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ホテルアセットマネジメントとは?ホテル運営の専門家が収益最大化を支援

訪日外国人観光客数の回復が本格化し、日本のホテル投資市場は活況を呈している。そうした中、ホテル運営体制やバリューアップ戦略を最適化し、ホテル収益の最大化を目指すオーナーやホテルオペレーターが注目しているのが「ホテルアセットマネジメント」である。

2024年 09月 26日
活況を呈する日本のホテル市場

2022年10月に水際対策が緩和されたことで訪日外国人観光客数が回復したことで、ホテルパフォーマンスは改善に向かっている。東京・大阪のホテル市場ではADR(客室平均単価)がコロナ前の2019年を上回り、ホテルのパフォーマンスを測る重要指標とされるRevPAR(1日当り販売可能客室数当り宿泊売上)でも2019年の水準を超える地域も見られるようになってきた。

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いわゆるアップサイドを狙えるこうした環境下において、オーナー(投資家)やホテルオペレーターの注目を集めているのが「ホテルアセットマネジメント」である。

ホテルアセットマネジメントとは?

ホテルアセットマネジメントとは、一般的にホテルオーナー(投資家)の代理として、ホテル収益(GOP:営業総利益)の最大化を支援するコンサルティングサービスを指す

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ホテル運営に精通したホテルアセットマネージャーがオーナーの代理人となり、オペレーター本部やホテルスタッフとのコミュニケーションを通じて信頼関係を構築しながら、オーナーとオペレーター双方の利害を調整する“橋渡し役”としてホテルブランドの価値を高めつつ収益最大化を支援する。ホテルアセットマネージャーは下記のような役割を担う。

  • 独立した専門家としての見識を提供し、オペレーターとの建設的な対話を通じて、プロアクティブな運用管理を遂行

  • 適切な出口戦略を立案・維持しながら、投資リターンと施設の市場価値の最大化を図る

  • オペレーションを最適化し、あらゆる事業部門の収益性を高めることによってキャッシュフローを最大化

  • オーナーにとって最も費用対効果の高い予算を組み、追加投資を見極めるなど、ROIの最大化を実現

 

ホテルアセットマネジメントが注目される背景

JLL日本では2021年からホテルアセットマネジメント・サービスの提供体制を強化して以来、国内外の投資家・オペレーターから多数の相談が寄せられている。

JLL日本 ホテルズ&ホスピタリティ事業部 エグゼクティブヴァイスプレジデント ヘッド・オブ・アセットマネジメント ネイザン・クックは、ホテルアセットマネジメントが注目される背景について「良好なマーケット環境にありながらADRが想定より改善していないと感じているオーナー、オペレーターが少なくないため」と推測する。

加えて、これまで馴染みのなかった外資系ホテルならではのホテル運営委託契約(ホテルマネジメント・コントラクト/HMC)やフランチャイズ契約(FC)を導入するオーナーが増えていることも挙げられる。

外資系ホテルを誘致するオーナーが増加

従前、国内ホテルオペレーターはオーナーと賃貸借契約を締結し、ホテルを運営するのが一般的だったが、収益の大部分をオペレーターが得ることになり、オーナーにとってアップサイドが狙いにくい。

一方、外資系ホテルは世界中に膨大な会員を抱えていることから桁違いの集客力を誇る。オーナーにとっては外資系ホテルのブランドや話題性によって保有不動産の付加価値向上も期待できる。外資系ホテルを誘致しようと考えるオーナーが増えている理由だ。

外資ホテル特有のHMCやFCはオーナーが経営リスクを引き受ける代わりに営業利益の大部分を得ることになる。ホテルパフォーマンスの改善が見込める現況下において、HMCやFCを選択したほうが収益のアップサイドが見込める

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HMCやFCに見られるオーナー・オペレーターの利害相反

とはいえ、HMCやFCにおいてはホテル経営を巡ってオーナーとオペレーターの考え方が一致するとは限らない。一般的に、オーナーの最大の関心事はホテル運営の(短期的)利益と資産価値向上と考えられるが、オペレーターの関心事は長期的(継続的)なホテルのブランド価値と顧客満足度の向上であり、そもそも運営方針や投資方針が異なる。

HMCやFCにはこのような利害相反となる条項が存在し、収益最大化の足枷となるケースが少なくない。特に、ホテル運営に精通していないオーナーであれば、オペレーターからの提案や報告が果たして妥当であるのか判断がつかず、積極的にホテル運営に関わることができないなど、様々な課題が浮上する。

