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ESG評価がもたらす不動産の変化

ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する企業が増えている。経済の発展だけでなく、環境に配慮した取り組みを評価する基準が定められ始める中、持続可能な未来を築いていくための考え方や対応策について解説する。

2022年 02月 10日
高まるESGの重要性とは?

2006年に公表された責任投資原則(PRI)がきっかけで拡大したESG投資は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に寄与し、投資先を選定する上で欠くことのできない評価の観点となっている。年々リスクが高まる地球温暖化問題の対応策となる二酸化炭素削減や、少子高齢化への取り組み等の課題に対し、ESGの観点を取り入れることへの重要度が増している。企業の経営や不動産運用に深く関わる責任者・オーナーはこのESGを本質的に理解し、企業戦略や保有資産へ展開していくことが求められており、環境配慮と利益追求のバランスを保っていくことが重要なポイントとなってくる。


ESG投資の種類

これからの投資を考える上で、ESGの本質や種類、評価の基準を知り、最適化していくことは、避けることのできないプロセスとなる

ESG投資の手法は、世界持続可能投資連合(GSIA:Global Sustainable Investment Alliance)により以下7つの項目に分類されている。

  • ネガティブスクリーニング:特定の業界やセクターを投資対象から除外すること
  • ESGインテグレーション :投資先を選定していく上で、ESG要素を過程に組み込んでいくこと
  • エンゲージメント・議決権行使:株主と共にESGに向けた取り組みや改善を行っていくこと
  • 国際規範スクリーニング:規範に違反する企業等をグローバルに行うこと
  • ポジティブ・スクリーニング:ESG関連の評価が高い企業や投資対象先を優先的に選定すること
  • サステナブルテーマ投資:再生可能エネルギーや女性活躍等に関連するサステナビリティを積極的に行う企業等の投資対象先への投資方法
  • インパクト投資:社会・環境問題に取り組む企業に対する投資であり、財務よりも社会や環境への貢献を重視した投資を行うこと

世界をエリア別に見てみると、欧州はネガティブスクリーニング、アメリカではESGインテグレーション、日本ではエンゲージメント・議決権行使が比較的多いというデータが確認できている。ESG投資は、様々な観点が取り入れられているからこそ、不明確な点も多いとされてきたが、環境や社会の問題解決が喫緊となるからこそ、種類分けや評価の明確化が積極的に進んでいるのではないだろうか。企業のESGの対応例は、従業員が健康・安全で働きやすく、多様性を受け入れられるような環境づくりや組織の意識改革が挙げられ、これらは必要要素として組み込まれている。これからの投資を考える上で、ESGの本質や種類、評価の基準を知り、最適化していくことは、避けることのできないプロセスとなるのではないだろうか。

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不動産のESGへの対応と評価

サステナビリティ化による資産価値の向上

昨今、勢いを増す不動産セクターのESG対応。脱炭素化を目標に掲げ着実に歩みを進める企業も増え、不動産のサステナビリティ化により、環境配慮だけでなく、資産価値の向上にも寄与するというケースも出てきている。例えば、再生可能エネルギーを活用した省エネ対策では、長期的な視点でのコスト削減や、環境保護に寄与しながらも、サステナビリティ化に取り組んでいるというブランドイメージ向上にも繋がってくる。不動産のESG対応は、複合的な効果に直結するからこそ、長期的な視点で戦略的に進めていくことが不可欠となる。

ESGに対応した環境認証

評価基準の観点では、SDGsやESGに対応するための様々な環境認証が存在し、不動産オーナーや投資家はその評価に沿って然るべき対応を進めている。代表的な環境認証には、認知度の高いLEED、CASBEE、GRESB等が挙げられ、目的に適応した認証を取得し、グリーンビルディング化への取り組みを図っている。企業戦略へのシナジー効果が期待できるからこそ、ESGを念頭に置いた環境認証の取得が今後の鍵となってくるだろう。

SDGs・ESGに対応したテナント成功事例

SDGsやESGに対応したオフィス改革は、今後、さらに加速していくのではないだろうか

国際的なグリーンビル認証の「LEED ID+C」取得を計画的に進めるグローバル企業の成功事例では、高いサステナビリティ性能を持つオフィスビルを移転先として優先的に選定。そこから室内環境やエネルギー効率、優れた水等のLEED認証に深く関連する要素をオフィス設計プロセスへ組み込み、認証取得を目標にプロジェクトを進めた。その結果として、従業員から「早くオフィスを体験したい」という期待の声が寄せられ、オフィス回帰への寄与だけでなく、ゴールド認証取得にも成功することができた。SDGsやESGに対応したオフィス改革は、今後、さらに加速していくのではないだろうか。

ESG評価基準を理解し、対応していくことは、環境配慮だけでなく長期的な繁栄にも繋がるからこそ、環境認証の意図や企業の方向性を見定めて進めていくことが肝心となる。ESGがもたらす様々な変化により、サステナブルな資産価値の向上がスタンダードとなる日は近いのではないだろうか。

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