート・コールセンター

顧客からの商品サービスの受注・予約受付・問い合わせの受電・チャットなどでカスタマーサポートを行うインバウンド業務は定型化しやすく、BPOに適している。一方、セールスアポイントやテレマーケティング、既存顧客へのフォローやサービス案内といった架電によるアウトバウンド業務は、自社にノウハウがなくともBPOサービスを利用することによって短期間で実施が可能となる。

その他の業務

契約書の作成やコンプライアンス対策などを行う法務社内システムの管理を担当する情報システム、デジタルマーケティングなどの部門でも、専門性の高い事業者のBPOサービスを利用することが可能である。

BPOサービスの効果を高める事業者選びのポイントとは?

数多いBPO事業者から自社に最適な依頼先を選定するにあたっては、以下のような点を比較検討すると良い。

実績があるか

過去~現在の実績を参照することで、自社が抱えている課題に対し、同等の成果が得られるのかどうかを判断できる。

セキュリティ対策は万全か

自社のデータやノウハウを共有するBPO事業者には高度なセキュリティ意識が求められる。個人情報の取り扱い方針やプライバシーマーク取得の有無などを確認しよう。

対応可能範囲は十分か

現在検討している業務はもちろん、将来的にBPOサービス導入を予定している業務・部門にも対応可能な事業者であれば、再度選び直す必要がなく時間的コストの削減にもなる。

BPOサービスの導入ステップ

自社にBPOサービスを導入する際のステップを紹介する。

1. 導入目的の明確化と共有…多くの企業では「経営資源をコア業務に集中させること」を主目的としている。中期経営計画等で注力する分野にシフトするための体制作りとしてBPOを活用するという説明は従業員にも受け入れられやすいだろう。

2. 業務範囲の設定…アウトソースする業務一覧・範囲を具体的に挙げ、抜け漏れや担当部署不在の業務がないか確認する。

3. RFP(提案依頼書)の作成と見積もり…目的と範囲をもとにBPO事業者選定のためのRFP(提案依頼書)を作成し、BPO事業者へ見積もりを依頼する。事業者の見積もり提案に対する評価基準もあらかじめ策定しておこう。

4. BPO事業者の選定…BPO事業者の実績・依頼できる業務の範囲・予算と費用対効果・セキュリティ体制など複数の基準に基づき、自社に最適なBPO事業者を決定する。

5. 業務設計や体制の構築…社内体制をBPOに対応したものに再編成し、マニュアルの作成や関係部署の研修、フロー策定、ツールの導入、社内担当者と事業者間の引継ぎ業務などを行う。

6. トライアル運用…依頼する業務内容や量により、必要に応じてトライアル期間を設ける。

7. 新体制開始…定期的なレポートや報告会議を実施し、運用の検証や改善を行う。

オフィス戦略とBPOサービス

BPOサービスの活用は、戦略的なオフィス構築とも深く関わっている。

働き方改革とワークプレイス戦略

現在、各企業が働き方改革に取り組むなかで、ワークプレイス戦略を担う総務の重要性が高まっている。コロナ禍以降、より柔軟な働き方への認知やニーズが一般に広まり、今まで以上に従業員のウェルビーイング向上が重視されるようになった。

オフィススペース最適化によるコスト削減やテクノロジーの導入活用など、働き方改革を見据えて企業戦略をアップデートできるような専門性と実績を持つBPO事業者にワークプレイス改善のプロセスを委託するという方法もある。

オフィスコンセプトとオフィスデザイン

現在世界的な流れとなっているウェルネスオフィスのコンセプトに基づき、WELL認証CASBEE認証など働くヒトの健康状態を軸にした評価基準に準拠したオフィスデザインを構築・展開するため、高い専門知識やノウハウを有するBPO事業者に委託する企業も存在する。

ワークプレイス戦略とは?

総務BPOの導入事例

戦略的な総務のBPOサービス導入事例としては以下のようなものが挙げられる。

【事例1】

国内大手電気メーカーA社は、ファシリティマネジメントのパートナーとしてJLLと契約を結び、コスト削減を目的としたプロジェクトを開始。ファシリティ管理に関わるコスト削減を実施し、9年間で69億4200万円のコスト削減効果へと繋げた。JLLがグローバルなネットワークを生かし、グループ会社海外工場7件の取得・売却支援等、幅広いサービスを提供したことが成功の要因として挙げられる。総務アウトソーシング・コンサルティング活用により、自社だけでは得られないネットワークを活用し、継続的かつ根本的なコスト削減に成功することができた。

【事例2】

外資系IT関連企業C社は、2007年以降、JLLへファシリティマネジメント全般の運営を委託。JLLはヘルプデスク運営や庶務サービス/コーポレートサービス、受付サービス/メールルームサービス、予算作成・管理、経理業務など総務業務全般のアウトソーシングを継続的に行っている。企業文化を理解し、新しいサービスを提案・実施 (社内イベントの企画や開催など)、業務拡大・人員増員に伴い、全ての業務フローを再確認した上で改善と効率化を提案、またマニュアル作成・レポート整備・情報集約のルール策定など、新しい価値を積極的に生み出し、KPIスコア(5段階評価)も3.8から4.7へ大きく向上させた。

BPOサービスで企業戦略の強化を図る

BPOサービスの歴史は長いが、近年ではバックオフィスを中心としたプロセスの外部委託によるコスト削減という目的から企業戦略の重要な要素へと変貌し、BPO事業者は外注先からビジネスパートナーとしての位置付けに変化しつつある。

従業員のリソースを主力業務に集中させられるBPOサービスについて正しく理解し、自社に最適な外部委託プロセスを見極めた上で効果的に活用し、より戦略的な企業経営へと強化を図ってほしい。

自社のワークプレイス戦略について相談する

お問い合わせ

何かお探しものやご興味のあるものがありましたら、お知らせ下さい。担当者より折り返しご連絡いたします。