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ホテル運営方式の帰属一覧
賃貸借契約 HMC FC 所有直営
不動産所有 オーナー オーナー オーナー オーナー
FF&E所有 オーナー・オペレーター オーナー オーナー オーナー
経営(損益)の帰属 オペレーター オーナー オーナー オーナー
従業員の帰属 オペレーター オーナー オーナー オーナー
人事権・運営権 オペレーター オペレーター オーナー オーナー
ブランド オペレーター オペレーター オペレーター オーナー
マーケティングシステム オペレーター オペレーター オペレーター オーナー

出所:JLL日本

国内オペレーターもホテルアセットマネジメントに注目

元々、ホテルアセットマネジメントは所有と経営が明確に分離した外資系ホテルならではのコンサルティングサービスとして認知されており、JLL日本が提供するホテルアセットマネジメント・サービスに対する問い合わせも外資系ホテルのオーナーが大半を占めていた。しかし、クックは「最近では国内オペレーターからの問い合わせが増えている」と指摘する。

「インバウンドの回復など、従来の宿泊ニーズなどが変わるなか、収益最大化を目指すためには宿泊単価を上げる必要があるが、集客に影響を及ぼすリスクもある。賃貸借契約に慣れた国内オペレーターはこうしたリスクと収益最大化のバランスを見極めるノウハウを積み上げておらず、レベニューマネジメントや営業活動、マーケティングセールスなどの最適化を進めるためにホテルアセットマネジメントを活用する事例が出始めている」(クック)
 

ホテルアセットマネジメント・サービスの具体例

年度予算交渉・承認、運営成績の改善施策の提案、ADR改善に向けたリノベーション工事プランの策定・実行支援にも相談されるケースが増えている

では、実際にホテルアセットマネジメントの主な業務はどのようなものなのか? JLL日本が提供するホテルアセットマネジメント・サービスでは下記のような業務を主に遂行する。

  • 年度予算の精査と改善箇所の交渉及び承認

  • 運営パフォーマンスのモニタリング

  • ホテル運営委託契約の項目別妥当性のチェック

  • 運営成績の改善施策の提案

  • Capex及びFFEの精査・費用対効果の検証

年度予算交渉・承認

HMCやFCでは、オペレーターがホテル運営における予算計画を策定し、オーナーが承認する形になるのが一般的だが、ホテル運営に精通していないオーナーの場合、オペレーターの予算案が適正かどうか判断できない場合がある。

JLL日本では30施設超にホテルアセットマネジメント・サービスを提供しており、ホテル運営に伴う多種多様なデータを活かしたベンチマーク評価が可能。予算計画をレビューし、部門別さらには項目別の費用を精査のうえ、金額の妥当性を判断し、適正化と収益最大化に向けた改善点を策定し、その実行支援を行っている。

運営パフォーマンスのモニタリング

ADR、RevPAR、OCC(客室稼働率)、マーケット浸透度指数や予約1件当りのマーケティングコスト、直接予約率、ウェブコンバージョン率など、様々な指標をもとにホテル運営におけるパフォーマンスを継続的にモニタリングする。

ホテル運営委託契約の項目別妥当性のチェック

HMCはオペレーターが契約内容を策定し、オーナーがその内容を精査し、最終的に契約締結に至る。一般的にオペレーターは最大限の運営権限を求める傾向が強く、オーナーにとって不利な条項が盛り込まれているケースも少なくない。オーナーは運営予算の設定に関する権利や総支配人の任命権、運営パフォーマンス悪化時の中途解約権などが獲得できるかどうか、オペレーターに支払うマネジメントフィーの料率や修繕・改装のROIの妥当性など、事前に検証する必要性があり、ホテルアセットマネージャーが契約内容の整合性を精査し、オーナーとオペレーター双方が納得いく形に調整する。

運営成績の改善施策の提案

運営パフォーマンスのモニタリング分析などをもとに、KPIに沿った改善施策を提案。また、ホテル投資時のデューデリジェンスをはじめ、バリューアップ計画やブランド差別化戦略の提案と実行支援を行う。JLL日本はホテル運営会社、ホテル専門REIT、ホテルアセットマネジメント会社などで豊富なホテル運営実績を有するスタッフが多数在籍し、具体的かつ実践的な改善案を提案、実行支援することができる他、必要に応じてJLL海外拠点の専門スタッフと協働でクライアントをサポートする。

