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コロナ感染拡大局面における商業の変化

コロナ禍によって多大な影響を受けたのが飲食店や物販店等の商業施設である。投資市場においても商業施設の取引は激減しているが、その理由はオーナー・投資家が商業施設の将来性を信じ続けているためだ。

2020年 12月 07日
苦戦が続く都心商業

新型コロナウイルスの感染拡大によって最も影響を受けたのが飲食をはじめとした商業全般である。4月-5月にかけての緊急事態宣言のさなかには、スーパーなど日常生活に欠かすことのできない業態以外のほぼすべての商業施設がクローズし、都心から人が文字通り消えたのも記憶に新しい。足下では再び感染が拡大傾向にあることから、今後の商業への影響が再度懸念される事態になっているが、都心商業がコロナ前の賑わいを見せるのはいつになるのだろうか。

川崎市の商業施設はコロナ禍でも好調

コロナ感染拡大局面の商業の立ち位置を示す興味深いデータがある。経済産業省が毎月発表している商業動態調査における大規模小売店舗の売上の推移のなかで、首都圏一都三県の東京23区を含めた主な政令指定都市の今年1月以降の売り上げをみると、銀座や表参道などの商業地を抱える東京23区は直近まで年初のレベルには戻っていない。その一方で他の首都圏の政令指定都市は23区ほど状況が深刻ではないことがわかる。そのなかでもとりわけ川崎市は直近まで一貫して年初来を上回る好調さを維持している。

これはどういうことなのだろうか。川崎市は人口150万人を抱えており、東京都が隣に位置しながらも市単体としてもあらゆるビジネスの本拠地として成立させられる「街力」があるのが特徴だ。その一方でその地の利を活かしてのベッドタウンとしての側面も併せ持つ。つまり商業施設と人々の居住地域が隣り合わせで存在するのも大きな特徴になっている。このコロナの感染拡大局面において川崎市の商業が比較的好調を維持しているのは、東京まで出かけることなく、近所の商業施設で買い物をすませる市民が多いことの証左といえる。

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外資系投資家「売り急がない」

まだまだそうした「川崎都民」の買い物需要が戻っていない東京都心商業だが、都心部の商業ビルを保有する投資家の間にはそれほど悲壮感は漂っていない。渋谷の一等地にある商業施設を保有するある外資系投資家は、いまこの状況であわてて物件売却に走ることはないと断言している。物事には必ず終わりがあり、コロナがインフルエンザなどと同様の対応が可能となれば、その時点で人々はコロナ前の普通の生活に戻ることができると考える商業施設オーナーは多い。今年にはいってから都心商業の取引は激減している。しかしながら、もちろん買い手が減少していることも理由だが、多くのオーナーは引き続き都心商業の可能性を確信しているため、売却物件が少ないこともその理由だ。

 

いつの日かコロナが落ち着き、再び多くの買い物客を迎え入れるときがくるまで、商業施設のオーナーはテナントとともにコロナに立ち向かっている。

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連絡先 内藤 康二

JLL日本 キャピタルマーケット事業部 リサーチディレクター

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