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サステナブルオフィス実現のためのビル選定とグリーンビル認証

オフィスビルにもサステナビリティを求める動きが加速する中、「グリーンビル認証」を取得したビルが選好され始めていると同時に、テナント企業が自らのオフィススペースを対象としたグリーンビル認証を取得するケースも増えている。ニュータニックス・ジャパン合同会社もそうした1社だ。

2021年 11月 25日
今回の記事のポイント

1.ワークスペースにおけるLEED※認証取得を通じて「持続可能な職場を従業員に提供する」

2.賃貸条件だけなく環境性能もクリアするオフィスビル選定は容易ではない

3.サステナビリティに理解のあるビルオーナーのサポートが必要不可欠

4.健康的で快適なオフィスへ高まる従業員の期待

仮想化基盤を提供するグローバル企業・Nutanixの日本法人であり、開発したソフトウェアによってサーバー等のハードウェアを削減することで、二酸化炭素排出量の大幅な削減に寄与する等、創業時から「サステナビリティ」を重視。その一環として、2020年6月に「丸の内永楽ビルディング」15階に開設した新オフィスにおいて 国際的なグリーンビル認証である「LEED ID+C」の取得を計画、ゴールド認証を取得することに成功 した。米国カリフォルニアの本社オフィスをはじめ、インドやオーストラリア等、同社のオフィスでのLEED認証取得は7件ある。

多数の植栽を配したバイオフィリックデザインを採用した他、立った状態でデスクワークを行える昇降型デスク等も導入した。キッチンカウンターやワインセラー、冷蔵庫等のキッチンカウンターを備えた大規模なカフェエリアではリユーザブル(再利用可)のマグカップを提供し利用後は食洗器で洗うことで廃棄物量の削減を強く意識する等、従業員の健康増進に寄与する快適性を提供しながら、高レベルで環境配慮を意識したオフィス環境を構築 した。

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LEED ID+Cは主にテナント専有部を対象にしており、それゆえ ビル自体の環境性能の高さや立地性、また改修工事に伴うビルオーナーの理解・協力が必要 になる。本件はビル自体の省エネ対策や水使用量の削減に加え、二酸化炭素排出量の削減に間接的に寄与する公共交通機関への至便性等の項目が評価され認証取得につながった形だ。

グリーンビル認証に関する記事はこちら

インタビュー

ニュータニックス・ジャパン 芦沢 蘭さん

LEED認証取得の狙い・ポイントは何か。ニュータニックス・ジャパン合同会社 リアルエステート&ワークプレイス ワークプレイスマネージャー 芦沢 蘭さんにお話を伺った。

自社のスペースでLEED認証を取得した背景

当社では創業時から、事業を通じて社会の発展に貢献することを使命とし、成長の原動力として取り組んできました。企業理念は社員一人一人が日々の仕事の中で実践できるように時代に合わせて進化し続けており、我々の働きでより良い社会をつくることを目標にしており、グローバル全体でサステナビリティについて色々な取り組みを行っています。LEED認証の取得はその一環であり、持続可能な職場を従業員に提供する という当社のコミットメントを再確認するためにすべてのグローバル拠点においてLEED認証の取得を目標としています。

オフィスの設計段階からLEED認証取得に向けて、資材計画や地域のエコシステムを補完する方法でプロジェクトを遂行する計画を策定しました。本当にLEED認証を取得できるのか、自分たちが思い描いた結果が得られるのか未知数でありましたが、会社として投資を決断するのは容易ではありませんでした。

2019年に入居先を選定し始めた当初からLEED BD+C認証を取得したオフィスビル、もしくは入居テナントがLEED ID+C認証を取得した実績があるオフィスビルを探していたのですが、当時はそもそもそれらに該当するオフィスビルの数自体が少なく、認知度も低かったため、めぼしい移転先を見つけることができませんでした。そのため、建物としてはLEED未取得でありながら高いサステナビリティ性能を有するオフィスビルを選定することにしました。サステナビリティ活動に理解があるオーナーのサポートが必要不可欠であることを認識していたためです。入居先となった「丸の内永楽ビルディング」は、優れた水・エネルギー効率・室内環境を有するほか交通の利便性も備えており、LEED認証取得に向けてこれ以上望ましいものはなかった と思います(表1)。

サステナブルオフィスに対し、広がる従業員の期待

オフィスを開業した2020年6月は新型コロナウイルス感染拡大の影響下にありました。当社は従業員の安全性と事業継続性を第一に考え、オフィス勤務を停止し、フルリモートの働き方へ切り替えたことで、一部の従業員がこのオフィスを体験したに留まっています。しかし、数人の従業員が出社する中で、新オフィスの魅力が噂レベルで広がっています。多くの従業員からは「早く新しいオフィスを体験したい」とのポジティブなフィードバック が寄せられています。当社はオフィス環境だけでなく、様々な福利厚生にも注力してきました。コロナ以前は毎週月曜日に会社からランチを提供し、1カ月に1度の社内イベントとして「ニュータニックス・フライデー」を実施する等、従業員がワクワクするような環境づくりを進めていました。コロナ禍で在宅勤務に全面的にシフトする中、こうした働く環境に対するありがたみを改めて実感したことがオフィス回帰を望む理由かと思います。

今後の展望

建物は、世界のエネルギー使用量、資源消費量、温室効果ガス排出量の膨大な量を占めており、私たち個人の健康や福祉にも大きな影響を与えています。グリーンビルディングは、私たちがより持続可能な生活や仕事をすることを可能にし、健康、空気、飲む水などで実感することができます。そして、私たちの生活の質を向上させるだけでなく、世界の二酸化炭素排出量を削減し、電気代や水道代を節約し、新たなグリーンジョブを創出します。

私たちの期待や目標は、持続可能な土地開発、材料選定、室内環境品質などの分野で、実践的で測定可能な戦略とソリューションを実施し、LEED認証を取得することです。LEED認証を取得することで、当社のような企業はより持続可能な運営が可能となり、企業内の人々はより健康的で快適な空間で働くことができるようになる と認識しています。

オフィスビル選定に関するJLLのサービスはこちら

*LEED:非営利団体USGBCが開発・運用する建築物や都市環境を対象にした環境性能評価システム。評価項目は多岐にわたり、各項目において取得したポイントの合計によって4段階の認証レベル(プラチナ、ゴールド、シルバー、標準認証)が決められる。

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