Capex(資本的支出)の精査・費用対効果の検証

外資系ホテルオペレーターの多くは総支配人が物件個々にバリューアップ戦略を策定し、オーナーに対して積極的に提案する。一般的に年間売上の数%分の予算を組むことになるが、ホテルの運営ポリシーなどに基づき継続使用が可能な設備まで更新しようとするケースがある。ホテルアセットマネージャーは当該設備が故障した場合のリスクと費用対効果などを精査し、Capexの妥当性を確認する。

一方、国内オペレーターは本部主導でポートフォリオ全体を鑑みてバリューアップ投資戦略が策定され、物件毎に最適なバリューアップが行われてこなかった。そのため、ホテルアセットマネージャーは各物件に最適なバリューアッププランの策定なども支援する。

JLL日本のホテルアセットマネジメント・サービス活用事例

タイを代表するホテルチェーンであるセンタラ ホテルズ&リゾーツが展開する高級ブランドホテル「センタラグランドホテル大阪」の開業に向けて、JLL日本 ホテルズ&ホスピタリティ事業部は開業準備を支援した。

同ホテルは「タイと日本の美と文化の融合」をコンセプトに掲げ、全515室の客室、8つのレストラン・バー、クラブラウンジ、フィットネスセンター、タイ式スパ、イベントルーム、大阪の街並みを一望できるルーフトップレストランを備えている。

JLLはホテルアセットマネージャーを派遣し、開業日に向けてプロジェクトのスケジュールをハンドリングした他、投資家の意見調整、綿密な市場調査による運営スタッフの人員配分などの運営体制に関するアドバイス、開業準備段階で想定される各種課題に対して事前対応などを担った。

事例紹介「センタラグランドホテル大阪 - ホテル開業支援事例」を読む

ホテルアセットマネジメントが差別化戦略になる

水道光熱費や材料費、人件費が高騰し、ホテル運営におけるコストアップが喫緊の課題となっている。加えて、建築費が高騰したことで新規開発に対する投資妙味が薄れており、競合ホテルとの宿泊客の獲得競争も激化している。

そうした中、ホテル運営体制の改善やバリューアップ工事による付加価値向上によってアップサイドを狙う投資戦略は非常に効果的な差別化戦略となり、オーナーやオペレーターを支えるホテルアセットマネジメントの存在感はこれまで以上に高まっていきそうだ。

ホテル投資を一気通貫で支援するJLLのホテルサービス

JLL日本では2021年にホテルアセットマネジメント・サービスの提供体制を強化し、2024年から関西・西日本で本格的にサービス提供を開始しました。ホテル運営の経験豊富なホテルアセットマネージャーが多数在籍し、クライアントが所有・運営するホテルに関する市場・物件動向の分析、資産価値の最大化、リスクの最小化など、様々な目標達成を不動産及びコマーシャル的な主観から支援すると同時に、将来的なホテル投資・開発戦略の円滑な遂行に貢献します。

また、下記の通りホテルの開発検討段階から運営、売却・買収サポートまでホテル資産運用における一連のサービスをワンストップで提供しており、2000年以降にJLLが支援した日本のホテル取引において1兆円(68億米ドル)に達しました。

フェーズ JLL提供サービス
ホテル用地取得・開発検討 ●アドバイザリーレポート作成業務
・マーケットレポート
・フィージビリティ・スタディ
・評価レポート/不動産鑑定書
ホテル設計-開発 ●ホテルアセットマネジメント(支援)業務
●プロジェクトマネジメント
●ホテル会社選定/契約交渉支援業務(オペレーターセレクション)
ホテル開業-運営 ●ホテルアセットマネジメント(支援)業務
●アドバイザリーレポート作成業務
・資産評価レポート/不動産鑑定書
・マーケットレポート
・収益改善提案レポート
●ホテル会社選定/契約交渉支援業務(オペレーターセレクション)
ホテル売却 ●ホテル取引支援業務
ホテル買収 ●ホテル取引支援業務
●アドバイザリーレポート作成業務
・デューデリジェンス
・資産評価レポート/不動産鑑定書
・マーケットレポート

JLLはホテル設計・開発~運営フェーズにおけるホテルアセットマネジメント・サービスの提供をはじめ、ホテル投資活動の様々なフェーズで多角的な支援を行っています。ホテル投資・運営にお悩みの方は気軽にお問合せください。

連絡先 ネイザン・クック

JLL日本 ホテルズ&ホスピタリティ事業部 エグゼクティブヴァイスプレジデント ヘッド オブ アセットマネジメント

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