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アフターコロナに向けた商業施設の回復度

コロナ感染拡大に直面する不動産投資市場。不要不急の外出が憚られ、営業時間の短縮を余儀なくされた商業施設だが、1回目の緊急事態宣言解除後には売上を急速に回復させた。アフターコロナに向けて引き続き魅力的な投資対象として認識される商業施設の回復度を追った。

2021年 03月 25日
コロナ禍でも日本への投資は拡大

JLLが2020年8月にアジア太平洋地域の投資家に対して実施したアンケート調査によると、「2021年までに投資拡大を計画している」と回答したのは、調査対象の6地域の中で日本が最も多かった(回答者の56%)。有事の際に投資家はリスク回避に動く。他国に比べてコロナ感染者数が抑えられ、政治的リスクがなく、低金利下で投資妙味のある日本は数少ない「セーフヘイブン(安全な逃避先)」として認識されたためだ。

事実、世界の投資マネーは日本(東京)に集まっている。JLL日本 リサーチ事業部が発表したレポート「ジャパン キャピタル フロー2020年第4四半期」によると、日本の不動産投資額に占める海外投資家の割合は2020年通期で34%となり、過去最大となった2007年と同じ割合となった。コロナ禍で世界的に不動産投資の停滞が見られる中、同レポートによると、日本国内の不動産投資額は2020年通期で4兆5,713億円となり、前年比で4%減にとどまった。

世界の不動産投資市場に詳しいJLL日本 キャピタルマーケット事業部 内藤 康二は「コロナ感染防止対策について国内では賛否両論あるものの、海外投資家は日本のコロナ感染防止策は高く評価しており、不動産投資市場の安定感を評価している」と指摘する。

多くの投資家は商業施設の可能性を確信しているため、コロナ禍でも売り急いでいない

コロナ禍で商業施設の取引額が減少した理由

不動産投資市場が総体的に評価されているといえども、投資セクター別でみると明暗が分かれる。取引額が激減したのが商業施設だ。2020年の投資額は前年比で50%以下に落ち込んだ。

訪日外国人観光客の急増などの外部要因を受けて堅調に推移していた商業施設だが、コロナ禍によって外国からの渡航が制限され、なおかつ感染防止を目的とした外出自粛が推奨されたことで、都心商業施設を中心に売上が激減したのは記憶に新しいところだ。

一見すると、これらの事象がリスク要因となり、商業施設への投資が停滞しているように考えられるのだが、内藤によると「多くの投資家は商業施設の可能性を確信しているため、コロナ禍でも売り急いでいない」ことが、その理由であるという。

商業施設へのコロナの影響は都心・郊外で異なる

1度目の緊急事態宣言下では不要不急の外出が憚れ、商業施設の多くは時短営業する等、その影響は多大だったが、緊急事態宣言解除後には急速に利用客・売上が回復したのは記憶に新しいところ。そこで、アフターコロナに向けて商業施設の回復度について調査した。

物件タイプ、立地によってコロナ以前と遜色のない売上を出す商業施設が存在する。日本百貨店協会、日本ショッピングセンター協会、全国スーパーマーケット協会が開示している売上推移データを見ると、都心商業型の施設は軒並み売上が低迷しているが、郊外立地が多いスーパーマーケットはコロナ以前の売上を超えていることがわかる。

一方、経済産業省が毎月発行している「商業動態統計」から東京23区、千葉、埼玉、横浜、川崎、相模原のエリアごとに大規模小売店の売上推移を昨年比で比較したところ、都心商業が中心の東京23区、千葉、埼玉、横浜は昨年比を下回ったが、川崎と相模原は緊急事態宣言下も昨年同期を上回る売上で推移している。

この傾向は関西圏でも同様で、大阪、京都、神戸、堺市で調査したところ、都心型商業施設の売上が大きい大阪、京都、神戸の売上の落ち込みが大きかったが、居住エリアを抱える堺市のみいち早く回復している。

また、ある商業施設特化型REITの資料によると、コロナ禍の影響について都心型商業施設やターミナル駅前商業施設の売上は大打撃を受けたが、住宅地の駅前商業施設は前年並みの売上を確保していた。緊急事態宣言下で営業時間の短縮や営業を休止した都心型商業施設が多かったが、日常生活を支える居住地近くのスーパーマーケット等に対するコロナの影響は軽微だったことがわかる。

コロナ感染を避けるべく、都心から郊外へ居を移す動きが活発になる中、郊外型商業施設がコロナ下では感染リスクへの耐性が強いことが浮き彫りになった。

コロナ禍の郊外型商業施設はレジャー目的で活況

次に、2020年9月時点の主要市街地の歩行者数とカーナビの目的地検索数に着目してみた。その結果、自由が丘や吉祥寺といった住宅地を背後に持つエリアでは前年同期比で歩行者数が増加したが、銀座や表参道、心斎橋、天神等の都心商業地では前年同期比で歩行者数が減少した。

また、2020年シルバーウィーク時点でカーナビ目的地検索を調査したところ、郊外のアウトレットモールが軒並み上位を占めた。内藤は「公共交通機関に比べて感染リスクが少ないと思われる移動手段として自動車を選択し、換気が十分になされている印象があるアウトレットモールはレジャー代わりとして楽しめることから人気が高まった」と推測する。

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宣言解除後に都心型商業施設の回復本格化

ワクチンの開発によってコロナ収束が視野に入りつつある今後、商業施設の回復度はどうなるのか。内藤は「商業施設がコロナ以前の状態へと回復していく道筋は3段階に分かれる」と説明する。

第1段階は日用品を取り扱う住宅地近郊のスーパーマーケットの売上が回復。第2段階は郊外のショッピングモール、そして第3段階になってようやく都心型商業施設に買い物客が戻る。前述した通り、コロナ禍にあっても住宅地では人出が減少しておらず、スーパーマーケットの売上は堅調さを維持している。また、郊外型のショッピングモールは緊急事態宣言解除後にはレジャーを兼ねた買い物客が多数訪れ、賑わいを取り戻しつつある。2021年1月から再度緊急事態宣言が発出されるまで、2段階目までは回復したといっていい。

一方、Go Toキャンペーンが実施されながらも銀座や表参道に代表される都心の商業地の人出は一定程度にとどまり、いまだ回復したとはいえない。内藤は「今後、緊急事態宣言が解除されてから、少しずつ都心型商業施設に人の賑わいが戻っていく」と予想する。

商業施設は魅力ある投資対象であり続ける

首都圏の賃貸住宅市場は都心から郊外へとシフトしつつあり、都心商業の苦戦と郊外型商業施設の好調といった二極化が見え隠れするが、このまま郊外への人口流出が続くとは考えにくい。内藤は「郊外への人口流出は一定程度増えるかもしれないが、その多くは都心へのアクセス確保を念頭に置いている」と指摘。また、驚異的な成長を遂げたEコマースも対面型商業施設の脅威となるまでには至っていない。コロナが収束すれば通勤や買い物、居住など、都市部に人が戻ってくることは容易に想像がつく。

不動産投資市場における商業施設は中長期的に見れば十分に魅力的な存在であり続けるだろう。

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連絡先 内藤 康二

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター

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