JLL日本のオフィスで働いたインターン生、“オフィスの重要性”を知る
好きな場所で働くことができる環境が整いつつある昨今、オフィス勤務よりも在宅等のリモートワークを好む若者世代も少なくありません。そうした中、JLL日本のインターンシップに参加した米国の学生はオフィス環境や働き方の重要性をどのように感じたのでしょうか。
米国からのインターン生、JLL日本で働く
2023年6月19-30日までの2週間、米国の高校生である筆者は、JLL日本の東京オフィスでインターン学生として働きました。
JLLは米国シカゴに本社を構え、世界80カ国で事業展開するグローバルな総合不動産サービス会社です。志望した部署はリサーチ事業部。経済動向・不動産市況を観測し、オフィスや働き方の最新トレンドをも調査・分析の対象とする部門で、部署内メンバーの各種リサーチ業務をサポートしました。
その体験を経て、インターン学生の立場から見た“オフィスの重要性”について本稿を執筆しました。
ハイブリッドワークの有用性
JLLは「ハイブリッドワーク」と呼ばれる働き方をグローバル全体で導入しており、オフィス環境の整備とリモートワークを併用することで、個々の従業員が置かれる事情に適応しやすい柔軟な働き方を実践しています。JLL日本でも当然ハイブリッドワークを導入しており、オフィスに出社しているのは全従業員の6-7割程度だといいます。
2022年11月に移転したJLL日本の東京本社オフィスはラグジュアリーホテルのようなエントランスやカフェスペースに加え、従業員のウェルビーイングに配慮したマザールームやマッサージルーム、多目的スペースまで備え、仕事の内容や気分によって座席を選べるようにフリーアドレス制を採用しています。
私が配属されたリサーチ事業部のメンターによると、こうしたオフィスを「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)型オフィス」と呼んでいるそうです。「通勤するのが楽しくなる」オフィス環境といえるでしょう。
自分の好きな場所で働けるハイブリッドワークは従業員のワークライフバランスに役立ちます。特に日本では電車通勤時の大混雑が心身共に大きなストレスとなり、やはりハイブリッドワークのほうが快適に働けると実感しました。
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ハイブリッドワーク定着もオフィスを重視する日本企業
一方、ハイブリッドワークを導入することで、オフィスへ出社する従業員は当然ながら減ります。極論するとオフィスの使用頻度が減少するため、オフィス環境を整備する必要がなくなるのではないでしょうか。
コロナ禍でオフィスへ出社するビジネスマンが激減した際、「オフィス不要論」が叫ばれたそうです。ハイブリッドワークが定着し、アフターコロナを迎える中、米国の主要オフィス市場では空室率が高止まり、賃貸住宅などへ用途変更するオフィスビルも少なくないと、JLLの調査でも明らかになっています。
米国を含む世界のオフィス市場の変化を解説するレポートはこちら
つまり米国ではオフィスの存在価値が薄れているように思えるのですが、日本ではハイブリッドワークが定着しても、オフィスを重要視する企業が少なくないと聞きます。なぜ日本企業はオフィス環境の整備にこだわっているのでしょうか?
