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企業がフレキシブルオフィスに本社移転する理由とは?

2021年の東京都心5区におけるフレキシブルオフィス市場は新規供給の拡大が続いており、企業がフレキシブルオフィスに本社機能を移転させる等、アフターコロナの働き方「ハイブリッドワーク」の普及の影響により新たな需要が生まれている。

2022年 04月 11日
2021年のフレキシブルオフィス市場は前年比10%増

働き方改革関連法の施行を機に、2018年頃から急成長を続けてきたフレキシブルオフィス市場は、コロナ禍の影響でも新規供給の拡大が見られる。

JLL日本 リサーチ事業部の調査によると、2021年における東京都心5区におけるフレキシブルオフィス市場(サービスオフィス、コワーキングスペース)は404,000㎡、前年比10%増となった。

東京都心5区におけるフレキシブルオフィス市場の推移 出所:JLL日本

2018年には床面積ベースで前年比47%増の195,500㎡と急拡大して以来、2020年まで前年30-50%前後の成長を続けてきた。2021年も拡大が続いた理由について、フレキシブルオフィス市場に詳しいJLL日本 リサーチ事業部 中丸 友世は「これまで市場を牽引してきた大型コワーキングスペースの供給が引続き新規開設を続けており、更に新規参入している事業者の積極的な出店が市場拡大を後押したため」と分析する。

特に、都内の大型オフィスに複数フロアや中小規模ビルを一棟借りが続いており、新しい働き方に対応している事業者が目立っている。2021年10月には日比谷で竣工したAグレードオフィスに「WeWork」が数フロア開設。3月には「Spaces六本木」、9 月に「Spaces赤坂」、そして「Business Airport京橋」の1棟借りが竣工した。

新規参入事業者による積極的な出店で成長を続けるコワーキングスペース(画像はイメージ)画像提供:PIXTA

企業のハイブリッドワーク化への対応に向けてオフィスサービスを多様化すべく、デベロッパーや不動産会社等がフレキシブルオフィス事業の強化の乗り出している

さらには、野村不動産が展開しているサービスオフィス「H1T(HUMAN FIRST TIME)」、「H1O(HUMAN FIRST OFFICE)」が2019年頃から定期的に出店を続けていることでサービスオフィス市場も拡大している。中丸は「コロナ禍を受けて働き方が大きく変わろうとする中、新たなオフィス形態として、サービスオフィス事業に新規出店・新規参入するケースも目立ち始めている」と指摘する。2021年には東電不動産が健康促進型サービスオフィス「WORKING PARK EN」を南青山に開設した他、JR東海によるEXサービス会員向けサービスオフィス「EXPRESS WORK-Office」、ヒューリックによるフロア専有型サービスオフィス「Bizflex by HULIC」が麻布十番に開業。2023年には六本木、2024年には浜松町、神田(2024年)での開業を予定している。

また、東京建物は2021年7月、日総ビルディングが運営する「エキスパートオフィス」を買収した。既存のフレキシブルオフィス「+OURS」2拠点に「エキスパートオフィス」8拠点を加えて、フレキシブルオフィス拠点の増強とネットワーク化を推進している。企業のハイブリッドワーク化への対応に向けてオフィスサービスを多様化すべく、各デベロッパーや不動産会社等がフレキシブルオフィス事業の強化に乗り出している。

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フレキシブルオフィスに本社機能を移転させる企業が増加傾向に
柔軟な契約内容が魅力のフレキシブルオフィスはハイブリッドワークに適している(画像はイメージ)画像提供:PIXTA

将来の見通しが不確実であるため、より多くの企業が座席や部屋タイプ、利用面積等を柔軟に変更できるフレキシブルオフィスを志向する動きが顕在化

フレキシブルオフィスは新規供給を後押ししているのは旺盛なテナント需要だ。2021年は本社機能を移転する企業が増加した。

コワーキングスペースやシェアオフィス、サービスオフィス等、外部貸しの共用オフィスを指すフレキシブルオフィスは、一般的なオフィス利用は比較的長期間賃借することを前提としている。1日単位・1カ月単位で利用できる柔軟な契約形態が最大の特長となる。加えて、入居時に家具や什器をそのまま活用でき、内装造作工事や退去時の原状回復工事のコスト負担を抑えることができる。「交流の場」として社内外とのコミュニケーション活性化にも寄与する。

「将来の見通しが不確実であるため、より多くの企業が座席や部屋タイプ、利用面積等を柔軟に変更できるフレキシブルオフィスを志向する動きが顕在化している」(中丸)

コロナ禍で生じたオフィスに対する新たなニーズに柔軟に対応できるフレキシブルオフィスの特性は、アフターコロナを見据えた新たな働き方に合致したことが、本社移転の受け皿になっているようだ。

2021年にフレキシブルオフィスに本社機能を移転した主な企業(各社プレスリリース、一部報道を参照)は次の通りだ。

DeNA

2021年8月、WeWork渋谷スクランブルスクエア(40階1フロア、37・39・41階の一部)へ移転。多様性のある働き方を実現するためにリモートワークとオフィスワークの「組合せ」活用を前提に設計しており、平均30%程度の出社率を想定したオフィス席としたという。

Paypay証券

2022年1月、業務の拡大に伴いWeWork日比谷パークフロントに移転。およそ200席程度を借りていると想定しており、モバイル決済会社のPaypayと同じビルに移転することとなった。

シンガポール航空

2021年11月にWeWork神田スクエアに移転。今回の移転は部署間の更なるシナジーを創出する機会と捉えており、従業員がどこにいても業務ができる多様かつフレキシブルなワークスタイルと業務プロセスの見直しによる生産性の向上を達成するための一助になると認識しているとのこと。

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アフターコロナに向けたフレキシブルオフィスの今後の需要は?

JLL日本 オフィス リーシング アドバイザリー事業部が2020年11月にテナント企業向けに実施したオフィスに関するアンケート調査によると、コロナ後のワークプレイス戦略で導入を決定・検討している項目として「シェアオフィス・コワーキングスペース(月単位の契約)の利用」との回答は45%超となった。中丸は「企業によるフレキシブルオフィスの大規模ニーズが持続するのか見極める必要があるが、コロナ禍によって少なくともフレキシブルオフィスに対する肯定的な認識は広がっている」とし、都心部のオフィス集積地のみならず、住宅地に近い郊外型施設や、ワーケーションへの対応、優秀な人材を幅広く獲得するために地方都市への進出も進んでいる。

アフターコロナを見据えてオフィス戦略を再考していた企業が実行に移すのはこれからが本番。フレキシブルオフィスの需要がこのまま拡大していくのか、今後に注目していきたい。

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