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【ホテル投資の新機軸】アパートメントホテルとは?サービスアパートメントとの違い、検討事項などを解説

多様化するホテルカテゴリーにおいて急成長が見込まれているのが「アパートメントホテル」だ。狭小地でも開発できる参入障壁の低さ、インバウンドの潜在的な宿泊需要に対応したコンセプトメイクが可能なことから人気を博す。都心部の中小ビルを建替える際に新たな選択肢となりえ、今後のホテル投資市場を席捲しそうだ。

2024年 05月 13日

本稿では、今後の増加が見込まれているホテル投資の新たな選択肢となりそうな「アパートメントホテル」について解説します。なお、JLLではアパートメントホテルのマーケットレポート作成をはじめ、ホテル投資・運営を支援する多彩なサービスを一気通貫で提供しています。ご興味ありましたら、下記の関連情報と合わせてお問い合わせください。

差別化戦略の期待がかかるアパートメントホテル

2022年10月に水際対策が大幅に緩和されたことで、訪日外国人観光客数が本格的に回復し、ホテル宿泊需要も急拡大した。それに伴い、ラグジュアリーホテルに代表される“資系高級ホテル”の日本進出が加速するなど、「宿泊」自体を観光の一部と捉えた個性的なホテルが人気を博すようになっている。今後もホテル開発が進むなか、投資家やデベロッパーは競合との差別化戦略として、これまでになかったコンセプトを有するホテルを開発していく必要がありそうだ。

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では、競争激化の予感が漂う国内ホテル市場において有望な差別化戦略は存在するのだろうか?

国内ホテル市場に詳しいJLL日本 ホテルズ&ホスピタリティ事業部 シニアヴァイスプレジデント 中村 健太郎はその有望株として「アパートメントホテル」を挙げ、「参入障壁が高くなく、ターゲットが明確で商品化しやすいため、今後新規出店を検討する事業者の数が増えてくる」と予想する。

アパートメントホテルとは? サービスアパートメントとの違い

建築基準法・消防法の位置づけはホテルとなり、各部屋に家具・キッチン・洗濯機・乾燥機を常備している施設をアパートメントホテルと定義

そもそも、アパートメントホテルとはどのようなものなのか?

中村は「法的な基準は存在しないが、建築基準法・消防法の位置づけはホテルとなり、各部屋に家具・キッチン・洗濯機・乾燥機を常備している施設をアパートメントホテル」と定義する。

ファシリティに関する特徴はサービスアパートメントと類似しているため、両者を混在して紹介されるケースも見かけるが、アパートメントホテルは旅館業免許を有している点がサービスアパートメントとの最大の違いといえるだろう(ただし、サービスアパートメントは従前、賃貸借契約を前提とした中長期滞在利用が主だったが、近年では旅館業免許を取得し短期利用に対応したホテルタイプも増えている)。

中村によると「既存のアパートメントホテルの事例を見ると、延床面積が小さく、客室数が50室にも満たない小規模施設も散見される」とされ、共用の飲食スペースなどの付帯設備は極めて限定的だという。

また、訪日外国人観光客をターゲットにしているため、ホテル内の公用語は英語、ホテルスタッフの大半は外国人が占める。

ちなみに、JLLの調査では、東京におけるアパートメントホテルの平均滞在日数は3-5日だった。

アパートメントホテルが台頭してきた背景

アパートメントホテルはキッチンや洗濯機などを常設(画像はイメージ) 画像提供:PIXTA

アパートメントホテルが台頭してきた背景は、既存ホテルが取りこぼしていたインバウンドならではの潜在的な宿泊需要に対応できるためであろう。

3名以上の宿泊需要に対応

観光庁の統計調査では、国別訪日外国人観光客の同行者構成をみると、アジア各国は「家族・親族」の割合が多く、中村は「従来の日本のホテルは平日のビジネス需要、週末のレジャー需要共に1-2名利用を想定した客室構成になっており、意外に3名以上で宿泊できる施設は少ない。アパートメントホテルはこうした潜在需要に対応しているため、人気を博している」と説明する。

長期宿泊に対応

また、訪日外国人観光客の平均宿泊日数の長さに対応している点もアパートメントホテルが人気を博す理由の1つといえるだろう。

同じく観光庁の統計調査によると、東アジアから訪日外国人観光客の平均宿泊数は5泊、東南アジアは平均7泊、そして欧米豪は平均11日とされる。

平均宿泊日数は日本国内の移動を含めるため、1つのホテルに宿泊し続けるわけではない点に留意する必要があるが、旅行期間が長い訪日外国人観光客にとって必然的に衣類を洗濯しなければならず、各居室に洗濯機が常備されているアパートメントホテルは「洗濯しながら観光できる」という点において高評価を得ている。

また、長期の宿泊では外食ばかりではなく、自炊のニーズも高く、キッチンやダイニングを備えたアパートメントホテルが人気を博しているという。

なぜアパートメントホテルが今後増加するのか?

訪日外国人観光客の宿泊ニーズに対応できるアパートメントホテルが今後人気となりそうだ(画像はイメージ)

レッドオーシャン化しているエコノミーホテルやバジェットホテルに代わって、建替え検討時の選択肢としてアパートメントホテルが台頭していきそうだ

冒頭で触れた通り、訪日外国人観光客の潜在的なニーズに対応したアパートメントホテルは今後かなりの数を増やしてくるのではないだろうか。

「付帯設備が求められないため、比較的狭小な用地でも開発可能。そしてアパートメントホテルは利便性こそ評価されるものの、ホテルとしてのブランド力が問われることがないため、数あるホテルカテゴリーのなかでも参入障壁が低い」(中村)

東京や大阪といった大都市には築年が経過した中小オフィスビルが多数存在しており、すでにレッドオーシャン化しているエコノミーホテルやバジェットホテルに代わって、建替え検討時の選択肢としてアパートメントホテルが台頭していきそうだ。

新しいホテルカテゴリーだからこそ検討事項も多い

一方、アパートメントホテルは新規カテゴリーであるがゆえに知見・ノウハウが十分に積み上げられておらず、投資・開発に向けては様々な検討が必要になる。具体的には下記のような検討事項が考えられる。

  • 施設規模が小さいため、収益拡大のために利益効率をいかに高めていくか

  •  付帯設備が限られており、宿泊客の満足度をいかに向上させていくか

  • 地方都市でも長期滞在拠点としての価値を出せるか

  • 外国人スタッフを雇用するための人件費高騰にいかに対応するか

こうした課題に対して、多くの運営事業者は試行錯誤を繰り返している段階であり、明確な回答が見出されているわけではないが、独自の差別化戦略を駆使し、成長を続けるアパートメントホテルも存在している。

オペレーショナルアセットであるホテルならではの難しさはあるものの、参入障壁が低く、ターゲットを明確化したコンセプトづくりも行いやすいアパートメントホテルが今後のホテル市場を席捲していくのではないだろうか。今後の市場動向に注目していきたい。

一気通貫で支援するJLLのホテル投資サービス

JLLでは、ホテルの開発検討段階から運営、売却・買収サポートまでホテル資産運用における一連のサービスをワンストップで提供しています。直近ではホテルアセットマネジメントサービスの提供体制を拡充した他、関西から西日本エリアでのサービス提供体制の強化を図り、専任担当者を配置しました。

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連絡先 中村 健太郎

JLL日本 ホテルズ&ホスピタリティ事業部 シニアヴァイスプレジデント

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