調べてみると、最大の理由は「人材採用」に辿り着きました。
少子高齢化の中、人材採用を目的にオフィス環境を整備
ハイブリッドワークはワークライフバランスにも寄与する(画像はイメージ)
日本の人口は40-74歳がボリュームゾーンとなっており、若年層が少ない逆ピラミッド型の人口動態です。世界的にみても少子高齢化が顕著。将来を悲観させる深刻な社会問題となっています。
そのため、優秀な若手人材は貴重で、彼らをいかに長期雇用するかが企業の将来性にも大きな影響を及ぼします。魅力的なオフィス環境は若手人材を惹きつける上で大きな魅力になると考えられているわけです。
また、人材採用のみならず、従業員に対する企業カルチャーの浸透やブランディング効果、何より従業員が集まることで偶発的なコミュニケーションが育まれ、イノベーションが創発されることも日本企業がオフィス環境を重要視する理由であることがわかりました。
これはアフターコロナを迎え、米国企業に比べて日本企業のオフィス出社率のほうが圧倒的に高いというJLLの調査からも読み取れます。
JLL日本のオフィス環境を評価してみた
コミュニケーション活性化を意識したJLL日本の東京本社オフィス
しかし、オフィスを整備したからといって、必ずしも従業員が満足する環境といえるのか、判断するのが難しいのではないでしょうか。
そこで、私はJLLが示した「Responsible Real Estate & Sustainability(責任ある不動産とサステナビリティ)」という大枠の概念のうち、「Return on Sustainability(サステナビリティがもたらす不動産価値)」や「Sustainable Building Certifications(環境ビルディング認証」などに関する測定基準を用いて、JLL日本のオフィス環境の評価を試みました。
まず、「従業員の体験価値と生産性」を測るために「ハイブリッドワークの導入」と「働く場所に関する柔軟性」の2つの指標に着目しました。
企業の不動産部門の責任者を対象としてJLLが実施した「2022年版Future of Work(働き方の未来)グローバル調査」によると、73%が「自社オフィスにおいてフリーアドレス制を導入済み、もしくは検討中」と回答したことが明らかになっています(図1)。
図1:73%がフリーアドレス制を導入・導入予定と回答 出所:JLLレポート「2022年版 Future of Work(働き方の未来)グローバル調査」
JLL日本の新オフィスもフリーアドレス制を導入しており、所属部署の垣根を超えたコラボレーションを促しています。
また、自宅をはじめとしたオフィス以外の場所で勤務できる自由度に関わる指標「働く場所に関する柔軟性」については、オンライン上でのコラボレーションツールの導入とそれに伴うサテライトオフィスの活用といった柔軟な働き方やハイブリッドワークの取りの組みと関連があり、JLL日本の社員もこれらを活用しています。
セールスフォースがアメリカの労働者を対象として実施した調査では、チャットやチャンネル機能を持つコラボレーションツールが従業員の業務効率を高める効果を持つという結果が示されたように、こうしたツールや働き方を取り入れることで、JLLは「ハイブリッドワークの導入」と、「働く場所に関する柔軟性」の2つの指標で高得点を獲得したのです。
サステナビリティ性能も重要視
他方、魅力的なオフィス環境を測る指標として環境に対する取り組みである「サステナビリティ」も無視できない項目でした。
JLLがグローバルで実施した調査によると、サステナビリティに配慮したグリーンビルディングに入居する場合、賃料プレミアムを支払うかを調査したところ、全回答者のうち「既に支払っている」が22%、「2025年までに実施する可能性が高い」が34%を占め、回答者の半数以上が「賃料負担に前向き」であることが判明しています。
サステナビリティや環境配慮に対する賃料負担への考え方 出所:JLLレポート「2022年版 Future of Work(働き方の未来)グローバル調査」
例えば、オフィスに出社する場合には、ほとんどの従業員が電車か自転車、あるいは徒歩で通勤しているのですが、在宅勤務制度を活用することで空調、照明などの電力や水道水の消費量を削減でき、省エネにつながります。
JLL日本のオフィスは米国で開発され、今や世界的なグリーンビルディング認証となったLEED認証の最高ランクである「プラチナ」を取得しており、サステナブルビルという基準においても、対外的に高く評価されているのです。
JLL日本のLEED認証「プラチナ」取得に関する記事はこちら
結論
オフィスをはじめとする事業用不動産の専門家の大半は「今後もオフィスが企業活動の中枢を占める場所であり続けるだろう」と考えているそうです。ハイブリッドワークを導入することでビルの環境が改善し、従業員の生産性も向上します。
JLL日本の新オフィスのように、サステナビリティに配慮したオフィスは気候変動対策に必要不可欠な存在となり、入居テナントが定めた環境目標にも貢献するでしょう。そして、従業員の生産性を高めることで、事業成長を促します。
日本でインターンシップを経験したことで、オフィスの重要性を垣間見ることができました。良質な就業環境は長期的に企業の成功を約束するのではないでしょうか。
執筆者:コンラッド・エミ/Author:Emmi Conrad